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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
二章 マキマキギャル(?)・槙島真希編
9/18

3話 連休まで

 月曜の夜。

 ベットに寝転がっていたが、ふと気づけば身体を起こし、姿見へと足を動かす俺がいた。


「……やるか」


 やめた方が良いとさっきから、誰かが脳裏で語り掛けている。



《自分への鎖を解除後、デバフの数ごとに身体強化(耐えた秒数だけ効果が発動する)・HPMP回復または吸収量小減少》


《味方に使うと自分のHPも回復する(中)・敵への吸収量中増加》



 現状だとけっこう貴重な効果(中)だ。

 唾を飲み込んで、呼吸を整えてから鏡に触れる。


「やっちまった、押しちゃったよ」


 まだ変化はない。離した瞬間に始まるのだろう。


「こっから却下とかできねえかな」


 もう怖くて指を鏡面から動かせない。

 悩むこと数分。もう後には引けないんだなと悟り、俺は覚悟の瞬間を迎えることになった。


「……」


 姿見が銀色に輝き、新たな文字が浮かびでる。





 白の鎖《敵への吸収量中増加・HPMP回復または吸収量小減少》





 あれ、ちょっと。

 えっ なんで。


「うあぁぁぁぁっ」


 やっちまったぁぁ。


 でも姿見にこんな文字がでましたぁ。


『《自分への鎖を解除後、デバフの数ごとに身体強化(耐えた秒数だけ効果が発動する)》が解除されました。低確率で一般の敵からもドロップされます』


「これも貴重な情報だぁ」


 うなだれながら宮内にメッセージを送る。


『君との戦いで得た報酬を合成で溶かしました、でもまだチャンスはあります。低確率だけど一般の敵からドロップされるようになりました』


 返信が来るまで姿見にもどり、俺は諦め悪くその画面を眺め続けることにした。


『どっちだ、同じ相手に2つのほうか?』


『白鎖解除したら、得ていたデバフの数だけ強化してくれるの』


 既読が付いたがしばらく返答はなく。


『その勇気を称えよう。しゃあない、またゲットできるさ』


 ざまぁとか思ってないだろうな。

 あぁダメだ、心が荒んでいる。


 ダメだダメだと解っていながら、現在は2軍落ちしているビー玉をセット

 青鎖《滑車+1 徐々にHP吸収(極小)》


 もちろん流れは来ず、滑車+1が消えました。


「うわぁぁぁあっ!」


 母ちゃんにうるさいと怒られちまった。


 もう一度挑戦したことは宮内に黙っておこう。もう重要な情報は伝えたし。


・・

・・


 眠れぬ夜を越えた翌日。


 俺ら三人は放課後に集まって、太志の家で道具を準備してから、離れた場所にある池で生物虐待。もといザリガニ釣りを楽しんだ。


「どうしたんだい浦部、なんか今日は元気ないですね」


「ハマってるゲームに合成要素があってな、すげぇ貴重なのを溶かしちまったんだ」


 隆明はポンポンと俺の肩を叩き。


「今日はそのゲーム忘れて、ザリガニ釣りを楽しみましょう」


「だな」


 慰めてもらっていると、隆明が何かにふと気づき。


「ちょっと太志、エサ食べちゃダメですよ」


「すまん、つい手が伸びちゃった。でも見てくれ、一袋でカロリー100以下だって」


 こいつは期待を裏切らんな。


 成果は上々。


「俺ら去年はそのまま放流してたけど、そういやアメリカザリガニって外来種なんだっけ?」


「そうですねぇ。ちょっと調べてみましょうか」


 隆明がスマホを取り出した。


 AI による概要

 釣ったザリガニは、基本的にその場で放す(キャッチアンドリリース)のが望ましいです。もし持ち帰る場合は、最後まで責任を持って飼育する必要があります。2023年6月1日より、アメリカザリガニは「条件付特定外来生物」に指定され、許可なく野外に放流することが禁止されています。


