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でらっくすあとがき ねたばればれたね パート2

新年直前に書きあがったので更新。間違いなくこれが今年最後の更新となるでしょう。

いつも通りに文字数がまずいことになっているので携帯の方はご注意ください♪

 汚れっちまった悲しみに。



 第九.五話 祭りの後と世界で一番不幸な彼氏について


 恋しくて泣き濡れた三十路岬。

 この言葉だけで、この話を語るには十分すぎると言えるだろう。

「まぁ……そうかもしれませんね」

 おや、否定やツッコミの方はどうしたのかな?

「いえ、今思い返すと……やっぱり、嫉妬していたのかなと思っただけです」

 それはある程度仕方ないと思うケドねぇ。人間ってのはそういうもんだ。

 妬み恨み嫉み憎み。そういう感情を持つのは人間として当然のことだ。行動に移すのは当然良くないケド、他人を恨んだり羨んだりするのは、意味がないケド仕方がない。

 それが恥ずかしいことだと感じるなら、努力して改善すればいい。

 自分を良くしようと努力するも良し、他人は他人と割り切るのも良し。努力が報われることはないかもしれないけど、それでも努力は自分を裏切らない。

 届かなくても、頑張った経験だけは絶対に無駄にはならないだろう。

 そういうもんだ。

「結局、なにが言いたいんですか?」

 一生懸命生きろってことだろうね。少なくとも、ゲームも漫画も童話も、ありとあらゆるエンターテイメントはそう叫んでいる。

 と、まぁそれはあくまで理想であって、実際の所、人間ってのは多少息抜きをしなきゃやっていけない。

 程々に息を抜けばいいのに、うっかりそんな風に生きた女の子がここに一人。

「はーい、というわけで、橘美咲参上! 登場からエンディングの一部まできっちり登場し、千切っては投げ、千切っては投げの大盤振る舞いの大活躍でした!」

 初っ端から僕が絶対に言わないことを平然と断言すんなよ。

 それはそうと……美咲嬢。キミ、友達いなさそうないい性格してるよね。

「他人の前では自重してるよ。……素を見せていい人と、そうじゃない人の区別くらいはちゃんとしておかないとね」

 ……ほら、コッコ嬢。狐を見て育つと、いたいけな小学生だった彼女でも、残酷な高校生になっちゃうんだよ。

「……私の責任じゃないのは分かってるんですが、妙な罪悪感がありますね」

「あ、そういえば章吾と出会った頃の私って小学生だったっけ。懐かしいなぁ。……結局、章吾は要お姉ちゃんにあげちゃったけど」

 ……あげちゃったけどって。

「さすがに四年分のラブパワーには勝てません。一途なんだもん、要おねーちゃん」

 うん……まぁ、確かに書いててびっくりしたよ。予定ではもーちょいフラフラする予定だったんだけどねぇ。ちゃっかりいい男をゲットしてるわけだし。

 ちなみに、言うまでもないことだけど要嬢のモデルはコトミネさん家の可憐ちゃん。

 足が悪いところとかはオマージュと呼ぶがいい。

「それって……つまり丸パクリなんじゃ」

「まぁまぁ、山口さん。作者さんはいつもそんな感じじゃん。私なんて時を駆ける少女の主人公がモデルだし」

 んなわけねーだろ。事実を勝手に捏造するな、小娘。僕の好きな作品を汚すような発言をするな。出番減らすぞ。

 美咲嬢はアレだ……えっと、ポケ●ンのサワムラー。

「確かに蹴り技は得意だけど、いくらなんでもそれはないでしょっ!?」

 いや、まぁ一応モデルがあるにはあるけど、あんまり知ってる人はいないかも。

 惑星のさみだれの、さみだれ嬢。性格は当然違うけど、蹴り技のイメージはあの漫画の描写から抜粋。

「えっと……」

 ん、まぁ知らなくても無理はない。そういうもんだから。

 ちなみにコッコ嬢にはモデルは存在せず『本当の意味で弱い女性』のイメージそのままを描写。冥嬢は見ての通り月の会社の琥珀嬢。攻勢に出ている間は無敵だけど、攻撃されると途端に弱キャラに変貌。舞嬢は僕の根幹に関わるのでモデルの名前は伏せる。武装だけはヘルシングのウォルターさん。京子嬢は教艦ア●トロの荒井センセー。美里嬢は母親と少女をごっちゃ煮にしたイメージなので特定のキャラクターはいないけど、強いてあげるならフェイト●ロのアイリスさん(ドS+黒にアレンジ)。

 狐はさっきも書いたように『最低の男性像』。章吾さんは言うまでもなく弓兵だが開き直れられると面倒なので、女性と関わるとロクな目に遭わないように調整。陸くんは熱血系の主人公をイメージ。真面目で一途な熱血漢。友樹は逆にギャルゲーの主人公をイメージ。竜胆礼司こと死神さんは疲れている満点パパのイメージ。

 うむ、モデルがないキャラの方が書きやすいのが一目瞭然だね。

「なんか……根幹って表現がちょっと引っ掛かるんですが」

 あ、ごめん。それは本当に説明できない部分だから。

 小説内でもそれについては一切触れてない。どこかでポロッと言っているかもしれないけど、まぁそれはそれで僕のミスだ。

 根幹ってのはそのまま『根幹』って意味でね、つまり今現在まで好きだと公言している作品はあくまで枝葉に過ぎなくて、その根っこに一つ、これだけはどれだけ年月が過ぎようが絶対に変わらない、でっかい作品があるんだよ。

 14歳の頃に惚れこんで、今現在まで好きな作品だからね。多分今後も変わらない。

「……しつこいんですね」

「まぁ、作者さんってそういう人種らしいですし」

 あのさ……忘れてるようだけど、僕一応作者だから。

 君らを思い通りに動かせたことは一度もないけど……キャラクター以外の物語の流れを考えるのは僕だからね?

 第二話で、鬼と狐と灰色の食い倒れ珍道中なんて真似もできるわけだ。

「また嫌な予感しかしませんねェ……」

「下手なコト言うと、トーマまで簡単に女の子にしちゃいそうなのが怖いんだけど」

 いや、あの鬼は……まぁ、この話は後でいいか。

 ではでは、適当な所で次の話にれっつごー♪

 この続きはエンディング群のあとがきで。



 第十話 風邪とお粥と小さなわがままについて


 風邪引きと、黒霧姉妹が狐に自分らのキャラクターをばらす話。

 実際には風邪引きの上に遅効性の猛毒を盛られて死にかけてますが。

「洒落になりませんよ、それは!」

 うん、実際に洒落になってないから、冥嬢も焦っていたわけだけど。

 猛毒って言っても継続的に摂取しなきゃ尿として排出されてしまう類のものだけど、それでも放っておいていいものでもない。体力が低下していればそのまま死に直結する可能性もあるものだ。主に拷問とかに使われます。

 ま、そこまで計算した上で陸くんはその毒薬を使ったわけだけど。

 彼の立場から見たら、舞さんと冥さんが『買い取られた』ように見えているからね。姉貴ラブの彼にしてはわりと切迫した行動だったってわけ。付け加えるなら、致死毒を使わなかったのは、冥や舞を取り戻すための材料として利用するためだ。

「へぇ……色々考えてたんですね、陸少年は」

 ところがどっこい、計算高いことをしようとすると穴に落ちるのが空倉クオリティ。今回もものの見事に失敗し、屋敷に取り込まれる羽目になったわけだ。

 舞嬢とかも本編では色々画策してたけど、大半を狐に潰されております。ちなみに付け加えるなら、狐に食わせたまずすぎるお粥は毒の効力を緩和する薬だったり。

 冥嬢は元々考えるのが苦手なので、これには当てはまっておりません。

 考えるな、感じるんだ。

「相変わらずだね、物語り。とりあえず死ねばいいんじゃないかな」

 はい、というわけで今回のゲストは変態メイドマニアこと、この物語で一番のエロスさんこと恐怖のきょーちゃんになります。別の短編からのスピンアウトのようなものですがはっきり言って出したくなかった人No1です。

 あと、死ね嘘吐き。子供の世話をちゃんと見ろ。

「あの……お二方にはどういう因果関係があるんですか?」

「いや、理由はないけど嫌いなだけ。観測者とか傍観者って本当にイラッとくるよね」

 そこだけは気が合うね、嘘吐き。僕もテメェは大嫌いだ。

 テメェの吐く嘘は優しい嘘ばっかりだ。もうちょっと悪意満点の嘘を吐け。

「……ああ、なるほど。つまり自分にないものを持っている相手だから嫌いだと」

「馬鹿を言っちゃいけない。僕は傍観者や観測者が嫌いなだけだ」

 誰も手の届かない高みから見下ろして、好き放題言えるんだ。

 彼女といるメリットはそれに尽きるね。

「はうっ!?」

 殺人? 馬鹿を言っちゃいけない。害虫一つ潰した程度で法律に裁かれるなんて色々とおかしい。君は誰にも出来ない正しいことをやっただけさ。

 さぁ、手を取れよ、メイド。クソ面白い世界を一緒に作ってやろうぜ?

「や、やめろコノヤロウ! 僕を殺すつもりか!?」

 全部テメェの若かりし頃のセリフだ馬鹿野郎。

 ついでに言えば、この物語の悪の組織っぽいものはほとんどテメェが作ったんだろうが。嫁も子供の世話もロクにできん野郎が、世界を変えるとか生ぬるいことを。

「子育てをしながら世界を変えることはできる……そんな風に思っていた時代が、僕にもありました」

 まぁ、後悔してるんだったら別にいいけどさ。

「……なんつーかね、あの奥さんは色々と無茶をしすぎです。子供は三人いなきゃ絶対に嫌だとか言って色々と無茶をさせられるし」

 聞きたくないわ、そんな話。

 1対9くらいの割合で確実に18歳未満お断りなエピソードをアドリブで語るな。

「そもそも……なんでアレが僕の嫁なのさ? もっと……こう、僕に膝枕してくれるようなメイドとかそのあたりにはできんかったのかね?」

 無茶言うな。アレの攻勢に耐えられるのは、お前の息子くらいなもんだ。

 最初から言ってるように、僕ができるのは物語の概要を大まかに決める程度のもんなんだよ。テメェらを思い通りに動かせた試しなど一度もないわ。

「そこをなんとか」

 なんともなるか、ばかたれ。マウント取られた時点でお前の負けだ。

 大体お前、奥さんがいるのに浮気し放題じゃねぇか。

「んー……まぁ、浮気と言われればそうなのかもしれないけど、戯式さんに始まり面白い女性と縁を切るのは、僕としてはちょっとなぁ」

 そーだな、白の阿呆と違って、お前の場合は本当の遊び相手だもんな。基本だらだらしながらゲームしたり、将棋指したり、ボードゲームに興じてみたり。

 素直に、遊び相手って言った方が波風立たなくていいんじゃね?

