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Epilogue
後日。
街を覆う気質は、人の世界のものに戻っていた。怪異はもはや、姿を現すことはないはずだった。
草薙家の解体が始まった。もう、退魔の血族は必要のないものだった。
人は人として生きていく。
闇と戦う戦士の存在は、時代と共に不要と化した。
「終わったのかしら。すべて」
「ええ、終わったわ。でも後始末が残っている。わかるわね、楓」
「……わかります。姉さん」
「正しくありましょう。エーテリンデがそうしたように。人が人らしく生きる世界のために」
「姉さんと一緒なら、怖くないわ」
「わたくしもよ。楓」
闇が閉じ、正常となったこの地で、ただ二人だけが異質だった。そして異質を祓うことこそが、草薙の使命だった。
二人の姉妹は互いの身を抱き寄せ、首筋に口づけを交わした。
灰は灰に。塵は塵に。そして、闇は闇に。
二人の吸血鬼は、退魔の血族として、成すべき事を成した。
後にはただ、無が残るのみ。
了
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