2020年(10月)番外編 ーおばあちゃんへの手紙
おそらくウィルスの影響なのだと想われますが、
遅れるのは仕方がないとしても、
スイス国内、および日本へ送ったものやら手紙やらが届かない、ということが、
今年に入って何度かございました。
逆立ちしようが、水浴びしようが、やけ食いしようが、
いたし方、ございません。
明日にでも投函するつもりでございますが、
どこかを転々と彷徨い、いつの間にか届かぬままに消えてしまうと、
気持ちもまたふわふわと浮遊してしまいそうなので、
とりあえず、ここに、
とめておくことにしました。
先日の、おばあちゃんからの、お返事のお手紙です。
おばあちゃん
こちらは九月十五日に近所の山の頂に雪が積もり、
夏からひっくり返したように冬がやってきました。
まだ夏時間ですが、
十月下旬に冬時間へと移行すると、
夕暮れが一気に早まるように感ぜられます。
おばあちゃん
先日は、ご丁寧なお手紙を
本当にどうもありがとうございました。
あと一年と二ヶ月ちょっとで百歳になられるおばあちゃんが
一字一字丁寧に認めてくださったお手紙が、
わたしにとってどれほど貴重で価値があり、
どれほど大切で、
どれほどありがたく、
そしてどれほど生きる力となっているでしょう。
おばあちゃん、ありがとう。
たくさんの愛をありがとう。
おばあちゃんからいただいた愛情としか表現できないものを
わたしの存在の、魂の底に抱き、
そして繋いでいる命を尽きるまで、
大切に大切にすることが、せめてものわたしの恩返し、
恩送りだと、想っております。
こちらは皆、家族で協力しながら、文字通り助け合いながら、
心も体も元気に過ごしています。
わたしは、今、幸せです。おばあちゃんのおかげです。
おばあちゃん
おばあちゃん
いつも想っております。
わたしが存在する限り、おばあちゃんはわたしの中に。いつまでも。
秋の日本は、
鮮やかな色とりどりの葉で目を、
虫の音や風や木の葉の音で耳を、
豊富な秋の味覚で舌を、と
様々に私たちを喜ばせてくれることでしょう。
どうぞお体をお大事にお過ごしくださいませ。
またお手紙をお送りいたします。
二千二十年十月十七日
おばあちゃんへ
愛を込めて
由季