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第97話 人魚姫(2)

 闇海の洞窟がある深海、なんて聞いていたからもっと暗い感じをイメージしていたが、深海は予想とは裏腹に美しいところだった。


 闇海の洞窟の入り口はサンゴ礁や光魚で埋め尽くされな綺麗な洞窟だ。深海の絶景である。


「絶景ですね」


「あの光る魚、食用に取れないかしら?」


「綺麗な景色だよね。ストーリークエストの参加者しか見れないなんて勿体ない」


 茶々さん、マロンちゃん、私と口々に感想を述べていく。


「さっそく入ろ!」


 張り切るルージュちゃんに私達は続く。


 闇海の洞窟の中は暗いものの、光るイソギンチャクが辺りを照らしていたので、懐中電灯や手持ちの蝋燭なしでも進める。



「私、闇海の洞窟に行くのが夢だったの! 危ないって言われているから行けなくて。ありがとう」


 人魚姫のアリアちゃんが心から嬉しそうに、お礼を言う。人魚姫ちゃん可愛い。この笑顔が見れただけでも、来た価値がある気がするよ。


 もちろんクエストのクリア報酬はちゃんと貰うけどね!



 私達が闇海の洞窟の中を進んでいると、やっぱりというかなんと言うか魔物に遭遇する。



ダークヒトデLv135

スキル 闇纏 ダークアーツ アインウォーター



 私は皆に敵のスキルを伝え、攻撃に回る。レベルはそれなりにあるけどそこまで強い魔物じゃないし、問題ないだろう。


「【破滅の旋律】【呪い】」


 敵に呪いスキルを重ね、通常魔法攻撃を連発する。大抵の敵はこれで半分以上のHPが削れる。


 その後にルージュちゃんが爆弾を投げ、マロンちゃんが銃を連射し、茶々さんの刀でトドメを刺す。最近ではこのスタイルが固定となっていた。


 私達は洞窟の中の敵も楽々倒していく。今回の敵は遠距離系の技を使ってきて初めは厄介だったけど、慣れればなんてことはない。


「すごいのね、あなた達。あの魔物を一瞬で」


「大したことないよ、私達は冒険者だからね」


 といいつつもルージュちゃんはドヤ顔である。



「どのくらいまで続いているのかしら? 見た目だと小さそうだったけれど」



「闇海の洞窟は深海まで続いていると言われているわ。おばあ様が言っていたの」


「ならけっこう大きそうだね」


 私のテンションは少し下がった。最初は楽しかったんだけど、どんどん同じ景色に飽きてきたんだよね。出てくる魔物も同じだし。


 それがこの洞窟が広くて、いっぱい進まないといけないとなると、まあ少し残念な気持ちになるよね。



 私のモチベを維持しているのは、レアアイテムへの希望とレベリングだけである。



 少し闇海の洞窟の下へ下ると、黒い泉のような開けた場所に出た。深海の中の黒い泉って日本語変だけど。


 少し進めば奥に行けるんだろうけど、黒い泉が気になって仕方がない。


 こういう時は黒い泉に強い魔物がいるのがセオリーである。私は黒い泉に近付く。



 しかし待てども魔物は現れない。この黒い泉になんの仕掛けもないなんてことはないと思うんだけど。


「ねぇ、アリアちゃん。この黒い泉のこと何か知らない?」


 人魚姫のアリアちゃんに尋ねたものの、アリアちゃんは首を傾げるだけだった。


 このまま進んでもいいんだろうけど、どうせ来たならイベントは全てコンプしたい。この黒い泉が気になる。私は沸き立つ好奇心を抑えきれなかった。



 この黒い泉に何もないなんてそんなことがあるのだろうか。私はないと思う。


 私は意を決して、黒い泉に足を入れてみる。いざとなればリタイアしたらいいし、ストーリークエストならどんどん危ないことにも首を突っ込める。


 というか黒い泉に足を入れて、即死なんてことはないだろう。



 私が黒い泉に足を踏み入れると、一気に私の体は黒い泉の中に吸い込まれる。余りの勢いに驚いたが、私は黒い泉の中にいた。黒い泉の中も、今までと同じような風景である。


 違うのは私の目の前に大きな魔物がいるということだけ。この大きな魔物は少し先にいて、まだ私には気付いていないみたい。


 魔物を鑑定してみる。


闇のクラーケンLv150

スキル 闇纏 闇魔法 水魔法 水牢 キュアヒール 硬化

称号 人魚姫の裏ボス



 レベルは150か。しかも裏ボスじゃん。頑張れば倒せなくはないだろうけど、さすがに1vs1はだるそうだから、皆を呼びに行った方がいい。皆も戦いたいだろうし。


 多分上に登れば、さっきの場所に戻れるよね?