「正直に言えば分かってくれる……そう思っていた時期が、僕にもありました」

 いや、馬鹿だろお前。ちょっと考えれば分かるだろ。

「まさか、まじ泣きされるとはね。想定外もいいところでした」

 感情的な人間って、大体情熱的だからね。そのぶん愛されてると思っておけよ。

「…………愛が重い」

 お前の息子も大体そんな感じだからな、もうこれは血の宿命みたいなもんだ。

「息子が羨ましい。近くに巨乳メイドはべらせやがって」

 はべらせるというより、弄ばれているって感じがするけどね。

 つーか……その巨乳をけしかけたのは、間違いなくお前だろーが。

「天弧君にゃぴったりだと思ったんだケド……思った以上にぴったりすぎました」

 甘えさせ上手と甘え上手じゃ、そりゃぴったりだろうけどね。

 ま、あの二人に関しちゃそれほど問題はない。とりあえず、この主人公がいりゃなんとでもなるだろう。役割分担もばっちりだし。

「そうか……じゃあ、もう面倒なコトは彼女に押し付けていいってことだね?」

「別に構いませんが」

 おお……随分と強気じゃないか、主人公。

「というか、彼のことはどーせ私たちに丸投げになるわけだし、それだったら新しく生まれてくる赤ちゃんに労力を費やした方がいいでしょう。……まさかとは思いますが、その子まで織さんに丸投げするようなことは、ありませんよね?」

「………………あう」

「で、どうなんですか? 子育ての方針とか、そのあたりは?」

「い……いやぁ、その……えっと」

 ははは、ぐぅの音も出ないでやんの。自業自得だ、ばーかばーか♪

「作者、お前本当に後で絶対に泣かすからな! 絶対だぞ!」

「それはいいですから……で、どうするんです?」

「えーと………………」

「とりあえず、名前はどうするんですか? まさか、彼がつけようとした名前をそのまま流用するつもりじゃないでしょうね? ちゃんと考えてあるんですよね?」

「あああああああああああ……」

 はい、そういうわけでオチがついたところで次の話にれっつごー♪



 第十一話 剣と涙と隠した心について


 舞嬢の策略の話。テーマはテレビの向こう側。

 あの場所にいけたらどんなに楽しいだろうと思って、自分の今の現実に絶望して、結局逃げ出すことしかできなかった一人の女の子の話。

 それを助けることしかできなかった、一人の女の子の話。

「……まともな紹介ですね」

 たまにはいいでしょ。わりと思い入れのあるエピソードだし。

「もっと思い入れがあってもよさそうな話はたくさんありそうですが……」

 んー……まぁ、確かにそうなんだけど。

 ぶっちゃけると、君の対応によっちゃ物語はこの話で終わりの予定でした。

「………………は?」

 現在停滞中の猫日記の方で少しばかり語ってるし、後半の要嬢の話でも少しばかり語ってるけど、この世界にはいくつか厳然たるルールが存在する。

 その中の一つがバッドエンドルール。そのルールは以下の要素で構成される。

 一つ、世界のどこかには大本になる絶望の世界がある。

 一つ、絶望の世界は人知れず自分の分身である種子を撒き散らす。

 一つ、種子は世界の誰かに寄生して発芽の時を待つ。

 一つ、種子の栄養は宿主の負の感情。絶望に始まり殺意とか害意とか悪意とか。

 一つ、種子は発芽した後、時間を置くと開花する。

 一つ、種子は開花すると『絶望』になり世界を滅ぼす。

 ネタバレと銘打ってるからにはネタバレするけど、この物語で絶望の種子を宿している人間は合計で三人。一人は開花済みだけどそっちは折り合いをつけて上手くやってる。

 獅子馬麻衣。

 清村要。

 黒霧冥。

 この内、冥嬢か要嬢が発芽すると、読者置いてけぼりのバッドエンドでした。

「あの、それって小説としてどうなんですか?」

 どうもへったくれもないよ。そういうもんだから仕方がない。

 確立としては、交通事故よりよっぽど低い。本当に心の底から世界に絶望してもらわないと、種子が発芽することは在り得ないからねぇ。

 ま、生きる上でのちょっとしたリスクだ。世界が滅ぶとか言ってみたはものの、実際の所日常生活にはまるで影響はないから大したことはない。

「………………」

 おや? なんだか無言の眼差しがとても痛い。『どーせまたなんか裏でこそこそやってたんだろうけど、突っ込むのも面倒だなぁ』という感じの視線だネ。

「分かっているんだったら、自発的に説明をどうぞ」

 はいはい。りょーかいしました。

 実は、この時点で既に田山は読者様にイニシアチブを渡していました。

 集計結果を見る限りではそれなりに好評っぽいけど、別に無理に続けなくてもいいし続けてもいい。需要がある限りはやってみようという気分だったというわけです。

 逆を返すと、需要がなくなったら即打ち切るつもり満々でした。

「ホント……なんていうかつくづく読者様のおかげってことですね」

 そういうことです。需要がそれなりにあったからこそ、ここまで続いたわけで。

「つまり、もしも仮にコメント欄あたりに『冥さんが邪魔なので死んでください』みたいなコメントが多数あったら、その通りになっていたということですか?」

 ………………いや。

 いやいやいや? そんなことは、ねぇ? ほら。

 コメディだもの。恋愛ものじゃないんだから、そういうのはないって。

 読者様もモラルのある方々ばかりだし。物語に文句は出ても、登場人物に文句が出たことは一度もなかったんだよ?

「どーせ貴方のことです。そこまで計算してデスペナルティに含んでいたとしても、全然おかしくないです」

 ま、そうだね。後半のやりたい放題を考えればここのは表に出ないぶん甘い方だ。

 これはただの愚考だけど、人間の言葉には力がある。曖昧で茫洋としているくせに、その言の葉の一つ一つがどれだけの人間を幸福にし、不幸にしてきたか分からないくらいに力が在り過ぎる。

 たった一言。たかが一言。それが人を左右することだってあるだろうさ。

 小説だって例外じゃない。作者が妄想を垂れ流すだけのものかもしれないが、それでも読者様の声が届く以上、それを無視し続けることなどできはしない。

 殺せ、邪魔だ、そういう言葉があるなら、その通りにしてやろう。

 そういう覚悟で書き続けたけど……思いの他読者様は良心的な人たちばっかりでした。ある程度の失言も許してくれたし、怒ってくれる人もたくさんいたね。

 へっ……世界ってのもわりと捨てたもんじゃねぇな。

「そうやって格好いいっぽいこと言っても、物語を書く人としてはかなり失格だと思うんですが?」

 自覚はあるよ。でも、まぁ仕方がないよね♪

「自覚があるなら直しなさい。……せめて、もうちょっとマシな程度に!」

 ぐがががががが。こ、こめかみをえぐるのはさすがにちょっと……。

「そもそも、普通の小説にバッドエンディングの設定をするんじゃありません!」

 今後は自重するよ。可能性としては常に残しておくけど。

 ま、伏線も大体回収してあるし、本編に突入したら今度こそ書きたいものを書くさ。

「それならそれでいいですけど……あんまり、やりすぎないように」

 はいはい、了解してますよ。

 とりあえず……第二話は君のドレス再びの予定だから、覚悟しておくように。

「はいはい、了解しましたよ」

 と、話がまとまった所で、今回はさくっと次の話に行きまーす。

「……先のことを考えると気が重いですねぇ」

 そういうもんさ。

 事実今僕も明日からの出勤が非常に辛い。眠い。疲れた。仕様を変えまくる阿呆がいるせいで今日も残業明日も残業。普通の残業ならいいんだけど社内規定の残業時間に抵触しそうなほど残業させやがるのでかなりきつい。他に忙しい方は腐るほどいるだろうけどあえて言わせてくれ。レアケースの発見は早めにね!!

「私だって、明日まだなにが起こるかと思うとちょっときついです。あと眠いです。肩も腰も凝ってるし疲れてます。でも、下手に凝ったとか言うとえらいことになるので要注意です。こっそりと京子さんに言ったりするのがベストなのです」

 ……ま、お互いに頑張ろうか。

「……そうですね」



 第十二話 彼女の想いと彼女の願いについて


 色々あったけどそれなりに丸く収まった話。

 サブタイトル:戦うことしか知らない女の生き様。

「その色々を解説しなさい!」

 いや、ごめん無理です。

 いくら僕でも背中に突きつけられた刃の感触を味わってはとても解説などできはしないのです。

「初恋の話の解説なんて、メイドである私がさせるわけないのです」

 まぁ、そーゆーわけで今回のゲストは今回の話の主役である冥嬢なんですが。

 あの……さっきも言ったケドこの劇場内じゃ、僕は殺されようがなにしようが自動的に蘇生がかかるんだけど。

「ならば何回でもポッキリやっちゃえばいいだけのことですね」

 またおっかねーこと平気で言うし! ポッキリとか可愛い表現使ってるけど、人間の部位で折られて致命傷になる箇所って首か脊髄くらいじゃねーか!

 大体、冥嬢の初恋ってのは、思いっきり叶ってるんじゃないか。

 現状で幸せなら別に構わないけど、あの狐以外の選択肢ってのはなかったのかい?

「ぶっちゃけ、ご主人様以外の殿方ってイマイチ面白くなさそうなので。あと、メイドってだけでなんか色々誤解しそうな変な方々が多そうなので、嫌です」

 えっと……それってベタ惚れ?

