2020年(3月)番外編 ーおばあちゃんへの届かない手紙
2020年1月、
新年のご挨拶のため親戚と連絡をとると、
「おばあちゃん」が、昨年12月にベッドから落ちて怪我をした、
との知らせがありました。
怪我自体は軽傷であるものの、
血をサラサラにする薬を飲んでいるので、
出血が止まらず、
そのまま救急車で病院に運ばれたとのこと。
年明けて、退院できたものの、
病院通いが続いている、とのことでした。
そんな中、認めてこちらに送ってくれたのが、
前回の手紙「由季ちゃんも頑張れ! さようなら」。
1月中旬のことでした。
「由季ちゃん
もうこれが最後の便りになるでしょう」
の書き出しに、胸のざわざわが止まらなくなり、
急遽、日程調整をし、
4月20日に一時帰国を決断したのでした。
ところが、
今回のウィルスのため、
飛行機は欠航。
会えなくなってしまったその気持ちが残っているので、
いつものようにおばあちゃんに手紙を書きました。
手紙を書き終えて、
いとこから頂いた大切なハンコを押し、
封筒に住所も書いて測りにのせて、
いくらだったかな、とネットで値段を調べたら、
98スイスフランとあります。
98フラン???
日本円にして、約11,000円。
手紙一通送るのに、1万円以上かかるとは!
自分の目を疑ったので、
何度も何度も調べましたが、
やはり、98フランなのでありました。
人だけでなく、
郵便物の配送も事実上行なっていないのですね。
飛行機が飛んでいないのですから、当たり前です。
自分の書いた手紙にそれほどの価値があるとはとても想えず、
98フランの切手を貼る勇気はどこからも湧いてきません。
今も尚、書いた手紙は、自分の手元にあります。
おばあちゃんの家にはPCがないので
書いた手紙をここにのせても
おばあちゃんに届かないのは承知しておりますが、
届けられていない気持ちが、
ふわふわ漂っているままのようで、
しっくりと、ストンと、落ちずにおります。
そのふわふわを、ここに認めてみることにします。
二千二十年三月二十九日 おばあちゃんへの"届かない"手紙
おばあちゃん
早いもので二千二十年も三月下旬と
なりました。日本から少し早めの
桜開花の便りが届いたかと思いきや
今週末は季節外れの雪とか。
おばあちゃん おばあちゃん
いかがお過ごしでしょうか。
昨年十二月に大怪我をされたとの
知らせを受けてからというもの
ずっと心の中で
おばあちゃんを、そして一緒に過ごされていらっしゃる
T伯父様M伯母様のことを案じ
想いながら過ごしてまいりました。
一月だったでしょうか、
おばあちゃんに そして
T伯父様M伯母様に
お目にかかりたいと
強く想いまして、実は実際に
一時帰国の飛行機をこの四月に
予約していたのですが、この度の
新型ウィルスの影響により、
一時帰国は叶わぬ夢と消えました。
お目にかかれなくなり、言葉にならない
思いで胸がいっぱいです。
おばあちゃんは 今、
どうしていらっしゃるでしょう。
お怪我はそしてお体の具合は
いかがでしょうか。病院通いの日々は
今も尚続いているのでしょうか。
病院は今、どこもウィルスの患者さんに
心血を注いでいることと想われますので
なほのこと心にかかります。
お薬は手に入りますか。
痛みはありませんか。どうぞどうか
おばあちゃんがお健やかに
過ごされていらっしゃいますように。
そしてT伯父様M伯母様もお元気に
お心おだやかに過ごされていらっしゃいますように
と祈るばかりでございます。
こちらスイスでも感染が益々
拡がっており、目下、ピークには達して
いないようです。学校は三月十六日より
休校、夫も先週から自宅勤務となっており、
皆で自宅にて過ごしております。
不要な外出は禁止、お店も
食料品店、および薬局以外は
閉まっておりますが、我が家は皆
元気に過ごしております。毎日
学校から配布された課題を
午前中に、体操の自宅トレーニングを
四〜五時間ほど、フルートを吹いたり
遊びや息抜きも取り入れながら
計画的に過ごしているので
つまらないということは全くありません。
心も体も元気に過ごしております。
おばあちゃんが そして
T伯父様M伯母様が
毎日健康で元気で心豊かに
そして幸せに過ごしていらっしゃいますようにと
心よりお祈りいたしております。
またお目にかかれる日を
心より楽しみにいたしております。
おばあちゃん、お元気で。
いつも いつも 想っています。
二千二十年三月二十九日
由季
大事で
大好きな おばあちゃんへ




