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第10話 鍛冶屋巡り

 まずは1件目、冒険者がよく利用するというNPCショップの鍛冶屋にやってきた。その鍛冶屋は冒険者ギルドの近くにあり、冒険者と思われるお客さんが何人か来ていた。


 店番をしながら作業するドワーフの職人さんに声を掛ける。その職人さんは背が低くて、ガタイが良く、髭を生やしたいかにもドワーフって感じ。ドワーフは鍛冶の腕がいいっていうし、これは期待出来そうだ。


「あのーー、すいません。このアイテムを武器に変えて欲しいんですけど……」


 ドワーフさんに、事情を説明する。ドワーフさんは真剣な顔で聞いてくれた。しかし、少し考えるような仕草をした後、ゆっくりと首を横に振った。


「悪いが、わしには無理じゃ」


「え? どうしてでしょうか」


「アイテムを武器に変えるアイテムがあったとしても、わしにはそれをする技術がない」


「そうですか……」


 鍛冶職人なら誰でも出来ると思っていたけど、どうやらそうじゃないらしい。


「役に立てなくてすまない」


「いえ、お話を聞いていただいてありがとうございました」


 ぺこりとお辞儀をすると、その店を出た。


 とりあえず武器屋系の店を虱潰しに回るしかない。けっこう広い街だし、1人くらいアイテムを武器に変えれる職人さんがいるはず! というよりいてもらわないと困る。


 2軒目はプレイヤーがやってる鍛冶屋。ドワーフの男性に声を掛けたが、やり方がよくわからないと断られてしまった。


  3軒目はNPCのやってる鍛冶屋。職人さんは人間の女性。その女性にはこだわりがあるらしく、自分の作りたいものしか作らないと言われてしまった。おそらくだけどアイテムを武器に変えるスキルも持っていないと思う。



 うーーん、冒険者ギルドの付近の鍛冶屋は1通り回ったつもりなんだけどなーー。アイテムを武器にするための道具は揃ってるのに職人がいないなんて、はあ。心の中で溜め息を吐く。


 とりあえず腹ごしらえだ。昼からまた探そう。情報収集のため、ギルドの近くの酒場に入った。酒場っていっても昼間なので、そんなに飲んでる人はいない。昼ごはんを食べに来た冒険者がほとんどだ。


 酒場なんて初めて入ったよ。私未成年だし。お酒飲めないからね。


 カウンター席に座って、水とハンバーグとサラダのセットを頼む。注文すると、すぐに出て来たので、無言で食べる。


 回りの会話に耳を傾ける。私みたいに1人で来ている人はカウンターで、黙々と食べているが、グループで来てる人達はべちゃくちゃと雑談に盛り上がってる。


 気になる話をしていたので、耳を傾ける。



「その武器中々いいじゃん。高い金払って買ったかいがあったな」


「だろ? あそこの鍛冶屋他にもいい武器あったぞ」


「ああ、あの屋台通りの鍛冶屋か」



 屋台がいっぱい並んでるところだよね、屋台通りって。あんなところに鍛冶屋なんてないと思ってたけど。1回行ってみよう。


 次の行き先を決めた私は急いでハンバーグを食べ終え、お会計をして店を出る。


 屋台通りは初めていく場所だ。冒険者ギルドとも店がいっぱい並んでる通りからも離れているので、行く機会がなかった。


 街に立っている地図で場所を確認し、屋台通りに向かう。そんなに複雑な道じゃなかったので、迷わず辿り着けた。


 屋台通りを歩いていく。食べ物系の屋台が多いが、1つだけ異彩を放っている屋台を見つけた。武器っぽいの置いてるし、あれが噂の鍛冶屋かな?


「すいません、このアイテムを武器にして欲しいんですけど」


 私は事情を説明した。ドワーフの青年は何か考えながら私の話を聞いた後、静かに言った。


「僕には無理っすね」


「そうですか……」


 ここも外れかあ。藁人形が武器になる道のりは遠そうだよ……。


「僕には無理っすけど。出来そうな人は知ってるっす。今もこの街にいるはずっすよ」


「え、誰ですか?」


「ルドーさんっす。その人は今商人通りの隅っこで、ガラクタを売ってるっす。その店の名前はビルーズだったっす」


「ビルーズですか? ありがとうございます!」


 ガラクタを売っているという言葉が少し引っかかりはしたけど、技術が確かなら是非お願いしたい。


 私はお礼を言った後、情報量として、部屋に飾るくらいしか使い道のなさそうな木彫りの杖の置物を買っていった。安かったし、売れ残ってるぽかったから……。


「まいどありっす」


 私はさっそくビルーズへ向かった。商人通りは何回か行っているので、場所は分かる。ビルーズは本当に商人通りの隅っこの目立たないところにあった。前ここを通った時もガラクタ屋だと思ってスルーしてしまった。


 店は年忌が入っているようで、ドアの色も少し剥がれていた。ドアを開けると、ギィっていう音がした。


 恐る恐る店内に入る。店内は色んなものが散らばっていた。売り物なのか何なのか分からないもので溢れている。あの青年のガラクタを売っているという言葉は的を得ていた。まあ腕がちゃんとしているならそんなことはどうでもいい。


