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奇跡終焉

 世界が終わる日。

 高いビルに登り、遠くを見たかった。

 行ってみるとそこには、男の子がいた。たぶん私と同い年。音楽を聴いているうしろ姿は、どこか懐かしい雰囲気があった。

 私に気づいた彼は「どうぞ」と言って、イヤホンを外しながら、隣を指す。

 彼の右隣に腰を下ろす。遠くに海が見える。

「今日、この世界が終わるって」

 知っている。テレビで見た。たぶん全国民が知っていて、今ごろ必死にどこか安全なトコロへ逃げているだろう。車や電車、飛行機やら船まで、すべての乗り物がフル稼働している。

(信じてない人もいるみたい)

 ここの町は特に、海が見えているから、ほとんどの人たちは、どこかへ行ってしまった。道路には一台も車が走っていない。

 あっ ようやく見えた。高さ九十メートルの波。こんなに遠くにいる私にも見える。

「ムダなのにね。どこへ逃げたって、この世界すべてが終わる」

 彼が言った。

「おかしいね。こんなにもあっさり、世界が終わるなんて。私たちって何のために生きてきたのかな」

 私はここ最近、いつもそのことを考えていた。

「僕たちが出会うためじゃないかな」

「え?」

「僕たち、今まで別々の人生を歩んできた。たくさんの偶然が重なって、今があるんだ。でもそれは結果として、必然なんだよ。きっと。僕は、君と出会うために、今まで生きてきたんだと思う。だって」

 彼は、私の顔を見た。

「だって、この世界が終わるって知らなければ、君とは出会えなかったわけだし」

 思わず吹き出した。

「はっははは!」

 不思議な人。面白い人。出会えてよかったと思う人。

 彼の右耳と私の左耳にイヤホンをつけ、二人で音楽を聴く。

 この世界が終わるまで。

一年前の僕より。

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