5話
蓮花の家は近所の神社で小さな頃からよく知った仲だった。
久しぶりに見た蓮花は子供の頃の面影を残しつつもしっかりと大人になっていた。
顔は少し童顔だけど目はぱっちりとした目が特徴的で見たところ身長は165センチくらいのようでスカートから伸びた脚と腰のあたりまで伸びている栗色の髪に僕は目を奪われてしまった。
可愛いさを残しつつ凄く綺麗になっていた。
「もしかして蓮花か?僕は翔を待ってるんだ、蓮花の方こそどうしてこんな所にいるの?」
幼馴染と言っても話すのはとても久し振りなので変に緊張する、でも少し懐かしい。
「そうだよ、私だよ!そっかー翔君待ってるんだ、昔から本当仲良しだよね、どうしてって私も高校行くんだよ?」
不思議そうに首を傾げながら上目遣いで蓮花は言う。
そのさりげない仕草は昔と同じだったけれど、何故かドキッとした。
最近会っていなかったからだろうか、急に蓮花が大人びて見える気がする。
「っていうか気付いてくれないの?私も綾人と同じ高校に入ったんだよ?」
そう言うと制服を見せつけるようにその場で一回転する。
こういう所も小さな頃から変わっていなかった。
確かに蓮花の制服は僕と同じ高校のものだった。
「なんで⁉︎蓮花ならもっと良いとこに行けただろ?」
小さな頃から蓮花は賢く、高校だって僕の所より上の高校に余裕で受かる程だと聞いていた、だからこそ余計に驚いてしまった。
「そんなに驚かないでよ、正直高校なんてどこだって良いんだ、綾人のとこなら家からも近いし、それに綾人達もいるしね」
蓮花は照れくさそうに言う。
「そっか、僕もまた蓮花と話せて嬉しいし良かったよ」
僕も照れくさくなって、でもそれを気づかれたくなくて頬を掻いて目を逸らす。
「私も綾人とまた話せて嬉しいよ、これからまた一緒なんだから仲良くしてね、……困った時は助けてくれると嬉しいな」
「うん、僕が困ってる時もちゃんと助けてくれよ」
「もちろんだよ、じゃあ私、もう行くね」
そう言って10メートル位離れたかと思ったら180度クルッと回ってまた引き返して来た。
「やっぱり私も翔くんを待つよ、久しぶりに綾人達と一緒に学校に行きたいんだ」
蓮花と登校か、確か最後に一緒だったのが小学校の卒業式だから四年振りくらいか懐かしいな。
僕の横に戻ってきた蓮花は笑っている。
「なんでそんなに笑ってるの?」
僕の問いにそのままの笑顔で
「だってこんなの久しぶりだし楽しいんだもん」
蓮花は本当に楽しそうだ。
「それに、綾人と翔君が卒業して、私だけ別の中学に行って色々あったんだ」
そう言った蓮花はついさっきまでとは真逆の、とても辛そうな顔をしている。
『何があったんだろう?』
僕は疑問をそのまま口に出す
「なぁ、蓮花、色々って何が……」
「あれ、綾人?どうしたんだよ今日は珍しく早いじゃん」
僕の言葉を遮って後ろから現れたのは翔だった。
「はぁ」
少しは空気を読んでくれと言わんばかりに僕はため息をつく、でも仕方がない、翔はマイペースだから。
なのに人を引っ張っていくのは上手い不思議な奴だ。
僕は蓮花への言葉を飲み込み、翔に話しかけようとした、けど僕よりも先に横にいる蓮花が食いつくように話しかける。
「おはよう翔君、私の事覚えてる?」
「……もしかして蓮花ちゃん?」
翔は突然の事に驚いたのか確認するように尋ねる。
蓮花がコクリと頷くと、安心したのかいつもの調子に戻る。
「久し振り!一瞬誰だかわかんなかったわ、凄く大人っぽくなってるじゃん!」
「もー照れるよ、ありがと」
それから少し、二人はまるで今迄もずっと一緒にいたみたいにずっと話していた。
「本当にこの感じ久し振りだなぁ、私この感じが好きだなぁ」
「じゃあこれからずっと一緒に学校いこうぜ!」
「本当にいいの?嬉しい!」
二人の話は終わる気配が無かった。
「二人共、懐かしむのはいいけど学校、遅れるよ?」
「なんだよ綾人、蓮花ちゃんとられて嫉妬してんのか?」
「何言ってんだよ、もう行くよ」
僕をからかう翔の言葉を流すように僕は学校へ向かって歩き出す。
二人もすぐ横に並んできて久し振りに三人で登校した。
横にいる蓮花と目が合った、凄く綺麗な笑顔で見つめてくるので僕はすぐに目を逸らしてしまう。
変にドキドキするけれど本当に懐かしく感じる。
しばらく取り留めのない話をしながら歩き、学校に着くと僕と翔は蓮花と別れ自分達の教室へと向かった。
校舎に入る前、ふと空を見上げると、雨はいつの間にかやみ空には虹が架かっていた。