9話 イベント報酬
殺人高校のエースはボス扱いだけあり、めっちゃ強かったです。
まず【属性球】で色ごとのデバフ。
赤は熱感と身体能力低下。
青は悪寒と守り3種低下。
緑は恐らく火と風の耐性低下。
黄は感電と素早さ低下。
茶は命中位置の重量操作。
そんでちゃんとしたフォームから放たれる【魔球】は4種。
【消える魔球】【武具に当てる魔球】【分身魔球】【ハイジャンプ魔球】など。
この魔球が合わさることで、【属性球】が強化される。
緑は吹き飛ばし。
赤は炎上と爆発。
茶は地面に当てることで一定範囲に動作阻害。
黄は地面に当てることで一定範囲に電撃。
青は装備を凍らされたのち、もう一度【青球】が命中すると、耐久が一気に削られる。
それでも俺らは魔球が投げれないよう妨害をしていたので、少しずつ削ってHP0にはできたんだけど、そこからが本番だった。
養成ギプスが外れたことにより、【短距離転移】の冷却が蓄積型に変化したんだと思う。これまでよりも【魔球】の成功率が増えちまった。
・・
・・
【消える魔球】が側頭部に直撃すれば、視界が炎に包まれて俺の意識はいったん途切れる。
トイレの洗面所で目覚めると、アイテムボックスを漁っている神崎さんを確認。
「サトちゃん、今回は諦めたほうが賢明だって」
「うぅ、浦部君も戻って来ちゃったぁ」
天使セット装備を取り出していたが、さすがにこれだけでは難しい。
「宮内くんも時間の問題っすね」
「そっかぁ」
なんか太志の時より機嫌は損ねてない様子。
「今回の敗因は明確だ。【武具に当てる魔球】を対策しないとダメですわ」
「装備性能の強化と、装備耐久回復の宝玉つけんとね」
「大剣壊れたの始めてだよぉ」
神崎さんの〔鉄塊〕を破壊されたのが痛い。あと宮内の〔盾〕もか。
【消える魔球】は〖障壁〗や〖光十字〗を通り抜けてさ、そのまま〖盾〗を狙ってきたりすんのよ。
「予備のもやっぱ揃えないとなぁ」
2軍装備。
「ケン坊の杖が一応残ってるけど、流石にあれだけじゃねえ」
〖緑光の杖〗は火と風スキルを強化する。
「まずはスキル枠付きの武具を買わんと。欲をいえばビー玉のソケット付の方が良いか」
全色対応のスキル枠に、ソケット3つとなりゃ150万くらいは覚悟した方が良い。ただこれにセットできるビー玉は単純なのが主らしい。
本当はリスクや制限付きの方が強力なんだけどね。
「浦部の盾や宮内の戦槌もさ、緑鋼や黒鋼じゃん。後付けでソケット追加できんのかな」
「とりあえず、要望で運営に送っときますか。来シーズンあたりに期待ってこんで」
「ああして欲しい、こうして欲しいってのがどんどん溢れてきちゃうや」
楽しんでいるからこそだわな。
「たまには運営の立場で意見も送っとくべきっすかね」
こういうのは正式サービスが始まる前の方が良い。
「シーズン更新されても、スキル玉は持ち越されるじゃないっすか。でもレベル1になるだけじゃ足りない気がするんすよ」
〖炎の斬撃(破損)〗
破損ってのは各効果が(中)より上には強化できない状態。
修理専用のアイテムを5万くらいで購入して直すって感じにする。
「スキルによって必要数を増やすんすよ。光十字みたく優秀なのはさ、このアイテムを4つ必要みたいな感じで」
「えぇ、ただでさえお金かかるのにぃ」
「絶対イヤなんですけど」
俺も本音を言えば2人と同意見です。
「もしくはポイントの換金率を下げるべきです」
現状だと1Pが1円。
「命がけなら今のままでも良いですが、映世での活動ってそうじゃないですもん」
プロゲーマーとしてスポンサーが付くのは一握り。さらに大会とかで結果を残せる人なんてもっと少ない。
「まあ確かにね」
雫さんみたいな例もあるから絶対に安全とは言えない。
「私すっごい楽しんでるし、これで毎月数百万なんてあれかぁ」
