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4◇冒険者組合

4◇冒険者組合

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その日の昼食後、俺は歩いて冒険者組合に行った。

歩いて15分くらいだな。

バラウズの街はそれほど大きくないのでそれくらいで着く。


入り口のゲートを開けて冒険者組合に入る。

うわ、まるでアニメの定番の様なむさ苦しさだな。

ここで日本のアニメの記憶が勝手にぶっ込まれて思わずにやける。

手前には丸テーブルが6個ほどあり、ガタイのいいむさいオヤジや杖を持った貧相なオッサンがたむろしていた。

手にはエールのジョッキを持ち、皿のつまみをつつきながら大声で話している。

その奥の突き当たりには長いカウンターがあり、組合の職員らしき制服の若いお姉さんが5人ほど並んでいた。

さらにその奥には机が何個かあり、渋いオッサンが何か書いている。


「冒険者になりたいんだけど。」


カウンターに行って俺が言うと後ろの酒焼けしたオヤジ連中がヤジを言う。

無視して職員のお姉さんに続きを言う。


「先週15歳になったんで、冒険者になりたいんだ。ステータスを確認してくれないかな。」


後ろのヤジは更に大きくなる。

それも無視しているとオヤジの一人がジョッキを持ったまま俺に絡んでくる。

これも定番だなー。


「おいおい、おぼっちゃんよい。そんな貧相なガタイで冒険者が出来るとでも思っているのか?ちょっとこっち来て腕相撲でもしてみようや。」


俺の肩に手を回して来そうになったので、スッと躱して足を引っかけてやる。

親父はジョッキの中のエールを床にぶちまけながら転がって行った。

それを見て同じテーブルの他のガタイのいい奴が俺に突っかかって来る。

それもぎりぎりで躱し、背中をトンと押してやるとそのまま歩いて壁に頭をぶつけてひっくり返った。

丸テーブルの方で大笑いの声がする。

違うテーブルの連中が転がった2人をバカにして囃し立てる。

そこで受付嬢の後ろの机で書き物をしていた渋いオッサンがカウンターの前に出て来て一喝する。


「やめんか!バカどもが。それ以上騒ぐとランクを下げるぞ!」


ふとそのオッサンの胸元を見ると「組合長」と書かれたバッジが見える。

偉いオッサンみたいで、その声を聞いた組合の中は静まりかえる。


「迷惑かけたね。冒険者組合は誰にでも門戸を開いている。君が望むならすぐにでも登録しよう。」


「はい、よろしくお願いします。俺、ちょっと普通じゃないみたいなんで、人目につかない所でステータスを確認してもらえないでしょうか。」


「君ねぇ、そう言う人が年に何人か出るんだけど、今まで一人として普通じゃなかった人はいなかったよ。」


「ではこれを見てもらえますか?」


俺はそう言い、カウンターの上で周囲から隠すように手で覆いながら収納魔法を使って目玉くらいの大きさの魔石を出す。

それを指で摘まんで組合長に手渡す。

組合長は眉をしかめ、それを手に取って一言魔法を唱える。


「状態表示」

魔石:東の森産の高純度の魔石で、現在魔力量は4分の1。


そんなことまで分かるんだ。

早速俺も使ってみる。


「状態表示」

魔石:東の森産の高純度の魔石で、昨日地中から掘り出した物。現在魔力量は4分の1。


それを見て組合長はぎょっとした。

俺の腕を掴んでカウンターを回り、奥の部屋に強制連行された。

扉を二つくぐり、その奥の広い部屋に入る。

入る前にちらっとドアの上を見ると「組合長室」と書かれていた。


「さて、君のステータスを見せてもらおうか。」


俺は素直に頷き、「ステータス」と声に出して言うと目の前に表示される。


「ステータス表示」

「名前:ルーカス」、「年齢:15歳」、「性別:男」

「レベル:80」、「体力:102」、「魔力:101」、「精神力:95」「攻撃力:69」、「防御力:71」、

「素早さ:68」、「器用さ:68」、「賢さ:91」、「運の良さ:122」

「スキル:収納魔法LV6、隠蔽魔法LV5、暗視魔法LV6」


今朝、家族に見せた「ステータス’」だ。

俺に状態表示魔法をかけようとしていた組合長は再びぎょっとする。


「自分で出せるのかい?それにしても15歳とは思えない内容だな。これはどうやって手に入れたんだ?」


俺はこの時の理由も考えていた。


「15歳になったその日の夜、突然頭の中にこの内容が入って来たんです。そして、何日かかけて3つのスキルを試してみると全て使えることが分かりました。この魔石は一人で東の森に行って取ってきた物です。」


