おりがみ
僕がまだ小さいころ、おばあちゃんに折り紙を教えてもらっていた。
『おばあちゃん! おってー!』
買ってもらった色とりどりの折り紙を持って、こたついる、おばあちゃんの懐へ飛び込んだ。おばあちゃんは箪笥の匂いがした。僕はその匂いが好きだった。
『はいはい。今日はなにを折りましょうねぇ?』
隣に座った僕に、優しい声で語りかけてくれた。
おばあちゃんは、なんでも折ることができた。ツルはもちろん、カメ、カブト、コイ、金魚。どれもきれいで、丁寧に作られていた。
『あたらしいの!』
『そうねぇ。じゃあ、箱を作ってみようかねぇ』
おばあちゃんは微笑んで、僕の顔を見た。
『ハコ?』
僕はきょとん、としていたと思う。折り紙で箱を作れるなんて、知らなかったのだ。
『そうよ。さ、好きな色をお選び』
『これ』
僕は、緑色の正方形の紙を手渡した。
『もう一枚』
僕はもう一枚、同じ紙を渡した。
おばあちゃんは、折り始めた。折るときは眼鏡を外して、指先に集中する。その姿が、なんとなくかっこよくて、僕はわくわくした。どんなものができるのだろう。一枚の紙が、形を変えていくのを、じっと見つめた。そして、それは完成した。
『はい。でき上がり』
できたのは、正方形で蓋のない箱だった。一辺が五センチメートルくらいで、思っていたよりも小さかった。僕はそれを手に取ると、おばあちゃんに言った。
『ふたがないよ?』
『そうね。ふたは、あなたが折りなさい』
おばあちゃんは、さっきの緑の折り紙を、僕に差し出した。
『わかった!』
僕はおばあちゃんの膝の上に移動する。教わるときは、いつもおばあちゃんに手を添えてもらっていた。手の動きを教えてくれると、わかりやすいのだ。
おばあちゃんは「こう。こう。こうして。こう」と僕の手を操る。わかるところは、自分で手を動かして折った。角と角を合わせたり、折り目をつけたり、少し難しかったけど、なんとか折ることができた。
『できた!』
『はい。よくできました』
おばあちゃんが頭を撫でてくれた。僕は嬉しくて、おばあちゃんに寄りかかる。
『貸してごらん』
僕の作った箱と、おばあちゃんが作った箱を、両手に持った。僕のは形が変で、おばあちゃんのより、一回り小さかった。でも、そのおかげで、
『あ! おばあちゃんのが、ふただった!』
『そうだねぇ』
箱と箱の口を合わせて、一個の蓋つきの箱ができた。僕は箱を開けた。
『なにを入れるの?』
空っぽの箱の中を見て、僕は言った。
『なにも入らんよ』
『えー!』
おばあちゃんは、笑っていた。
今では、僕の作った箱のほうが、大きくて、蓋になる。