 私は今度は上に登ると、黒い泉の外に投げ出される。やっぱり黒い泉の中には入ったり出たり自由に出来るんだ。


「アナちゃん!? 一体なにがあったの?」


 皆は何があったのかよく分かっていないようで、安堵と好奇心が混ざりあった目で尋ねる。


「この泉の下に魔物がいたよ。レベル150のやつ! 多分戦えば経験値とレアアイテム落としそう」


「え、まじで。行こいこ! よく見つけたね、アナちゃん」


「この黒い泉、如何にも何かあります感漂ってたもん」


「お宝がありそうね」


 私達は私を先頭にして、黒い泉の中に入る。人魚姫のアリアちゃんも怖がってはいたものの、1人取り残されるのは嫌らしく、着いてきた。ごめんね、アリアちゃん。ちゃんと倒すから許して。



「あの魔物が裏ボス」


「本当だ! 強そうだね、あの魔物」


「では、いつも通りスキルを教えてください」


「うん! 任せて」


 私達は黒い泉の中に入ると、作戦会議をする。多分近付かないと襲ってこないタイプの魔物だろうし。



 私はまず敵の持つスキルを伝える。敵は回復スキルと防御力を上げるスキルを持っていた。ここは呪いの出番だね。


 ボス系の強い魔物ほど回復スキルを持っている割合が多い。私としては願ったり叶ったりだけど。



「でしたらいつも通りの戦略で行けそうですね」


「うん。水牢にだけ気を付けて。閉じ込められたら水の中で息が出来なくなるみたいだし」



 このストーリークエストの海の中は不思議なことに溺れてHPが減ることはないけれど、普通の海の中や水牢の中ではHPが減る。


 敵の攻撃を受けないように慎重にいかないと。


 私達は頷き合うと、ゆっくりと闇のクラーケンへと足を踏み出した。


 アリアちゃんには後ろで待っていてもらう。


ーー人魚姫ストーリークエストの裏ボス「闇のクラーケン」が現れました。


「ヴォヮァァ」


 闇のクラーケンは気味の悪い声で鳴きながら、腕を振り上げた。


 私達はそれを何とか躱し、攻撃に入る。図体が大きい分、攻撃が遅いので、見切ることが出来た。


「【反転(呪)】【破滅の戦慄】『呪い精霊王召喚』」



 私はいくつかの呪いスキルを使う。呪いスキルは問題なくクラーケンに聞いていた。クラーケンは私の呪いや、ルージュちゃんの爆弾、マロンちゃんの銃弾を受け、苦しそうに喚く。



 茶々さんも隙を伺い、思いっきりクラーケンに切りかかる。茶々さんの動きが速い。これはユニークスキル使ってるな。


 ていうか3人ともユニークスキル使ってるね。


 クラーケンは水牢のスキルを使おうとしているのだろう。水の牢がこっちに迫ってくる。


 不味い……。避け切れない。私は水牢の中に閉じ込められた。う、息が苦しい。HPが減っていく。まずい。


「[カース召喚]」


 カースちゃん助けて! 私がそう念じていると、カースちゃんは真っ直ぐに敵の方へ飛んでいき、敵の体を掴む。



 そしてクラーケンの残りHPは減っていく。クラーケンはついに回復スキルを使用した。


 掛かったね。私はニヤリとほくそ笑む。クラーケンはこのまま回復スキルを連発し、消滅するね。


 私の予想は的中した。クラーケンはその後すぐにHPが0になり、消滅した。


 クラーケンの消滅とともに、私の体は水牢から開放される。


 う、苦しかった。


「アナちゃん大丈夫!? 苦しそう……」


「何とかね。死ぬかと思った」


ーー人魚姫ストーリークエストの裏ボス「闇のクラーケン」を倒しました。



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