プリーズ
『追い逃げ』に登場する広子と和美です。
ヒロコ、カズミとして再登場。
彼女ら二人で連載を検討中です。
学校に着いてから、ヒロコは筆箱を忘れたことに気がついた。こんなときこそ頼れる友人、カズミの出番である。
「カズミー、シャーペン貸してー」
「むりぷー」
「ぷ?」
頼れなかった。ではなく、
「ぷー、って何なん?」
ヒロコは首をかしげた。カバンから教科書やノートを出していた、カズミはいったん手を止めて、
「知らん。なんとなく」
ヒロコの顔を見て、答えた。また机の中に、教科書を入れていく。
「なんとなく、かー」
「うん」
「やなくて!」
カズミの肩につっこみを入れるヒロコ。カズミは、へ? という顔でヒロコを見た。
「シャーぺン貸してや! 筆箱、家に忘れてん」
「いやぷー」
口笛を吹くように唇を尖らせて、カズミは家から持ってきたコミックを取り出した。そのまま読み始めるカズミに、ヒロコが聞く。
「なあ。ぷーって何なん?」
「知らんって」
「ふーん」
知らんのに使うなや! と口に出しかけたが、思い直した。気づいたのだ。これは試されている、と。普通にシャーペンを借りたのでは、なんの面白みもない。それでは貸すのも、つまらない。『私を楽しませてごらんなさい! オーホッホッホ!』という、カズミからの試験なのだ。
ならば、と、さっそくヒロコは行動に移した。一度自分の席に戻り、借りるのを諦めたそぶりを見せる。そのまま大きくUターンし、こっそりとカズミの背後へと忍び寄る。親指と人差し指を立てて、右手をピストルの形にする。人差し指をカズミの後頭部に当て、耳元にささやく。
「騒ぐなや。死にたなかったら、大人しくブツを渡してもらおか」
すると、カズミは両手を挙げた。左手にはシャーペンを持っていた。
「ええ子や。今日一日借りるで。サンクス」
シャーペンを奪い取ると、ヒロコはさささっとアジトへ戻った。
一時限目の授業が始まってから、気づいた。ヒロコが渡されたのは、ボールペンだった。
ミスを許されないのは、言うまでもなかった。




