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「エピソード11 現代編:主人公の追葬!! 『夏枝追葬譚 -導入編-』」

作者は第二章で、ナーレの世界へ読者を誘おうとした。

だがその試みが虚構に過ぎないことを、誰もが知ることになる。


ナーレの地域、土地柄、場所、両親、友人。

エトセトラ、エトセトラ……。


作者は、ぽつりと独り言ちる。

「何も設定してねぇ!!」


作者は急に方向転換、土壇場を何度も急展開してきた。

とうとう、彼の前、眼の間に壁がやってくる。


作者は緊急釦を叩きつけるように押下した。

透明なトロッコが、現実感のないまま宙を滑走する。


「そ、そ、そうだ!

 オマケストーリーを章の最後に挟もう!

 誤魔化せ! 誤魔化せ!

 設定回収ストーリーを挟ませて、

 その間に必死で設定を汲むぞ!!」


この究極的な瞬発力こそが、『こちユル』の世界設定である。

そしてそれは、読者たちにとっての通常運転となった。


「オマケストーリー、

 伏線回収のためのアフターストーリーが章の最後に追加され、そこから世界が広がる」


――そんな手法が、ここに確立された。


「間違いなく出鱈目。

 間違いなく、瀕死の瞬間に起死回生の躰道を見せてくる」


そんな場当たり的なアフターサービスが、物語を辛うじて支える。


誰もが伏線に触れ、伏線が生まれる。

意味は分からないが、土壌だけは確かに形成されていった。


作者の最初の試み。

十一話――『夏枝追葬譚 ―導入編―』が、唐突に差し込まれた。


失われ、切り捨てられたはずのストーリーを掘り起こし、

これから生まれる物語の輪郭を、あえて曖昧にする。


「少女の目覚め」を成立させるために、

死者を目覚めさせるという禁じ手を、作者は緊急避難で選んだ。


トロッコは無理やり宙を描き、

見えないレールに触れる、その時まで――


作者は必死に、物語を乗せ続けていた。

読者たちは、ようやくメインストーリーを読み終えたのだと思った。


これで、第二章へ進める。

作者も、そうさせてくれるのだろうと。


(あぁ……ヤバイぞ)


だが、そこに大地はなかった。

作者は裏側で、必死に大地とレールを敷いている最中だった。


(困った。何とか、誤魔化さないと)


オミットしたストーリーを挟む。

夏枝の無職期間――必要かどうか、最後まで迷った物語を。


それは「作者としての追想」という名の緊急避難。

追走であり、追葬である。

「やむなく“オミット”したエピソード」を語るための、唯一の手段だった。


作者は弁明する。


「これは、作者が意図的に“死なせてしまった物語たち”を、

皆様の前に再提示する試みにほかなりません。

その点をご理解いただきたく、この場を設けました」


「まずご留意いただきたいのは、

このストーリー自体、

第三話『時間よ! 逆巻け!』と

第四話『面妖で異質! 正社員広告』の間に、

夏枝の“無職期間”として差し込む予定だった、

本来は存在していたエピソードだということです」


あまりにも作者は困っていた。

実はそう――


「やむなく“オミット”したエピソード」すら、

内容未定という、空前絶後の場当たり的緊急避難だった。


作者は弁明し続ける。


「故に本作は、『取り留めない幻想』、

 『終わりのない妄想』、

 そして『哲学』に近い内容を含んでいます」


それは事実だった。

今――まさに、この瞬間。リアルタイムで!!


作者は、

『取り留めない幻想』と、

『終わりのない妄想』と、

そして『哲学』に近い何かを、考え始めていたのだから。


『即興』。


それ以上でも、それ以下でもない。

作者は描くことにした。

想像力の神に、ただ祈りながら。


題名に「為政者」を設定し、

作者は自らの部屋を見渡した。


ゆっくりと、その場で回転する。

荒れ果てた――いや、“混沌”と呼ぶべき部屋の惨状を、確かめるように。


(何か……何かネタを埋め込むしかない)


床を覆い尽くす積読と、すでに読み終えた本たち。

机に収まりきらず、床へと避難した酒瓶。


群雄割拠するフィギュアたちに、本棚は占拠されている。

収まらないゲームソフトは、本棚の隙間へと、無理やり押し込まれていた。


その中でも、最も厄介なのが、部屋の隅に鎮座するPCデスクだ。

部屋の混沌を、さらに際立たせる――

あまりにも生々しい、その張本人だった。


そこだけが、妙に生活感に溢れていた。

飲みかけの酒瓶、汚れたグラス、読みかけの本。


パソコンデスクの下は、小物――本やら、未開封の酒瓶やら――に占拠されている。

いろいろなモノたちが、そこに数か月以上、居座ったままだ。

やりかけの“生”が、無造作に散らばっていた。


(やりかけの“生”というより……

 ただ、片付けを放っておいただけだ。)


作者――この部屋の為政者たる者は、

朝九時になったばかりだというのに、酒を煽っていた。


(正確には、リアルタイムで内容を考えるために、

 諦めて呑んでいた。)


なんせ、することがないのだ。

長らく「仕事のために家へ帰っていた」ような状態が続いていた。

だから、いざ自由になっても、どう過ごせばいいのか分からなかった。


(作者――正確には、五月末までは勤務することになっている。

 これからまた長らく、『仕事のために家へ帰っていた』ような状態になる――

 そのことを、考えていた)


