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第106話 地下迷宮の番人

 マンホールから放たれた光はあっという間に辺りを包み込む。余りの眩さに私は思わず目を閉じた。


 長い間、光が辺りを覆っていた。熱が体を包み込む。しばらくすると、熱が消えたので、目を開くと、光は消えていた。


 そして、マンホールの下には階段が続いていた。


「これだよね! すごいよ、アナちゃん! 冒険の予感がする」


「それね! この下か。けっこう下りそうだね」


 地下迷宮の階段はずっと先まで続いていた。降りてみないと、どのくらいの長さなのか分からない。


「地下迷宮ですからね……。とにかく進みましょう。地下迷宮なら、夜も昼も関係なさそうですし」


「地下迷宮ってやっぱり暗いのかしら?」


「そんなことはなさそうだよ。ほら、下を見てみて。微かに灯りが漏れてる」


 ゼノンに言われ、階段を見つめると、微かな光が見えた。真っ暗っていうわけではなさそうだ。


 一応暗闇対策として、懐中電灯とか蝋燭とか色々アイテムボックスに入れてきたけど、出番はないかもしれない。


「順番はどうする?」


 この階段は狭いから1列になるけど、魔物とかと途中で出会ったらどうしようか。


「先頭は俺がいっていいか?」


 前衛職のシグレが先頭を歩いてくれるらしい。まあこのメンバーなら、シグレか茶々さんが先頭を行くのが正解だろうし、いいんじゃない?



「お願い!シグレ」


「了解だ」


「なら、拙者は1番後ろにいますよ」


 私達は適当に順番を決めていく。シグレ、ゼノン、ルージュちゃん、私、マロンちゃん、茶々さんの順番で進むことになった。


「行くぞ」


 シグレは早足で階段へと足を踏み入れた。他の皆もそれに続く。私はルージュちゃんの後ろを引っ付いて歩いていく。



 階段はかろうじて、下の灯りと、上の僅かな光のお陰で踏み外すことはなかった。



 とりあえず下までは行きたいけど、どのくらいかかるんだろ。


「下まで何段くらいまであるんだろうね? 今152段目?」


 よく数えようと思ったね……、ルージュちゃん。ルージュちゃんが黙って下を向いてるなと思ったら、まさか階段を数えているとは。


「え、ルージュちゃん数えてたの」


「うん、154、155……146、147」


「今数字が戻らなかった?」


「あ、もう数えなくていいや」


 私とルージュちゃんのやり取りに前を歩くゼノンさんが軽やかに笑う。


「君たちは賑やかだね」


「あ、ごめん。うるさかった?」


 私が謝ると、ゼノンはとんでもないというふうに首を振る。


「まさか、賑やかなくらいが楽しいよ」


 ゼノンのは嫌味ではなく、本音に聞こえた。


「俺ら2人だとあまり話さないからな」


 シグレの言葉にゼノンは苦笑いする。確かにこの2人がわあきゃあ騒いでるのって想像出来ないかも。


 私達4人は割とクエスト中とかレベリング中も雑談したりして、騒いでるからなあ。ちなみに私達の中でも特に騒いでるのはルージュちゃんだ。



 私達は階段を下り続けるも、一向に下へ辿り着かない。上から見えていた灯りは、階段の壁のところどころに付いている蝋燭だと分かった。一定間隔で、灯りがあるんだよね。これは普通にありがたい。