「ベタ惚れというより……私は常にサムライアリでいたいというか」

「サムライアリ? なんか、格好いい響きのアリですけど」

 名前だけはね。

 サムライアリってのは、別種のアリの巣に侵入して幼虫や蛹を略奪して巣に持ち帰り、働き蟻として奴隷化するアリのことだよ。

 まぁ……逆を返すと、奴隷アリがいないとなんにもできないアリでもあるけど。

「……め、冥サン?」

「くふふ……万人が理解していませんが、『人に従う者』というのはいつの時代も、主に隷属しているように見えて、実際は主を利用しているものですよ。女王アリと働きアリ、どちらがどちらに隷属しているなど、ぱっと見では分からないでしょうに」

「あれは働きアリが女王アリに従っているのでは?」

 ……いやぁ、実はそーでもない。

 アリの指揮系統がどうなっているのかはファーブル昆虫記あたりで読んだことがあるけど、確か大きく分けて、指揮官アリ、世話役アリ、働きアリ、怠けアリ、雄アリ、女王アリくらいの種別だったような気がする。大昔に読んだからうろ覚えだけど。

 指揮官アリは現場の責任者で働きアリに指示を出す。世話役アリは幼虫や女王の世話を行い、働きアリはそのまま労働に従事する連中。怠けアリは指示に従わずただひたすらに怠け続けるアリで全体の二割くらいがこれに相当する。なぜ怠けるのかは詳しく知らないけど、生物ってのは統計的に見て二割程度は確実に怠けるらしい。

 雄アリは女王に種付けするだけのアリ。女王アリは子供を産むだけのアリだ。

 人間のように色々なことをするわけじゃないから、役割はシンプル。本当に子孫を残すだけの役割を担っている存在だ。新しい女王アリが台頭すれば、あっさりと殺される。

 さて……ここまで読んだ上で、さっきの問題だ。

 女王アリが働きアリに奉仕させているのか、それとも働きアリが女王アリを利用しているのか。

 女王アリは働きアリに命令できるわけじゃない。ただ子供を産むだけだ。

 働きアリが子供を産める女王アリを利用しているとも取れなくない。

 ま、種族の繁栄って観点から見れば、どっちでも同じ事だけど。

「どっちにしてもわりとえぐい話なんですけど!」

「まぁ、人間を昆虫に例えるのはちょっと駄目だとは思うんですが、現状を考えると大体そんな感じかなぁと。ちなみに山口さんも一枚噛んでいるので、なにも言うコトはできないと愚考しますが?」

「……………う」

 いやいや……あの狐の影響かね、随分と屁理屈が達者になって。

「屁理屈ではありません。共生するにしろ寄生するにしろ、お互いに尊重し合い大事に消費していこうという話に持っていこうとしているだけです。……私もそうですが、山口さんも下手をするとぶっ壊しかねないので」

 ………………。

 会話の手法の一つに、こんな方法がある。

 人が思わず引く、あるいはとんでもなく興味をそそる話題を出し、それに乗じて前の話題をなかったことにするという……極々普通に用いられている手法だ。

 虚構士の手口とも言うけど、まぁそれはどうでもいいか。

「作者さん、なにが言いたいのでしょうか?」

 いやいや……なんも考えずに甘えまくりの女の子が随分成長したもんだと思っただけだよ。人の成長ってのは実に面白い。

「いえ、確かにご主人様=初恋っていうのはちょっと恥ずかしいですが、最初から大当たりを引いたと思えば別に恥ずかしくもなんともありませんよ?」

 うん、確かにそれに関してはまるっきりその通りだ。君はそれを恥じたりはしないだろう。それは僕も予想がついた。

 だったら、別にこの話の解説を無理に止める必要はないんじゃないかな?

「いやぁ……でも恥ずかしいものは恥ずかしいですし」

 虚構士の手口、その2。

 嘘は吐かない。それでも嘘を成立させる。話を本題から徐々に逸らす。

 会話が成り立っているふりをするのも、嘘吐きの手口の一つだ。

「回りくどいのは嫌いじゃありませんが、この際はっきり言ったらどうですか? ……なんか、嫌な予感しかしませんけど」

 うん、じゃあぶっちゃけよう。

 今回の話、冥嬢ってなんにもしてねぇよな?

「はうっ!?」

 陸君襲撃後は、狐連れてきただけだし、戦闘に限って言えば今後の展開でもあんまり役に立ってる場面ってそれほど多くないんだよね、君の場合。

「わ、わりと役に立ってますもん! 出番だって山口さんよりはありますし!」

「……あら、なんでしょう。目から汗が」

 いやぁ、メイドになる前の君って戦闘能力って点で見ればお粗末もいいところなんだよね。人外相手には十分渡り合えるけど、超人相手には勝てないくらい。

 ちなみに人外の定義はそのまま『人成らざる者』を指す。空倉一族がやっていたことを道徳や尊厳を撤廃してぶっちゃけると、人体実験の果てに暴走してしまった被検体や、人に害を成す妖怪やらそのあたりの始末……つまり、大抵は『被害者』の抹殺だ。

 これとは逆に超人ってのは『ナレノハテ』。成って果てた者だ。分かりやすく言えば鬼ならオウガ、トカゲならドラゴン、馬ならキリン、鳥ならホウオウ、人なら現人神、メイドならシャーリーあたりがこれに該当する。

 この物語だと、上記に該当するのは京子嬢、有坂友樹、桂木香純、刻灯由宇理、あとは例外的に相川ハーレムの極悪嬢と黒の魔法使いあたりになる。全員例外なくやたら強い上にチート能力の持ち主だけど、野郎はメンタルが非常に弱くなる反面女性に縁ができ、女性はメンタルが非常に強くなる反面、男に縁がなくなる。

 近しい属性の人とくっついたり、血の繋がらない身内とくっついたりするのも、ある程度はそれが絡んでいる。

「あの、作者さん。……どーでもいいんですけど、メイドならシャーリーのくだりは突っ込んでもいいところなんでしょうか?」

 その辺は仕方がない、僕基本的にメイド嫌いだから。

 しかし、森薫先生の作品は非常にいい。男女共に非常にいい。ディ・モールト!

 君らみたいな荒み系とは大違いだ。

「荒み系とは失礼ですね、山口さんのようなDV系はともかく、私は癒され系です」

 回りくどいのは嫌いじゃないけど、誤解を招く微妙な表現は良くないだろ。

 癒され系って、冥嬢が癒されたいだけだろうが。

「メイドって職業は思ったより大変なのです」

 ま、そりゃ分からないでもないけど。

「しかし、実はそれ以上に山口さんは大変だったりするのです。ね、山口さん?」

「………………ぐすっ」

「………………」

 ……あの、冥嬢? なんで彼女マジ泣きしてんの?

「わ、私に聞かれても……」

「……ぐすっ。どーせ私なんて、ヒロインにすらなれなかった女ですよ。甘ったれでクソみたいな根性なしで、さらに出番すらあんまりない女ですよ。……うう」

 冥嬢、君のせいなんだからなんとかしなさい。

「えっと……いや、さすがにあれはちょっと無理ですよ。マジ泣きする大人の女性を慰める手段なんて、ウチの宿じゃ舞ちゃんかご主人様くらいしか知りません」

 じゃあどーすんのさ? このままだと、ここであとがき終了だぞ。

「……それでは! 冥ちゃんの大奮闘の回、いかがでしたでしょうか! さっぱりすっきりしたところで次の話に進みまーす♪」

 あ、テメェコラ! 思いっきり逃げるつもりじゃねーか!

「ではでは、ゲストはこれにて一目退散のスタコラサッサなのです♪ ばーい!」

 ばーいじゃねぇ! 僕だってマジ泣きしてる女の慰め方なんて知らんわ!

 ……って、信じられん。本当にフェードアウトしやがったよ、あのメイド。この劇場からどうやって逃げ出したとかよりも、泣いてる人間放置するとかまじねーよ。

 えっと……。

 あ、アメ食べる?

「………………くすん」

 ………………。

 じゃ、サクサク次の話に進みまーす♪ 次の話は進行役が一人いなくなっているかもしれませんが、お気になさらずに!



 第十三話 闇のゲームと精神崩壊コンボについて


 やってみたかった回。ぶっちゃけ、され竜のあの回のパクリだ。

 ぱ、パクリって言っても大富豪を小説で書いてみたかっただけなんだから! 勘違いしないでよね!