「にわかには信じられないな。それこそ王都で語られる英雄譚みたいなものではないのか?」


「いや、値がそれほど高くはないでしょう。せいぜい貴族の平均くらいかと。それなら英雄も賢者も無関係ですよね。」


「うーむ、確かにな。しかしこのステータスで本当に一人で東の森に行ったのか?あそこは高ランクの冒険者が10人くらいで行く所だぞ。」


「はい、私のスキルが丁度ぴったりだったんです。隠蔽魔法で魔獣に気付かれなくなり、暗視魔法で月明かりならはっきり見え、収納魔法で重たい魔石を持って帰る。私は魔石が目的だったのでまたとないスキルの組み合わせでした。」


暫く組合長は俺のステータス表示を見ながら考え込んでいたが、自分の机に着くと引き出しから小さな箱を出した。

その中から一枚のカードを取り出し、机の上の箱の蓋を開けて中に入れる。

箱の蓋を閉じ、俺に箱の上に両手を置いて今から言う内容を繰り返せと指示された。


「我は命令する。我のステータスとスキルを写し、カードに定着せよ。」


俺がそのとおりに言うと手の平から魔力が吸われる感触がし、蓋の周囲が光った。

その後に組合長が箱の横のつまみを回してボタンを押す。

手をどけろと言われてどかすと箱の蓋を開け、中のカードを取り出した。

手渡されて見ると、そこには俺の顔写真付きの免許証があった。

いや、何で日本の免許証と同じ構成なんだよ。

色合いもレイアウトも一緒だし。

名前と生年月日、住所はクルップス王国バラウズ領ジェンソンストリート5番12号、有効期限と発行年月日、通しのカード番号とその下にランク表示があった。

何で生年月日と住所が分かるかというと、王国民は生まれた時に親の所属する組合に魔力パターンを名前と生年月日と共に登録するからだそうだ。

ウチの場合は商業者組合には入っているらしいので、その情報が冒険者組合と共有されているから分かるのだとか。

一種の戸籍だな。

他に建築組合、鍛冶組合、狩猟組合、漁業組合、農業組合、林業組合と、多種多様な組合が王国を網羅しているとのこと。

これらが分散型データ収集端末として機能し、王国管理の元で一元化されているんだとか。

マイナンバーカードかよ。

まぁこれに当てはまらない職業もあるので、かなり漏れはあるみたいだが。


カードを裏返すと備考欄として先ほど表示したステータスとスキルが記載されている。

表の表示は変更出来ないが、裏面の表示は任意の箇所を非表示に出来ると言われ、やり方を教えて貰う。

項目毎に非表示に出来るので、人に見せる場合は必要以外の箇所は普段は消しておく様に言われた。


「君はちょっと特殊だからランクはいきなりDから行くよ。ランクは知っているよね?」


「一応知っていますが、改めて説明してもらえませんでしょうか。その、自信が無くて。」


「うむ。その殊勝な心がけが長生きの秘訣だな。では説明しよう。」


組合長は机の上に引き出しから出した紙を置いて説明を始める。


冒険者ランク説明書

ランクはGからSまでの8段階。

G:冒険者登録した直後のランク。

F:一定の街中の業務をこなすと上がる。

E:農地の小柄な害獣を5人以下で討伐すると上がる。

D:農地の中型の害獣を4人以下で討伐すると上がる。

C:森の小型の魔獣を3人以下で討伐すると上がる。

B:森の中型の魔獣を5人以下で討伐すると上がる。

A:森の大型の魔獣を3人以下で討伐すると上がる。

S:森の超大型の魔獣を2人で討伐すると上がる。


農地の小型の魔獣:大型犬くらいの大きさの肉食獣。マウンテンキャット、ストライプドッグなど。

農地の中型の魔獣:ロバくらいの大きさの肉食獣。リトルタイガー、ブラックチーターなど。