だから、酒に逃げた。

心の安寧を求めて、金色の航海へと身を委ねた。


孤独という名の小島に辿り着こうとした。

幻夢の世界へ旅立ちたかったのだ。


(自室の部屋には300前後のシリーズ作品が本棚や

 パソコンデスクの横机に整列していた。)


夢の旅路に出るために、作者は一冊の小説を手に取った。

混沌とした本棚から、超新星を求めて選び出す。


タイトルは――『火星のプリンセス』。

エドガー・ライス・バローズの、あまりにも古典的なSF冒険譚。


「サク! サク!」


遠く――いや、記憶の奥から、

「タルス・タルカス」の声が聞こえてきた。


私の内に、巨星が宿る。


「デジャー・ソリス」

あの、はねっ返りのお姫様が因果を纏い、

私は、抗いようもなく引き寄せられていく。


火星へ。


今なら、砂塵舞うその大地に、

降り立てそうな気がした。

高く、高く――『ジャンプ』するように。


(サク!)


私が目を開けると、そこは見慣れた改札口だった。

夢の縁を通過するための改札。


(正確には、多くの読者たちが通るであろう

 『見慣れた改札口』だ)


乗客は――もちろん、私ひとり。


(正確には、多くの『乗客』が、

 いずれここへ辿り着く)


私はポケットから、金色の回数往復切符を取り出し、改札に差し込んだ。


(『乗客』が必ず行う行為。

 人生は片道切符だが、

 作品に浸る行為には、回数制限がある)


判子が押されたのを確認すると、

皆――足早に、ホームへと向かっていく。


ホームの案内板には「火星のプリンセス号」の文字が点灯している。

出発時間などはない。必要ないのだ。


為政者たる『読者』望めば、「汽車」は来るのだから。

“汽車”とは言っているが、乗り物の姿には決まりがない。


小説に準じたものが「現れる」――それが、ここのルールだ。

今日はどうやら、SFチックな一人乗り用の浮遊機が、用意されていた。


(おぉ……!

 これは『火星のプリンセス』に登場する乗り物だ。

 独り用、ないし二人用だったはず)


私は「ジョン・カーター」と同じように、

慣れた手つきで主力機器の調整と行き先の確認を終えると、

その乗り物の上に立ち、そっと――機体を浮かせた。


「では、火星に向かって!」


そう言った瞬間、乗り物は一気に加速。

亜高速のスピードで、全ての縁を断ち切り、

私を“心の縁”へと旅立たせた。


──気がつけば、終着駅のホームに降り立っていた。


(あぁ──我が『ホーム』)


そこは風化し、憐憫に近い空気が漂うロータリー。

唾棄すべき、打ち捨てられた街並み。

それは私の“心の縁”――最終駅の風景だった。


(多くの作家の影響。

 ゾジークの低い太陽が、ただ照り付ける。

 ロード・ダンセイニ、ラヴクラフト、C・A・スミス……

 多くのダークファンタジーとホラーが為せる所業よ!!)


改札へ向かい、来たときと同じように、金色の切符を通す。

すると切符は改札に「飲まれ」、静かに消えていった。


(いつだって、切符は失われる。

 人生は片道切符。

 そして、押印で埋め尽くされた回数券が示すように、

 私たちの“体験”には、常に回数制限がある)


ロータリーに着くと、見慣れた“扉”が一つ。

私にとっても、そして多くの読者にとっても、見覚えのある扉だった。


(さぁ? 行ってみよう。

 創造神に会いに行こう。

 亡くなっているか? 存命中か?

 そんな、唾棄すべきことは忘れて、作品群に浸ろう!)


私は手を握りしめ、

「出ろ……出ろ……」と願った。

すると掌に熱が宿り、次第に、握り続けるのも辛くなる。


(あぁ……早く読みたい、早く行きたい、早く観たい。)


私は、辛かった。

これから何が起きるのか。


何を描けるのか。

何を書くのか。


(分からない、分からないということだけが、分かっている。)


それでも我慢して握り続け、ゆっくりと開くと――

掌には、年季の入った真鍮製の鍵が顕現していた。


(全にして、門。門にして全。)


ギラギラと輝く、その鍵を錠に差し込み、ガチャガチャと音を立てて開錠する。


そして私は、虹色の扉を開けて――

いそいそと、その中へ入っていった。

皆様、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

『第十一話「夏枝追葬譚 ―導入編―」』のプロット、

ならびに進行のプロセスは、ご理解いただけたでしょうか。


……すみません。

「夏枝追葬譚」と言ってしまいましたが、あれは嘘です。


正確には――

「作者追葬譚」です。


『意図的に“死なせてしまった物語たち”を、

皆様の前に再び提示することにほかなりません』


『故に、「取り留めない幻想」、

「終わりのない妄想」、

そして「哲学」に近い内容を含んでいます』


――すべてに、意味がありました。

そして、それはそのままの意味でした。


作者なりの親切として、

原作である『火星のプリンセス』シリーズ、

ならびに映画『ジョン・カーター』を、ここに進呈しておきます。


残念ですが、

これ以上、直接的な答えは用意していません。


『片道切符で、回数制限』です。


選ぶのは、

押すか、押さないか――それだけ。


これは、私の片道切符ではありません。

貴方様の、片道切符なのですから。

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