表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

第閑話 教会よりの使徒

 聖教会。唯一神を崇める、世界最大規模の宗教の総本山である。

 聖教会は、魔に対して聖をもって討伐に当たる特殊な組織を抱えていた。

 名もなき機関。

 そも、教会内で魔を認めることが赦されぬがゆえ、教会組員でも知るものの少ない、存在を隠匿された破邪の集団。

 その中でも、一際異端の男、ハンス・クレシテャンが津島の地に派遣されていた。

「おお、この地は見たこともないほどの魔に包まれている。俺の信仰が試される。魔に魅入られることなく俺はこの地を浄化できるか?」

 ハンスは自身に問いかける。任務に就く前の日課だった。これまで、是、という答えのみで生きてきた。強靱な信仰、それが揺らぐことはなかった。

 だが、今回ばかりは勝手が違う。そういった魔の気配ともつかぬなにか、虫の知らせのようなものを、ハンスは感じ取っていた。

「この地で俺は命を落とすかもしれぬ。それは怖くない。だが、怖ろしいのは命ではなく魂を堕すことだ。一瞬の油断も出来ぬ。魔に魅入られることなど許容できぬ。俺が俺であるために」

 ハンスは超能力者である。物体に手を触れずとも動かす力を持っている。

 ハンス自身は、これを神の賜り物として信じていた。

 自身が魔の一族であると認めるわけにはいかなかった。信仰のみを頼りに、自身を保っていた。

 浄化。それこそが、ハンスの目的だった。あるいはその課程の中で、自身を浄化することこそを無意識に望んでいたのかもしれない。


 ハンスは、聖教会が誇る最強の一角である。ひたすらに魔を否定しているうちに、そうなっていた。

 それは、自身の魔と向き合うことを避けていたのかもしれない。

 狂信に身をやつしながら、未だ信仰が足らぬ、もっと信仰しなければ、と循環していた。それこそがハンスの強さであり、またもろさであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