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第109話 忠告

「この地下迷宮に夜とか昼とかいう概念はないけど、そろそろ休憩にしない? 疲れたわ」


「マロンちゃんに賛成! 丁度魔物もいっぱい倒したし、休も。皆欲しいものあったら言ってね。私のトレーダーショップで何でも買うから」


 フダライアンを倒した後、私達はスマホで時間を確認すると、もう深夜になっていた。ここら辺で休むのがいいだろう。


 丁度いいサイズの洞穴もあるし……。


 私達は洞穴の中で、椅子に座って毛布にくるまりながら、温かいものを食べていた。


 私は紅茶とアップルパイ。暖かくて美味しい。ルージュちゃんのトレーダーショップの食べ物はどれも出来たてホヤホヤなんだよね。


 私は味わいながらアップルパイを頬張る。


「アナちゃんリスみたい!」


「ふぉいひぃーよーー」


「ちょっと何言ってんのか分かんない」


 頬張りながら喋ると、すごく下品になってしまった。



「明日からはどうしますか? このまま真っ直ぐ進みますよね?」


「まあそうなるよね。敵は見つけたら倒すって感じで!」


「魔物の群れ対策はしときたいな。アナちゃんの反転と回復がなかったら危なかっただろうし。まさかあんなに強い魔物の群れがいるなんてね」


 ゼノンは魔物への不安を語りながらも、楽しそうな、挑戦的な笑みを浮かべていた。


 多分ゼノンは心からゲームを楽しんでるんだろうな。敵が強ければ強い程燃えるタイプ。



 私もゲーム好きだし、気持ちは分かる。


 魔物の群れは厄介だけれど、全滅させればたくさんの経験値をゲット出来る。


 さっきは咄嗟で慌てちゃったけど、作戦を建てれば魔物の群れも問題ないはずである。


 アイテムは無限じゃないし、なるべく使わない方向で行きたいよね。


「さっきの魔物との戦いは効率が悪かったですよね。個人で片っ端から倒すって感じでしたし」



 茶々さんの言葉に、私達は返す言葉がなかった。確かに、さっきの戦い、チーム戦っていうより個人戦だったかも。


 あんまり連携のとったことないゼノンやシグレがいたのもあるけど、私達4人の連携もすごく元々いいわけじゃないのかも。


 私達4人は割とスキルの力でゴリ押ししてきたとこあるし……。



「連携をちゃんと考えた方が良さそうね。十六夜は魔物使いなんでしょ? 大勢の魔物を従えてくるかもしれないわ」


「そうですね。まず、初手はアナさんの呪いとデバフですよね」


「アナといったか。貴様のカルタなんとかの呪いとやらを当てにするなら、一体ずつ倒すより、敵のHPを25%以下に削ることに集中した方がいいか?」


「効率的にはそっちの方がいいのかな? ただ敵のHPを25%以下にすることを優先したら、受けるダメージが増えそう。たくさんの魔物に狙われることになるわけだし」


 私的には、敵のHPを25%以下にしてくれた方が助かるけど、前衛組に負担が掛かるからなあ。


 一体一体倒したら確実に魔物が減るからその分、魔物の攻撃も減る。


 それにHPを減らすことに集中すると、カルタフィルスが発動するまで、魔物は死なずに残ることになるし。


 私のカルタフィルスでも全員倒せるわけじゃないからなあ。


「それなら役割を決めるのがいいんじゃない? そうだね、例えば僕がタンク役と言うか、近付く敵を倒す役割をして、シグレと茶々ちゃんが敵のHPを削る役割をするとかね」


「あ、タンク役なら私のカースちゃんも出来るから、カースちゃんが後衛組の防衛をして、ゼノンが前衛で近付く魔物を倒すってことでいいかな?」


「そうですね。そして、残りのメンバーがHPを削る役割ですかね。アナさんの呪いやルージュさんの爆弾は範囲攻撃ですから、全体を見ながらサポートをお願いします」



「私は撃ち漏らした魔物を叩いたり、ライフルで範囲攻撃したりって感じでいいかしら?」


 私達は何となくで作戦を立てていく。ここまでならそんなに作戦らしい作戦って感じもしないけど……。


 さっきまでは好きなようにそれぞれが魔物を倒すって感じだったから役割を決めたのは大きい。