 んー……参った。慣れない作風(ツンデレ)でなんとか急場を凌ごうと思ったケド、はっきりと無理だ。ツッコミ不在がこれほどしんどいとは。

 と、いうわけでツッコミ召喚。とりあえず舞嬢とかでいいか。

「だーかーらー! 引っ付くなって言ってるでしょ、馬鹿テン!」

 ………………。

「………………」

 ……失礼しました。

「あ、ちょ……違っ! そうじゃなくて! 話を……っ」

 フェードアウト完了。

 ふぅ、まさかいちゃらぶ中に呼び出してしまうとは思わなかった。普通にびっくりしたわ。……さすがの僕でもちょっと罪悪感が沸いちゃうじゃないか。

 うーん……舞嬢が駄目なら、京子嬢あたりならどうだろう。むしろ最初からそうしておくべきだったやもしれぬ。

 と、いうわけで召喚。

「あっはっは、お前は可愛いなぁ。にゃーにゃーにゃー♪」

 ………………。

「………………」

 ……ごめんなさい。

「違ッ……ちょ、ちょっと待て! お前は今盛大な誤解をして……」

 フェードアウト完了。

 ……まぁ、これは仕方ないよな。猫好きなら猫を前にしては我を失ってしまうのも致し方ない。これはもう自然の摂理と言い換えてもいいだろう。

 しかし……この流れから考えて、美咲嬢を呼び出すとまたきっとえらいことになるに決まってる。冥嬢はボケだから呼べないし。

 つまり、ここで次の話に進むのが妥当ってことか。

 田山歴史は死亡フラグを回避する作者なのである。

「やれやれ、相変わらず面倒な男だな、お前も」

 面倒なのはいつものことだよ、デッドエンドタヌキこと、死を招き。

 つーか、お前別にこの話に登場してねーだろ。さっさと帰れ。

「ハ、なにを言う。我はいつだって狐の背に乗っていた。今は陸とかいう犬の小僧だが、それでも常に私はあいつの側にいたからな、出演の権利くらいはあるだろうよ」

 使い捨ての伏線のくせに生意気な。読者からも別にツッコミがこなかったし、話の展開としても別に必要なかったから切り捨てたのに、まだ食い下がるか。

「はっはっは、お前がいくら切り捨てようが、我が存在する限り死を招くことは変わらぬよ。いつだって我は鼻つまみ者。そうでなくてはならん」

 ……ふーん。

 じゃ、そういうわけで次の話に進みまーす♪

「考え付く限り最悪の対応をするでないわ、たわけ!」

 最悪の対応なのは当然だろう。

 言い忘れていたかもしれないけどな、僕は絶望は嫌いじゃないけど、死ぬとか殺すってのは大嫌いなんだよ。

 伸ばした手を掴んでくれる誰かがいるならまだいいさ。

 生きるってのは綺麗事じゃない。そんなことも分かってる。運と努力次第でどんな方向にも転がっていくことくらい、もう分かってる。

 それでも……伸ばした手を払いのけられる不条理に耐えられるほど、僕は大人にゃなれねぇんだよ。

 だからまぁ、嘘吐きとは別の意味でテメェのことは大嫌いだ。

 なにが死の試練だ。アイスソード奪おうとして返り討ちにあえ。

「頭髪と引き換えに強さを手に入れた男の話はまぁいいが……お主、最近モンスターをひたすら狩るゲームしかしとらんだろうが。その内、ネタも頭打ちになるぞ?」

 ゲームをする時間がねぇんだよ。モンスターを狩りまくるゲームの方はワンプレイ最長でも一時間ありゃ確実に終了するから時間潰しにもってこいだし。

 最近面白かったのは『勇者のくせ●なまいきだ』かなぁ。あれ、プレイ動画を見て買ったんだケド、難しくてやってないんだ。あっはっは。

 上手くやろうとすると戦術、戦略レベルの知識が必要とされるゲームをやったのは久しぶりだわ。やっぱ、ゲームってのはコントローラーを壁に叩きつけるくらいの難易度がないといかんと思う。子供にはトラウマを、大人には少々の刺激をくらいが一番いい。

 いやぁ……ホント、勇者ってチート野郎ですよね。

 呪文とか爆弾とかセーブとか……本当にチートもいいところですよね。

 現実はこんなにも厳しく、やり直しも効かないっていうのに!

「現実とゲームを比較するのはお主くらいなもんだと思うぞ」

 現実は厳しい。仕事は辛い。でも、金は欲しい。

 金があれば大切なコト以外は大体なんでもできるようになるからね。

「薄汚い大人のセリフだのぅ」

 ケケケ、なんとでも言うがいい。お前みたいに人の背に乗って死の試練だのなんだの訳の分からないことを言っているようなタヌキの言葉に、説得力なんてあるかよ。

 平成タヌキ合●ぽんぽこにでも参戦してればいいと思うよ。

「……ほう。青猫の小娘と違って、我はわりと我慢強い方なのだがな。貴様がそういう態度に出るなら真正面から叩き潰してやらないこともない。どーせ、出番ないしのぅ」

 最後の一言が本音っぽいね。まぁいいけど。

 でもまぁどーせ、君は僕には勝てない。やれるもんならやってみろ。

「はっはっは……ならば死ねィ!」

 よーし、来い。返り討ちにしてやるぜ!

 僕らの戦いはまだ始まったばかりだ!

「……あれ? ちょ、まさか貴様、無理矢理次の話に進む気じゃないだろうな!?」

 知らなかったのか? 作者に立ち向かうことはできない。

 停滞中の猫日記に出番作ってやるから、精々苦労するといいよ! あーっはっはっはっはっはっは!

 と、いうわけで次回に続く!

「待てこらあああああああああああああああああああああああああああ!」



 第十四話 修羅と羅刹とダイエットについて


 体脂肪の話。あと、腐れ女垂らしヘタレ白髪男参上の回。

「……分かりやすい解説ですが、その解説で物語を読みたくなるかと言われれば、断じて否ですね。むしろ絶対に読みたくないです」

 おや、コッコ嬢。復活おめでとう。

「ええ……よく考えたら、貴方の小説で出番がある=酷い目に遭うって意味だということをすっかり忘れていましたよ」

 はっはっは、よくぞそこに気づいた。おめでとう。

 そういうわけで、君の出番はたっぷりと本編の方に用意してある。

「……うわぁ、全然嬉しくない。さっきまで出番がないことで嘆いていたのに、一体どういうことなんでしょうか」

「出番なんてなけりゃないでいいんですよ。……俺みたいになりますから」

 と、いうわけで今回のゲストは白い魔法使いこと有坂友樹。この物語での扱いは比較的常識人ですが、エンディング群の舞エンドでははっちゃけております。

 なお、Bランクエンディングではただのホモ野郎。死ね、BL。

「初っ端から喧嘩大安売りすんじゃねぇよ、作者」

 でも、友達が性別変えてメイドになったからって、女性として意識するのは果たしてどうかと思う。

「……いや、俺もそう思うんだケドさ、外見が好みな上にメイドで、しかもこっちの心理とか把握されまくってるし……どうしようもありませんでした」

 ……いや、そんな悲しそうな顔をされても僕にはどうしようもない。ごめんなさい。

 それにお前、物語の前半と後半でキャラ違いすぎるだろ。最初の頃、狐に対して『君』とか言ってたけど、あれはなんなのさ? 爽やか演出?

「いやいや、単に警戒してただけ。あいつと別れたのは小学校以来だから、性格が全然違っててもおかしくないだろ。……まぁ、実際の所は杞憂だったわけだけどな」

 人の根幹ってのはなかなかに変えづらいもんだ。

 ま、狐のことは置いておくとしても、実は、この話はお前の登場によって色々と伏線張っている。最終回における庭の話はこの頃からほのめかす発言があるし。

 コッコ嬢の身内が近くにいるもんだから、全登場人物中お前だけは最終的になにが起こるのか大体知っていたわけだし。

 そこまで知ってたんだったら、あの狐を助けてやってもよかったんじゃない?

「……し、仕方ねーだろ。迂闊に手ェ出すと狐の野郎、超怒るし」

 正義の味方は、見た感じ不幸な美女と美少女だけ守ってろが定例文句だもんねぇ。

「ま、俺の話はいいんだけどさ……ふと気になったんだが、あいつの『屋敷』って本当になにやってたんだ? 今みたいに『宿』っていう指標があるわけでもなし」

 なんでもやってたよ。

「……へ?」

 金貸したり、株式やったり、貿易関係の仕事のお手伝いとか、織さんが招く厄介なお客様の接客とか、分かりやすく言い換えれば請負と派遣が半分半分くらいだね。その他諸々本当に色々やってた。読者には関係ないから省いてたけど。

 大抵はあくむさんから得た情報でイニシアチブを掴んだ上で、章吾さんのスーパー執事テクニックで収益を上げていた。実際、潰される間際まで思いっきり黒字。

 執事がいなくなった後もあくむさんの情報だけで十分にやっていけていたみたいだったけど、狐の疲労困憊っぷりに従業員全員が見ていられなくなって、結局父親によるドクターストップがかかったと思いねぇ。

 巧妙に隠してたけど、疲労のあまりぶっ倒れたり、こっそり便所で吐いたり、煙草に逃げたり、寝る前にアルコールを飲んでなんとか疲労を少しでも回復しようとしてたり。

「あー……確かに、滅茶苦茶疲れてたな。毎日授業中は睡眠時間だったし、起きてたとしてもなんか色々やってたし」

「…………あう」

 ま、コッコ嬢が気づかなくても仕方がない。こればっかりは言わない狐が悪い。

 頼りにならない人として認識していたとしても、助けて欲しい時に手を伸ばさなかったら誰も助けちゃくれないからね。

 だから……コッコ嬢はここで反省すべきじゃないな。

「前回のあとがきから思ってたんですけど、作者さんって手厳しいですよね」

 僕は自分に甘く他人に厳しい、その辺にいる普通の人間なんでね。

 正直に言えば、自分に厳しい人間の厳しさなんて知ったこっちゃねーのさ。

 周囲の人間の目を考えられない厳しさに意味なんてあるのかね? とは思うケド。

「……ある意味きっついですよねェ」

「普段言えないことを好き放題言ってる感じだよな」

 ま、厳しいだけならまだいいんだ。厳しいなら厳しいで、それをちゃんと人に伝える術を知っていけばいいだけのことだから。今の世の中コミュニケーション関連の本とか読めば自分に足りないものくらいは載ってるし。

 問題なのは、自分に甘く他人に厳しく、なにか都合の悪いことがあると周囲のせいにして自分が悪いと思わない人なんだけどね?

「いやー、今日はなんかあっついですね、山口さん! こういう日は酒しかありえませんよね! あんまり暑すぎて目から汗が出てきちゃいますし!」

「そうですね、友樹君! 今日は冷えた日本酒とか飲みたいですね! ……ああ、痛い。なんだか胸がものすごく痛いけど、お酒があればなんとかなりますよね!」

 いや……ごめん。まさか冷や汗を滝のように流すほどのトラウマになってるとは。

 とりあえず、お酒に逃げるのは勘弁してください。

 お酒ってのは百薬の長とか言われてるけど、ありゃ嘘だから。どっちかっていうと確実に毒の長だよね。おつまみとかやたらカロリー高いし。

 お酒を飲み始めると太るって言われてるのは、一緒につまみも食うからなんだよ。

「あれ? でも、私はお酒飲み始めた頃から……屋敷を離れた頃くらいから、体重はむしろ減ってるんですけど」

 いや、それ多分ストレスじゃね?

「ちなみに、あいつの宿の仕事って普段どんなことやってるんですか?」

「どんなことと言われると返答に困るんですが……強いて上げるなら、全部ですかね」

「…………ぜんぶ?」

「ええ、とりあえずやれることは全部。冥さんは普段なにをしてるのかイマイチ分かりませんし、京子さんは厨房担当だし、美里は事務とか経理とか色々やってますし、舞さんと彼はパートタイマーですからね。一応他に人も雇ってますが、それでもおっつかない所は私が全部やってます。毎日忙しいんでちょっときついんですが……まぁ、織さんと一緒にいる頃に比べればへでもありませんけど」

「あー……そりゃそうか。あの人と一緒にいるとホント半端ねぇからな」

 ちなみに、どんな感じで半端ないのさ?

