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再会⑧

 一方、東側では迷路の中、フィリカが『サーチ』を使い、側にいる——壁向こうの敵を探していた。そして敵を見つけるとそこの土壁をなくし、スライが奇襲を仕掛ける。そうすることで、ほぼ確実に、安全に敵を仕留めることが出来ていた。

 そんな、兵士の頃とは全く違う戦い方に、スライは少し退屈を覚えていた。


「なんていうか、作業だねぇ。あんま戦ってる感じしないよ」

「まぁ、いいじゃないですか。負傷しないのが一番ですよ」

「そりゃあね。――ちなみにさ、あとどれくらい居るの?」

「えっと······五······いや、六ですね」

「もう残り少ないのね。じゃ、チャチャっと片付けちゃおっか」

「そうですね。――いえ! ちょっと待って下さい!」


 迷路の中、急に声を上げたフィリカは立ち止まり、虚空を見つめる。しばらくして、彼女は真摯な顔をスライのほうへ向ける。


「······ドラゴンが降りてきてます。急いで戻りましょう」


 フィリカは、ミーナから『コンタクト』を受け取っていた。その情報は彼女からのものだ。


 フィリカが手を伸ばすと、橋の方面へ向け、一本の道が出来上がる。二人はその道を走り抜けていく。


 迷路を出たフィリカは、橋に通じる道を全て塞いだ。ドラゴンと戦ってる最中に邪魔が入っては困るからだ。

 そして再び、橋の方へ向かって走る。


 ジャック達は既に、橋の前で待機をしていた。そこへ、軽く息を切らしながらも、二人は合流する。


「はぁ······間に合いましたね。ドラゴンの様子は?」

「まだ、降りてきてる途中よ」


 ミーナの見ている方向——先程よりも大きく見える、空に浮かぶ黒い点を二人も見上げた。


  ドラゴンは両翼を大きく上下に羽ばたかせ、真下へゆっくりと下降をしていた。そのまま行けばちょうど、黒い実の元へ降りることが予想される。


 そんな敵を待つ間、ミーナは反対側での状況を尋ねる。


「それで、そっちの敵は片付いたかしら?」

「ちょっと残ってますが、襲ってくることはないと思います」


 残された狼の魔物は、出口のない迷路で彷徨い続けていた。


「そう。ならいいわ」

「そちら側は······何もないですね······」


 フィリカの見ていた方向——遠くに森の見える荒野は、所々黒いだけで何も無かった。


「俺がやったんだぜ?」


 と、得意気な顔をするジャック。

 西側の敵は、あのまま彼が片付けきっていた。


「調子に乗らないで。ほとんど私ありきの行動じゃない」


 すっかり自分の手柄をアピールする彼に、ミーナは口を尖らせる。


「まぁいいじゃん。魔力も抑えれたろ?」

「あなたがもう少し背後に意識を分散させてくれたら、私は魔力をもっと貯めておけたわ。——はぁ······余計なサポートさえなければねぇ」


 両手を空に向け、溜息をつくミーナは首を左右に振る。


「なんだよ。魔力セーブしたいって言っといてそれか? 少しは感謝しろよ」

「なによ。感謝して欲しいの? はいはいありがとう。ちょっとは魔力抑えれました。助かりました、そこにいる無神経な誰かさんのお陰でー。――はい、これでいいかしら?」

「くそっ、余計ムカつくな。しかもなんでいつも一言多いんだよ」

「これでも少ないくらいよ。本当ならもっと言っていいくらいだわ」

「なにぃー?」


 ふんっ、と言ってツンとした顔を逸らすミーナ。

 それを睨み続けるジャック。


「はいはい、そこまで。もうすぐ敵も降りてくるんだから」


 両手をパンパンと叩いて、二人の間に入ったのはスライだった。


「ったく、ドラゴンを前に喧嘩をするなんて、ずいぶん余裕だね、君たち。——それともなに、ドラゴンを前に喧嘩をするのは君たちの嗜みなの?」


 槍を肩に掛けたスライは、皮肉のようにジャック達に言う。彼はとりあえず自分へ矛先を向けさせ、その後、目の前の敵に集中するよう仕向けるつもりだった。


 だがジャックは、ふっ、と肩で小さく、静かに笑った。

 予想と違う反応を見せたため、スライは面食らう。スライは、おかしくなったか? と首をかしげ、怪訝な表情を作る。


 しかし、そんな声を漏らしたのはジャックだけではなかった。ミーナも続けて同じように、ふふっ、と笑う。


 俯き気味に口に手を当て、不気味に声を出すそんな彼女に、側にいたフィリカが顔を引きつらせる。


「······そういえば、最初もそうだったわね」


 ミーナは顔を上げ、清々しい口調でそう言った。同じことを思い出していたジャックが続いて口を開く。


「······あぁ、そうだな。また同じこと繰り返してるよ」


 彼も晴れやかな顔をしていた。


「ホント。相変わらずバカね」

「それはお前もだろ?」


 二人は目を合わせ、一度頷く。そこにはもう、さっきまでの空気とは違い、凛としたものが漂っていた。


 スライとフィリカは何のことか理解できず、唖然とした表情のまま固まっていた。


「どういうことでしょう······」

「さぁ······」


 だが、さっきより確実に良くなっていた雰囲気に、フィリカ達も顔を緩ませていた。






 いよいよドラゴンは、数メートルの高さにまで来ていた。ミーナは、外に向けて組んだ手を伸ばし、身体をほぐす。


「さて、今度こそケリをつけなきゃね」

「あぁ。もう街に来ないようにな」


 ジャックも片腕ずつ、腕の筋を伸ばしていた。フィリカとスライも同じように準備を整える。


 そして、ドラゴンが地上へ降り立つと同時に、ミーナは号令をかけた。


「それじゃあ······いくわよ!」


 ジャック達が同時に返事をすると、四人はドラゴンに向け、一斉に駆け出した。

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