12話 京都へ
年が明ける前には京都に向かう予定なので、母の実家へはその前にお邪魔させてもらう。
他の参加者たちも年末はちょっと忙しいので、各自京都で合流することになっていた。
お風呂に入りなとオババに言われたので、その準備をしていると太志からメッセージがあった。
『浦部まだ家にいんのか?』
『母ちゃんの実家』
いつ戻って来るか聞かれたので、明日だと伝える。
『じゃあ帰宅時間教えてくれ、そっちに行くから』
遊ぶのかと思ったら、なんでもお守りを買ったから渡したいんだと。
『初詣にしちゃ気が早いんでね?』
『まあそうだな』
曖昧な返事をされたところで、姉ちゃんに急かされたのでいったん切り上げて風呂に入る。
・・
・・
待ち合わせ時間に駅へ行けば、そこには太志だけでなく隆明の姿もあった。
「よう悪りぃな、ほいこれ」
必勝祈願のお守りだった。
「こりゃまたなんでだい?」
「良く分かりませんが、ただ旅行に行くってわけではないんでしょう」
「おめえ京都の話してても、なんか楽しみって感じとは違かったろ」
美玖ちゃんに限らず、俺って心情を読まれやすいんかね。
「勘ですよ勘。ですがその様子からして、当たってたみたいですが」
「……すまんね」
「良く分かんねえけど、まあ頑張れよ」
お守りを受けとり、それを眺める。
繊細とか気にならないのかな。
「宮内や神槙シスターズと仲良くなったのに、なんか関係してんだろ」
まじか、そこまで察してんの君ら。
「芝崎くんも君には感謝してるって言ってたよ。浦部は困ってるとき、なにかと寄り添ってくれるんで」
「この1年、宮内たちとなんかやってたろ。勉強でも遊んでるってわけでもなさそうだったけどよお」
半分はゲーム感覚だったけど、まあ本気で頑張ってはいた。
「今回は俺自身の悩みを解決するってのもある」
「じゃあ必勝祈願ってのも、間違ってなかったようだなあ」
「お守りは太志からです。僕もなにか用意しておくべきでしたか」
こうやって見送りに来てくれただけでも嬉しいさ。
さて、俺はこいつらに対してどうすべきか。
「精神病患者が減少してるって話題があるだろ。上手く説明できないんだけどよ、その関係で三好ブラザーズの弟さんを手伝ってんだよ」
「えっ おめえ知り合いなのか?!」
「これはまた」
運営に怒られたりしないだろうか。
ただ映世とか迷い人とか、信じる人はいないとは思うし、特に言及もされてない。
「宮内くんたちもその関係で?」
「彼の怪我については学校でも有名だからあれだけど、皆それぞれ大小の悩みはある訳でさ」
「その手伝いっつうので、宮内の悩みを解決したってこんか」
頷いておく。
「僕らに教えても良かったのですか?」
「わかんねえ。でも、とりあえず言うべきかなと思った」
「なら、あんま繊細を聞くのは止めとくかあ」
三好さんと繋がっていることも、言わないでくれと頼んでおく。
「2人とも、なんやかんや見守ってくれてたんだな。色々と悪かった」
線を引いて、あえて触れないでくれていた。
「踏み込むばかりが人付き合いじゃありませんので」
「ちょうど良かったろぉ」
ありがたい話だよ。
「知らねえこと多くても、友達は友達だ」
「僕ら面倒ごとは御免ですのでね、ここは何も知らないまま見送るとしましょう」
2人を交互に見て。
「お前らとの関係はさ、本当に居心地がいいよ。凧揚げしたかったわ」
「正月じゃなくてもできんだろ」
「そうですね」
田舎は最高ってか。
・・
・・
隆明と太志に全部じゃないけど、三好さんとの関係を言っちゃったことを説明しました。
『お守りなんもらっちゃぁねえ』
『そうか、2人とも何となく気づいてたんだな』
『良いお友達ですね』
『ギン兄の叔父さんとは連絡とれたんだっけ?』
海外にいるらしく、間に合うかどうかはまだ分からないとのことだった。
『年末だし、飛行機のチケットとれろば良いけど』
三好さんからも気にするなとの返事をもらい、とりあえず一安心です。
参加者が増えて行けば、段々と隠すのも難しくなってくかもな。
出発当日。
自宅の庭には見慣れない車が止まっており、持ち主である彰吾先輩が親と挨拶をしていた。
さすがに年末は帰郷したようだけど、すぐさま京都にもどるとあって、親御さんと喧嘩してなけりゃ良いんだけど。
雪谷家は年が明けたら来るけど、うちの両親は京都にゃいかないらしい。
「じゃあ行こうか、吟次君……久しぶりだね」
「へい。元気そうでなによりっす」
車内にて。
「2人の親が羨ましいよ」
「放任なだけっすけどね」
「でもアンタには甘いわよ、お父さんもお母さんも。ゲームとかまさにそうじゃない」
天然堂の据え置き機は貯金で買ったけど、もう一方のはパパとママのお金です。
「俺、ソフトはそんな買わないしさ」
