リサイクル
---ローザンヌの港---
ローザンヌの港にガタイのいい男が降りる。
男が搭乗ゲートを抜けると、男のクリアファイルとローザンヌ市のプールがリンクした。
ニコニコした係員が、紙製のストロー付き、ウェルカムドリンクを男に手渡す。
係員「プロテイン10%です(ニコニコ)。」
うむ。と言いながら、男はゴクゴクとウェルカムドリンクを飲み干す。
サンライズの様な南国トロピカル風味のドリンクだ。まんざらでもない。
ガタイのいい男「バカンス・・・か。」
旅のパンフレットをクリアファイルで確認する。
今夜の宿泊先は、「非常階段の側のサトシの部屋、タワマン3階」
---ローザンヌの港おわり---
サトシとサンタのプリズンブレイクごっこが終わり、与太話が始まっていた。
サンタ「それで、民泊始めたの?」
サトシ「外国人渡航者の安心安全を守る、模範市民としての務めだ。」
サンタ「この部屋、卓球台以外は何もない、よく泊まりに来るね。」
サトシ「スコッチとハーブ中毒のサンタ付きっていうのが条件だ。」
サンタは首をかしげた。
ピンポーン。部屋の呼び鈴が鳴る。サトシのクリアファイルにスーツを着た男が映し出された。
サトシ「噂をすればだ。」
サトシがドアを開けると、男のベルトが目に入る。サトシは首を上に向けた。
サングラスの男が目に入る。髪が整っている。ガタイが、いい。
男「ジャスティンさんの部屋はこちらですか?」
サトシ「はい、そうです。ミスターオナガですか?日本からの。」
オナガ「そうです、どうぞよろしくお願いします。」
オナガはクリアファイルから旅券をサトシの端末にダウンロードした。
オナガ「やはり・・・、か。仕方が無いな・・・。」
次の瞬間、オナガが部屋のハムスターに向かって勝手にしゃべり始める。
オナガ「プール管理コンソールログイン、この部屋の感知システム停止。」
ハムスターがピピピっと音を立てて起動する。
ハムスター「ログインアクセプト・・・感知システム停止しますた。」
部屋中の家電のアクセスランプが点滅を始める。通信を始めたようだ。
ハムスターの目が赤く光る。
ハムスター「データリンク完了。」
オナガが魔法使いの様に唱え続ける。
オナガ「タワマンの管理サーバーに、シークレットモードログイン。」
サトシの部屋「ログインデナイド、シークレットモードでのログインがロギングされました。」
オナガ「なんでやねん。」
サトシが焦る。オナガが何をしているのかがまるでわからない。
サトシ「おい!ミスターオナガ!人の部屋で勝手に何をしている?」
オナガがサトシの敵か味方かはわからない。
オナガ「君は、機密を盗んでしまったようなのだ。部屋ごとリサイクルする。」
サトシ「どういうことだってばよ!!」
オナガがサトシに向き直り言う。
オナガ「君の学生手帳を見てみろ。」
サトシが学生手帳を確認すると、クラス簿からサトシの名前が消されていた。
サトシ「どういうことだってばよ!!」
部屋が振動する、地震とは違う細かい機械的な揺れだ。
4年分の誇りが天井からポロポロと落ちてくる。
サンタが玄関の見える廊下に顔を出す。
オナガとサトシが何かを話している、姿が見える。
足が掬われそうな大きな揺れの後、部屋の振動が収まる。
窓のシャッターとドアが鋼鉄で閉じられた。
部屋の外の男は見えなくなり、サトシが鋼鉄で閉ざされたドアを両手叩いているのが見えた。
サトシはクリアファイルを確認している。
サンタがサトシに声をかける。「どうしたの?」
サトシ「やばいぜ、閉じ込められた。」
サンタ「お客さんは監禁癖のある人だったの?」
サトシ「それ以上だ。外との通信ができなくなってる。」
「No signal」を表示するクリアファイルをサトシは操作している。
サンタ「お泊り会は中止ですか?」
サトシ「それどころじゃない、このままだと俺たちは部屋ごと焼却される!!」
サンタは前向きである。後悔をあまりしない。
サンタ「サトシは毎回、ほんと面倒なことしてるよね。出口探そうか。」
突然の出来事に、二人は出口を探すも、見つけることはできなかった。
通気口や排水溝、人が通れる大きさではない。
何か、たちの悪いイタズラかもしれないと思いながらも、二人はそのまま座り込む。
何時間たっただろうか、サトシはウトウトし、いつの間にか眠っていた。
サトシはサンタの寝返りパンチで目を覚ます。
サンタは何やら寝言を言っている。
サンタ「だめだよー、ハリガネさん、これから捌かれるんだからー・・・。」
寝ている。サンリオをのキャラを抱きながら。
マグカップに残るスコッチが、淡青色に光る、山頂の湖の様な清々しさだ。
サンタはこの状況でもスコッチの残りを飲んでいたようである。
サンタの学生服のスカートから、無防備な細く白い脚がでている。
頬がほんのりと紅に染まっていた。
サトシはなんの感情も覚えない。
サトシはサンタのサンリオキャラを勢いよく、引き抜く。
サトシ「おいサンタ、生きてるか?部屋が動いてる。」
サンタがサトシの手を握り言った。
サンタ「サトシ、信じてるからね、ずっとついていく。」
サトシ「スコッチを飲み続けた言い訳は後で聞く。どうにかして脱出する方法を探さないと。」
リサイクル工場に着いた時、大声で叫んでみるか、それとも壁を突き破る方法を探すか・・・。
サンタはサトシの端末を弄っている。
サトシは部屋を突き破る方法を探す、エアガン、LEDライト、お掃除ロボットにハムスター。
現代はなんて軽く、安全なものばかりなんだ!クリアファイルでさえ、質量的に戦力外だ。
卓球台。サトシは卓球台を半分にバラし、部屋の壁に振り回し激突させる。
バキッ、壁の表面の塗装が剥れ、防火剤の様な層までがボロボロと崩れた。
その先の層は鋼鉄製。グラインダーやドリルでも貫通まで2,3時間はかかる。