 とのことだった。


「食うか?」


「黙らっしゃい って言いたいところだが、試しに一匹だけ持ち帰ってみよう。泥抜きが必要なんだっけ」


 食べるらしい。隆明と顔を見合わせて。


「んじゃ、俺も一匹」


「僕も試してみましょうかね」


 こうして今年初のザリガニ釣りは幕を閉じた。


「じゃあまた明日なぁ」


 太志ちゃんは移動時いつも原付か電動自転車だったりする。


 その日は帰って普通に勉強したよ。

 俺って偉い。あんま捗らんかったけどさ。


・・

・・


 水曜日。帰りのホームルームにて、前世は海賊だった担任が。


「来週の火曜からはゴールデンウィークの中日だが、その3日間でテストをすることになったぞ」


「「えぇーっ」」


 皆は非難轟々だった。もっと早く教えろよ、勉強まだ全然できてねえぞ。


 とか言いながら放課後は宮内と一緒にレベル上げした。

 母ちゃん休みだし、いつも遅くまで遊んでたらあれなんで、この日は早めに帰えりました。


 飯のときに聞いたけど、姉は新生活に慣れて、彰吾先輩とも仲良くやってるそうだ。

 俺には彼氏彼女とか想像できねえ。

 2時間ほど勉強をしたが、なぜか途中から自室でベイゴマの練習をしてた。


「糸の巻き方を研究するか」


 俺たちは勝ち負けで奪い奪われるなんて、そんな厳しい世界じゃ生きてないよ。


「ゴォー シュートっ!」


 だって取られたら悲しいじゃん。


・・

・・


 木曜日はリュックを更衣室に残して、ちょっと学校周辺を探索する。

 大鳥居からあんま離れなかったから、敵の強さにそこまでの差は感じなかった。



 中年冒険者の戦槌をメイスで受け流し、あえて密着して肩を当てながら背中で相手を押し込む。

 目前にあった〖滑車〗を破壊。すでに後ろへよろめいていたので、後ろ蹴りで姿勢をさらに崩す。


「光の発生なし」


 俺はメイスを握りしめ、振り返りながらの反動を利用して殴りつける。

 すでにHPを削り切った後だったようで、負傷した冒険者をさらに追い込む。


「最初のだったらヤバかったな」


 鳥型の敵だった。巻き取りを覚えてないから、白鎖のHP吸収くらいしか遠距離攻撃ないもん。熱さや寒さはデバフだし。

 そういや鎖って長さに限界あんのかなと思いながら、報酬のビー玉を拾う。


 黄鎖《感電に成功すると電撃によりHPダメ(小)・疲労回復量小増加》


「……でない」


 失われしビー玉を求めて。

 でもけっこう良い奴だな。ちっと試してみるか。



 そんなこんなでこの日は終了となる。

 いったん学校までもどり、地蔵などないか探すため、いつもとは違うルートで駅に向かう。


 その道中。小さな公園の前を通ると、マキマキがブランコに座っていた。

 なんとなく元気なさそうに見えるが、自分から話しかける度胸はない。


 今この場で映世に入れば、彼女の前世と戦えるのだろうか。まあ勝てたとしても、一時的なストレス解消にしかならん。

 悩みの大きさや、本人の追い詰められ度合でかなり強化される。


「ごめんよマキマキ」


 今からそんな激戦はちょっと辛い。もう暗くなり始めてるし。

 たぶん家から近いんだろうけど、早く帰った方が良いよ。


 もしかすると適正があるかどうかってのはさ、俺らで大本の悩みを改善、解消できるかどうかなんじゃねえかな。


・・


 金曜は二人で学校の周辺を探索。次回は体育館や音楽室とか、生徒の密集してる場所に行くことに決まる。

 実に順調だと思ってたら。


「いかん、テスト期間で部活は休みだわ」


「あっ そうか」


 俺は帰宅部で、宮内も退部しているのですっかり抜けてた。


 


 今日最後と決めた戦いが終わり、敵を倒して報酬を確認する。


「……でない」


 でも白鎖の《滑車+1》だった。ちょっと嬉しい。


「続けてればいつかは出る。浦部に辞める気はないんだろ、ならそれはもう手に入ってるのと同じだ」


 宮内君やさしい。


・・


 そしてゴールデンウィークに突入しました。初日は普通にお家で勉強したよ、太志から借りたオークが如くなんてやってない。

 マジュマの兄貴まじパネえっす。


 グループにメッセージを書き込む。


『今度オークが如くごっこしようぜ』


『しょうがないな、付き合ってやるとしよう』


『俺は誓って焼いてません!』


 隆明もう始めてるよ、気が早いな。


『役はジャンケンだぞ』


『えぇ』


『兄貴の手下役もいれろよお』


 今から楽しみだ。







かなり長くなってたので、2話に分けました。もう1話は予定通り0時に投稿いたします。

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