「……あーあ、もう疲れちゃったな。燻製チーズといいワインがありますから、それで乾杯しましょうか」

「そうですね……もう世界とか世間とか人間関係とか、どーでもいいですよね。お酒があればそれで十分ですよね」

 いや……その、ホントすみません。

 って、謝罪を無視して酒盛りムードになられると、こっちとしても対応に困るんだけど……おーい、話聞いてますか?

 ……えっと。

 次回に続く!



 第十四.五話 修羅と羅刹とダイエット(承前)について


 要嬢の燃えきゅんストーリー♪ エピソード2。

 リアルラックを無駄な所で消費し、それを無に帰す執事の話……と、見せかけてここで運を放り出したことが後々嫁ゲットのフラグになることを、作者と他一人だけが知っていたそうな。

 全てを捨てた者が、全てを手に入れるってのは、お約束の範疇内かな。

「………………」

 やあ、他一名こと今回のゲストの獅子馬麻衣さん。本編ではお疲れ様でした。

 出番がなくて本当に悪かったね。

「いや……出番がないのは別にいーんだけど、とりあえず謝って欲しいかな」

 ごめんなさい。

 ……僕は止めたんだケド、どうにもなりませんでした。

「いーから飲めよ、作者。鞠お勧めのいいワインなんだから。銘柄は知らんけど」

「そーですよ、おねーさんのお酒が飲めないって言うんですか?」

 いや、ホント勘弁してください。そんな度数の高いお酒は飲めません。

「アレだお前。俺たちのことを馬鹿にしてるだろ? お酒が飲めないとか、とりあえず飲んでみなきゃ分からないだろうが?」

「そーですよ。……とりあえず一杯飲んでみましょうよ」

 いや、ホント無理です。僕はワイン一杯で爆睡して、翌日の昼まで起きなかった人間です。それ以来、僕の人生からお酒は消滅しました。

「いいから飲めって。ごたくはいいからさ」

「そーですよ。ほらほら、このワインすごくいいモノなんですから」

「んー……確かに美味しいけど、あんまり素人に薦めるのは良くないかと思いますよ」

 いや、だから無理だって。

 そんな押し付けられてもね、無理なものは無理だから。飲めないってば。

 とりあえず一杯じゃないからね。一杯飲んだらそれが命取りだからね。有坂、そんな頬に押し付けられても困るからね。あとコッコ嬢、勝手に僕の鞄を荒らすのはやめろ。財布と携帯とモンハンくらいしか入ってないから。獅子馬、テメェ普通に財布から札とキャッシュカードを出すな。本当にしばくぞ。

 ……おい、頼むからそれ以上ゲーム機をいじるな。大人にはやっていいことと悪いことがあって、多分それは悪いことに相当する。ただの暇潰しだけど、真剣な暇潰しとそうじゃない暇潰しがあってだね……。

 あれ? ちょっと待ておい。今……とんでもねーことしやがったか?


 ☆注意事項☆

 ここから、暴力表現が非常に多くなります。罵詈雑言、スラング、その他諸々の乱暴かつ過激かつ不適切かつ言葉の暴力表現が苦手な方はスクロールして次の話に飛んでくださいね♪


 はい、そういうわけでね! 作者権限(握った弱みで脅迫)で全員に正座させてるわけですけども、行き過ぎた酔っ払いは暴走する青春より性質が悪いっていうか、ぶっちゃけもう酔っ払いとかみんな死ねばいいのにね!

 酒を美味そうに飲む人間は全員頭パーンってなれ! ファック!

 嫉妬乙! でも、この怒りだけは止められない止まらない!

 そう思わないか? そこの気持ち悪いメイドマニア。

「……いや、その、すんません。調子こきすぎました。だから鞠には黙っててもらえると助かります」

 うんうん、分かってくれればそれでいいんだ。おにーさんも鬼じゃない。反省してくれればそれで不問にしようじゃないか。

 ところで、未だに自分のメイドのほっぺにちゅー(1回こっきり)までしか進行してないけど、それは悪質な放置プレイかなにかかな?

「えっと……なんつーか、未だに鞠とどうやって付き合っていけばいいのかよく分からなくてですね。それでまぁ色々と悩んだりと」

 舐めとんのか、キサマ。付き合ってる女の一人に真剣な顔で『なにも言わずにこれを着てくれ』ってメイド服差し出してる暇があったら、もっと真剣に生きろ。

「……有坂先輩。さすがにそれはちょっと」

「獅子馬。男ってのはな無理だって分かってても、やらなきゃならないことがある!」

 そんなにメイド服がお望みなら、ギャルゲーでもやればいいじゃん。

「ハ、なんにも分かっちゃいねぇな。そもそも、メイドってのはそんなに浅いもんじゃない。もっと奥深く深遠なもんなんだよ」

 家政婦に浅いも深いもあったもんじゃねぇよ、クソ白髪。

 もっとちゃんと現実を見ろ。お前の隣にいるアレはメイドでもなんでもなく、単純にお前を虐待することに存在意義を見出しているサディスティック星からやってきたメイド様以外の何物でもないだろうが。

 狐の隣にいる巨乳と比べてみろ。どっちがいいかは一目瞭然だ。

「……いや、まぁその辺は好みの問題でいいじゃねぇか。冥ちゃんもわりとSだし。それにえっと……鞠もそこそこ胸はある方ですよ?」

「というか、この物語に出てくる女の子って大抵胸大きいですよね?」

 なんだその目は。僕が巨乳派だとでも言うつもりか、クソ野郎ども。

 どっちかといえば巨乳派だが、そこまでこだわってるつもりはねぇよ。……というか、今のは僕に対する挑戦だと見ていいんだな? 僕が理想の女性像を登場人物に投影しちゃってるイタイ野郎だと、そう言いたいわけだな? 僕が何百回えろ可愛い女性が大好きだと言ってもまるで信じちゃくれないわけだ。

 よし、そういうことならいいだろう。女性の胸の話が出たから、同じような話題として、テメェらの股間の話でもしてやろうか。

 じゃ、サイズ的に最下位から発表――――。

『お願いやめてそれだけは絶対に駄目! 後生だから!』

 女性読者もいるし、そういう話題も気になるだろ? ほら、男ばっかり女性の胸やら腰やらの話で盛り上がるのもアレだし、でも筋肉の付き方とか背丈とかの話はクソつまんねぇから股間の話なら多少は盛り上がるだろうという、粋な計らいだぞ?

「だから、やめろっつってんだろうが! 18歳未満お断りにするつもりか!」

「そーですよ! いくらなんでもそれは軽く最後の一線を越えます!」

 ちっ、根性なしどもが。もっと挑戦する意欲を見せろってんだ。チキンが。

 あと、一応言っておくが僕は巨乳派だけど、登場人物のバランスはわりときっちり取ってるつもりだ。

「そーなんですか?」

 そうなんだよ。狐の周囲に胸のある女性が集まってるだけで、全体的に見ればそんなでもないぞ。

「ちなみに、比率はどんな感じで?」

 バストサイズとかよく知らないからテキトーだけど、多分以下のような感じ。


 大:梨本京子、橘美里、黒霧冥、高倉織、橘美咲(高校生時点)。

 中:山口コッコ、黒霧舞、芳邦鞠、有坂四季(桂木唯)、要嬢。

 小:獅子馬麻衣、高倉望(高校生時点)、ルゥラ=ラウラ、竜胆一族(女系)。


 ほらね、わりかしバランスは取れてるだろ。

 ちなみに、最小は竜胆家の次女がブッチギリ。最大は京子嬢か冥嬢。

 着やせする隠れ巨乳は美咲嬢(高校生時点)って感じ。

「……本当にバランス取ってやがるし。でも、舞に関しては小に属するんじゃねーのか? いや、実際の所はそーでもない。

 あの小娘はスタイルが際立ってるんだよ。物語中でもちょいと書いてあるけど、栄養学やら薬学やらの知識もあるから、カロリー計算なんてお手の物らしいよ。

 バストとアンダーの差が実際のサイズになるんだから、ぎりぎり中でもよかろうよ。

「しかし……読者様から異論が出そうな設定ですね」

 はっはっは、それじゃあコッコ嬢のサイズは小、もしくは無に変えておこうか? この世にはPADっていうモノもあるわけだし、強い要望なら僕も否とは言えないな。

「そういう意味ではなくて!」

 さっきも言ったケド、『ぎりぎり』って線も十分に考えられるから、おおむね自分の想像力の範疇内で的確だと思っていいと思うケドね。わりとテキトーなところもあるし。

 テキトーなので、気分によって変動させる可能性大です。イラスト化されていない小説なんてそんなもんなのさ。読者様のイメージ優先でお願いします。

「……相変わらずちゃらんぽらんですね」

 やかましい。さっき、酔ってレアアイテムを売ってくれた女に言われたくないわ。

 真剣な暇潰しを馬鹿にする人間に生きる資格とかないと思うんだ。

「いや、でもゲームですし」

 ……ほう? 言ってくれやがりますな、盆栽にはまってるばばくさい大娘が。

「ぼ、盆栽はいいじゃないですか! あれはあれでかなり楽しいんですよ! あと、大娘って言わないで下さい。なんか妙に傷つきます」

 あれはなにがどう面白いのか一切分からねーんだよ! なんで木を切るだけなのにあんだけ価値が出るの? 馬鹿なの? 死ぬの?

「切るだけじゃなくてちゃんと形を整えたり、最終的なイメージを想像しながらちょっとずつ成長させるのが楽しいんですよ! 相手は自然物だから思ったように成長してくれなかったりしますし、病気とかそのあたりもちゃんと気を使って!」

 その心配りを人間関係に使えええええええええええェェェェェェ! オメーは、人間に始まり、ナマモノを成長させるのはアホみたいにヘタクソなんだからよ!