すげえ高い塔のてっぺんにある電球を交換すれば500万とか、危険な仕事は世の中に沢山あるわけでさ。その範疇での稼ぎに抑えておくべきなんだよ。
「なんどもシーズンを経験したら、さすがに俺ら以外のプレイヤーも装備やスキルが整うと思います。そしたら現状のままだと、お金はどんどん消費しなくなっていきますよ」
「もっと凄いビルドはないか模索する。私なんか多分そのタイプだけど、全員がそうとは限らないもんね」
とりあえずこうしとけば間違いない。テンプレってのはなんにでもある訳で。
「そうなった時に、スキル玉を修理するアイテムってこんか」
俺は自分の案を手鏡に書き込んでいく。
「浦部くん本当にそれ送るのぉ?」
「理解はしたけど、納得はできんね」
「どうすっか決めるのは俺じゃなく運営っすよ。たぶん連中だってもう気づいてると思いますし」
個人的には1Pを1円ってのは下げるべきだと思う。
「ぶぅー 浦部くんの分からずやぁ」
「やっぱ浦部ってこういうのは譲らんよね」
2人とも指で俺をつつくのは止めてください。
俺は思考の海に潜っていく。
「シーズン毎の強化要素も案を送っとくか。日本語が混ざってる《魔法陣》や《刺青》なんて使えそうだけど」
リスクや制限、強化内容を自分で書き込むか、事前にワードを運営の方に用意してもらう。
あとは精霊結晶みたいなアイテムを塗料にするとかかね。
刺青にするか、用紙に魔法陣を描いて使うか。
「こいつ自分の世界に入りやがった」
「もどってこーい」
後はそうだな。ソロで活動するときだけ使える味方。
スキル枠とか、ソケットとかを付けれて、もう一人の自分として召喚できる。
あんま芸がないか。
「俺が今持ち運べるのって、篭手と脇差にメイスと小盾。あとは2つの留め具」
両手とベルトに取り付けられる数のみ。
「動く武器庫みたいなのが欲しいな。宮内の〖鞘〗みたいな感じでさ」
「あっ それ良いかもぉ」
「っていうか無視すんな」
大型のだったら1つ。中型なら2つ。小型なら3つくらいを運んでくれる。装備の切り替え機能に対応するかどうかは運営に決めてもらおう。
そうこうしている内に宮内がトイレへと戻ってきた。
「すまん、やられた。ていうか、お前らまた浦部で遊んでるのか」
「違うんだって、ちょっと聞いてよ」
俺がプレイヤーに不利な案を送ったことを2人が伝えると、彼は苦笑いを浮かべ。
「そういう性格が気に入られたんだろうな」
運営にか。
「あんま嬉しくないっすけどね」
遊ぶ側の感情よりも。
「バランスを考えるなら、ベータテストのうちに導入しておくべきです。途中から追加されるのと、最初からそういう仕組みがあるのとじゃ、プレイヤーの反応も違いますんでね」
換金率はシーズン毎に変動があるって予め伝えておけば、そこまでプレイヤーも炎上しないかな。
評価されるゲーム、長く遊べるゲームか。
・・
・・
神崎さんと巻島さんはすでに報酬の確認を終えている。
「〖飛行〗か」
「そうそう、時間制限はあるけど空飛べるんだってさ」
自分専用。
「やっぱパワードスーツの報酬なん?」
「大鳥が翼竜かも知れないけど、それならエフェクトの〖翼〗とかになるか。俺は遠慮したいっす」
「浦部くんって、〖隠身〗との相性悪いもんね」
上空からの特攻とか、本当はあんましたくない。
初期で2分ほど飛べるけど、加速したりすれば残り時間も追加で減っていくようだ。冷却が2分。
「そして神崎の報酬は〖精神技〗か」
「宝玉も良いのたくさん手に入ったよぉ」
MPじゃなくて、SP(精神ポイント)を消費するスキルとのこと。
神崎聡美。
〖熱血〗 5秒間の身体強化(小)。〖前世装備〗の性能強化(小)。体温上昇。
〖必中〗 敵1体に5秒間の動作阻害(小)。
〖ド根性〗 HPを全回復させる。
