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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
十章 京都へ
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19話 宮内兄妹との顔合わせ


 その後も三好さんとの話し合いは続き、オークションについては一通り話し終える。


「じゃあ他の皆とも相談してから、改めて運営に案を送らせてもらうよ」


「……」


 1年前。京都の時代背景が現代と異なっていることを、運営は俺らに教えなかった。


「まだなにかあるのかい?」


 もっと警戒すべきだった。準備不足だったと言われりゃその通りなんだけどね。


「輪廻に時間の概念ってあるんすかね」


「ふむ」


 ヒノキ山の世界。


「日本人の集団異世界転移ってのはさ、俺が勇者の護衛として生きた時代よりも、ずっと昔の出来事なんすよ。彼らの生活拠点が遺跡になるくらい」


「なるほど。この現代に置いて、それはもう起きた事なのか、今から起きる事なのか」


 事故なのか、意図的なものなのか。


「チート能力をもらえるなら別ですが、平和に慣れた今の日本人が転移させられたところで、危機的状況の異世界を救えるんでしょうか?」


「でも例外はあるね」


 戦い慣れているプレイヤー。


「非戦闘員である俺からすれば、やっぱあれなんよ。属性デバフが幻の苦痛でも、それに耐えて戦える君らは、平和を生きる一般的な日本人とは違うんじゃねえかな」


 空間の歪みで顔が見えないとは言え。


「人間タイプの敵はHPが0となれば生身になりますし、そうなった相手を俺らは普通に殺してます」


 メイスで叩き潰す感触も、脇差で斬る経験も重ねている。


「しかしそうか。集団異世界転移が、これから起きる可能性ねぇ」


「でもプレイヤーが対象だって言うなら、規模的に大分先の話っすよ」


 AIからの情報なんで違いはあるかもだけど、遺伝関係で問題がなくなるには、500人を集める必要がある。


「彼らの子孫である勇者の村ってのは、大きい国に1つって感じだったから、数か所あるわけです。まあどれも推測でしかないんですが」


 ただプレイヤーって線からいくと、俺らの能力は遺伝とはあんま関係がない。どっちかっていうと前世からくるもんだ。


「集団異世界転移ってのも、勇者の村が日本人の子孫ってのも君の予想だ。でも辻褄は合ってる以上、こちらとしても無視はできんね」


 日本語が使われている魔法陣。ヒノキという名称の山。覚えちゃいないけど、日本語が使われた町や都市なんかは他にもあった気がする。


「少なくとも、俺らはなんとなく魔法陣についての知識も得てるか」


「異世界人だったイザクさんは、なぜか帝釈天や阿修羅について発言してましたし」


 もともとはインド神話のインドラとアスラ王だっけ。


「この件については、天使さんといっしょに聞くべきだな。俺だけだとちょっと不安だから、兄に協力してもらうよ」


「連中って制限多いらしいし、これまでの内容から察すると、人間に干渉しすぎるのって禁忌に触れんじゃねえかな」


 大量の日本人を異世界に転移させる。


「そんなことは起こらないってキッパリ言われるより、事故としてなら可能性は否定できないって返答の方が、まだ信用に置けるかと思います」


「わかった。そこら辺を踏まえて、一度兄に相談してみるね」


 俺は思わず苦笑いを浮かべ。


「この会話も聞かれてるかも知れん」


「だね」


 三好さんはしばらく俺を見つめたのち。


「さっきの話だけどさ。思わず口を滑らせちまったもんで、本当は秘密にするつもりだった」


「俺が高校をやめるってやつですか?」


 まあ、そうだよな。


「雫さんが迷人になった原因の1つでしょうね」


 姉や彰吾先輩からも、そういった話はなかった。


「選択するってのは生きる上で避けられない。以前の君がしたそれも、決して間違いだったわけじゃない」


 反対される職業なんて世の中には沢山あるもんな。音楽や芸術とか、夜のお仕事とか。

 彰吾先輩だって、親と揉めているようだし。


