第102話 地下迷宮の噂
人魚姫のクエストから帰還した次の日、私達は桜子ちゃんと晴人さんの元を訪れていた。神聖アシュタリカ帝国へ向かうオススメルートを聞くために。
神聖アシュタリカ帝国まではもちろん、神聖アシュタリカ帝国に入ってから、トーナメントの行われる都市に行くまでのルートも隅々まで聞いておきたい。
トーナメントまでにレベリングも兼ねたいからね。
急に訪問した私達を2人は歓迎してくれた。
そういえば、この2人ってそれなりにレベルあるけど、いつレベル上げとかしてるんだろ。あんまりレベリングしにいってるイメージないんだよね。
「神聖アシュタリカ帝国までのオススメのルートある? レベリングもしながら行きたいんだよね」
私の問いに桜子ちゃんが少し考えるような仕草をした後、笑顔で答える。
「水の中で息が出来るスキルや称号があるなら地下迷宮、ないならフェリシモの雪山の先にある街にいって、そこから船に乗るのがいいですよ。その船は迷宮船って言われていて、危険な魔物が出る所を通ります」
お、地下迷宮? なんか魅力的な響き。丁度私達は泳げる称号をゲットしたし、丁度いいのでは。泳ぎたいと思ってたし。
「私達は水の中で息が出来るし、泳げるよーー」
自信満々に言うルージュちゃんに桜子ちゃんは可愛らしい笑みを浮かべる。
「でしたら地下迷宮がオススメですよ! 推奨レベルは150~250くらいですけど、フェリシモ王国の近くには150~200くらいの魔物しかいませんから、丁度いいんじゃないですか?」
「地下迷宮かあ。どんなところなの?」
「その名の通り、迷宮です! 色んな魔物が居ますよ。地下迷宮なので、入り口は陸の地下ですが途中で海底を通ります。出口は神聖アシュタリカ帝国の白の森にあったはずです」
桜子ちゃんは私達にも分かるように、丁寧に説明してくれた。その話を聞いて、私の心はかなり地下迷宮へと向いていた。
皆の顔も地下迷宮の話を聞いて輝いていた。
「地下迷宮行ってみよっかな。詳しい話を聞きたいかも。魔物とか気を付けることとか」
私は桜子ちゃんに地下迷宮の更なる攻略情報を求める。準備するものは準備しとかないとね。
「地下迷宮は毒を使う魔物、それから石や岩でできたような頑丈な魔物が多いみたいですから、毒対策はしていった方がいいんじゃないでしょうか。あなた達なら大丈夫だと思いますけどね」
毒を使う魔物かあ。それならルージュちゃんのトレーダーショップで、毒薬を買えるし何とかなりそう。
その後も桜子ちゃんに、魔物やルートについて詳しい話を聞く。たくさん情報を貰ったので、お礼は弾んでおく。
「私達は明日ここを出発しようと思ってるから、桜子ちゃんともバイバイになるのかな」
「それは残念ですね……。ですが、私達も神聖アシュタリカ帝国のイベントには行きますから、またお会い出来るといいですね」
「桜子ちゃん達も参加するの?」
ルージュちゃんの言葉に、桜子ちゃんは首を振る。
「私達は見る専の予定です! 情報収集ですね!」
それは何とも情報屋の2人らしい答えだった。私達はその答えに納得する。桜子ちゃんと晴人さんが戦ってるとこあんまり想像出来ないな……。
「なるほどーー。じゃあ私達はこれで! じゃあね桜子ちゃんと晴人さん」
「色々ありがと、桜子ちゃんと晴人さん!」
ルージュちゃん、私とお別れをいい、茶々さんは会釈して、マロンちゃんは手を振り、2人とは別れた。
2人と別れた後、私達はアラトとリンクスさんの部屋へ向かった。色々お世話になったし、ちゃんと挨拶をしとかないとね。
アポなしになっちゃったけど、いるかな?
