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「エピソード5: 現代編:主人公の機転!! 『処女神(アテーナー)の住まう場所、渋谷(メッカ)へ』」

夏枝のメッカは渋谷にあるらしい。

それだけは確かであった。


情報と情熱が眠る都市。

人情熱達が虫集むしすだ渋谷メッカになにが待っているのだろう。


私はただ、一つ気掛かりであった。

チラシ記載されていた、『神材』を募集するその意図。

その意味とは??


夏枝は何かそういった『人材』や『救い手』を『メンター』という意味合いで『神材』と呼称しているのだろうかと思考が交差する。


夏枝にとってこの散らばった要素について不可解極まりなかった。


作者が敢えて全ての情報に対して、開示しない・・・。

全てに対して共通された類似点はあるが、判定できない。


作者は鐘と喇叭を奏で始めた。

彼が死の始まりを告げる地で、作者は何を告げるのだろうか。


夏枝は『処女神アテーナーの住まう場所』、『渋谷メッカ』へ足を運んでいく。

作者である私は。

次なる地点を想起した。


つまり、夏枝の向かう地へ先回りしなければならない。

彼が求める『再想起』と『再奔期』そのスタートを切るべき地。


私にとっての理想郷は失って久しかった。

それらは地域といったものに縛られている代物ではない。


しかし、夏枝にとって──物語を進めるには地平/地点が必要だった。


私の頭上に、一本のアンテナが立った。

避雷針のように細く鋭い、思考の導線だ。


そしてその瞬間、どこかから電波が走り込んできた。

直感とも啓示とも呼べる稲光のような衝動──。


「そうだ──どちらも、情報の奔流ではないか。」


私の熱量も、夏枝の熱量も──同義であった。

それは、止まることのない情報の奔流。


情報は生まれ、深く埋もれ、時代と共に流転し、また新たに生まれる。

その営みの中で、地平/地点は生まれ、消え、そして再び姿を現す。


私も夏枝も、その奔流の一部に過ぎない。

しかし、その一片が、次なる再想起と再奔期への道標となるのだ。

その道標たる地平/地点を『渋谷』に設定した。


『流行地』──その血を流す。

メッカであり理想郷へ。


したらば、手っ取り早く動くことにした。

地元から電車を乗り継ぎ、所要時間を少し水増しして計算する。

余裕を持たせるため──五十分ほど、見込みを膨らませたのである。


計算の中で、時間は単なる数字ではなく、地平/地点への橋渡しとなる。

奔流の中で生まれる偶然を待ちながらも、確実に歩を進めるための策だ。


夏枝もまた、その流れに合わせて行動する。

タイムテーブル通りに、彼は胸のポケットから懐中時計を取り出した。


『時間は九時三十分を指したばかり──十二分に面談時間には間に合う。』

結果、所定より三〇分以上も早く、現地に到着した。


夏枝曰く──。

都会の空気と人波の渦に呑まれ、呼吸もままならないようだ。


狭苦しい駅構内を奔流のごとく流れる人々の河、

その急流に身を投じることになる夏枝。


改札口は、気の遠くなるほど遠かった。

案内掲示板には改札口は明確に直ぐだと判断できる。


しかし、人々はスマートフォンに没頭し、

ヘッドフォンで耳を塞ぎ、周囲には全く頓着していない。

フラフラと歩く人々のその姿が死人の様にしか見えない。


そのせいで、流れはまるで止まった河のように進まない。

今まさに、彼の──意識の浮輪が、失われようとしていた。


彼はその河の流れで押し合い圧し合いされ、

ホームから階段へと導かれ改札口に繋がる地下のコンコースへと押し出された。


やっとの思いで──解放される。その思いで地下のコンコースから改札口に辿り着く、都会移動の度にこの情景が繰り広げられる。その感情に陥るのは御免被りたかった。


夏枝は、目の鼻の先──舌先にも届かないほどの距離まで、順調に歩を進めた改札口へと迫る。

そして、ICカードを改札にタッチした瞬間──


「ブブーッ!」

虚しく響く警告音が、静寂を切り裂いた。


次の瞬間、プラスチックのバーが 「バタン!」 と、夏枝の腰を小突いた。

一瞬、彼の目には腰を小突かれたように映ったが、実際には太腿がバーに当たっただけであった。


視線を太腿から改札口の液晶モニターに移すと、

デカデカと**“金額不足”** の文字が派手に踊っていた。


彼はやっとICカードが最低限しかチャージしていなかったと気づかされ。

チャージ機へ出戻る必要を迫られる。


人の河を遡り、ようやくチャージを終えた。

そして再び、奔流の中へと身を投じる。


改札口にICカードを軽くタッチして人の河を後にした。 

彼は気分を一転して、スマホの地図アプリ「ジーマッパ」を使用して。

「神材派遣管理会社 ユル法人会社」再検索する。


「ジーマッパ」はの語源はウィザードリィから着想を得ている。

本文でも説明した通りに駅構内さえも3Dマップで表示し道案内図として描かれる。


これは方眼紙を地図代りにした世代にしか、分かりづらい表現であった。

改めて説明したい。


方眼紙は薄く、下にある紙すら透けてまう。

嘗てのゲーマ、正確には一マス事にダンジョンを進ませる2D素描で3Dを意識したウィザードリィのマップ構造を理解するためには俯瞰視点にならざるを得なかった。


