18話 映世協会の資金源
三好さんの関係者が現世の銭湯に出向いてくれろば、帰りはそこから戻っても良いんだけど、彼らも何かと忙しいので、俺たちは来た道をもどってタワー寺を目指す。
15分から30分ほどで発射台は復活するようなので、相変わらず【冷線】を防ぎながらの移動となった。
「敵との戦闘より、遠距離攻撃の方が辛いっすわ」
「それも含めてマイナス20なんじゃないかな」
〖飛行〗や〖光壁〗の足場で、高い位置から【冷線】の発射を確認する役目は必要だね。
「宝玉は相応数ゲットできるから、不満はないですが。うん大漁」
1度に10体以上出現するので、全てにビー玉が付いてくるわけじゃないけど、質は(大)から(極大)のどちらか。
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そんなこんなでタワー寺に到着したけれど、姉ちゃんと彰吾さんはお仲間さんたちと話し合いをするそうだ。魔法陣の写真とかも渡さんとあれだし。
「私らは一旦あがらせてもらうよ。うん休憩」
「そうっすね。いったん現世に戻りますか」
「ホテルの従業員とかいないから、ご飯は外で食べな」
俺も三好さんの社員書は渡されております。
「けっこう疲れましたね」
五重の塔にある鏡の祭壇から、ホテルのロビーにもどり、エレベーターに乗って部屋へと向かう。
「大浴場は使えないけど、各部屋の浴室はお湯でますので」
「ボイラーの管理とか、そういった裏方もいないと思うんだけど、まあ天使さんといっしょですしね」
もうなんでも有りな得体の知れない集団だよ。
「どうでしたか。雪谷さんの召喚は?」
「やっぱHPって要素はチートなんだなって実感しました」
氷の人型は物理属性強度だから、身体の一部が損傷すれば動きも悪くなる。
「HPって姿勢は崩したりもするけど、攻撃されても行動できますんで」
「現世だと弱体化しちゃうんだっけ? うん残念」
〔守って天使さん像〕の結界内であれば、《ビー玉》の効果でHPは一応機能する。
「あとはやっぱあれです。〖スキル〗じゃなくてスキルっていうか、武具の扱いが単調なんで。隆明の落ち武者とか良い例っすよ」
「前世の技術だね」
俺も従軍司祭さんの技術を得てるからこそ、ただの高校生なのに戦えてるわけだ。
「当時はまだビー玉も(中)が主だったとはいえ、俺ら4人で囲んでやっとこさ勝った感じでしたから」
沖縄での太志戦もそうだ。
「文化祭の時はけっこう成長してたけど、兵士は最終的に3人掛かりでした」
「今の私より、迷人として敵対した私の方が強かったのは、まあ確かかも知れませんね。うん前世」
みんなも迷人の時はなんとなく覚えてるそうだし、高橋さんもそうなんだろうね。
「あの特殊装甲と戦ったんすね、俺ら」
「黒光じゃなかったと思うよ。うん元祖」
HP0のとき限定の形態か。
強い前世ってのは〖スキル〗なしでも、武器を扱うスキルが達者な場合が多い。
あとは群れや兵を率いてた場合だと、味方の強化や召喚を使ってくる可能性もあるか。
たぶんだけど彰吾先輩の〖右髭〗は伐採業だけど、〖左髭〗は貴族って感じがするから、地位の高い人だったんじゃねえかな。
☆《1カ月以上同じ地域で活動していると、自分の拠点として味方に精神安定》
こういったビー玉が、そこら辺を現してんじゃないだろうか。
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その日はもう疲れたので、俺は活動をやめにした。
高橋さんは休憩を挟んで活動を再開するそうだ。40代手前なのに体力すげえよな。それともお勤めしてた頃に比べりゃ、どうってことないんだろうか。
夕方になって三好さんが来たので、ちょっと時間をもらってお話をさせてもらう。
場所はロビーのソファー。
「ほいっ どうぞ」
「あ、すんません」
缶コーヒーをもらった。
「ブラックはあんま飲まないんだったね」
「へい。眠気覚ましには飲みますけど」
記憶を失う前に、こういった話をしたんだろうな。
「それで、オークションだっけ?」
三好さんはノートPCを持ってきており、それをソファー前の机に置く。
「本当は運営に頼りたくないんですけど」
「天使さんといっしょ。おんぶに抱っこ問題と同じだ」
俺らは運営のことも完全には信用できないから、本当なら収入源を運営に握られてんのは悩む。
「仕組みだけならこっちで外部サイトとか作れっけど、やっぱゲーム内のシステムにした方がなにかと便利か」
アイテムボックスの機能。
「宅配とか面倒ですしね」
一般のソシャゲとかでも、外部サイトを中間に挟むことで、相手が入金を確認してから売るって行為があったりする。
非公認の中間販売業者。
「アカ停止されるっしょ。運営は俺らのモラルみたいなのも見てるわけだし、勝手にはできんよ」
「ですよね。じゃあこっちからはなにを出すべきか」
映世で得られる資源は連中が用意してるわけで。
「まあ運営が補えない面での管理を俺らがするわけだしさ。とりあえず案として送ってみようか」
連中は色んな制限があって、プレイヤーとの対面が難しい状態なんだよな。
「もしかしたら天使さんといっしょってのが、そういった役割なのかもね。だけど彼らって現世が中心でさ、映世にはあんま関わろうとしない感じがするんだよ」
「同じ組織でも、管轄やら部署が違うってことっすか?」
映世で直接プレイヤーと関わる存在が居ないから、三好さんは協会を造ろうとしている。
「神の如き種族って名乗るくらいだし、用意しようと思えば可能なんだけど、あえてそれをしないか」