 っていうか……デジタルとアナログと難易度の差はあれど、やってることはゲームとそう変わらないな。えらい地味だし。

「全然違います。一緒にしないでください」

 まぁ……そこまで強硬に主張するんだったら別にいいんだケドさ。

 あれ? そういえばふと思ったけど、君って基本的に一人か二人で酒飲んだりもしてるみたいだけど、宿の連中全員で飲みに行ったりとかしないの?

「……そ、それは、えーっと……貴方も一緒じゃないですか♪」

 いや、僕の場合は友人が全員県外に出てるし、先輩は忙しくて遊ぶ暇がないだけで、節目節目にはちゃんと飲み会とかやってるよ。酒は飲めないケド。

「……そうですか」

 えっと……とりあえず落ち着こう。

 なんでいきなりチェーンソーを持ち出すかな、君は。

「いえいえ……なんていうか、羨ましい話だなと思いまして」

 え? いや、わりと普通じゃないか?

 それにコッコ嬢だって別にいじめとかハブにされるとか、そういうのはないじゃん。むしろ頼りにされてるみたいだし。

「……頼られるのが、わりと重荷の時もありますヨ?」

 ちょっと待て。語尾がおかしい! あと半笑いのままチェーンソーを起動するな!

「お酒に逃げないとやってらんない時もあるんですよ! テンさんは基本滅茶苦茶なことしかしないし、冥さんも同じく滅茶苦茶だし、舞さんと京子さんはわりとまともだけど、時折ものすごいことやらかすし、悪ノリした美里も手に負えないですしね! いくらなんでも全員ぶんのフォローなんてできるわけがないでしょうが!」

 ああ、なるほど。そういうことか。

 それは確かに仕方がない。あの宿の連中と付き合っていくのは誰だって大変だ。少しばかりお酒に逃げたくなる気持ちも分かろうってもんだ。

 うん、確かに過去のツケとはいえ、今の状況は辛いだろうね。

「……作者さん」

 僕からはなにもできないけど、あえてこれだけは言わせてもらおう。

 ざまぁ♪ 山口さん本当にパネェッス♪

「………………」

 ヒャーッハッハッハ! そうやって一生煉獄の中を素足で歩いて、時折なんかものすごく幸せな気分になりながら微妙な気持ちで暮らしていくがいいよ! 何百回でも繰り返すけどそれが君にはとってもお似合い。一生報われないけど、一生幸せな人生ってのがサイコーにぴったりってもんだよ!

 君の気持ちは分かるけど、理解はできません。だって僕はお酒が飲めないから! 酒に逃げられる人間の気持ちなんざ理解できるわけがねーのさァ!

「……ああ、そうだ。いいことを思いつきました。殺しましょう」

 殺される前に、殺してしまえ、ホトドギス。

 僕を殺すと言うのなら、君が隠しておきたい狐とのラブイベントを全部暴露する!

「ならばその前に殺せばいいのですね!」

 甘いな、作者とは常に現実逃避気味にストーリーの続きを自動的に考える者だ。

 つまり……既に書き置いてある文章をコピー&ペーストするだけで済む!

 お題、数行で書けるラブイベントを発動! 君の動きは自動的に止まる!


「コッコさん、スイートポテト買ってきたんだけど食べますか?」

「あ、どうも。ありがたくいただきます」

「はい、あーん♪」

「………………えっと?」

「お仕事中みたいなんで、邪魔したら悪いかなと思いまして。はい、あーん♪」

「……あ、あーん……?」


 てな感じ。これくらいの軽くて甘いイベントだったらわりと書けるね。

「ぐっ……ひ、卑怯な!」

 甘いストックは千行を超える。ちなみに一行は四十文字だ。

「……ぬぐぐぐぐ」

 さぁ、どうする? 僕を殺すなら殺すで構わないが、自分が酷い目に遭うぞ!

 所詮君じゃ僕には勝てないのさ。あーっはっはっはっは!

「……楽しそうですねー」

「そーだな。俺ら忘れられてるけどな。というか、そろそろ帰りたい」

「じゃ、あの人たちは放っておいて私たちは帰りましょうよ。そろそろ文字数もまずいですし」

「おう」

「それでは、次の話に続きまーす♪」

「シーユーネクスト!」



 注意☆事項。

 上記のレアアイテム売却イベントは実際には自分には発生しませんでしたが、社員旅行中の後輩に発生したマジイベントであり、酒癖の悪い先輩に酔っ払った勢いで貴重なアイテムを全て売られてました。

 専門用語で言うと、溜め込んでいた天鱗と大宝玉を全部売られました。

 後輩は顔では笑っていましたが、心の中で泣いていたと思います。

 多分、後輩の心の中で、アイテムを売った先輩はミンチになっていたと思います。

 その後、心折られてなおゲームを続行した後輩の『装備作るまであとちょっとだったんだけどなぁ……』と言っていた時の横顔が忘れられません。彼は素材を全部揃えてから一気に装備を作る派なので、悲劇は倍増でした。

 たかがゲーム。されどゲーム。馬鹿だと分かっているけれど、真剣にやっていることには変わりありません。

 真剣にやってることを土足で踏みにじられれば、怒るのは当然です。

 どんなに馬鹿げたことでも、どんなに自分にとって価値のないことでも、です。

 ちなみに、後輩は社員旅行後にその先輩と目を合わせようともしませんでした。

 そういうわけで、お酒は控え目にネ!

 ……ホント、社長が持ってきた大吟醸とか洒落にならないほど美味かったんで、少しでも酒が飲める体になりたいっす。



 第十五話 修羅と羅刹とダイエット(惨禍編)


 ダイエット編完結。京子さんがみんなを薙ぎ払った話。

 ちなみに、この話で一番得をしているのは努力に見合う結果を出した、黒霧舞と空倉陸の両名になっております。

「……まぁ、それが理由でゲスト扱いなのは分かったんだけどよ」

「さっきから劇場の隅でへこんでる山口さんがものすごく気になるんだケド……」

 ああ、気にしないで。ちょっと度を越していぢめ過ぎただけだから。

 と、いうわけでダイエットの話なんだけど、舞嬢にはかなり縁がある話だね。

「まぁ、気を抜くとすぐに太っちゃうから。食べたぶんだけ運動すればとりあえず問題はないし、ストレス解消にもなって一石二鳥だけどね」

 凄まじいポジティブだね。世の女性が聞いたら発狂しそうだ。

 ちなみに、狐も似たような発想してるから困る。本当に殴りたい。

 陸青年はどうなのさ? とりあえず動いてれば太らない派?

「いや……太ったことないから、よく分かんねぇな」

「……うっわ、我が弟のことながら殺したいわ」

「というか、太ってる暇がない。下手に脂肪つけて虎子に嫌われるのは死んでも嫌だし、かと言って虎子ってあんまり自分の好みとか表に出さないしなぁ。太ってるのが好みってのはあんまりないだろうから、とりあえず現状維持で。あと身長がもうちょい欲しい」

 虎子嬢はトマトと柑橘類はわりと好みだけどね。

「お、そうなのか? じゃあ、今度はオムライスでも作ってみるかな」

 男の好みに関しては、虎子嬢の口から直接聞くといい。とりあえず、現状維持で頑張るのが一番の近道だとは出血大サービスで言っておくけども。

「ねぇ、陸。どーでもいいんだけど……アンタ、虎子と付き合ってからなんかこう……変わったというか、変貌したというか、化けたというか、馬鹿になったというか」

 尽くす男になったねぇ。

 尽くしがいのある女と付き合ってると、大体そうなるもんらしいけど。

「冥姉ちゃんに似たんだろ、多分」

 物語中じゃ、実は君ら一回も会話してないけどね。舞嬢ともだけど。

 一つの物語中で色々なストーリーを展開させていく関係で、陸青年は執事長よりのストーリーに組み込まれることが多かったから、仕方ないといえば仕方ないけど。

 狐側に組み込まれる時は鬼畜展開が多かったし。

「今回の話とかは、正直な所トラウマだしなぁ。冥姉ちゃんや庭の大魔神も含めた屋敷の精鋭に追われるんだぜ? 美里チーフがいなかったのが幸いだけど、あの後は悪夢に出てくることもちらほらだったし」

「うっわ、それは想像したくもないわ。そんなメンバーを京子さんがどうやって一網打尽にしたのか想像できないんだけど」

 罠を張って、一箇所におびき寄せて、睡眠ガスで眠らせたらしいよ。

 努力だけで伝説にまでのし上がった人だからね。そのくらいは平気の平左でやってのけるでしょう。そのせいで世界に嫌われちゃったわけだけど。

「……その定義ってよく分からないんだけど、詳しい話ってできるの?」

 あの、一応作者だから。そんな『こいつなんにも考えないでテキトーなことぶっこいてんじゃねーだろうな』っていう目で見ないで欲しい。

 京子嬢のいた世界ってのは、某嘘吐きが変貌した絶望に侵蝕されてしっちゃかめっちゃかになったってのはもう話したけど、京子嬢は最後の戦争で、その嘘吐きから肥大化した絶望を切り離す役目を担ってた。

 その前にも、主力級の絶望をロングレンジからばしばし吹っ飛ばしてた。

「確かにすごいけど、なんでそれで世界に嫌われるのよ?」

 世界ってのは命で成り立っていると思う。生まれて生きて殺して死んで。そうやって他者を蹴散らし、自己を育み、子供に後を任せて死んで行く。

 強くない者は滅ぶのが運命だ。

 とはいえ、それは悪いことじゃない。自然界だって強く在ることを推奨している。そして、強い存在を羨むことは、生き物として当然のことだと言える。

 もっとも……その当然を嫌う馬鹿野郎やお人好しが大多数を占めている世の中だから……誰かを犠牲にして自分が幸せになるくらいだったら、自分が犠牲になった方がましだって思える人間の方が多いから、世界は捨てたもんじゃないと思う。

 さて、話を元に戻すけど、世界にはこの通りたくさんの命がある。

 世界は命の履歴を蓄積する。生まれた時から現在まで、全ての命の誕生から終わりまでを、世界は蓄積している。絶望ってのは、その中でもわりと強い部類に入る『想い』の一つだ。……なにせ、幸せになれる人間の総数は常に決まっている。

 幸せになれない人間の方が圧倒的に多い。

 現に衣食住全て揃っているのに、自分は幸せじゃないと思っている人間が大半だ。もちろんそれは僕も含んでの話だけど。

 この物語に限らず、この世界での『絶望』ってのはね、そういうエネルギーを世界から引っ張り出して増幅させるシステムの総称だ。

 絶望に共感し、絶望を世界から引っ張り出す素質を持つ人間に種は寄生し、その人間を媒体にして世界そのものを血と絶望で染め上げて、世界そのものの絶望の総量を一気に肥大化させる。

 その結果は……空気を入れすぎた風船を見れば分かるだろう。

「で……結局なにが言いたいのよ?」

 分からないかな?