「それと、最終手段だが、俺は少しだが広範囲の魔物を回復するアイテムを持っている。何かあったらそれを使ってくれ」


 そう言ってシグレは私に、何個かアイテムを渡してくれた。


「え、いいの? けっこう貴重なやつなんじゃ」


 広範囲の魔物を回復する薬は大体貴重なものである。


「俺は使わないからな」


「そういうことなら、有難く貰うね」


 私はシグレに感謝しながら、薬を大切に保管した。シグレに貰った薬はかなり広範囲に使えるやつだ。


 こんだけあったらさっきみたいな魔物の群れに襲われても平気かも。


 そんなことを考えていた時、スマホが震えた。何だろう、またお知らせ?


 私はスマホの画面を見る。お知らせではなく、桜子ちゃんからの電話だった。


 桜子ちゃんかあ。どうしたんだろ。電話なんて初めてだよね。桜子ちゃんは私が地下迷宮にいるのを知っているはず。


 雑談しようとして、電話をしてくるわけがない。そもそも電話で雑談するほどの仲でもないし……。


 私は考えるのをそこでやめ、電話をとった。


「桜子ちゃんどうしたの?」


「アナさん、地下迷宮に行くのはやめた方がいいです。今いるなら即刻立ち去るべきですよ」


 桜子ちゃんは切迫した声で、捲し立てるように話す。今地下迷宮に行かない方がいいってどういうこと? まあもう来てるんだけど……。


「地下迷宮にはもう来てるよ。立ち去るべきってのはどうして?」


「今は地下迷宮で、魔物の大乱が起こってるんですよ!」


「魔物の大乱?」


 聞きなれない用語だったので、私は桜子ちゃんに聞き直す。


「魔物の大乱っていうのは、魔物が大量発生するこもです。そして、大量発生した魔物は群れで行動します。しかも今は魔物を凶暴化させるNPCがいるらしいですし、危なすぎますよ」


 魔物を凶暴化させるNPCというのは十六夜のことだろう。そして、私達の前に大量の魔物が現れたのは、魔物の大乱のせい……。


「魔物の大乱っていつ収まるの?」


「普通は2.3週間続きますよ。地下迷宮はつい昨日から魔物の大乱のようなので、しばらくは収まらないでしょうね。魔物の大乱がなければ、アナさん達は十分地下迷宮をクリア出来たでしょう。しかし、今の状況だと危ないかもしれません……」


 うーん。桜子ちゃんの話を聞いて、私は悩んでいた。桜子ちゃんは純粋に私達のことを気付かって忠告してくれているのだろう。それは伝わってきた。


「立ち去るべきかあ。忠告ありがとね。考えてみる! 後魔物の大乱への対策とかってあったりする……? ここを立ち去るにも進むにも、大量の魔物と出会いそう」


「具体的な対策はありません。ですが強いて言うなら……、地下迷宮の入り口付近の大量発生するようか魔物は火を嫌うはずです。火の攻撃が相性がいいかもしれませんね」


 火かあ。私達に火属性使いはいない。ルージュちゃんの燃える爆弾を使う……? 何にしてもたてられる対策はありそうだ。


「火かあ。色々ありがと! 桜子ちゃん」


「お礼なら、今度会った時に、地下迷宮のお話を聞かせてくださいね」


「それはもちろん!」


 私がそう言うと、ぷつっと通話は切れた。


「どうしたの? アナちゃんの電話誰から?」


「桜子ちゃん。なんか地下迷宮やばいことになってるっぽい」


 私は地下迷宮で起こっていることを、皆に説明した。


「地下迷宮の魔物が噂以上に強いと感じたが、理由はそれか」


 カルマ値0組とマロンちゃんは私の話を聞いても動じた様子はない。茶々さんは少し考え込むような仕草をし、ルージュちゃんは体を震わせた。


「なんか危なそうだね。桜子ちゃんがやばいっていうってよっぽどなんじゃ……?」


 そうなんだよねぇ。あの桜子ちゃんがあそこまで言うというのが少し気がかりだ。気がかりだけど……。


 けっこう進んでるし、このまま戻っても魔物の大群にあいそうだ。それなら進んだ方がいいのでは? と私は思う。


 私の意見を伝えると、皆から賛成を貰えた。結局私達は親切な桜子ちゃんの忠告を受け入れず、進むことにしたのだった。

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