 かれこれ30分くらいは階段を下っている気がするんだけど。いや、まだ下りの階段はいいんだけどさ、怖いのが帰りなんだよね。


 地下迷宮から出て、地上に登る時は上に上がるわけじゃん? こんだけ下ったとなると、どんだけ階段を登ることになるんだろうね……。


 私は帰りの階段に恐怖を覚えていた。HPが上がったら疲れにくくなったとはいえ、元々が運動神経皆無、体力0の私だからなあ。



「下が見てたぞ。もう少しで階段が終わりだ」


 先頭を歩くシグレがそう呼びかける。え、本当!? ついに、この終わりのなさそうな階段に終わりが……。


 感無量といった感じである。


 シグレの言葉通り、やがて階段は終わった。地下迷宮の底はというと、土造りである。そりゃそうだっていったらそれまでだけど、土で出来た壁と床。まさに地下だ。


 そして、階段の先に続いていたのは、長い廊下である。この廊下の壁には一定間隔で蝋燭が取り付けられていた。


 階段より、蝋燭の数が多いので、明るい。普通に活動するのに問題ないレベルだった。


 私達は6人並んで歩く。


 横幅は広いから、6人で余裕を持って歩くどころか、十分に戦えそうだ。


「魔物が来るぞ。群れだな」


 私達が歩き始めてすぐに、シグレが魔物の気配を察知したらしい。


 フェリシモの森にはあまり魔物がいなかったけど、ここには普通にいそうである。


 となると、十六夜の影響を受けていないのかな?


 私のそんな考えはすぐに打ち破られることになった。私達の前に現れた魔物は、フェリシモの森の狂化した魔物より、どす黒いオーラを放って、暴れていた。



 この魔物はやばい。目の前に立つだけで、この魔物の狂い具合が肌から伝わってくる。



 皆も今までにないほど緊張して、顔を強ばらせている。


地下迷宮の番人Lv150

スキル 防壁 ファイヤーバルウ 大地の怒り 夜吸

状態異常 狂化 夜狂い


 夜狂い……? 私は気になって夜狂いの情報をさらに鑑定すると、それが魔物を極限までに狂わせる状態異常だと分かった。夜狂いになった魔物の体は夜、もしくは闇に蝕まれ、荒れ狂う。


 しかし、桜子ちゃんからの情報に、夜狂いの魔物がいるなんて話はなかった。毒を使う魔物がいるとか、頑丈な魔物が多いとかは話していたけど……。


 あの桜子ちゃんが夜狂いという重大な情報を伝えないなんてことがあるとは思えない。やっぱりこの辺りで魔物を狂わせる何かが起こってるんだ。それはおそらく十六夜が関係している……。


 私は皆に私が鑑定で見たことを伝える。


「夜狂いか……。中々に厄介そうだね」


「ああ。だが、敵は強ければ強いほどいい」


 皆は口では愚痴を零しながらも、顔は笑っていた。私は強い魔物と戦うことや十六夜のことを思い浮かべて、奇妙な高揚感が生まれていた。


 私は大分このゲームに染まっているのかもしれない。


「【破滅の旋律】」


 このような防御力を高める敵に、呪いは効果的だ。呪いには防御力なんて関係ないんだもん。


 地下迷宮の万人は、理性を失った様子で、手当り次第に暴れる。その攻撃は私達というより、壁にダメージを与えていた。


 ええ、壁にダメージを与えるのはやめて欲しいんだけど。潰れたらどうするの?



 壁はかなり頑丈で、ヒビすら入っていないけど、あんな威力高そうなパンチを壁に喰らわせるのを見ると、不安になる。


「【呪い】『防御力デバフのプレゼント』」


 私はいくつかのスキルを使って、戦う皆をサポートする。


 この魔物は動きはむちゃくちゃだが、一撃が重たい。何発が喰らっているゼノンとシグレと茶々さんは苦しそうだ。


「【アラウンドヒール】」


 私達がむちゃくちゃに動く魔物の群れ達を攻撃していると、敵のHPが25%を切った。


「【カルタフィルスの呪い】」


 私のこのスキルで、5体中2体が倒れた。残りは3体。しかも残りHPは僅かだ。


 後もう一息という時、敵は夜吸スキルを使ってきた。そのスキルは夜を吸うスキル、詳しく言うと、夜と闇の力で身体能力を上げるスキルだ。



 夜吸を使った番人3体の身体能力は大きく上がった。前より素早く動き、全線の3人に大きなダメージを与える。


 そんなに強いスキルなら最初から使っとけばいいのに、と思いいつつも、3人のHPを回復するスキルを使う。


 敵が急にパワーアップして、少し隙を見せた茶々さん達だったが、すぐに立ち直した。3人は敵のスピードについていくどころか、上回っていた。やがて私達6人の猛攻撃により、番人達は全滅した。



 そして、私のレベルは149になった。後1レベルで150だ。


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