森の小型の魔獣:大型犬くらいの大きさの肉食魔獣。ワイルドキャット、サーベルドッグなど。

森の中型の魔獣:馬と同じくらいの大きさの魔獣。レッドベアー、ロックライノスなど。

森の大型の魔獣:馬の2倍くらいの大きさの魔獣。ダークウルフ、ストライクボアなど。

森の超大型の魔獣:大型の魔獣の2倍くらいの大きさの魔獣。ジャイアントマンティスなど。


「以上がランクの説明になる。君のランクをDとしたのはこの中に当てはめようが無かったからだ。Dなら平均以上の収入が得られるランクで、なおかつ上過ぎず見下されもしないというバランスの取れた位置だ。多くの冒険者がこのランクで留まって安定した収入と割と安全な討伐で暮らしているんでここの人口はかなり多い。君ならもっと上のランクにするべきなんだが、15歳でいきなりは目立ち過ぎるし周囲との軋轢も考えられるからな。まぁまさか一人で東の森に入って、しかも夜に魔獣に気がつかれずに通り過ぎて帰って来るなんて今までの常識では考えられないし、最初はこれで我慢してくれ。」


まぁそうだろな。

本当のステータスを言ったらどうなるか見てみたい気もしたが、その後がやっかい事にしかならないことは分かるので大人しくする。


「はい、そういうことがあるのは私も承知しています。私のスキルで戦いをせずにお宝を持って帰ることが出来るというのはこの上ないメリットだと思いますが、人によってはズルをしているとか偽装をしているとか言うと思いますし。」


「そうだな。だからそれは口外しない方が良いな。暫くは組合のカウンターを通さずに直接私の所に持って来なさい。」


「いや、取って来た魔石はウチの父の商会で使おうと思ってるんですが。」


「いやいや、これだけの大きさの魔石、個人商店で扱いきれるものではないよ。競合から厳しく追及されて販売妨害で訴えられることにもなりかねない。それなら一旦組合に卸し、そこから君のお父さんの商会に販売した方が安全だ。」


確かに。

自前で大きな魔石を処理するとやっかみや妨害でロクなことにはならないな。


「実はもっと大きな魔石も取ってきたんです。」


俺はそう言うと一番大きな魔石を見せることにした。

目の前のテーブルの上に光の粒子が渦巻き、魔石の形に集まって光が消えて人の頭ほどの大きな魔石が出現する。

組合長は暫く黙り込んで魔石を見ていたが、やがてゆっくりと俺に向かって語り出す。


「これは100年に1個出るか出ないかくらいの貴重な大きさの魔石だ。このバラウズ領の組合では扱いきれない。王都の組合本部でオークションにかけるしかないだろうね。もちろん、そうなると君の名前も出てしまう。」


おっと、それはちょっとまずいな。

認識改竄魔法なんかで俺の情報を消すことは出来るかもしれないが、今はまだ組合の要望に従おう。


「分かりました。これは無かったことにしてください。では、最初に出したこれを組合に卸すということでどうでしょうか。」


頭大の魔石を消すと組合長は後ろ髪を引かれる様に光の渦を見送っていたが、諦めた様な表情になって俺に向き直った。


「君、ひょっとしてステータスを隠したり誤魔化したりしていないかい?」


うっかり目が泳いでしまった。

これではバレているのが一目瞭然だ。

だがここで本当の事を言う訳にはいかない。

アレを見られると国がひっくり返るしな。

俺はすぐに無表情になって、


「何のことでしょう?私のステータスはこれですよ。」


俺は先ほど作って貰ったステータスカードの裏面を見せる。

組合長は今度こそ呆れた様な表情をして頷いた。


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