〖不屈〗 事前に使っておくと、一度だけ重症級のHPダメを(3/2)で抑えられる。
「鉄壁はないんだな」
「人によって違うんだと思う」
試しに神崎さんからスキル玉を借りて、俺がセットしてみる。
浦部吟次。
〖熱血〗 5秒間の身体強化(小)。〔前世装備〕の性能強化(小)。体温上昇。
〖覚醒〗 自分。または味方1人に対し、7秒間の素早さ関係強化(小)。スキル使用後の硬直を短縮(小)。各スキルの事前準備と冷却短縮。
〖集中〗 10秒間の素早さ関係強化(小)。
〖宿命〗 熱血が魂に変化。身体強化が一段階上昇。〖前世スキル〗の性能強化(小)。
「なんか浦部くんの方が凄い気するんだけど」
「そんな恨めしそうに見られても困るっすよ。そのぶん消費SPは多いんで」
俺と宮内は見つめ合う。どうやら彼も覚えがあるらしい。
「もし幸運ってのを使えたら、報酬が増えるかも知れんぞ」
「努力なら経験値っすね」
「えっ そうなの?!」
神崎さんの目が輝く。
「〖加速〗は持久力の強化かな」
「〖閃き〗は回避に専念する時のみ、素早さ関係強化だろうか」
「なんでアンタら、そんなの分かるん?」
俺と宮内は視線を交差させたまま。
「スペシャルな人型兵器の戦い」
「現世に戻ったら、精神コ〇ンドで検索してみろ」
「えっ、なにそれ」
ゲームに似たのがあるとだけ伝えておく。
「SPってテンションのことだよね?」
神崎さんは少し悩みながら。
「確かに私〖パッシブ〗や〔面頬〕のお陰で戦意上がりやすいけど、鬼姫や屈辱の角で消費しちゃんだよね」
「精神バフでSPの回復もできますけど、連発は難しいかも知れません。たぶんそれを使い切ると、隆明戦のときみたく戦意喪失になります」
もしかすると研ぎ澄まされた殺気もSPを消費して使ってんのかもな。
気合で気力が回復したりすんのだろうか。なんかわけが分からなくなってきた。
っていうか大城の前世、なんで精神コマ〇ド使えんだよ。
「まあ検証っすね」
どんくらい精神を削られるのか。スキルレベルが上がると消費も減るかも知れん。
もし有用なら、ショップで〔面頬〕の購入も考えんと。
「じゃあ失礼して」
俺はアイテムボックスを開いて報酬の確認をする。
「ビー玉だけっすね」
赤い雷を期待してたんだけど。それか電磁波の膜でも良かった。
白鎖《自分と味方の精神安定強化・自分と味方の精神安定が心頭滅却に変化》
これ以外にも使えそうなビー玉をけっこうゲットできました。
「あとは精神保護の上位が揃えば、精神バフは一通り集め終えたって感じかなぁ」
「最強の熱感はやっぱ辛かったん?」
「へい」
めっちゃしんどかったっす。
「見た感じだと、怒りの炎はなんとか制御できていたか」
「俺には妄執ってのもないと思うからね。阿修羅について調べといて良かったよ」
この怒りは自分の感情じゃない。そう割り切るためにも、事情を知ってるかどうかってのは重要だ。
「妄執に当てはまるかは分らんけどさ、なんでもかんでも自分の所為だって思い込むのは、ちょっとやめた方が良いんでないかとは思うけどね」
「雫ちゃんが迷い人になったのは、浦部くんだけの責任じゃないって三好さん言ってたじゃん」
「そうっすね」
京都の数値がマイナス50だった。
三好さんからその話を聞き、活動してみたいとなったらしい。
じゃあ自分の地元だから、案内するよって話に繋がったわけだ。
「でも自分の責任だって考えちゃうんすよ」
病み上がりなのもあるしさ、三好さんは戦闘系のスキルもなかったから、あくまでも泊まる場所と観光案内って感じだったそう。
「俺が男に告白したっつう話が広まったとき、自分の所為じゃないと理解はしても悩みましたよね?」
「確かに迷惑かけちゃったとか、やっぱ考えるかな」
自分は悪くないって開き直るよりは良いとは思うんだけど。
「俺の所為だってふさぎ込むのも考えものだ。こうやって行動できてる現状に感謝しんと」