 一人の人間が、世界の絶望全部と渡り合って、勝ったんだ。

 普通の人間が英雄に畏怖を抱くように、世界がその人間に畏怖を抱いても仕方がないことだと、僕は思うケドね。

 強過ぎる存在は排除される。これも当然のことかもしれないけど。

「……なるほどね、合点がいったわ。納得はいかないけど」

 ま、世界にしろ人にしろ、行き過ぎれば疎まれるのは共通ってことさ。

 世界は人より懐が少し広いだけ。京子さんがいた世界よりも、こっちの世界の方が懐が広かっただけ。

 最終的には悪くない結果に落ち着いたんだから、それで良しとすべきかな。

 最近はわりと楽しそうだし。

「そーだな。姉御は屋敷にいた頃より暇してるけど、楽しそうだったかな」

「京子さんは暇そうなのがちょうどいいのよ。暴走したテンや冥ちゃんを止められるのはあの人くらいなもんだし、なによりレパートリーが増えて私的にも大満足」

「……あんまり食うとまた太るぞ」

「ぐっ! ……り、陸? ちょっと、おねーちゃんに対して失礼すぎるわよ!?」

「事実だろ」

 指摘してはいけない事実もある。そうじゃない事実もある。

 もっとも、確信犯の場合はどうでもいいことなんだけど。

「どーせ太らないしな、舞ねーちゃんは。誰の目を気にしてるのか知らないけど」

「みんなの目に決まってるでしょうが! 大体、痩身ってのは女の子全員が抱える、生涯に渡って付き合っていかなきゃいけない問題なんだから!」

「……あー、はいはい。そーゆー設定だったな。すっかり忘れてたよ」

「ふーん……そーゆー態度に出るんだったら、私にも考えってもんがあるわよ。アンタのあれやこれや、虎子にばらしちゃってもいいのかしら?」

「はっはっは……お姉さま、本当にすみませんでした」

「弱っ!」

 いや、まぁ普通に考えて彼女にあれやこれやいいふらされたくはないでしょ。

 君らみたいに、いい所も悪い所も腐ってる所も全部見てるわけじゃないんだし。

「テンにいい所なんてあったっけ?」

 一つや二つくらいは思いつくでしょ。そこそこ長い付き合いになりつつあるし。

 で、正直な所はどうなのさ?

「んー、嫌いな所はたくさんあるけど、強いて気に入ってる所をあげるなら……今はあんまり見かけないけど眼鏡ってのもなかなか悪くなかったし、甲斐性はあるし、さりげなく料理とか超美味しいし、一緒にいて不愉快なことも多々あるけど基本的に退屈もしないし、あんまりしたくないけど頼み事をすれば100%なんとかしてくれるし、失敗を指摘すると慌てふためく様がわりと可愛いというか……」

「なァ、作者さんよ。聞けば聞くほどあのにーちゃん、なんでもできすぎねーか?」

 年季が違うから仕方ないよ。女性の扱いに関してのみ、あの狐の右に出る者はほとんどいない。

 世界最強の過剰な愛情に耐え切り、相川ハーレムから見事生還し、ドメスティックバイオレンスを受けながらあの屋敷を切り盛りして、あの面子で現在宿屋を経営してるという気持ち悪い経歴を積み上げてる狐だからできることであって、決して常人が真似できることじゃない。普通だったらとっくに自殺しててもおかしくないし。

 女性を手玉に取る性根が腐った男は吐いて捨てるほどいるけど、『女性に利用される』ことを至上の喜びにできる男はそういない。そういう意味では最低だし、最高だとも言えるのがあの狐だ。

 ホンッ……ト、心底殴りてぇわ。

「……というか、なんで嫌いなタイプの人間を主人公にしたのよ? そのせいで山口さんを始め色々な人が苦労をする羽目になってんじゃないの」

 んー……まぁ、嫌いな人間ならどんな目に遭っても心とか痛まないじゃん?

「………………」

 それが理由の第一で、あとは単純に対比。

 コッコ嬢を心の底から駄目人間に設定したから、その対比で相方となる坊ちゃんは、高校生とは思えないようなしっかりした人間であるように設定しただけ。

 才能溢れるけどサボりまくる女と、才能はないけど努力に生きる男。

 黒霧姉妹や、京子美里ペアあたりも対比でキャラクターを構築してある。

 冥嬢は救われた者。従う者。単純一途な想い。

 舞嬢は救った者。従わぬ者。複雑な親愛。

 京子嬢は立ち向かった者。ひねくれた者。諦観。

 美里嬢は逃げた者。甘える者。執念。

 他にも色々あるけれど、代表的なのはこんな感じだね。

「なんか……面倒なコト考えてんのね、アンタって」

 面倒なコトは大抵楽しい。どんな趣味や仕事にも言えることだけど、ツボにはまれば、楽しささえ理解してしまえば、あとの苦痛はわりとどうとでもなるもんだ。

 面倒や苦痛が楽しさを凌駕した時が、仕事の辞め時ってことだろう。続けられる仕事ってのは大抵の場合責任感やら充実感があるからできる。

 弁当にごま塩を振るだけの仕事とか、責任やら充実とはかけ離れてるから誰もやりたがらないんだよ。

 まぁ、それはそれとして、僕の場合はどんなに面倒だろうが主人公をいぢめるためならなんでもやりますよ?

「……鬼畜がいるわ」

「にーちゃんも大変だったんだなぁ……」

 はっはっは、場合によっちゃ舞嬢あたりは主人公になっていた可能性も高いからねぇ。ちゃんと奮起してくれたコッコ嬢に後で感謝しておくように。

「いやまぁ……感謝はしてるけどさ。昔はそうでもなかったけど、今じゃウチの宿のエースだし。テンを素で止められるのは山口さんくらいだし」

「……ハハ、すげぇなそれ。冗談抜きで尊敬する」

 と、まぁ話題が尽きないからとりあえずこの辺で次の話に移ろう。

 ……実はもうそろそろ文字数がやばい。あと一話が限度だ。話数的にあんまり進んですらいない。このままじゃ約束を果たすのが先延ばしになってしまう。本編前にもう一本書く予定だというのに。……おかしいなぁ、もうちょっと文字数を節約するつもりだったんだけど、なにを間違えたんだろう? 

「全部じゃない?」

「全部だろ?」

 身も蓋もねーな、君ら。

 ま、いいや。それじゃあ次の話に行きまーす。しーゆーねくすと♪



 第十六話 僕と彼女と温泉旅行(前編)について。


 温泉に行こうの話。

 狐野郎がロリ巨乳に萌える話。とはいえ、ロリといえどあの狐は基本的に可愛い年上が好きなので、京子嬢との相性はばっちりなのだった。

「ロリじゃねぇっつってんだろうが。しばくぞ」

 はい、そういうわけで今回のゲストは、さっきにゃーにゃー言ってた京子嬢。

 司会進行は田山歴史と復活したコッコ嬢でお送りします。

「山口。あたしはあいつをぶっ飛ばしたい。本気で殴りたい」

「……殴ると出番が増えるそうです。まぁ、私にはあんまり関係ないんですけど」

「嫌な脅迫だな、それ」

 主人公だから仕方がない。京子嬢も主要キャラクターだから仕方がない。

 この話で、京子嬢が運転手になってるのも、狐が未成年だから仕方がない。

 いっそ電車でもいいかなと思ったんだケド、尾行が面倒なので却下しました。

「あー……そういえば、京子さんって車運転できたんですね」

「エンジンさえついてりゃ大体なんでも運転はできる。免許はないけどな。……ま、無免許でも美里の運転より安全なのは保障するけど」

「……あの人のアレは運転じゃありません。暴力の一種です。あと、車の違法改造はもっと処罰をきつくするべきです。むしろ死刑でいいと思います」

 そんなことしたら、かなりの数の走り屋が死に至ると思うケド……ま、いいか。

 それには僕も同意見だ。車を改造する奴は死ねばいい。

 スピード出しすぎの奴も死ねばいいし、やたら後ろから煽ってくる奴も死ねばいいし、ウインカーをつけずに車線変更する奴も死ねばいいし、自分だけは大丈夫とか意味の分からないことをほざいてバックミラーを封殺してる奴も死ねばいい。道路を自転車で走っているおじいさまやおばあさまは火葬場に行け。シートベルトを締めない奴は死ね。空気読まずにチンタラ走ってる奴も死ねばいい。あ、それは僕か。死ねばいいのかな、僕。

 みんなーしねばいーのにー!

「作者さん。このまま発言を進めると読者様からものすごい批判が来る予感がぷんぷんしますが、なにかあったんですか?」

 ……ジェットコースターって、超安全だよね。

「へ?」

 だって、滅多に事故らないもん。事故を起こさない乗り物は、みんな安全だよ。

 いや……むしろ逆に考えよう。事故を起こす人間がみんな死んだらええんや。

 みんなーしねばいーのにー!

「……あの、京子さん。これ、どうしましょうか?」

「まぁ……気持ちは分からないでもないかな。山口は運転上手いからあんまり実感ないかもしれねーけどさ、事故った時、人間って『あ……こりゃ死んだな』って思うもんだからな。恐怖や絶望なんてどこにもねーぞ」

 友人が見栄を張ってスピードを出しました。

 事故りました、と。

 教習所でさ、時速40キロ(衝突した時の速度。友人の自己申告なので実際の速度は不明)でぶつかった時の衝撃体験とかやればいいのにね?

「いや……『ね?』とか言われても、私には分かりません」

 まぁ、そりゃそうだろうね。コッコ嬢って事故ったことないし、それ以前に車で外出することもあんまりないし、あの狐とのデート回数も数えるほどだもんね?