ロボットみたいなのでも良い。
「国どころか世界だって掌握できそうな連中だから、信用してなくても敵対はできんよ」
「友好的に行くしかないっすね」
三好さんはPCを開き。
「じゃあアイテムボックスにオークション枠を用意してもらうとして、こっちである程度は練ってから提出しないとな」
「そうっすね。まずはショップでの売値は統一しないとあれか」
現状だと敵からゲットしたスキルは、購入したスキルより売値が高く設定されている。
「ショップで売るのは損が大きい。こうならんとオークションの意味がないからさ」
「次にどういう形式で行くかです。まずは最高値を表示するかどうか」
最高値を表示すれば、やっぱ値段は吊り上がっていく。
「ちょくせつ会場に出向くんなら良いけど、ネット環境でやるのは難しいっすよね」
「今の人数なら問題ないけど、増えてきたらサーバー負荷とかで落ちそうだわ」
まあオークションをするのは映世であって、ネットじゃないんだけど。
「最高値を表示しなければ、買い手は予想で金額を入れるわけだし、アイテムボックスに張り付く必要も薄い」
例えば朝の6時が締め切りだとすれば、その5分前に陣取っとかなきゃ駄目じゃん。1円10円単位で増えて行くと、厄介極まりない。ネットならアクセスできなくなるわ。
「管理するなら、最高値は表示しないってした方が楽だね」
「あとはショップでの購入金額も表示してくれた方が、買う側からすると判断基準になります」
そしてもう一つ。
「販売許可証は売れるようにするかどうか。これが可能になると普及率は上がるけど、オークションの価値はなくなります」
「今はプレイヤーが少ないから、普及してくれた方が助かるんだけどさ」
人手が増えるほど、ゲットできる〖スキル玉〗や〔武具〕も増えていく。
「スキルの貸し出しで一定額を越えると、販売許可証を入手できるっていう仕組みも、今後は無くさないと駄目か」
「現状はベータテスト。まだ参加者が少ないからこそ、成り立っているのも多いっすからね」
〔肉切り包丁〕か〖闇の沼〗
〔一点突破系の武器〕
〖猿系〗か〖召喚猿〗
〖人造天使〗か〖天使の大盾と短槍〗
「購入時にガチャ要素があるやつは、販売許可証がないといけないか」
「それ以外の販売許可証も、入手できるかどうかは運にすりゃ良いんじゃね?」
なるほど。
「オークションで購入時は10%の確率で販売許可証が入手可能。借りた時は0.5%の確率で販売許可証が入手可能」
「〖スキル〗や〔武具〕のレア度で、確率は変動させるべきだけどさ」
調整は運営の方に丸投げだな。
「じゃあちっと、販売許可証についてまとめるね」
・敵を倒してスキル玉等をゲットした人は販売許可証も得る。
・その本人と交流がある者は、ちょくせつ相手に売ってもらう事が可能。
・面識がない。または生活地域が離れている人は、貸出かオークション利用時に確率で入手。
「んで、オークションの利益を一部、俺の会社に入れてもらいたい」
「そのお金を専業プレイヤーの報酬にして、全国各地を巡回してもらい、迷い人やらを救ってもらう」
ストレスの減少により、治安の安定にも繋がるわけだ。
「あとはうちで働いてる子たちの給料にも回したい」
救出した相手の中には社会人や元社会人もいるわけで、そういった技術を持った方もいる。
転職してくれた人もいるんだってさ。
現状。子会社で基本給を払っているのは協会員だけで、外部協力者にはそういったのはない。
派遣会社みたいなのをつくって、外部の人にはそこに所属してもらうかも知れないとのこと。
本業があると副業禁止な場合もあるんだけどね。
「なんとなくですけど、経理関係を学びたいって考えてるんすよ」
経営学部、商学部、経済学部。
「今はプレイヤーもですけど、そっち関係も必要じゃないっすか?」
わたくし真面目なので、お金をちょろまかしたりしませんよ。
そんな香油を買う余裕があるなら、人々に施すべきとか言った誰かさんと違って。
「そうか。まあ浦部君は強力な前世持ちだから、活動してもらえるだけでも助かるけど、そっちもお願いできるなら有難いかな」
まあ高校卒業して、進学する予定だから数年後なんだけど。
「……やっぱ君は、俺が知ってる吟次君とは少し違うね」
こういうのを遠い目っていうのかな。そんな眼差しを向けられながら。
「詩さんの話だと京都の敵をみてさ、自分は高校をやめるって言ってたそうだよ。ここが俺の居場所なんだって」
「へ?」
俺そんなこと言ったのかよ。
「姉ちゃん、反対したっすよね?」
「まあ、賛成はしなかったろうさ」
雫さんはどうなんだろうか。
「……」
どんどん彼が、遠ざかってく気がしてならない。
「根本は変わらんよ。君は君だ」
俺は俺。
「なんか考えちまうっすね。まあ答えは出ないか」
そういや。
「三好さんって、もしシーズン突入したらどうなるんすか。素材が増えたりとか?」
彼には調合枠やら錬金枠ってのがあって、レベルが上がるほどそれが増えるんだけど、やっぱシーズンに入ると数も戻っちまう。
「前世の戦闘スキルが使えるみたいだけど、俺はしばらくこのままかな」
迷い人として出現した彼は、道具を使う炎の拳士だった。
火属性。〖炎拳〗〖炎放射〗
衝撃波。〖掌波〗〖二段掌波〗
パッシブ。〖気功術〗〖全身極化〗
受け流し系。〖地流し〗〖敵流し〗
「体調的にも厳しいっすよね」
それに錬金や薬師のスキルレベルが1になるのは困るか。
彼が造った道具とか、プレイヤーも使ってるらしいし。
〖属性限界突破剤〗や〖油玉〗〖粘着玉〗とかね。




