6◇ステータスカード
6◇ステータスカード
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さてさて、冒険者組合から帰ってきた俺は自分の部屋に篭もってステータスカードをいじくり回す。
「状態表示魔法」と少し強めに唱える。
ステータスカード
「写真:783年8月18日撮影」
「名前:ルーカス」
「生年月日:王国歴768年8月12日」
「住所:クルップス王国バラウズ領ジェンソンストリート5番12号」
「有効期限:786年8月18日」
「発行年月日:783年8月18日」
「カード番号:2043579」
「ランク:D」
ステータス表示
「名前:ルーカス」、「年齢:15歳」、「性別:男」
「レベル:80」、「体力:102」、「魔力:101」、「精神力:95」「攻撃力:69」、「防御力:71」、
「素早さ:68」、「器用さ:68」、「賢さ:91」、「運の良さ:122」
「スキル:収納魔法LV6、隠蔽魔法LV5、暗視魔法LV6」
「ルーカス口座:入金38万7千ラスク。残高38万7千ラスク。」
「暗号キー:4045-9494357-0984356-902」
「うわ、暗号キーまであるよ。どこまでハイテクなんだこのカード。」
写真が付いているが、いつ撮られたのか記憶にない。
背景を見るにどうやら冒険者組合のカウンターの奥の棚に撮影魔道具?が設置してあったみたいだ。
防犯用を兼ねてるのかな?
更にカードに込める魔力を上げると、各項目の左にチェックボックスが現れた。
一番上に「表示」と書かれて、最後の暗号キー以外は全てのチェックボックスにチェックが入っていた。
これってチェックを外すと非表示に出来るんだったな?
裏面しか変えられないと言われたが、俺の状態表示魔法はそれを超えて表面も変えられるらしい。
まぁうっかり表面をいじったまま人に見られるとマズいだろうけど。
組合長に教えて貰った裏面の非表示方法は変化させたい箇所に指を当てて「消えろ」、「現れよ」と唱えるだけだ。
本人の魔力をキーとしているので他人は変えられないとのことだった。
勿論、組合長が持っているカードボックスがあれば全部変えられるんだろうけど。
試しに表面のランクと生年月日のチェックを外すとそこだけ空白になった。
ヤバいのですぐに元に戻す。
とりあえず口座と暗号キーの欄だけ非表示にしておこう。
ステータスカードの小細工が済んだ俺は階下の商会に降り、店で客の相手をしている親父を見つけて終わるのを待つ。
客に冒険者用具一式を売りつけてほくほく顔の親父に声をかける。
「父さん、冒険者登録してきたよ。これを見てくれ。」
俺がそう言ってカードを渡す。
親父はしげしげと両面を見てぽつりと言う。
「ランクDって、いきなり一人前じゃないか。これ本当か?」
「うん。冒険者組合の組合長に直接対応して貰ったんだ。たぶん部下に任せると騒ぎが大きくなると踏んだんじゃないかな。」
「組合長か。あの頑固親父がよく対応してくれたな。それだけ広がるとまずいと思われたのか。」
「たぶんね。それと俺の拾って来た魔石は今後組合長が直接対応してくれることになったよ。部下に任せるとかなり不安らしい。」
「なんだと。俺に直接回してくれないのか?」
「いや、最初はそうしようと思ってたんだけど、組合長にその事を言ったら個人商店では扱いきれる魔石では無いと言われたんだ。そこで一旦冒険者組合に卸し、そこから適性価格で父さんに販売する形にしようと決められたんだよ。」
「ううむ、あの頑固親父がそう言うならそうなんだろうな。確かに分不相応の魔石を独り占めするとやっかみや妬みでひどいことになりそうだ。」
親父も商業者組合で散々競合商店とやりあって来ただろうに。
