再会③
城に戻ったジャック達は地上の訓練場——研究科の部屋から見える場所で、剣の稽古に励んでいた。とはいえ、今は休憩をしているのだが。
「なぁ、剣が強いってどういう事だと思う?」
「なんだまた唐突に」
フィリカを研究部屋に置いてきた二人は、地面に胡座をかいて話していた。
「いや、最近魔法の練習ばっかりだったけどさ、その時に、もし魔力無くなったら頼れるの自分の腕だけになっちゃうよなー、って思って」
「なるほどねぇ」
スライは水を飲みながら考える。
「どう思う?」
「うーん······動きに無駄がないとか、攻撃の最適解を一瞬で見出せることじゃないかね」
「最適解?」
「相手のちょっとした隙やクセ、弱点を見逃さない、ってとこか」
「なるほどなぁ。······ドラゴンにも弱点なんてあるのかな?」
「どうだか。大体は、脳と心臓くらいだろ」
鼻で笑うスライは立ち上がり、立て掛けてあった木の剣を手に取る。
続いてジャックも立ち上がる。だがその時、三階の窓から顔を覗かせたフィリカによって呼び止められる。
「ミーナさん帰ってきましたよー。話するそうですー」
どこか眠たそうなその声を聞いた二人は剣を下げ、目を合わせる。
「残念だったな。もう少しで俺に勝ち越せたのに」
「このまま続けてもいいんだぜ?」
そう言いながらも二人は剣を片付け、彼女らの元へと戻った。
四人は、街全体の地図が書かれている紙を机に広げ、挟むように座っていた。
ミーナが一人。向かいに三人である。
「結論から言うと、私たちがドラゴンを担当することになったわ」
ジャック達はそれほど驚かず、真剣な顔を崩さなかった。それは皆、彼女なら一度言い出したらやるだろう、と考えていたからだった。
「あまり驚かないのね。まぁいいわ。とりあえず作戦を説明するわ」
司令部で決まった作戦はこうだった。
まず、ドラゴンが現れるまで、四人は北地区——橋付近に常に待機。そして、ドラゴンが空に姿を現したら、黒い実を潰しておびき寄せる。
しかしこの間、別のモンスターが来る可能性も否めないので、それらは魔法、または武器を使って殲滅。
「基本的に雑魚は私が前でやるけど、取り逃がした場合はあなた達にお願いするわ。橋だけは渡らせないでちょうだい」
「お前ひとり前線で大丈夫か?」
「いえ。だからあなたは側で、私を守るのよ」
少し身を引いたジャックはミーナと目を合わせると、すぐに体を戻し「了解」と頷く。
「後方のことは基本的に任せるわ。けど、スライは後で役目があるから、ドラゴンが降りてくるのが見えたら魔法は禁止よ」
「ん······? とりあえず分かった」
「フィリカも、魔力だけは使い切らないこと」
「わかりました」
二人は頷いて返事をする。
「ちなみに、黒い実が風に乗った場合の話だけど、北以外——三つの橋には軍を配備してくれる事になったわ。だから他の地区のことは気にしなくて大丈夫よ。彼らを信じましょう」
三人に、目で一度確認を取るミーナ。
ついてこれていることを確認した彼女は、それからの話を続ける。
「それで、ドラゴンが地上へと降りたらだけど······スライとフィリカ。まずは、あなた達の出番よ」
そうしてミーナは立ち上がると、ドラゴンの絵が描かれた大きな紙を黒板に広げる。彼女はその絵の、翼部分をチョークで丸く示す。
「魔法を使って、奴の翼を破壊して欲しいの。両方が望ましいけど、とりあえずは片方よ。飛膜部分を狙って飛べなくしてちょうだい」
「わかりました」
そこでスライが手を挙げ、質問をする。
「直接、頭を狙って倒すっていう選択肢は?」
「恐らく無理よ。あなたの槍がいくら強力とはいえ、少し砕けるのがやっとじゃないかしら。——まぁ、暴れる敵の目を狙える、っていうのなら可能性はありそうだけど」
「それは、流石の俺も難しいなぁ······」
後頭部で手を組むスライ。
次はジャックが彼女に尋ねる。
「炎は通用しないのか?」
「きっとね。ドラゴンは寒さには弱いけど、熱には強いのよ」
「ふーん······」
ジャックは、ドラゴンの棲家が火山であったことを思い出す。
「とにかく、私とジャックがドラゴンの気を引いてるうちに、飛膜を破壊するのよ。——いい?」
「わかった」
「はい」
スライとフィリカは深く頷いた。