【If】 ヒロインside
【追記しました!】
少しだけ百合っぽさを加えました。ついでになぜかややヤンデレになりました
【注意!】
ヒロイン、舞ちゃん視点です。
一応舞ちゃんが恋愛感情を持っていたらifですが、ほとんど通常通りで、期待に添えるほど百合要素はないです
「舞ちゃん、みてっ」
結奈ちゃんに会えてよかったとこういうときよく思う。
「どうしたの?」
「ほらほら、あの人だよ!」
結奈ちゃんは心なし嬉しそうにカートを運ぶ人に視線をやる。
「ほら、前言った清掃員の四島さん!」
「あの人が?」
四島さん。確か学校案内の時に結奈ちゃんが尊敬できる掃除のプロなんだよ、と楽しそうに話していた人だ。
そのあと結奈ちゃんと四島さんが掃除した場所を探したっけ? 楽しかったなぁ。
「あ、でも今忙しそうだから放課後ね。放課後はゆっくり掃除してるはずだから」
「詳しいんだね?」
ふふっと笑い声が漏れた。
ああ、結奈ちゃんのこういうちょっと変わった所も好きだなぁ。
鈴蘭生だからって肩を張ってなくて、自然体で。
結奈ちゃんはすごい。
鈴蘭学園はいわゆるお嬢様、御曹司様の通う学園だ。
親の力関係。商売上の付き合い。普通の学校よりあちらこちらに見えない線引きがたくさんある。
もちろん結奈ちゃんもそんな線は持っていて。
私や他の人にとってはそれは国境線。でも結奈ちゃんにとっては、もっと気軽に越えてしまえるものなんだろう。たとえば近所さんとの境とかその程度の。
結奈ちゃんはこの学園でトップクラスの権力者である三条瑠璃様と仲が良い。その事実だけでここでは大きな力になる。なのにぜんぜんそれを誇示しない。「庶民根性が根付いてるの、恐れ多い!」なんて台詞で高価なプレゼントを贈ろうとする三条様を制して笑ってる。
三条様に次いで力をもった派閥の子とも普通に話してる。三条様の権力が大きいせいで目に見える権力争いはないけれど、それでもギスギスしてはいるのに。
『庶民』
差別されそうなその立ち位置を結奈ちゃんは何にも縛られない自由なものにしてしまう。
それって、すごく素敵なことだ。
鈴蘭学園に転校すると決まったとき不安で仕方なかった。
ここでは学園のことが学園内では終わらない。学園内の失敗はそのまま家の影響に直結する。権力者の機嫌を損ねて被害に遭うのは本人だけじゃない。だから、親もそう教える。
“あの家に上手く取り入るのよ”“多少の理不尽は我慢しなさい”“貴方は立場が上なんだから好きに使いなさい”
怖かった。私の知る鈴蘭はそういう思惑に満ちたものだったから。
どうしたらいいの? 私は庶民なのに。怖い。嫌だ、って立ちすくんでしまいそうだった。
けど結奈ちゃんが居てくれた。煌びやかな校舎にさすがお金持ちは違うと、侮蔑を込めて線引きした私に新しい風を吹き込んでくれた。楽しそうだと思わせてくれた。浮いてしまいそうになる私を輪の中に入れてくれた。高価な学食が食べられないからと作った貧相なお弁当を美味しいと言ってくれた。不安でべったりひっつく私を可愛いなぁと笑ってくれた。
―――そういう所に、惹かれた。
鈴蘭に来るまではこんな熱情、知らなかった。
一緒にいて緩む頬を。誰かと話している所をみると険しくなる眉間を。瞳にこもる熱を。制御出来ない。
この感情が間違いだというのなら、それでもいい。
彼女に恋をした。この子が唯一だと私はもう決めてしまった。
結奈ちゃんのおかげで毎日が楽しい。毎日楽しく登校できるのは、結奈ちゃんのおかげ。
結奈ちゃん。本当はね? どうしたら私だけに縋ってくれるのか、私以外を見ないでくれるのか、そんなことばかり考えているの。
でも抑えるよ。私は自由な結奈ちゃんが好きだから。
そのかわり、私から離れていかないでね。仲良くしてね。
離れていくのならきっと、私は貴方を逃がさないためにどんな方法でもとってしまうから。
今日は三条様と入れ替わりで結奈ちゃんが私とお弁当を食べる日。結奈ちゃんの前に手作りの弁当を広げた。
「わぁぁ可愛い! これが女子力か。まぶしいよ舞ちゃん」
「ふふ。どうぞ召し上がれ」
結奈ちゃんに喜んでもらえるようにいつもより頑張った甲斐があったよ、と言うと結奈ちゃんが口元を押さえてうつむいた。
どうしたんだろう?
たまに結奈ちゃんはこういう反応をすることがある。未だによく分かってないけど多分喜んでくれてるんだよね?
落ち着いた結奈ちゃんがにこっと笑っていただきますと手を合わせた。こういう細かいところでしっかりとしている所も好き。
少しさまよった箸が卵焼きを選ぶ。
「んー、やっぱり美味しい!」
「そういってもらえると嬉しいな」
結奈ちゃんの笑顔がまぶしい。ああ、幸せだなあって思う。
「舞ちゃんはいいお嫁さんになるよ」
「本当? じゃあ、結奈ちゃん貰ってくれる?」
「喜んで! こんな可愛いお嫁さんなら大歓迎だよ!」
「やった。よろしくね」
ねぇ、結奈ちゃん。
言質はとったよ?