1つのゲームを長く遊ぶタイプというか、基本はハクスラしかしません。太志や隆明から借りたりはするけれど。
「パーティ系のとか、あれ姉ちゃんが買ったんだっけ?」
「全員でお金出し合ったのよ」
やっぱそうなんだな。俺1人だと絶対やらんもの。
「僕もお邪魔して、皆でやったんだけど覚えてる?」
「……すんません。言われてみれば、そんなことあった気もするんですが」
少し寂しそうに。
「そっか」
「彰吾と吟ちゃんが仲良くなったのって、やっぱ映世が切欠だからね」
面識はあったけど、俺の記憶だと挨拶程度。
「これからまた積み上げれば良いのよ」
「きっと彼女を救出すれば、君の記憶も戻るさ」
「……すね」
姉が助手席からこちらを見て。
「お母さんから聞いたけど、宮内くんの妹さんだっけ。ずいぶんと仲が良いみたいじゃない」
「へい」
「そうか」
しばらく沈黙が続き。
「救出に成功するか、社会にでるまでは返答を待ってもらってます」
「そうね。私もそれが賢明だと思うわ」
彰吾さんにも、俺らがどんな関係だったのかを聞いてみることにした。
「僕らが深くかかわった頃には、もう君は映世で頭が一杯だったかな」
三好さんと同じ感じか。
「姉ちゃん、俺が中学の頃とか覚えてる?」
「そうねぇ もっとしっかりして欲しい、大人になって欲しいって感じだった気がする」
大人か。中学生にそりゃ無理な話しなんじゃ。
俺がギルドマスターになったのは、このままじゃダメだ。もっとしっかりしなきゃってのが理由だ。
まあ承認欲求です。自分は凄いってのを証明するため。
黒歴史だけど、なにかと良い経験だったとは思っている。
「女子の方が成熟は早いって言うけど、そんな感じかい?」
「ちょっと違うんじゃない。だって吟ちゃん、部活ない日は外走り回って遊んでたでしょ」
身に覚えあります。
ケンちゃんが高学年になった頃にはもう誰もいませんでした。
だから1人で外を走り回ってたよ。
「やってることが小学校の頃と変わんないって、いつも雫ちゃん言ってたわ」
「僕の時はどうだったかなぁ」
いや、彰吾先輩と一緒にされるのはちょっと。
「今でも仲間に言われるんすよね。映世のとき以外は頼りないって」
「そうかな。僕の記憶じゃ、普段もそんなことなかったけど」
人込みで怯えたりしなかったか聞く。
「苦手だとは言ってたけど、東京の混雑も落ち着かないって程度だったよ」
「そういやアンタ、瘦せ我慢してたわ」
「表に出さないようにしてたってこんか」
格好悪い所を見せたくない。
もう一つ。以前から気になっていたことがあった。
「雫さんってモテましたか。そんで中学のころ、誰かと付き合いだしたとか」
俺は現代恋愛も良く読む。
好きだった子に彼氏ができて凄く落ち込んだけど、このままじゃダメだって奮起した主人公。
「惚れてたかどうかは関係なく、なんらかの感情はあったと思うんすよ」
姉ちゃんに彼氏ができたとき、寂しいって感じたのは事実なんだ。
その相手が大城だったのかは分からんけど。
「告白されたって話はたまに聞いてたけど、私の知る限りだと断わってたと思う」
「吟次くんも知ってたのかな?」
付き合ってたなら、大城が俺をライバル視した理由には繋がらんか。
「言うなって頼まれてた。どうせあんたお子ちゃまだから、恋愛なんて分かんないって感じ」
「俺そこまで酷くないと思いますけど」
「じゃあ吟次くん、君の初恋っていつだい?」
えっ そんなこと聞かれても困る。
「……」
中学になってからだろうか。いや、それ以前から女の子とは上手く話せなかった。
「もし雫さんが該当してないなら、最近っすね。ただ異性を意識してたのは高学年の頃からです」
「そっか」
確りして欲しい。大人になって欲しい。
そう言われて頑張った方向がゲームだったとき、雫さんはどう思ったんだろうか。
俺は本気でやってたんだけど、捉え方は人それぞれだ。
「中学の時にさ、このままじゃダメだって新しいことに挑戦して、その結果が大失敗だったんよ」
「だから雫ちゃん心配して、ニートになるって勉強させたんでしょ」
幻滅はされなかったのかな。
「良く嫌がらずに勉強したな俺」
「お父さんお母さんが心配するよって言えば、あんたは何時も従うでしょ」
そうなのだろうか。
「だって2人を困らせること昔からしないじゃない。すごく聞き分けが良いから、姉としての立場がないっつうの」
首を傾げていると。
「詩吟やめる時、すごく悩んでたでしょ。お母さん悲しませたくないけど、もうやりたくないって」
「すげえ拍子抜けだったの覚えてるわ。あっさり了承してもらえて」
泣きながらお願いしたんだよね。
思えばうちが放任気味になったの、あれからだったかも。
「俺ダメダメだな」
「君が思うほど、吟次くんはダメじゃないよ。そんで君が思うほど、僕も立派じゃない」
「私もね」
そっか。