もし妄執があるとするなら、記憶を失う前の俺だよ。
少なくとも原罪たちは、俺の味方をしてくれてるわけだし。
アイテムボックスの前から退く。
「ほい、宮内どうぞ」
「すまんな」
たぶん俺が頑張ってたのは、承認欲求を満たすためだ。
誰かに認められたい。必要とされたい。褒められたい感謝されたい。
自分が無能ではないと照明したい。
「雷の渦か……風刃の渦を雷属性にしたスキルだな。バーサーカー系と合わせれば、力の雷に発生するそうだ」
「浦部じゃなくて、そっちの報酬になったんね」
割引券で買おうかな。
宮内はしばらくスキル玉に集中して説明を確認している様子。
「〖怒りの炎〗や〖戦槌〗だと精神汚染の類に入るけど、それが一段階強化されるそうだ」
バーサーク中は回復ができなくなるとか多いけど、俺の場合は怒りのデバフが上位になっちまうんか。
〖憤怒の炎〗
そんで宮内は闇がより早く全身に広がる。
「悩みどころっすね。もしかしたら神崎さんの燃える闘魂も?」
「できるな。合成も可能だ」
怒りの炎は〔玉鋼の留め具〕だから、合成はできません。
「うーん、私としては使いたいけど。この場合は皆の意見が優先かなぁ」
戦闘狂が悪化する。
「必要なときだけ〖雷の渦〗を発動させれば良いんちゃう?」
「任意で切り替えができるなら、購入する価値はあるか」
俺たちもけっこうお金はたまってるんでね。
「リスクや制限ってのがあるから、〖力の雷〗ってのも強力なスキルかもね」
「宮内ので検証してから、各自決めましょう」
「そうだな。あと俺も研ぎ澄まされた殺気を経験しておきたいんだが、今後も使ってくる敵は出て来そうだろ」
確かに。
「体験はしといた方が良いかも知れん」
「美玖にも言っておくか」
「弱体化してんだよね? なら私も前衛だし、もう一回喰らっとこうかなぁ」
「えぇ、アタシどうしよ。でも殺気って後衛も狙われるんだよね、芝崎のときとかそうだったじゃん」
詠唱の妨害に使ったな。
「俺の意見としては経験しとくべきかと。まあそこら辺はお任せしますが」
「精神バフを盛ってから受けるってのも有りだぞ。両方でどれだけ違いがあるか確かめたいところだが」
検証する上でとても助かります。
・・
・・
俺たちは現世に戻る。
「あちゃ、もう野球部は残ってないねぇ」
「金網とネット破っちゃったけど、まあ元は十分以上に稼げたん違う?」
「しばらくはテスト勉強に集中しないとな」
「思い出したくないことを」
うちの親は厳しくないけど、やっぱ点数が悪すぎるのは俺が気にする。それに先生も言ってくるだろうし。
「また勉強会でもするか」
「そうだ浦部よ。あんた、クリスマスどうすんのさ」
「えっ 今のところ特になんも言われてませんけど」
「美玖ちゃん、たぶん行動しないと思うよ。たくさん困らせたから、気が引けるって言っていたし」
そうか。
「あんたがそれで良いなら、アタシらはなんも言わん。雫さんのこともあるしさ」
どうしよう。
「俺は特に予定ないな。終業式で半日だから、美玖も含めてサッカー練習でも良いぞ、ケンジも呼んで」
「私は活動するかなぁ」
「皆で集まるでも良いよ。大堀や細川も誘う?」
「太志はたぶん用事あるんと違いますかね」
委員長と仲が良いみたいだし。
「そうそう気になってたんだよぉ、マジであの2人そうなん」
「好きっすね、そういう話」
「まあねぇ。私もお年頃だしぃ」
「大剣振り回すのに夢中な奴の発言とは思えんな」
皆が笑い、神崎さんはちょっと不満そう。
「あれ、練習場から出れんくない?」
「……まじっすか」
「あの高さなら飛び越えられるだろ」
だてに身体強化はされてない。
こうしてテスト前の活動は終了しました。
ごめんなさい、元ネタ我慢ができませんでスキルにしちゃった。