何故なら、階段の上り下りで発生する高緯度についてゲーム中ではマップとして表記されないからだ。


この高低差を俯瞰的に理解するため、薄い方眼紙を用い、複数枚を重ねることで階層を把握していた。

つまり、階層構造を正確に理解しようとしたのである。


それを、令和基準のアプリケーションとしてアレンジしたに過ぎない。

高低差まで親切に案内してくれるナビアプリがあれば、誰だって喜ぶだろう。


嘗てのように、夏枝はまるで方眼紙に描いた地図を思い返した。


一つ一つのマスが、それぞれ独立した世界なのだと。

何も分からず、何も知らなかったあの時──方眼紙に描いたときの気分を、改めて再認識したのである。


スマホの地図アプリ「ジーマッパ」に指示した目的地──「神材派遣管理会社 ユル法人会社」 は、渋谷駅から徒歩三十分ほどの距離にあった。


令和基準に準じて、3Dマップが表示される。

アプリは、「神材派遣管理会社 ユル法人会社」の北方にある、ある地点を指示した。


スマホの地図アプリ「ジーマッパ」に従い、彼は歩を進める。

未だ夏枝は地下のコンコース内にいた。


渋谷駅構内を北上しつつ、地上へ向かう階層を上り、やがて街の空気の中へと出る。

彼は、街並みと空気に徐々に浸食され始めていた。


情報と情熱が眠る渋谷──その空気感に、彼はどぎまぎしていた。

彼にとって、渋谷に降り立つのは初めてである。


ここに堆積するのは、情報の奔流。

眠る金鉱脈を目の前にして、全てが初めての経験だ。


ここでは、流行の始まりを告げる者もいれば、流行の終わりを告げる者もいる。

そんな断片的な知識の奔流が、夏枝を取り囲んだ。

確かに、渋谷という黄金郷は存在していた。


しかし、彼にとっての黄金郷は廃れて久しく、25年の時が過ぎ去った。

そして今、現代に突如として現れ、まるで嘲笑うかのようだ。


(この感情は、失って久しい望郷の記憶が呼び覚まされた影響なのだろうか?)

彼はそんな事を考え深げに進み続ける。


彼は思考の迷宮ラビュリントス──から抜け出すと、ビジネスビルやテナントビル、高層オフィスビルの群れの前に佇んだ。


とうとう、目下の目的地である**「神材派遣管理会社 ユル法人会社」**に、ついに辿り着いたのである。


ビジネスビルやテナントビル、高層オフィスビルの群衆の端に、それはあった。


何とも恥ずかし気に、レトロモダン風で佇むその姿。

周囲が灰色一色で統一されているのに、このビルだけは異様に映えていた。


悪く言えば、レトロフューチャーな外観。

レトロモダン風なのに、上下左右に走る電光盤には淡い紫と淡い黄色の光が流れている。


数分ごとに、その光はまるで円環状にぐるぐる回っているかのように見えた。


未来感を醸し出そうとする創設者の苦肉の策。

使い古された手法は、まるで出涸らしのようだった。


その、時代に逆行したデザインの遜色なさに、

夏枝は異様さを孕んで見えた。


彼の中で、チラシとビルのデザインのイメージが交差し、リフレインする。


思考の回廊の先には──何が息を殺して待っているのか、不安と期待が入り交じった感情が渦巻いていた。


ダンテの『神曲』のように、

彼は深い森に入り込んだ。


失望は熱狂を──奇跡が熱望を連れて来る。

それは『異様』と『面妖』が連れてきた『狼』であった。『狼』が彼を挟み撃ちにした。


彼か想像する。

お次は『豹』か『獅子』か?


彼は息を呑み、目を細めた。

何かが待っていることは確かである──

その始まりを告げる者もいれば、終わりを告げる者もいることを、

彼は漠然と把握し始めていた。


彼は足を踏み入れた。

迷宮ラビュリントスたる「神材派遣管理会社 ユル法人会社」 に。

皆様、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

『第五話 処女神アテーナーの住まう場所、渋谷メッカへ』のプロットやプロセスをご理解いただけたでしょうか。


第五話では、夏枝の具体的な行動の描写に見せかけつつ、

前書きから本編にかけて『心理→具体→心理→具体』という構造でストーリーが進んでいることにお気づきでしょうか。


この話は明確に、死への転換期に伴う移動であり遷移の描写です。

読者の皆様に一息入れていただくための、移動描写に過ぎません。


そして、夏枝と共に、現実から少し離れていただくための、明確な一呼吸区間でもあります。


街の設定は喪われた黄金郷から来ている。

私は渋谷か池袋か秋葉原いづれかにしようとしていた。


街の設定は、喪われた黄金郷を連想させるものにしたかった。

当初は秋葉原に惹かれたが、露骨すぎるので却下。

池袋は情報発信地のイメージが薄く、中野も候補から外した。

結局、自然な形で渋谷に落ち着いたのです。


ストーリー構成上今までは、『現実 』→『 妄想/狂気/熱狂 」×『非現実』の構造でした。

これより先は、『擬人/神話 → 転生』 × 『非現実』へのストリップ・ショウとなります。


第六話「違和感の正体と閉ざされた死」は、

『擬人化』 × 『非現実』のストーリー展開となります。


改めて――この**『異質で、面妖な世界へ、ようこそ!!』**

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