静寂な朝
※血が出る内容です。こんなはずでは、なかったのですが。
これは夢の話。
場所は図書館。三階建ての大きな図書館。ダークブラウンの本棚がずらりと並んでいる。
時はお昼前。正午まで、あと三十分もない時間。
「おい! 起きろ!」
床で横になっている『僕』の体を、『男子』が揺すった。『男子』のもう一つの手には、アサルトライフル。切羽詰った様子で、もう一度言った。
「起きろって!」
「なに?」
『僕』は目をこすって、体を起こした。『僕』の手にも、アサルトライフル。
「このままじゃ全滅だ」
「は?」
天井に届きそうなほど高い本棚の陰に隠れ、『男子』は顔だけをのぞかせる。
「何言ってるの?」
「寝ぼけてんのか? こんな時に」
『男子』は本棚からのぞいたまま、言った。彼の声に焦りが見える。
「全然、意味わかんないよ」
『僕』が返事すると、『男子』はのぞくのをやめた。完全に本棚に隠れて座り込んだ、二人は向き合った。
「お前、頭大丈夫か?」
「たぶん」
『男子』は飽きれたように、ため息をついた。『僕』は何も言えずに黙り込む。
「まぁいい。俺が突っ込むから、後は頼んだぞ。な、親友」
そう言って、『男子』は本棚の影から出て行った。大声で何かを叫びながら、銃を発射して、走っていった。『僕』は本棚から顔だけを出して、それを見た。『男子』がどこからか撃たれて、全身から血が出る。倒れた。痛そうだった。
「そうだ」
『僕』は彼に頼まれたことを思い出した。しかし、頼んだぞ、と言われたが、何を頼まれたのか、さっぱりわからない。彼のことも全く知らない。とりあえず、本棚に隠れていても仕様がないので、さきほどの『男子』と同じように叫びながら走り出てみた。すると全身に銃撃を受けるのを感じた。腕に穴が開く。太ももにも。腹にも、頭にも、穴が開く。当然、血が出る。生ぬるい液体が体を包み込んでくる。ぼとぼとと血を床に落としながら、『僕』はなお走った。痛くは、なかった。
「寒い」
『僕』は倒れた。床が冷たい。
「ゲームセットです。結果は、防衛側の勝ちです。お疲れ様でした」
図書館内のスピーカーから、落ち着いた女性の声が聞こえた。
『僕』は思った。
これは夢の話。




