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第96話 人魚姫(1)

 次の日の朝、私達4人は人魚姫のストーリークエストに挑もうとしていた。


ストーリークエスト「人魚姫」

人魚姫の御伽噺のストーリークエスト。海や御伽噺の魔物が出現する。

ソロ推奨レベル 150〜

パーティ推奨レベル 130~


 私達はパーティを組むので、130の方を見たらいい。基本的にパーティ推奨レベルのところのパーティの人数は3~5人くらいを目安にしてるから。


 私達は130は皆ギリギリ超えているくらいだから、レベル上げにしても丁度いいランクなのではないだろうか。


 私達がストーリークエストチケットを使うと、私達は視界が一瞬揺らぐ。そして、視界が正常に戻った時には、ストーリークエストを行う世界にいた。


 私達はなんと海の中にいたのである。辺りには魚達が泳いでいる。しかも不思議なことに、海の中で呼吸が出来ている。


「すごい! 海の中でも喋れるし、動き回れるよ」


 ルージュちゃんが興奮した様子で騒ぐ。


 ルージュちゃんの言う通り、私達は海の中を自由自在に動けていた。小学校の授業では、クロールでギリギリ25m泳げるレベルだった私も、楽勝だった。


 泳げるというよりかは、自由に動き回れるというような感覚が強いかもしれない。とにかく、水の中を移動するのに支障はなさそうだ。


 水圧みたいなのも全くないし。ここは水中であって水中でないみたい。


「さっそく進みましょう!」


「いこいこ! 魚さん達綺麗!」


 口々に景色を楽しみながら歩く。さすが御伽噺の世界といった可愛らしい世界である。


 私達は辺りを観察しながら、しばらく進んでいると、大きな魚の魔物が現れた。鮫の魔物かな?