コンコン
私はドアをノックすると、「誰だ?」という返事が返ってきたので、名乗る。するとあっさりと部屋に入れて貰えた。
「お邪魔するよーー」
私はそう言いながら、お部屋に入らせてもらう。後に3人も続く。
アラトとリンクスさんが中で寛いでいた。ちなみにただが、部屋の中はシンプルだった。
「どうしたんだ? お前ら」
そう言いながらも、椅子を進めてくれたので、座って甘いものを食べながら話をする。あ、このチョコレート美味しい。
「私達、この街を明日離れることにしたから、挨拶をしとこうと思って」
「どこに行くんだ?」
「神聖アシュタリカ帝国! 地下迷宮を通っていくから長旅になるかな」
「地下迷宮っすか。面倒臭いって言われてるっすけど、響きには惹かれるっすよね」
リンクスさんは少し驚いた顔をしたが、やがて納得したように頷く。
面倒臭いってのは本当なんだ。桜子ちゃんも毒が面倒臭いとか言ってたな。まあ私はそんなの気にしないけどね。
レベリングに多少の面倒は付き物だよ。
「お前らはそのルートで行くんだな。地下迷宮も中々に面白いって話だぜ。俺も神聖アシュタリカ帝国行くけど、別ルートだわ」
「もしかして、船のルート? 迷宮船とかいう」
桜子ちゃんはそっちのルートも説明していた。だがそのルートでもないらしい。
あれ、普通にレベリングとか関係なしに、安全なルートで行くのかな。
私の疑問に気付いたのか、アラトが答える。
「いや、俺らは空から行くわ。多分すぐ着くと思うぜ。神聖アシュタリカ帝国の始祖の遺跡でレベリングしたいから、移動にあんまり時間はかけたくないんだよな」
空から? ドラゴンとか鳥とかに乗るのかな。この世界は空を飛ぶ魔物がいっぱいいるからね。ドラゴンとかに乗せて連れていってもらうのが、お金はかかるが速いのかもしれない。
「そっか。やっぱりトーナメント参加するんだね」
私がそれとなく探りを入れると、アラトは食いついてきた。
「俺とリンクスは上級者のトーナメント参加するぜ! アナちゃん達は?」
「私は魔法職か戦闘職あたりかなあとは思ってるけど。まだ未定! 皆もそんな感じよね?」
「うん! 私も生産職限定にしようかなってくらいでまだ迷い中」
「拙者もトーナメントは色々あってまだ決められてないんですよね」
「私もまだ未定ね」
それぞれが答える。私達はルージュちゃん以外、何に出るかまだ決めてなかった。私は報酬次第かなって感じだし。
「そうか。ならまたトーナメントで会いそうだな。応援こいよ」
「うん! 行く行く!」
「俺らがいい成績決めるっすよ」
「俺は優勝狙いだわ」
上級者トーナメントは怖くて参加出来ないが、見に行くつもりである。有名な強いプレイヤーはほとんど上級者トーナメントに参加するって話だし。
他の人の戦闘はみたいし、情報収集にもなりそうである。アラトとかリンクスさんとか知り合いの応援もしたい。
「そーいえば、アナちゃん達は地下迷宮いくってことは、海探索用のスキルとか称号持ってんのか?」
「うん、昨日人魚姫のクエストで称号をゲットした」
「人魚姫か。クエストチケット持ってんだよな。今度行ってみるか。どこで海探索用の称号ゲットしたのか教えてくれよ」
「いいよーー」
私のその答えにアラトは嬉しそうにする。
私達はアラトやリンクスさん達としばらくの雑談をした後、お別れする。あんまり長居してもあれだしね。
「じゃあ、私達はこれで。またねー」
「バイバイ!」
「お邪魔しました」
「しばらく会えなくなるわね」
私、ルージュちゃん、茶々さん、マロンちゃんと挨拶をし、立ち上がる。
「おう。じゃあまたな」
「さよならっす!」
2人に見送られ、私達はアラト達の部屋を出た。アラトの部屋を出た私達は部屋へ戻り、明日の予定を確認する。
桜子ちゃん達やアラト達に会ったりしていたらもう夕方になっていた。
明日は早めに出発する予定なので、早めに休むことにする。今日でこのホテルも最後だと思うと感慨深いものがあるね?