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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
最終章 君たちが戦うくらいなら、この寿命尽きるまで共に眠ろう
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11話 クリスマス

 待ちに待った終業式当日。

 俺たちは体育館に集められ、校長のありがたい話を聞く。


「今回はラップじゃないんだな」


「ちょっと期待してたんだけど」


 文化祭だから彼も張り切ったけど、いつもあんなのは無理だってさ。韻を踏むとか良くわからんし。


 上手いか下手かは別として、俳句とかはなんとなく読めるけどラップは難しい。


 ちょっと相談を受けて、俺も慣れないながら一緒に考えたけど、けっこう強引に捻りだしました。


 挨拶は終わろうとしていた。本当にやるのか高尾先生。


「はめを外すと肥溜め、君たちがするのは書初め、そうさここからがエンタメ」


 始まってしまった。


「ここで終わらせるのが良い締め、だけど終わらない節目、また会った時に交わすぜ明けおめ」


 ラップってこれで良いのだろうか。


・・

・・


 今日はクリスマスなので、いつもの面子でとりあえず我が家に向かう。隆明や芝崎、あといつの間にか加わっていた村瀬などは、いったん家に帰ってからとのこと。


 隆明が俺の家を知っているので、彼が案内してくれるそうだ。


「ちょっと聞いて欲しい内容があるんだ」


 駅のホームで宮内が仲間の面々に例の話しをする。


 光りの騎士さんが言ってたこと。


「まあそんなわけだ。以前から疑問に思ってたんだが、美玖の前世が原初の精霊を倒せた理由にも繋がる」


 人がどうこうできる存在じゃない。


「兄ちゃんの内側にソレが居て、力を抑えつけてくれたってこと?」


「そのシャレにならない前世はさ、世界を滅ぼしかけたんだよね」


 乗っ取られた云々(うんぬん)は俺の予想。


「倒されたから、今ここに宮内がいるんすよ」


「じゃあもう安全ってことなのかなぁ」


「でも魂の汚染っていうなら、やっぱその前世はまだ汚染されてるんじゃないですか?」


 美玖ちゃんは俺と宮内を交互に見て。


「やっぱ反対です。夕焼に染まるだけじゃなくて、戦槌を使うのも控えるべきだよ」


「私も危ない前世スキルは使わない方が良いと思う。闇を散らす〖雷光剣〗に失敗すると、望まない形で発動しちゃう場合もあるよね」


 神崎さんも〖鬼になる〗は検証含めて、使わないって決めたからね。このスキルの発動条件は般若面を2重で被るってのだ。


「でも本当に危険なら、運営が介入するはずだろ」


「封印されてんのは戦槌じゃなくて、一点突破系のスキルっすね」


 美玖ちゃん、俺と宮内をそんな目で見ないでください。


「通常時って出たんだっけ。じゃあ特殊な状況ってのはなにさ?」


「緊急時とかですかね。あとは特定のスキルと組み合わせたときかな、ちょうど宮内くん報酬で〖雷の渦〗ゲットしたじゃないっすか」


 発生スキルである〖力の雷〗は、バーサクを強化するスキル。


「兄ちゃん、そのスキル没収」


「検証で何度か使ったが、問題はなかっただろ」


「それに気をつけるべきは一点突破系だから、そっちを宮内くんがセットしなければ問題ないかと」


 なにを言うべきか少しだけ考えて。


「映世ってのは多分だけど、前世が表に出やすい世界なんすよ。そこで活動するからには、表に出てくる可能性はあります」


 覚醒技。


「京都みたいな場所だと特にそうなん?」


「どっちかって言うと戦う相手じゃないですか。浦部さんソロで聖職者と戦ったあと、光の騎士って人が出て来たんですもんね」


 映画館での戦いもか。


「確かにケン坊も芝崎戦でそんなこと言ってたわ」


「あと私は〔勇者の剣〕を受けとったとき、大きなのが来ました」


 美玖ちゃんは宮内の方をみて。


「兄ちゃん教えてくれてありがとね。実は私も皆さんに伝えてない内容あるけど、ちょっと言いたくないんです」


「そこら辺は浦部の件でさ、アタシらも反省してっから、無理に言わなくて良いよ」


 2人と雫さんは恐らく友人だった。この情報を明かさなかった俺も悪い。


 確かにそのとき、美玖ちゃんはあんま責めてなかったな。浦部さんって秘密主義なところありますもんねくらいでさ。


