ブレイクの始まり
サトシの部屋は2DK程の広さだ。
卓球台がダイニングをはみ出し、2部屋を占拠している。
壁にはサンリオのキャラクターが飾られている。
卓球部員が何かやらかすたびに、サンリオキャラグッツが増えていく。
「キティー買い。」
サトシがよく言う言葉である。サンタにはその意味がわからない。
スコッチの栓を開けながらサンタは言う。
サンタ「そう言えば、タケシの姿が見えないね。どうしたの?」
サトシ「入院した。」
サンタ「入院?!どういうこと?怪我?病気?」
サトシ「ああ、頭の病気でな。」
サンタ「頭?どういうこと?頭を怪我したの?」
サトシ「そんなところだ。」
件の駅舎での話は、ローザンヌ市の間ですぐに広まるだろう。
インスタ映え!と叫びながら、パンを咥えた女子高生が写真を撮りまくっていたのをサトシは思い出した。
今のところ、サトシにはお咎めが無い。
監視カメラ等の記録には、サトシが非常ボタンを押す姿と、電車を止めろと叫ぶ姿しか残っていないのだろうか。
サトシ「そんなことより、妙に嬉しそうじゃないか。サンタ?」
サンタ「それがね、今日、4人目の部員候補を見つけたんだよ。」
サトシ「本当に?卓球部に入部してくれたらダブルスができるな、今日のお泊り会には来ないのか?」
スコッチをマグカップに注ぎながらサンタが答える。
サンタ「今日はね、来ないね。今、私の家の庭で倒れてる。」
サトシが一瞬動揺する。
サトシ「大丈夫なの?それ。」
サンタ「大丈夫、それに、候補の子を起こしてたら、ローザンヌ市は今頃、爆音で眠れない夜になってる。」
サンタがマグカップに注いだスコッチを飲み干す、サトシが重ねて動揺する。
サンタが言う。
サンタ「今夜のお泊り会って、もしかして私と、サトシの2人?」
サトシ「そうだが、どうした?」
サンタ「星を観に行こう」
サトシ「たまにはいいこと言うんだね、でもパクリはよそう。」
サンタがサトシを覗き込むような視線で言う。
サンタ「パクリになるから、言い出しにくい空気です。」
サトシはおもむろに立ち上がり、シャツのボタンを外し始める。
サトシ「目の前にはスコッチをマグカップで飲み干すサンタが居るが、今日はハーブをやっていないから特別に見せてやろう。」
サトシは照明を落とした。
サンタは慌てる、そんな気はなかったのに、どういうこと、今日のサトシは積極的!!
サトシはクリアファイルをバサッと振り起動する、青白い光がスコッチの瓶とサトシの肉体照らす。
サンタは思う、サトシって思ったより筋肉がある。
今まで二人っきりの時は何もしてこなかったのに今夜はなぜ!!部員候補が嬉しかったの?!
必要があれば訂正しなくては!!
サトシは、クリアファイルを自分の背中に重ねる。
サトシ「見ろ、何かの模様に見えてこないか?」
サトシがサトシの背中にかざした、クリアファイルが青白く光る。
部屋のサンリオグッツを淡く照らす。
マイセンの陶器のような、繊細さを備えた白色の幾何学模様が幾重にも重なり映し出される。
サンタが目を凝らしながら、サトシの背中に近づく。サンタの頬の上に黒い影ができる。
サンタ「マイ・・・・ケル、スコフィールド」
サトシ「ここに全てが刻まれている。」