男子談義
下ネタ、なのかもしれないです。
放課後の屋上に足を運んだ二人は、壁にもたれて座った。日が差した場所で、暖かい。風が緩やかに吹いている。サッカー部のかけ声、車のエンジン音、他にも外の音が自然と、二人の耳に入ってきた。フェンス越しに見える二つの丘は、まるで、
「なぁ。あれ、おっぱいに見えね?」
佐伯が言った。二人が座って、ちょうど前に見える丘を指さした。景色をぼんやり見ていた加藤は、「確かに」とつぶやいた。さらに、
「おまえ、おっぱい見たことあんの?」
加藤が訊いた。
「……ないな。生は」
「ふうん」
二人は小さく息をついた。飛行機が空高く、ゆっくりと進んでいく。
「お前は?」
佐伯は加藤に目をやった。
「は?」
「見たことあんのかよ。おっぱい」
「おまえのおばさんのおっぱいなら、揉んだことあるよ」
加藤はさらっと言った。
「……まじで?」
「嘘に決まってんじゃん」
「だよな」
佐伯は胸をなで下ろした。いくら何でも、あり得ない話だが、内心びっくりしていた。
「倉崎のおっぱいなら、触ったことある」
「マジで!?」
佐伯は思わず、加藤の胸ぐらを掴んでいた。右手はグーの状態だった。しかし加藤は平然とした顔で、
「嘘に決まってんじゃん」
と言って、にやりと笑った。
「だよな」
肩を並べて、二人は座り直す。飛行機は東の方へ行ってしまい、空には小さな雲が一つだけ浮かんでいた。女子ソフトボール部のかけ声が聞こえてくる。
「倉崎、今日も元気だな-」
佐伯は横になった。ごろんと寝転んで、目を閉じる。より彼女の声が聞こえるように。
「そこがいいんだろ」
隣にあるケツをペチンと叩いて、加藤は言った。座ったまま、加藤も耳を澄ます。
「だよな」
二人は走る倉崎を想像した。大きな声で「オーファイッオ、ファイッオ、ファイッオ-!」と叫ぶ笑顔。上下に動くたびに、踊るような胸。佐伯は、ふと気づいた。
「あのかけ声さー。『おーぱいっお、ぱいっお、ぱいっおー!』に聞こえね?」
「それは違うだろ」
「だよな」
今日も二人は、彼女を想いながら、待つのであった。