「……それが、今の、話題に、なにか、関係が?」

 今回の話は京子嬢と野郎とのデートの話だからねぇ。関係あると言えば、ある。

 例えば、今回の京子嬢のように大人っぽい妖艶な服装で迫れば、あの狐には効果は抜群ではないかと愚考するわけなんだけど、どうだろう?

「む、しかし黒ビキニはちょっと恥ずかしいのですが」

「……あのさ、山口。なんかさりげなーく、あたしのことを馬鹿にしてない? 確かに今回の話だと黒ビキニだったけどさ」

「いえいえ、馬鹿にはしてません。京子さんにとっても、天弧さんが顔を赤らめたりするのは、かなり意外なリアクションだったでしょう? ……まぁ、胸は正直反則なので、仕方ないと言えば仕方ないでしょうけど」

「人の価値を胸だけに見出すのはどうかと思うんだが! っていうか、舞みたいにやたら凝視すんな!」

 あの狐はロリコンだから仕方ないよ。

「誰がロリだ、コラ。いくらあたしでも我慢の限界ってもんがあるぞ?」

 いだだだだだ! すみません、調子こきました。足の甲を踏みつけてぐりぐりするのはいぎゃあああああああああああああああ!

「年下に見られるのも、そういう扱いも慣れてるけどな、それを言った野郎がどうなったのか、身を持って教えてやろうか? んん?」

 いや、結構です。間に合ってます。そういうのは人として良くないと思います。

 まぁ、登場人物で一番『小娘』って言葉から逸脱した人だからね、京子嬢は。そういう意味では、あの狐が惚れてしまうのも致し方ないかと。

 年上大好き、高倉天弧。嫌いなのは頭がいいくせに馬鹿を装っている年下と、甘えたがりの大人全般。自分に甘い人間に厳しく、自分に厳しい人間には甘い。

 小生意気な同級生とか健気に頑張る女性は全般的に大好きらしい。どれくらい好きかっていうと、一生賭けて尽くしてしまう程度。

 同級生や普通の女性にもてないのも、頷けるってもんだろう?

「それって、ある意味捻くれ者だよなぁ」

 仕方ない部分も多々あるケドね。さっきも言ったケド、あの野郎が辿った道筋を常人が真似しようと思ったら、十回程度自殺しててもおかしくない。

 相川ハーレムとかセクハラされ放題だもの。下手にプライドが高い男性だと、翌日には泣きながら引きこもりになっててもおかしくないね。あれに比べれば、屋敷の君たちなんてちょろいちょろい。

「……具体的に、どういうことされたんだよ?」

 んー……言葉では表現しにくいので、音声のみをお送りしようか。

 では、ショートショートでGO。


『テン、明日の夕飯なんだけど、やっぱりハンバーグがいいと思うの』

『………………』

『あら、鳩が機銃で掃討されたような顔をしてるけど、どうしたのかしら?』

『いやそれどう考えても原型も残らないだろ。それより……ナギねーちゃん。一応言っておくケド、僕は今風呂に入ってるんだけど、それは分かってる?』

『ええ、分かってるわ。思ったよりいい体してるわね。それより明日の夕飯のハンバーグのことなんだけど……』

『それより!? 今のセクハラ行為がハンバーグより優先順位下なの!?』

『当たり前じゃない。私は他の料理はともかく、ハンバーグには美学を持つ女よ。ふわふわの手作り以外は、絶対に認めない』

『…………牛のひき肉から作れって言われても、無理だよ?』

『そこまではさすがに言わないわよ! えっと……とにかく、冷凍とかレンジでチンとか既製品とか、そういうものは一切認めないわ!』

『いや、既製品は高いし使わないよ。まぁ、明日は別にハンバーグでもいいけどさ、どういうハンバーグがいいの?』

『……どういうって?』

『煮込みハンバーグとか照り焼きとか色々あるでしょ。煮込みにしてもケチャップと和風タレとか色々バリエーションもあるし、照り焼きって言っても上に大根おろしとか半熟の目玉焼きとか工夫の余地はあるよ。カレーライスにハンバーグって手もあるし。普通のハンバーグしか認めないって言うならそうするし』

『…………にやり』

『なにその悪人みたいな笑顔。超怖いんだけど!?』

『別になんでもないわ。《バックアップ》とか《オルタナティブ》とか《キープ》とか、そういう言葉を思いついただけだから。いやぁ、お兄ちゃんもわりと便利な人だけど、それ以上に便利な弟分がいるってのはいいことよね♪』

『ふーん。……ま、ナギねーちゃんがにーちゃんの代替品で満足できる人なら、僕としては一向に構わないけどさ』

『えいっ』

『ちょ、冷っ!? 待てばか、いくらなんでも放水は反則だろ! 後で風呂に入る人間の立場になって行動しやがれ! あと、僕が風邪を引かないかとか!』

『前々から思ってたけど、テンって……他人のことしか考えてないわよね?』

『は? そんなわけないだろ。付き合ってる女の子とかもいないし、僕は僕なりに、ちゃんと自分が楽しいかったり嬉しかったりすることを考えてるよ』

『例えば?』

『んー……僕が作った料理をみんなに美味しいって言ってもらえるのは嬉しいと思う』

『………………』

『ナギねーちゃん? なんか、すごく微妙な表情浮かべてるけどどうしたの?』

『黙りなさい。ったく、思わず年下に萌えてしまうところだったわ。危ない危ない』

『?』

『ま、細かい所はいいか。明日の夕飯はテンの裁量で好きなハンバーグにしていいわ』

『ハンバーグは外せないんだね。……それじゃあ、和風おろしハンバーグにする』

『ん、味は期待しておくわ。それから、お風呂から上がったらちょっとおねーさんに付き合いなさい』

『言っておくけど、僕は晩酌には付き合えません。風呂を借りることになったのだって、ミナねーちゃんが僕にぶちまけたせいだし。……そもそも未成年が酒を飲むなよ』

『大した用事じゃないわよ。ちょっと聞きたいことがあるだけ』

『……まぁ、それならいいけどさ』

『じゃ、また後で』

『はいはい。今度はノックなしでいきなり入浴を覗かないようにね?』

『保障はしかねるわ』

『いや、そこは保障しろよ!』


 はい、そういうわけで中学生のワンシーンでした。

 ちなみにこの後、抱き枕派のナギねーちゃんがどういう行動を取ったかとかは読者様の想像力にお任せしたいと思います。

「……作者」

 なんでしょうか? 口元引きつらせっぱなしの京子嬢。

「なんつーか……あたしも人のことは言えないけどさ、今の回想って、テンの情操教育に多大な悪影響を及ぼしてるような気がするぞ?」

 うん、そうだね。プロテインだね。

 それじゃあ、今回はこの辺で終了として、次回にサクサクと続きます〜♪

「冗談もそれくらいにしとけや? あたしも鬼じゃねーから、ちゃんと説明すれば命だけは勘弁してやっから」

 あの……さすがに火のついた煙草を押し付けようとするのはどうかと思う。

 悪影響なんて及ぼしまくってるに決まってるじゃん。世界最強と相川ハーレム、それからバイオレンスコッコ嬢によって、狐の『女が苦手』ってキャラクターが形成されてしまったわけだし。

 可愛いけど、わりとざっくばらんな京子嬢と、世話を焼かなきゃいけないキャラクターである由宇理に対しては苦手意識は薄かったようだけどね。

「……そんなもんか」

 そんなもんだよ。ま、辿って来た道筋はともかく、今が幸せならそれでいいっしょ?

 責任者は他にいるわけだし、今はそっちの方に丸投げしてもOKなわけだし。

「責任者って、私ですか?」

 その通りだコッコ嬢。あの狐を作ったのは君だ。責任は取るべきだろ?

 まぁ、言われなくても分かってると思うケド。

「分かってますよ、それくらい。何回も繰り返さなくてもいいです」

 ん、分かってるならそれでよし。前回、いぢめ過ぎたからいじるのは勘弁してあげよう。

「……ふん」

 じゃ、そういうことで次の話に続くってことで、今回は終了。

 次回をお楽しみに♪



「……で、一応聞いておくけど、アンタ実は山口のこと嫌いじゃないだろ?」

 僕は、大多数の例に漏れず優しい人間が好きなんでね。

 あと面白い人間もわりと好きだ。遠くから見てるぶんにはコッコ嬢はとても面白い。

 作者の立ち居地は基本傍観者だ。精々遠くからにやにやさせてもらうとするよ。

「やれやれ……後でテンに怒られても知らないぞ?」

 望む所だよ。

 それに、あの野郎には、まだちょいと仕事が残ってるからね。それを説明する上でもちゃんと怒ってもらわないと困るな。

「仕事?」

 もう終わってることだけど、これから解説することだけど、伏線は活かさないとね。

 旗を叩き折るのは、いつだって普通の人間だってことを証明するんだよ。

「……旗、ねぇ」

 ま、京子嬢にはあんまり関係ないし、これは僕ともう一人しか知らない物語だ。

 全部終わって、本編が始まる前に、物語の原初を語る。

 ありきたりなことだけど、悪くはないんじゃないかな?

「ハ……物好きめ」

 だからこそ物語を書くんだよ。

 ただ、時間がないとやっぱり書けん。ついでに金になれば嬉しいんだケドなー。

「……思いっきり金の亡者じゃねーか」

 じーさんが残したボロ家はわりと快適だけど、台所回りと風呂をリフォームしたいから金はいくらあっても足りないんだよ。

 別に服や趣味に金をかけるわけでもなし。貯めておいて損もない。

「……まぁ、頑張れ」

 おう。精々来年も愚痴と血を吐きながら頑張るさ。

 僕にはそれくらいしかできねーからな。

 と、いうわけで来年もよろしくお願いします。しーゆー♪

……えっと、そういうわけで多分五話編成くらいになると思われるあとがきのパート2でした。

あとがきでこんなに文字数使ってる自分の精神構造を疑ってしまいますが、もう少しお付き合いください。

少し早いですが、新年明けましておめでとうございます。来年もまったりと書き進めていきますが、よろしくお願いします♪

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