第1話 doom onlineの世界に連れていかれるようです。
「doom online」ーー異世界に行けるスマホアプリと銘打って、スマホゲームのmmorpg界では話題になっていた。
公式サイトを覗いてみると、中世ヨーロッパ風の街並みに、戦闘職や生産職合わせて30種類以上の豊富な職業。キャラメイクの自由さなどが記載されており、事前予約数は早くも30万人を突破していた。
そして、今日から始まるクローズβテスト。3万人しか選ばれない、倍率約10倍のテストに私は当選したのだ。選ばれた時は狂気した。奇声を上げたせいで、妹からは煩いと言われるくらいに。
それくらい面白いゲームに見えたんだもん。
学校から帰ると、すぐに「doom online」略して、ドュムインをさっそくインストールした。明日からはゴールデンウィーク! これから5日間クローズβテストをやり放題って訳だ。
インストールを完了し、ドュムインを起動する。すると体がふわって宙に浮くようなそんな感覚がした。
あれ? さっきまで自分の部屋にいたはずなのに、いつの間にかよく分からない白い空間にいた。辺り一面真っ白で、何も無い空間に。一瞬のことで、何が起こったのか分からなかったけど。
「ようこそ! doom onlineへ」
回りをキョロキョロと見渡す私に、そう語りかけてきたのは、白髭を生やしたおじいちゃん。こちらに語りかけるおじいちゃんはパッと見は人間のようだ。けれど声は機械のように無機質で、目は冷たい。人じゃないような気がして、少しぞっとした。
「初めまして。わしのことは神みたいなものだと思ってくれ。君にはこれから、doom onlineのβテストプレイヤーとして、このゲームの世界に行ってもらう。このゲームをクリアするまで、君はゲームの世界から出られない。ただし、誰かがゲームをクリアしたら、生き残っているプレイヤーは全員元の世界に帰れ、クリア者は1000億円獲得できる。これがノーマルENDだ。ちなみにクリア難易度は上がるが、プレイヤー全員が元の世界に帰れるENDや願いが何でも叶うEND、本当に異世界にいけるENDも存在する。初めはβテストに選ばれた3万人だけだが、プレイヤーの数はどんどん増やしていくつもりだ」
なんか小説とかでありそうなクリアするまで、ログアウト出来ない系のゲームにリアルで巻き込まれたらしい。非現実すぎて語彙力を失って、言葉が何も出てこない。いや、突然デスゲームに巻き込まれて消失しない語彙力存在する? 人って本当にびっくりした時って何も言葉が出ないっていうよね。
そんなことを考えながら現実逃避している私に向けて、おじいちゃんは説明を続けた。
「クリア条件についてはのちのち発表しよう。それとゲーム内で死ぬことはおすすめしない。ゲーム内で死んでゲームオーバーになると元の世界に帰れない可能性があるからな。では武運を祈る。このままチュートリアルクエストを進めてくれ」
おじいちゃんは一方的に話を終えると、白い光に包まれていなくなった。私はその光景を呆然と見ていることしかできなかった。
普通ならデスゲームに突然巻き込まれたら、怖いとか家に帰りたいとか思うのかもしれない。私も実際に怖い。でもそれ以上に何だかわくわくする。こんな非現実的な体験、一生に一度出来るかどうか分からないじゃない。だったら楽しんたもん勝ちだよね?
命を大切にしながら、程々に楽しむがとりあえずの私の目標だ。
そう割り切った私はチュートリアルに従って、色々と設定を始める。自分の持っているスマホを使って、設定とか色々出来るらしい。
チュートリアルに従って、ホーム画面から、ドュームソウルという画面に飛んだ。
そこには宝石箱の中に7つの宝石が埋められており、その宝石はキラキラと輝いていた。
なにこれって思っているとチュートリアルメッセージが来た。
ーードュームソウルのヘルプを見てみましょう。ヘルプを見るにはマルというこの世界のお金が必要なのですが、このページの閲覧料だけはお支払いしておきましょう。ヘルプはあなたの冒険を役立ててくれるでしょう。有効に使って下さいね。ちなみにですがヘルプはお金を1度払うと何度でも読むことが出来ます。
※ドュームソウル
7つの宝石が埋められた宝石箱。その中の宝石はプレイヤーの魂です。7つの宝石が全て壊れるとプレイヤーはゲームオーバーになります。プレイヤーに殺されると宝石が7つ割れ、それ以外の理由でプレイヤーが死亡すると、5つの宝石が壊れ、1週間に1度宝石を磨かなければ、磨かなかった宝石が壊れます。宝石を磨くためにはトレーダー(商人)であるプレイヤーだけが購入できるソウルンが必要です。ソウルン1つにつき、7つの宝石を磨くことが出来ます。壊れた宝石を戻す方法はありません。
このゲームプレイヤーに殺される以外の死に方なら最悪1回までなら死ねるってことか。でもゲームオーバーになったら元の世界に帰れないとか言ってたし、なるべくなら死なない方がいい。2回死んだらゲームオーバーな訳だし。
壊れた宝石を戻す方法はないみたいだしね。今後戻せるようになるとかはあるかもしれないが、それも希望的観測にすぎない。
初めに決めなければならないのは名前だった。私は迷った末、本名の栗栖杏奈からとって、アナスタシアと名付けた。ヨーロッパ風のゲームだったから、カタカナのほうがゲームに合うかなって思って。
するとステータスが表示される。そして、マルという単位のお金を払うと、ステータスに関する説明がヘルプに追加され、自分の初期ステータスが他人と比べてどのくらいのレベルなのかが分かるけど、どうする? という画面が出てきた。
どっちも知りたいので、迷わず1000マル支払った。初期の所持金は10万マルだったので、まだまだ所持金に余裕はあるし。こういうゲームに置いては情報って大切だしね!
