入隊
入隊
「よし、全員集まったな?それでは始めよう……坂上裕、前へ!!」
「は、はい!!」
現在は早朝、朝の四時。
いつもなら今から寝…まだ寝ている時間である。
そんな時間に俺は軍隊寮のホールでむさくるしいおっさんたちに自己紹介をしていた。
「さ、坂上裕と申します!皆さん、よろしくお願いします!!」
俺がお辞儀ををすると大きな拍手が返ってくる。
一通り王様に用意された偽のプロフィールを紹介した後、リーダーんお前で整列しているおっさんたちの列に混ざる。
俺は今、勇者であるにもかかわらずステータスが全体的に低すぎたためこの国の軍に強制的に入れられていた。
どうしてこうなってしまったのだろう、俺一応勇者なのに……
そんなことを考えながらこれからどうしようかと思っていると俺の前の列にいる筋骨隆々の大男が少し小声で話しかけてきた。
「よお、お前だな?期待のルーキー!俺の名はヘインズ、よろしくな!!」
そう言って手を差し出してくる。
「は、はい!よろしくお願いします!!」
いきなり期待のルーキーといわれたことと体の大きさに驚きながらも返事をし、こちらも手を出しそのまま握手をした。
俺とヘインズさんがお互いに軽く自己紹介をしていると、ここを仕切っている指揮官が周りを確認し大きな声で指示を出した。
「よし!それではこれから訓練を開始する!全員外に出て整列しておくように!!」
「おう!!」
男たちがそう答え、次々建物から外へ出ていく。
しかし、ヘインズさんだけはその場に残っていた。
俺も目の前のヘインズさんが動こうとしないためなんとなく一緒に残ってしまう。
「あ、あの僕ももう行きます……ね?」
皆が行ってしまったことに焦り、慌てて外に出ようとしたがヘインズさんが道をふさぎ……
「お前、勇者だろ?」
そんなことを聞いてきた。
俺は勇者であることを言い当てられ焦ったが、それを察したのかヘインズさんが大丈夫といった感じで笑いかけてくる。
「そんなビビんなって……この国のお偉いさんから話は聞いてるぜ?この世界に来たばかりで身寄りも友達もいないくて不安だろうから面倒見てやってくれ、ってな?」
「は、はあ……」
「要するに俺はお前の教育係ってことだ…まあそんな暗い顔すんなよ!リーダーも事情は知ってるし無理はさせないはずだ。」
「は、はい」
正直まだまだ不安だが無理はさせないという言葉にいくら安心を覚える。
「おーい、お前ら何やってんだ?もうみんな集まってるぞ?」
「おう!いまいくよ!!」
俺たちを呼びに来た誰かに対し、ヘインズさんが元気よく返事をする。
「じゃあ行くか!裕!!」
「え……?あ、は、はい!!」
こうして俺の軍での最初の一日が始まった。