「なんとなく予想するに、俺が高校辞めるうんぬんってのはトリガーっすね」


 京都での脱出もままならない状況で、そんなこと言いだしたんじゃパニックも起こすよな。


「色んな物事が重なって、迷人になっちまったんじゃないかと」


 神崎さんもそんな感じだったか。


「ポジティブに考えませんとね。俺が今も高校生活を続けていて、進学も考えてるっていうなら、少なくとも彼女の悩みは1つ無くなってる」


「そう……なんかな」


 三好さんが言わんとしている事もわかる。


「そうなんすよ」


 なにはともあれ、今の最優先事項は雫さんの救出だ。


・・

・・


 撮影した発射台の写真を見比べた結果。


 水の領域《空中の敵(俺ら)にも反応する》

 冷線《追尾》


 これら機能を追加したのは雫さんなのか、それとも彼女の前世とされる勇者の護衛なのか。

 または運営が介入して、救出作戦の難度を意図的に上げてんのか。



 年末を控えたある日。俺らは京都駅に出向いていた。


 ヒノキ山の拠点にて、前世の記憶から情報を得たって話をしたところ、宮内兄妹が予定よりも早く来ることになった。

 美玖ちゃん勇者だったしね。


 そんなこんなで待ち合わせ場所は、中央改札口前にある広場。


「吟次君、大丈夫?」


「へい」


 人込み苦手だけど、ここは男を見せねば。


「京都駅って、大階段が有名なんでしたっけ」


 待ち合わせ場所って検索したら、真っ先にでてきた。


「でもあそこ少し離れてるんだよね」


「なるほど」


 姉ちゃんは自分の服装を気にしながら。


「ねえ彰吾、変じゃない?」


「大丈夫だって、可愛いよ」


 俺より緊張してる人がいますので、なんとか冷静は保てております。


「たしか一度会ってるよな」


 文化祭で声をかけたんだったか。


「ええ。でもこんなことになるなんて想像もしてなかったのよ」


「詩ちゃんだって負けてないってば」


 先輩。それはちょっと悪手じゃないっすかね。


「あのね彰吾、そういうのは相手を選んで言わなきゃダメよ。イケメン俳優より、あなたの方が格好良いって言われてどう思う?」


「いや、僕は会ったことないしさ。でも宮内くんは知ってる」


「残念ながら姉は俺の身内っすよ。あの一族には、どう足掻いても見た目じゃ勝てませんな」


 あっ ごめんなさいお姉さま、睨まないでください。


「でも詩ちゃんモテるじゃん」


「……同性にはね」


 そうなんだよな。別に王子さま系でもないんだけど、何人かに姉ちゃんのファンだって話はされたことがある。

 俺よりチョコもらってくるもんだから、バレンタインが嫌いになりました。


「文化祭で戦った前世はなんだったんすか」


 当時は大鳥居パワーで弱体化してたわけだけど、美玖ちゃんって強い前世多いし。


「そうねえ。思い返すと、一点突破や無断みたいなスキル使ってたわ」


「得物は短槍と短剣だったね。変色はしてなかったけど、回復妨害のデバフはあったから、黒刃もまとわせてたんじゃないかな」


 美玖ちゃんの場合は〖血刃〗で、色に変化はない。ここら辺も覚醒技と再現スキルの違いかもな。


「だとすりゃ光の騎士団が存在した世界っすね」


 宮内のシャレにならない前世とも関りありか。


「高橋さんもそうなんでしょ?」


「恐らく」


 別の世界にも光属性の魔法やスキルはあるだろうけど、なんとなく同系列な気がする。

 ちなみに彼は今日も活動しております。ガチ勢の凄さってのを痛感してますわ。


「雪の脇差から考えるに、雫さんもか」


「僕らも過去世で繋がりとかあったのかな」


「そう考えると、ちょっとロマンティックね」


 名称からして。


「なんか光の騎士団と敵対してたりして」


「私も光属性使えるけど。あと墓守だからね、アンタが想像してるのとは違います」


 いや、どう見てもネクロマンサーじゃん。



 そんなやり取りをしていると、見知った2人を確認する。


「なんか……凄い目立ってる」


 スマホで撮影してる人もいるわ。芸能人と勘違いしてるのかな。


「ほらほら、詩ちゃん自信持ちな」


 姉のお洋服も似合ってますよ。例の如く、俺の知識じゃ文章化もできませんが。


「お化粧だってバッチリじゃないっすか」


「うるさい」

 