 店番をしながら、作業をしているルドーさんに声を掛ける。


「あのーー、すいません。あなたの職人技がすごいと聞いてきました。この藁人形を杖にして欲しいんですけど……」


 事情を説明して、藁人形と魔杖化石を見せる。ルドーさんは暫しの沈黙の後、あっさりと言った。


「分かった。わしに任せとけ。少し時間がかかる。明後日取りに来い」


「ありがとうございます」


 気難しくて、お前みたいなひよっこが杖だと? とか言ってきたらどうしようかと思ったけど、あっさり了承を貰えた。


「アイテムを武器に変えるなんて久しぶりじゃ。腕がなるわい」


 ルドーさんは軽快に笑いながら、腕を鳴らす。楽しそうだ。ルドーさんは乗り気らしい。乗り気なのはこっちとしては願ったり叶ったりだ。いい感じに仕上げてほしい。頑張って下さい、と心の中でエールを送る。


 料金は大金貨2枚くらいの予定だが、やってみないと分からないとのこと。大金貨2枚なら、20万マルくらいだ。それなら私でも払える金額だ。今の私の所持金は34万ちょいだ。


 笑顔で、お辞儀をして、店を後にした。


 藁人形を杖に変える職人さんを見つけた私はルンルン気分で歩いていた。今は15時頃、今から森に行くには遅いし、ルージュちゃんの家に帰るには早いかな、という時間帯。少し冒険者ギルドに立ち寄ることにした。


 冒険者ギルドは夕方前だからか、依頼を終えた冒険者が集まっており、買い取りカウンターは混んでいた。それとは逆に、依頼板やお尋ね者板、討伐板のコーナーは空いていたので覗いて見る。


 依頼板は私のランクで受けられるのは薬草採集や配達、清掃といった雑用が多かった。お尋ね者は捕まえたり、殺したりしたら報酬が貰える感じなので、ランクは関係ない。討伐板も同じく。推奨ランクはあるけどね。


 お尋ね者板のところには見覚えのある顔がいた。騎士団長殺しのアラト。この人は初日にギルド職員を殺しまくったプレイヤーだ。あの後、騎士団長をも手にかけたらしい。すごい金額がついてる。


 もう1人すごい金額がついているプレイヤーがいた。それはバルムングの破壊者リズム。始まりの街の西の街であるバルムングを壊滅状態に追い込んだらしい。


 とはいえこの2人に手を出すプレイヤーは少ないだろう。返り討ちにあう可能性が高いし、自分がPKプレイヤーになっちゃうからね……。PKプレイヤーじゃないプレイヤーに自分から攻撃を仕掛けて殺すと、自分がPKプレイヤーになってしまう。例え相手が犯罪者でも。この2人はNPCは殺しまくってるけど、プレイヤーには手を出してないみたいだし。捕縛ってなるともっと難易度が高いしね。


  1通りギルドで情報収集をすると、18時を過ぎていた。そろそろ夕飯の時間なので、店に帰ることにする。


 ルージュちゃんが美味しい食堂を紹介してくれるって言ってたし。楽しみかも。


 そんなことを考えて歩いていると、あっという間に店に着いた。私はまだ店が開いていたので、裏口から入って、2階に向かう。2階のリビングではルージュちゃんが物の整理をしていた。


「ただいまーー」


「おかえり! 夕飯もうちょい待ってね。整理もう終わるから」


「手伝おっか?」


「ううん、大丈夫。今買い取ったものをまとめてるだけだから。アナちゃんも要らないアイテムとか装飾品があったら言って。買い取るから」


 売るだけじゃなくて、買い取りもやってるんだね。要らない装飾品やアイテムかあ……。あ、誘いのスライムの隠れ家でゲットした白剣の髪飾りがあった。あれはいつか売ろうと思ってたんだよね。物理攻撃を主体に戦う人向けの装飾品だから、私は要らないし。


「じゃあお願いしよっかな。要らない髪飾りがあるんだよね。HRのやつ」


「え? なになに。見せて!」


「これなんだけど……」


 私はアイテムボックスから取り出して髪飾りを見せた。ルージュちゃんがまじまじと観察する。


「これ店に出したら絶対売れるよ!」


 しばらく髪飾りを眺めた後、ルージュちゃんは興奮したのか顔を近付けてきて、熱弁する。


「HR髪飾りの買い取り金額は普通20万マルくらいだけど、これはかなり性能がいいから、25万マルでどう?」


「お金はいいから、ソウルン貰うことって出来る?」


「ソウルンなら、原価10万マルだから、ソウルン2つと5万マルとか?」


 ソウルンは原価10万マルだったんだね。私は前ソウルンが12万マルで売られているのを見た。その時は高いなあと思ったけど、原価10万マルなら妥当な金額か。


「なら、ソウルン2つとこの髪飾りを交換で! 5万マルは泊めて貰うし、安いかもだけど宿泊費の1部ってことで」


「いいよ!」


 私はソウルン2つと髪飾りを交換した。使い道のない髪飾りで、ソウルンが2つ入って嬉しい。ルージュちゃんも嬉しそうだし、WINWINだね。


 ソウルンは青い羽みたいなものだ。試しに触ってみるとふさふさしていた。さっそくソウルンを使おうと思い、ドゥームソウルの画面を開く。見ると、宝石の近くに、残り時間3日4時間38分24秒と書かれていた。私はソウルンで宝石を磨くと、磨いた宝石の残り時間は消えた。残りの6つとも宝石を磨く。


 これで、ひとまずは安心だ。また来週になったら、磨かないといけないんだけど。今週は殺されない限り、宝石が壊れて、ゲームオーバーになる心配はない。




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