 一応鑑定を使う。


人喰いザメLv130

スキル 捕食 アクアクロー ウォータードロップ 水流弾


「人喰いザメらしいよ。人を捕らえるスキルと、後は爪とか体で攻撃してくる。それから水流弾スキルを持ってるよ」


 私は人喰いザメのスキルを伝えると、人喰いザメと向かい合う。



「【破滅の旋律】『呪い精霊王召喚』」


 呪いや精霊召喚スキルを使うと、後は後ろでばしばし攻撃する。


 ルージュちゃんは鮫の口元へ爆弾を投げつける。ルージュちゃんの爆弾は見事鮫の体内で爆発した。しかし鮫はまだ生きている。中々頑丈だね。


 マロンちゃんが援護射撃をする中、茶々さんが鮫に斬りかかる。茶々さんの一撃がクリーンヒットすると、鮫はHPが0になって倒れた。



 レベルが1上がって、138になった。久しぶりにレベルが上がったので嬉しい。


 鮫を倒した後も、私達はこの調子で海の中を進んでいく。あんまり海の中って感じはしないけど……。



 人喰いザメを何体も蹴散らしながら進んでいると、レベルが上がっていく。人魚姫達がいるエリアに到着する頃には、私のレベルが140になっていた。



 そして、人魚姫の住む深海のお城? のようなところに辿り着いたわけなのだが、深海のお城はとても豪華だった。


 和風なお城やフェリシモ王国の城とは違った雰囲気である。豪華っていうより可愛いの方が近いかな。



 しかし、私達はお城へ入ろうとして、入れないことに気付く。こういう時は絶対に何かのイベントがある。長年色んなゲームをしている私の勘はそう言っていた。


 辺りを観察すると、お城の近くで人魚の女の子が泣いていた。この子が人魚姫だろうか。この子がキーパーソンなのは確かだと思うんだよね。



「声をかけるべきですよね? お城には入れそうにないですし」


 この先にはお城しかないし、それ以外に選択肢はなさそう。


 私達は意を決して、美しき人魚の少女に近付く。


「あの、君どうしたの?」


 ルージュちゃんが人魚姫に声を掛ける。人魚姫は瞳を潤ませてこちらを見る。なんて綺麗な子なんだろう。


「私、人間の王子様に恋をしてしまったの。けれど私は人魚だもの。私と王子様が結ばれることはないんだわ」


 そうやってまた人魚姫は泣き始めた。


 その時、スマホに選択肢が現れた。


1人魚姫を人間にしてくれる魔女の元に案内する。

2人間と人魚が結ばれるのは無理だと諦めてもらう。

3人魚の姿のまま、地上へ連れ出す。



「どれにします?」


「これ、2を選んだらどうなるんだろうね。物語終わっちゃわない?」


 事前調査だと、特にこの選択肢を選んだらダメみたいなのはないみたいだけどね。少し物語や報酬や倒す魔物が変わるくらいで。


 ただ少し不安はある。


「アナちゃん確かに。でも2を選んでみたい気もするんだけど」


「最初だし、素直に1にしとかない?」


「そうね」


 私達は素直に1を選ぶことにする。


「あなたを人間に出来るかもしれない人がいるの。もしよかったら連れていこっか?」


 私の問いかけに、人魚の少女は顔を瞬かせる。


「本当に……? 私を人間に出来るの?」


「多分。代償もあるみたいだけど……」


 原作通りなら、重すぎる代償がね。とりあえず物語通りにストーリーを進めてみますか。


 私達は人魚姫を連れて、例の魔女のいるところに連れて行く。場所はマップに表示されているので分かっていた。


 魔女のところに行くまでに何体もの魔物と出会ったが、軽くいなす。人魚姫は戦えないし、弱いので守りながらになったけど。


 人魚姫にもHPという概念がある。これ人魚姫のHPを0にしたら死ぬよね? 気を付けないと。


 魔女は怪しげな洞穴に住んでいた。陰鬱な雰囲気が漂っている。


「ごめんくださーい」


 ルージュちゃんが一番乗りで入る。私達も人魚姫を守るように間に挟んで続く。


 中に入ると、怪しげな占いの館のような室内の中に魔女のおばさんがいた。


「なんだい? 君たちは」


「お願いがあってきたの! この子を人間にして欲しくって。あなたは偉大な魔女だって聞いたから」


 ルージュちゃんが取り引きを円滑に進めるためか、魔女を煽てる。さすがトレーダー。


「よく分かっているね、私が偉大な魔女だと。飴ちゃんいるかい?」


 ええ、飴ちゃん貰えるんですか。魔女の意外なセリフと可愛いキャラに私は困惑した。


「飴ちゃん大好き!」


 ルージュちゃんは無邪気にそういう。


「私も飴ちゃん好き」


 ルージュちゃんに便乗してみる。魔女の飴ちゃん、興味ある。怪しいものが入ってそうだけど。


「おばちゃんの飴ちゃん美味しいよ」


 そう言いながら魔女のおばさんは、私達に飴玉をくれた。人魚姫の魔女ってこんなキャラだっけ? キャラ崩壊やばくない?



 魔女のおばさんは私達に飴玉を渡すと、満足気な表情を浮かべて、要件は済んだとばかりに違うことをし始めた。え、こっからが本題なんだけど。


 しかし、それに突っ込むものはいなかった。


「あの、私達お願いが……」


 誰も口を開かないので、私がおずおずと口を開く。


「飴ちゃんを貰いにきたんじゃないのかい?」


「飴ちゃんも欲しいんだけど、お願いがあって。この子を人間にして欲しいの。そんな芸当が出来るのはあなたくらいだと思って」


 この魔女はおだてに乗りやすそうなので、ルージュちゃんを見習って、さり気なく褒めていく。



「その娘を人間に……ねぇ。不可能じゃないが、代償がある。声と引き換えだ。その娘は美しい声をしているからね」


「あの、声を引き換えにしなくていい方法はないの?」


 ルージュちゃんがダメ元といった様子で尋ねる。


「あるよ」


 魔女のおばさんはあっさりと答えた。あるんかい。私達はがっくしとなる。


「深海の奥にある、闇海の洞窟の最深部にある闇海の宝石があれば、可能だね」



 闇海の洞窟? マップを見ると、この魔女の住処と人魚姫のお城の中間地点くらいを下ったところにある。



 闇海の宝石で代用可能から取ってきたらいいよね。洞窟ってくらいだから、レベリングにもなりそうだし。レアアイテムとかもゲットするかも。


「断る理由もないし、行くよね?」


 一応確認というふうに尋ねるルージュちゃんに私達は全員頷く。


「拙者たちが洞窟にいって取ってきます」


「そうかい」


 魔女のおばさんはそれっきり黙って、なにやら物を漁り始めたので、私達はここらで立ち去る。


 私達が洞窟に行くのは問題ないけど、問題は人魚姫だ。洞窟に連れていくの? かといって、お城に送って、宝石を取って、またお城に人魚姫を迎えに行くのはとても面倒臭い。


「拙者たちと洞窟にいきますか?」


「闇海の洞窟1度行ってみたかったの。すごく危険なところだって言われてるけど……。あなた達は強いみたいだし、一緒なら大丈夫かなって」


 人魚姫ちゃんは思ったよりアグレッシブだった。そんなわけで、私達4人プラス人魚姫で、闇海の洞窟に挑むことになった。


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