アナスタシア(初期ステータス)Lv1
HP 462
MP 1020
物理攻撃力 358
物理防御力 453
魔法攻撃力 1003
魔法防御力 481
魅力 1023
器用 532
運 980
ステータスポイント 1000
カルマ値 0
※この初期ステータスは現実でのあなたのステータスが反映されています。運動が得意な人はHPや物理攻撃力ステータスが高く、勉強が得意な人はMPや魔法攻撃力が高くなっています。容姿が優れている人は魅力が高く、器用な人は器用が高く、運がいい人は運が高くなっています。防御力は、防御力以外のステータスが高い人は低く、防御力以外のステータスが低い人は高くなっています。カルマ値は初期値が0となっており、善行をすれば上がり、悪行をすれば下がります。カルマ値が低いと入れない街もあるので気を付けてください。
※ステータスは600くらいが平均値となっております。ステータスポイントは自由に自分のステータスに割り振ってください。割り振りはいつでも可能で、1度割り振ると振り直しに特殊アイテムが必要なので気をつけてください。ただしステータスポイントは器用と魅力と運には割り振れません。
このステータス当たってるのが怖い。勉強は割と得意だけど、運動は苦手だ。まあ人をゲームの世界に転送させるとかいうこの世界にはまだない技術使ってるくらいだし、プレイヤーの情報くらい持ってても変じゃないか、と納得して進めることにする。
防御力は全てのステータスが低い人の救済処置って感じなのかな。
ーーHPや攻撃力や防御力等はステータスポイントを割り振れば上がりますが、スピードや動きなどはリアルの動きが反映されます。もちろん練習して鍛えたりすることは可能です。頑張りましょう。
そんなアナウンスが流れた。運動が苦手な私にはきついよ。PSも大事ってことね。まあ向こうで鍛えられるのがせめてもの救いなのかな。
ステータスを確認したので、次へを押す。ステータスポイントの割り振りは後でいいや。ステータスに関するヘルプは全部は読んでいないが、とりあえずチュートリアルを進めて、分からないことがあったら読もう。さくさくいこう。ちなみにだけど、自分のステータス画面はいつでも見られるらしい。
ーーギフトを受け取りました。
ギフト? って何だって思ったら、ヘルプの画面にいった。だがギフトの説明を読むのに1000マルいるらしい。なんなのこの意地悪なゲーム! どこまでがめついの!
いらってしたけど、ギフトがなんなのか気になるので、今度も1000マル払った。1回読んだら何度でも読めるようになるみたいだし。
※ギフトとは神様からの贈り物で、自身の能力を高めるものや超人的な力を使えるギフトなど多様なギフトがあります。ギフトには1つしか存在しないユニークギフトとそうではないギフトがあります。ギフトはアイテムボックス+、1人につき1つから5つ貰えます。貰える数も組み合わせも人によって異なるので、どんなギフトが貰えるかやいくつ貰えるかは運次第です。このギフトをあなたの冒険に役立ててください!
ギフトの説明を読んだ私は自分のギフトが気になるので、即座に自分のギフトをステータス画面から確認する。私のギフトは3つだった。あ、アイテムボックスを含めたら4つか。
女神の祝福
経験値取得量、HP、MP、物理防御力、魔法防御力、運のステータスが2倍。
鑑定眼
アイテムや魔物、自分のレベルより低いNPCやプレイヤーを鑑定できる。
MP消費20%カット
消費するMPを20%カットする。
アイテムボックス
アイテムをしまえる。
自分のギフトがいいのか悪いのかはわかんないけど、女神の祝福と鑑定眼は結構使えそう。MPが元々高いから、2倍になるのはかなり美味しいし。