 手を振って合図を送れば、こちらに気づいたようで歩み寄ってきた。


「2人とも悪いね、早めに来てもらっちゃって」


「いや、気にしないでくれ。こっちで決めたことだからな」


 宮内は一般的な冬服だけど、なんで彼が着るとこうも違うのだろうか。


「始めまして、松永彰吾です。お爺さんお婆さんに謝ってたと伝えてください」


「宮内輝樹です。こちらこそ、わざわざお出迎え感謝します」


「うら……浦部詩です、よろしくね」


 声がひっくり返ってしまったお姉ちゃん。


 兄の後ろに隠れていた美玖ちゃんが、深呼吸をしてから一歩前にでて。


「あの!」


 なんか俺とのデートより、オシャレに気合が入ってますね。たいへん可愛らしいけど、その表情からは緊張がありありと伝わってくる。


「ぶっ、文化祭のときは助けてくれて、本当にありがとうございます!」


「先に自己紹介な」


 荷物はすでにホテルへ届いているので、2人とも軽装だ。


「うぅ、美玖です」


 深いお辞儀をしてくれた。姉はぎこちない笑顔で。


「そんな緊張しなくても大丈夫だからね、ほらリラックスしてちょうだい」


「あっ、はい」


 姉の緊張も負けてないけどさ。

 そんな様子に彰吾先輩は苦笑いを浮かべて。


「じゃあお昼でも食べに行こっか」


「地下街っすね」


「そのあとは京都タワーの予定よ」


 ちょくせつ繋がってるらしく、雨の日とかも濡れずに行けるんだってさ。

 駅前の広場から地下街へと降りる。


・・

・・


 土産物売り場を横目に眺めながら、姉は普段より優し気な口調で。


「輝樹くんと美玖ちゃん、なにか食べたいものはある?」


「どうする」


「お、お任せします」


 ふむ。


「和食が良いかな」


「せっかくの京都だし、俺もそっち系が気になりますね」


「私も精進料理とか、すこし興味あります」


「そっ そうね。じゃあちょっと探してみましょうか」


 姉がスマホで調べてくれるようだ。


「精進料理か。俺って環境が変わるとお通じが悪くなるんだけど、なぜか京都だけは例外なんすよね」


 たしか修学旅行で行ったときも、そういうの食べさせてもらってたかも知れん。


「ちょっとアンタ!」


「ごめん姉ちゃん」


 肩を叩かれてしまった。


「吟次君、去年も同じこと言ってたよ」


「そうなんすか」


「浦部と皆さんは、俺より以前から活動してたんでしたね」


 男3人でなんとか和やかな空気をつくっていく。


・・

・・


 精進料理かは分からないけど、和食専門はいくつかあるようなので、タワー方面にある店へ向かうことになった。


 店員さんに案内されて着席する。


「好きなの選んで良いからね。今日は奢らせてもらうからさ」


「そんな、申し訳ないです」


「いいのいいの、先輩風ふかせたいのよ。私と彰吾で出すってしましょう」


 宮内は美玖ちゃんにうなずきを返し。


「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」


 2人に軽く頭をさげれば、美玖ちゃんもそれを見て。


「ありがとうございます」


「じゃあ遠慮なく」


 4000円近くするのを指さし。


「俺これにします」


 ○○御膳ってやつだ。


「君にしては珍しく遠慮ないね」


「吟ちゃんのを出すとは言ってないけど」


「考え直します」


 美玖ちゃんは何時もより控えめに笑いながら。


「仲良いんですね」


「聞いてた話と少し違うな」


「あんた普段、私のことどう言ってんのよ」


「姉が怖くて逆らえないとか喋ってません」


 これで場の空気も解れただろうか。