「言うかどうかは個人の判断で決めるとしても、後々問題が発生するってのはあるんで、それだけは自覚して隠し事をしましょう」


「情報の共有は大切だけど、知られたくないことの1つや2つは誰にでもあるか」


 この場にいる全員がなにかしら思い浮かんだのか、否定する人は誰もいなかった。


 清廉潔白な奴がいるなら、もうその人はとっくに悟りを開いてんじゃねえかな。

 自分たちは神じゃないと言い切る運営も含めて。


「映世での活動をやめるのは難しいぞ」


「そうだよね。兄ちゃん目的あるし」


 生きてれば誰だって思い悩むからこそ、精神を病む人は後を絶たない。


・・

・・


 我が家に到着後は、前もって居間に据え置き機を移動させておいたので、パーティ系のゲームをする。

 美玖ちゃんは母とお買い物に出かけました。俺も行くつもりだったけど、お断りされてしまった。


 2人でお話をしたいんだとさ。


「ほいっ 次は浦部の番ね」


「へい」


 やはり大勢で遊ぶ場合、天然堂は強いね。これ以外にもあと1つ自分は持っております。


 本当はゲーミングPC欲しいけど、それは自分の金で頑張らんとな。

 最近の据え置き機は高いと言われてるけど、5から6万であの性能は凄いと思う。


 映世で稼いだのを使えば、余裕で買えちゃうんだけどね。

 どんくらいの稼ぎが適正なんだろう。


「おらよっと」


「よっし、これなら私いけそぉー」


 魂鎮め隊の面々は総じて強い前世だから、平均がわかんないんだよね。


「お邪魔しまーす」


「ケン坊きたか」


 マキマキが腰を浮かせたが、いつも勝手に入って来るので大丈夫と伝える。


「これ家の母からです」


「わぁ、ありがとぉ」


「全員ぶんか、お礼を言っといてくれな」


 人数分に小分けされたお菓子だ。可愛くラッピングされてますね。


 そうこうしている内に隆明たちもやってくる。


「ほっ 本日はお招きいただき、恐悦至極にございましゅ」


「こ、これつまらない物ですが」


「なんだこの凄まじい空間は」


 ふふんと優越感に浸りたいところだけど、色々とやらかしているので我慢する。


「まあ、好きなところに座ってくれたまえ」


 できませんでした。


 巻島さんに肘で小突かれ。


「なんか浦部の言い方がムカつく」


「あとで自分の思い返して恥ずかしがるんじゃない?」


 よくご存じで、すでにちょっと後悔してます。


「俺、今まで友人を呼んでなんかするとか経験ないんすけど、変な気分っすね」


「お誕生日会とかも?」


 身内だけでしたな。


 プレゼント交換とか始めてっすよ。とりあえず予算内で買えたアロマにしました。なんか棒タイプのやつ。

 考えたのは姉です。



 少しして美玖ちゃんと母上も帰宅しました。そのまま料理を手伝う予定だったけど、せっかくだから皆と過ごせって断られたらしい。


「ケンちゃんと美玖ちゃん落ちゲー得意だから、ちょっとやってみたらどうっすか?」


 ずっと緊張している様子だった隆明の眼鏡が光る。


「では一局お願いいたしましょう」


「俺もやりてぇ」


「僕も参加させてもらおっかな」


 いつも学校で活動していた甲斐もあって、芝崎の精神状態はけっこう安定しているようだ。


 そんなこんなで落ちゲー大会が始まった。


「俺は苦手ジャンルなので観戦します」


「うーん、私もゲームってあんましないんだよねぇ」


「神崎はいつも鏡に夢中だもんな」


「なんかそれサトちゃんがナルシストっぽくなるじゃん」


 宮内が俺の方を向き。


「そういえば浦部は最近ゲームやってるのか?」


「うん、今月に入って新シーズンになったからね」


 帰宅後は俺もそっちに集中してます。


「親も映世のこと知ってるしさ、本当はもっと遅くまで活動するのもありなんだけど」


「でも学校じゃポイント集めが主だから、宝玉の更新とは難しいんじゃない?」


 上級マップでないと、もう俺らは強化もできん。


「アタシは京都に向けて、ビルドの最終調整かな。レベルもなんとか間に合いそう」


 美玖ちゃんもあと少しでマックスになると言っていた。ケンちゃんは残念ながら、部活優先だったこともあるんで厳しそう。


「久しぶりにハクスラしたけど、やっぱ色々と練られているだけあってさ、運営に送る意見や案の参考になるよ」


