昔々
俺はこの世界が嫌いだ。
俺は坂上裕、高校二年生。
小さいころから体も小さくていじられやすかった俺は高1の時とうとういじられっ子からいじめられっ子へジョブチェンジしてしまった。
昔から合気道という柔道を習っていたにもかかわらず、力は弱くて運土神経もない、スポーツテストでも女子に普通に負けてしまう。
どうせそんなことそんなこと言ってお前頭は良い方だろ?人間得手不得手ってのがあるんだ、運動が苦手でも何かいいところが絶対にある。
だからさ、あきらめんなって!
俺を励ましてくれる人はたいてい同じようなことを言う。
おそらくこの人は俺の成績を知らないのであろう…大体下から三番目くらいである。
これを言われた奴はたいてい黙ってしまう、もしいいところがあるなら具体例を挙げてほしいものだ……
別に勉強も運動も頑張ればいい話なのだが、ちゃんと塾に通い自習だってしていたし、運動だって柔道もサッカーもやっていたため運動不足というほどではないはずだ。
まぁ、そんなことは言い訳でしかないのだが…
しゃべらないし暗記物の小テストだけはきちんとやっていた(時間はかかるが)ので、補修に呼ばれることが少なかったため頭がいい方だと勘違いを受けてしまったのだろう。
だが実際は何のいいところもないような……そんな人間だった。
ある日のこと
その日は実力テストがあった。
朝のホームルームまでの待ち時間、俺はただボーしていたが周りではほかの男子たちがはしゃいでいた。
そのうちの一人が武道をおしえろといってくる。
俺はもともとおとなしい性格ではない、むしろ血の気は多い方で、技をかけろと言われるときはたいてい相手は抵抗せず、どうやってその技をかけているか見たがる。
そのため技が決まるとその時だけはちょっとだけ優越感を感じていた。
ここまではよかったのが…うちのクラスには一人だけ加減のわからないやつがいる。
そいつが俺にもかけろと言ってきたのだ。
俺は嫌だといったがいいからかけろと言ってきかない。
もう嫌な予感しかしない。
そしてその予感は的中した。
技をかけようとした瞬間そのまま持ち上げ振り回し始めたのだ
「人間空中ブランコ―」
そんな意味不明な言葉を叫ぶゴリ…いじめっ子。
俺は落ちないよう相手の服を掴んでいたのだがそれがいけなかった。
相手の服の袖が破れてしまったのだ。
それにキレたゴリラは俺に襲い掛かった。
「クッソ!」
その日、俺は早退し自転車で家に帰ろうとしていた。
寒空の下体を震わせながら怒りに任せてペダルをこぐ。
内心散々あいつに文句を言いたかったが、おそらく言ったところで変わらない。
それどころか、もっと酷いことになっていた可能性すらある。
俺も人のことを言えた義理ではなかったので何も言わず転んでけがしたので帰りますとだけ言って教室を後にした。(喧嘩はクラスのリーダー的存在が止めてくれた)
本当に自分が何であんなところ通わなければならないのだろう。
そんなことを考えながら帰っているとたくさんの疑問が生まれてくる。
なんで自分はあんなところに通わなきゃいけないんだろう。
なんで自分はこんな風に育ってしまったんだろう。
……何のために自分は生きているのだろう……
そう思ったのとほぼ同時、曲がり角から子供が飛び出してくる。
それをなんとかかわすがその先は道路だ。
クラクションが鳴り、急に体が軽くなるのを感じる。
(あれ……俺、しん……だ……?)
そこで意識が途絶え、目を覚ますと
「……めよ……ざめよ、目覚めよ!勇敢なる勇者よ!!」
こんな異世界チックな声がどこからか聞こえてきた。