「まあでも、一昔前じゃこういう事も言えんかったかな」


 記憶にある姉ちゃんより、今は雰囲気が丸くなってるのは確かだ。


「君が忘れてても、ちゃんと繋がりは残ってるんだよ。僕だけじゃなくて詩ちゃんともね」


 宮内はうなずくと。


「そうですね。俺もこの1年で、皆とはだいぶ関係が深まったからな」


「はい。楽しい想いでを沢山つくれました」


 先輩や姉ちゃんは雫さんのことを覚えてる。


「お母さんから話を聞いてる。色々とありがとうね」


 美玖ちゃんは俺を一瞬見たあと、気まずそうに視線をさげ。


「自分のためでもありますので」


 それでも再び顔を上げると、姉と先輩を交互に見て。


「だけどお姉さんや彰吾先輩とも仲良くなりたいです、もし可能なら雫先輩とも」


 俺がいうのもあれだけど、彼女が緊張してるのはそこら辺が理由なんだろう。


「そっか。うん、よろしくね美玖ちゃん」


「こちらこそ」


 スマホの連絡先を交換し合う。


「俺もお願いしていいですか?」


「よろこんで」


「輝樹君も弟が本当に世話になってるようで、テストとか」


「それに関しては本当にありがとう。助かっております」


 ご飯の注文を終えると、美玖ちゃんは瞳を輝かせ。


「もし問題なければ、お二人が付き合った経緯とか聞いても良いですか?」


「ごめんなさいね。これが居る所じゃちょっと嫌なの」


 まあそうだよな。


「はい。私も兄ちゃんいる場面では同じだと思います」


「確かに気まずいか」


 俺もあんまり聞きたくないな。


・・

・・


 食事を終えると、タワーに向けて移動を再開する。俺の分も出してもらえたよ。


 隣を歩いていた姉ちゃんが、小さな声で。


「良い子ね」


「ええ、本当に」


 彰吾先輩から、1年前の話を聞いている美玖ちゃんを見つめ。


「男を見る目だけが心配よ、変なのに引っかかっちゃって」


「ええ、本当に」


 ため息をつかれてしまった。


「そこで言い返さなきゃダメでしょ」


「っすね」


 苦笑いを浮かべていると、脇を肘で突かれ。


「あとアンタね、まだ言ってないでしょ」


「ん?」


 姉からのお叱りを頂く。


・・

・・


 年明けの前後には神崎さんや巻島さん、ケンちゃんたちも合流する予定だ。

 本格的な観光は作戦が終わってから。


 展望台からの景色を眺めていると。


「すっごく緊張しました」


「お疲れさま」


 横顔を見つめられ。


「浦部さん、緊張をほぐしてくれたんですよね?」


「慣れないことをしました」


 俺が見つめ返すと、美玖ちゃんは視線を景色に移す。


「雫先輩とも、仲良くできるかな」


「うーん、俺からはなんとも」


 残念ながら記憶がありませんので。


「そこは嘘でも励ましてくださいよ」


「もし勇者と水の護衛だったんなら、たぶん仲良かったんじゃねえかな」


 青い雨《雫(召喚)が範囲内にいると性能強化》


「そっか」


 ああ、そうだ。

 姉ちゃんに言われてたことを伝えないと。


「今日すっごい可愛いっすね。よく似合ってますよ」


 こちらに一歩近づいて、肩と肩が触れ合った。


「はい、張り切っちゃいました」


 照れてしまったので、ヒノキ山があると思われる方角をじっと見つめる。


「雫さんと、観光したいな」


「っすね」


 この1年。ガチ勢と呼べるほどには活動できなかった。


「頑張りましょうね」


「へい」


 だけどできる限りの強化はしてこれたはず。きっと上手く行くはずだ。

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