 かつて執筆活動していた身としては、パクリになっちまうんじゃないかとか悩みもありますけど、映世って秘密裏に行われている救助活動だしな。ゲームではないか。


「そういえば映世ってさぁ、そのハクスラってジャンルなんだよね?」


 おっ これは布教のチャンスかも。


「なんならやってみます」


「うーん、少し興味あるかもぉ」


「サトちゃん凝り性だから、映世がおざなりにならん?」


 確かに少し不安か。


「大丈夫だと思うけどなぁ、自分で戦いたいって感じだし」


「言われてみればそうか」


 神崎さん、戦闘狂だもんね。


「じゃあ、1世代古いけど携帯機あるんで貸しますよ」


 俺が今やってるハクスラの前作なら遊べる。


・・

・・


 それぞれが思い思いに過ごし、お食事が終わったのちケーキも食べ、俺たちは廃校カフェへと向かった。

 ちなみにプレゼント交換も終わり、宮内くんのが当たりました。ハンドクリームだね、あんま使った経験ないから、手洗いのたびに使うの忘れそうです。



 暗いこともあり鏡社のある裏道ではなく、正門へと続く坂道を通る。

 村瀬がちょっと興奮気味に。


「おお、ここもイルミネーションで飾られてんのな」


 左右の木々が電球で彩られていた。けっこう単調な色合いだけど、これはこれで良いものだ。


 巻島さんも少しテンションが上がった様子で。


「そういや浦部と美玖ちゃん、にゃろうの町に行ったんだっけ?」


「はい、うんと綺麗でしたよ」


 村瀬と芝崎が凄い表情で俺と美玖ちゃんを見たあと、宮内に視線を移す。


「まあそうだな」


 兄の苦笑いを受けて、彼らは呪詛を始めた。

 なぜだろう、俺こういうとき優越感が来ると思ってたんだけど。


「つ、付き合ってんのか?」


「俺からはなんとも」


 気まずさが強い。


「ごめん、口滑らせた」


「いえ、隠すことでもないんで」


 いつも空気読んでくれるけど、それができない時だってあるもの。


 美玖ちゃんは満面の笑顔で。


「ご想像にお任せします」


「浦部くーん、ちょっとこっちに来たまえ」


「僕に遠慮しなくて良いから、繊細を教えてもらえないかなあ」


 キープしているとは言えない。


「勘弁してやれ。色々と事情があって、浦部もお前らの問いかけに返答するのが難しい状況なんだよ」


 宮内。


「なんか私より、兄ちゃんの方が浦部さんの好感度高い気がするんですけど」


「その勘違いだけはやめてくれ」


 ありがとう宮内くん。


・・

・・


 やがて校庭へと到着すれば、遊具なども綺麗に装飾されているようだ。


 木造の校舎には、電球でサンタさんやトナカイにソリが描かれていた。


 そういえば会話に参加してないと思い、隆明の姿をさがす。


 家族に連れて来てもらったんだろう。校庭ではしゃいでいる子供たちを無表情で眺めていた。


「気になんのか?」


「いえ、子供はあまり得意ではないものでしてな。彼らは遠慮なくものを言いますから」


 兵士さんが語っていた苦悩を思い出す。


「それにしては随分と、安心したような顔してんじゃんか」


「楽しそうな様子ですからね。自分の子供時代を思い返していたんです、殆どが太志との記憶ですな」


 そんな相方は委員長と過ごしているのだろうか。



 経済状況や家庭環境で、そりゃ恵まれてない子もいる。国によってはもっと悲惨な目にあっている子も。

 だけど今ここで遊んでいる子たちは、少なくとも楽しそうだ。


「日本だと忘れがちだけど、今日は救世主さんの誕生日なんだよな」


「そうですね。バレンタインも神父さんの命日でしたか」


 ジャングルジムには光る十字架が張り付けられていた。



 少し離れた位置から、マキマキが俺たちに声をかけてくれる。


「ほら2人とも、お菓子やココアもらえるってさ」


「へい」


 隆明の肩を叩き。


「行こう」


「そうですね」


 今世では未練も悔いもなく、お前が人生を送れることを願ってるよ。


「……いや」


 違うか。


「隆明」


「なんですか」


 もしそうなったら、どうなるんだろうか。


「満足しちまえば、もう終わりなのかね?」


「ふむ。確かに、そうかも知れませんな」


 サンタさんが優しく俺たちを見守っていた。



 ちなみに神崎さんは家に残り、ハクスラをしています。

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