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A Letter to You  作者: 静月 野架
第一章
1/4

プロローグ

 目の前には、ビルの高層部。邪魔するものが何もなく、綺麗に見える。

 それもそうだろう。こんな高くまで育つ植物は、きっと熱帯にしか存在しない。ここにいて目に映る物があるのなら、きっとそれは、鳥類または空。けれど、それらも夜には見えないものだ。


 視線を落とし足元を見ると、はるか下に青々とした木々と、コンクリート。いつもは大きく見える物たちが、まるでミニチュアだ。掌の中に、すっぽりと納まってしまいそうである。


 自分の後ろには、転落防止のフェンスがある。屋上は、八月なのに冷たい風が吹いていて、それに煽られてカシャカシャと音を立てている。


 妃良(ひより)は左腕につけている腕時計を見た。

「『14』23:58」の表示。

 『14』は今日の日にちだ。


 今までの日々を思い返す。

 

 きっと、そういうわけではなかっただろう。そう思う。

 いや、あれだけの人数がいたら、そのうちの数名は、もしかしたら、私の悪口を言っていたかもしれない。

 しかし、私から見たら、そこにいるみんなが私の悪口を言っているように思えた。

 これが、自意識過剰であることは、わかっているのだ。



 十五年前の八月十五日に、鎌部(かまべ)妃良は生まれた。十五年後、自ら命を捨てるとは、その時誰も思っていなかっただろうな。そう思って、彼女はクスリと小さく笑った。


 きっと、あれは、いじめではなかっただろう。

 八割は、私が悪いのだ。


 十五年前の「今日」も十五年後の「今日」も、世界はきっと幸せで満ち溢れる。

 きっと、こんな私はそこにいない方が良い。



 再び腕時計を見る。

「『14』23:59」と「49」。

 あと、妃良の命は十一秒。十、九、八、七、六、五、四、三……。


「みんな、バイバイ」


 0。


 体を傾けた。

 不思議と、怖くはなかった。



主人公が死んで、物語が始まります。笑

よろしくお願いします。

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