やはり目の前にブツがあると目が眩む様だな。
俺は親父に今月必要な魔石の質と量を尋ねる。
だが、仕入れに使える費用は限られているので先月と同じだと言われる。
小指の爪の半分くらいのクズ魔石を2000個だな。
片手で持てる布袋に全部入る。
店頭にあったクズ魔石を数個取ってこっそり状態表示してみると、こりゃーひどい。
「状態表示」
魔石:西の農地産の純度21%の魔石で、現在魔力量12%
大きさも小さいが、純度も低い。
これは魔力を込めてすぐに溢れるな。
純度の低い魔石はある程度魔力を込めるとそれ以上入らず無駄に消費してしまう。
一杯になったかどうかは状態表示魔法か鑑定魔法が無いと分からないので、親父は経験と目分量でやっていた様だ。
親父の魔力量は先ほどちらっと見てみたら30くらいだった。
クズ魔石を充填しても一日20個程度しか使える物が出来ないそうだ。
クズ魔石への充填成功率は3割くらいて言ってたので一日60個は試していることになる。
とすると、1回辺り0.5くらいの魔力量だな。
これを何とかすればだいぶ楽になるか。
東の森で掘ってきた魔石で鶏の卵くらいの大きさの物を選ぶ。
「状態表示」
魔石:東の森産の純度89%の魔石で、現在魔力量26%
右手に握り、状態を見ながらゆっくりと魔力を込める。
現在魔両々は2分くらいで98%になった。
あまり急速に入れると割れるらしいしな。
それを小さな布袋に入れて紐を通し、首に掛けられるようにする。
「父さん、ちょっとこれを首から掛けてみてくれないかな。」
魔石ペンダントを渡して父親が首にかけると、俺は父親と魔石との間にパスを繋ぐ。
魔力は魔石から流れ出す一方方向の流れに限定し、流れる量もかなり絞る。
これで安全に使えるだろう。
「やややっ!いきなり魔力の扱いが楽になったぞ。何をしたんだ?」
「その袋に入ってるのは少し大きめの魔石だよ。さっき俺が魔力を充填しておいた。そしてその魔石の魔力が父さんの方にゆっくり流れ込む様に魔力流路を繋いだんだ。これでクズ魔石くらいなら一日300個くらいは楽に充填出来る様になるはずだよ。」
今までの5倍だ。半分無駄にしても150個は優に充填出来る。
これならクズ魔石に多少あふれさせて無駄にしても問題無いだろう。
親父は唖然とした表情をしていたが、俺が肩を叩くと諦めた様な表情となって頷いた。
「さて、これで父さんの魔力量は擬似的に数倍に大きくなったのと同じになったよ。これでクズ魔石の方を何とかすればもう少し効果の高い魔道具になるよね。」
今扱っているのは凝縮携帯食料(魔石付)、飲料水瓶(魔石付)、照明付きヘルメット(魔石付)、ロープ(魔石付)、万能虫魔獣除け(魔石付)、などなど。
凝縮携帯食料(魔石付):凝縮効果を付与した魔石の魔力で食料の密度を上げ、腐るのを大幅に遅らせる。
飲料水瓶(魔石付):飲料水を入れる瓶に浄水効果を付与した魔石を入れ、水の浄化と腐敗の防止をする。
照明付きヘルメット(魔石付):ヘルメットの前部に付けた光る水晶に魔石を貼り付け、魔力を補助供給して発光時間を伸ばす。
ロープ(魔石付):ロープの両端に魔石を固定し、ロープを任意の形状に変化させたり、棒や階段の様に使える様にする。魔力を多めに込めると強度が増す。
万能虫魔獣除け(魔石付):瓶に入った練り物状の薬品で、魔力を込めている間は効果が格段に大きくなる。
全部地味なんだよなー。
だけどこれで俺たちは飯を食っているんだ。
補助はするから工夫そのものは親父にやってもらおう。
俺が下手に手伝うとプライドを傷つけるかもしれないし。
「ちょっと冒険者組合で使えそうな小さい魔石を買ってくるよ。代金は後払いでいいからお試しだよ。」
俺は親父にそう言うと、再び冒険者組合を訪れる。




