8話 三つ巴
グラウンド内だけでなく、外周にも室内練習場や更衣室などがあり、トイレの近くでも戦いは繰り広げられていた。
「俺たちは固まって動くぞ。神崎、突出しすぎないよう気をつけろ!」
「りょっうかーい」
神崎さんだけでなく、宮内も息を吸い込む。
「《今の俺たちなら戦えるはずだ!》」
勇気を胸に《鼓舞することで身体強化(中)。冷却1分》
「〖うぉおおっ!〗」
〖叫び〗と共に〖修羅鬼〗が燃え上がる。
5体ほどの近未来兵が銃を撃ってきたので、俺も前にでて〖風刃の渦〗を展開させる。属性耐性はそのまま。
「バフが虹色に点滅してるな」
一色だけでなく、複数得ているようだ。
「近未来兵や機械は基本うちの学校っすね」
「分かり易くて良いじゃん!」
連射された弾の中で、いくつかが〖渦〗を貫通していた。
「大丈夫そうっすか?」
「平気。〖天の光〗あるし、弱体化してるけど〖防護膜〗まとってるもん」
神崎さんと繋がっている〖白鎖〗には神聖視+2を合成しているので、守り3種も追加で強化されている。
〖鎖・味方〗だから意識操作は働いてない。
「〖ベルっち〗は〖トリ兵衛さん〗をお願い、〖テンさん〗と一緒に空の敵からアタシらを守って!」
見上げれば空中戦も繰り広げられている。
大きな鳥が地上へと【黄色い羽根】を飛ばしてくるが、軽量の遠距離攻撃なので〖渦〗が防いでくれたか。
近未来兵の何体かが感電を受けた様子。
「浦部くん、私も貰った!」
神崎さん突出してたからね。
「雷耐性に変更」
〖防護膜〗には《属性耐性》もあるので、たぶんこれで問題ないはず。
神崎さんが次々に兵士を叩き潰していくが、HPは完全に削り切れず。パッシブによる強化か。
4mほどの翼竜が尻尾を彼女に叩きつけようとしたけれど、〖人造天使〗が〖光十字〗と〖大盾〗で受け止めれば、〖赤鳥〗の嘴が喉元へと突き刺さり炎上ダメ。
「やっぱ光壁を挟むの難いわ」
空間認識能力とか必要そうだ。
上手いこと割り込めないと、スキルの発動は不発に終わる。
「テンさんとトリ兵衛さんは、ベルっちと一緒に竜を引き付けて!」
巻島さんが指揮できるようになってくれて、本当に助かっております。
「大鳥が降りてきそうだから、みんな警戒するように!」
近未来兵たちが空に向けて銃を連射。こいつらも強化されているだけあり、少しずつ大きな鳥はHPを削られていた。
「数的に二軍の連中もここに出現してるか」
「やっぱそうなん?」
苛立ったのか、大鳥が降り立って兵士を襲う。こいつも青いパッシブをまとっていた。
「こらぁっ、私の獲物だ!」
〔鉄塊〕で押し潰そうとするが、羽ばたきと共に【電磁波の膜】が発生して、どうやらHPダメと衝撃を軽減されたか。
「美玖ちゃんのと似たスキルかね」
遠距離攻撃も持っているようだけど、殺し切れるほどの威力はないってこんか。身の守りにも自信があるようだし、迷いなく降りて来たんだな。
宮内が兵士たちに〖憎悪の触手〗を放ち、〖合体仕込み短剣〗を大鳥へと飛ばす。
「神崎はそいつに集中しろ」
「わかったぁ!」
〖短剣〗は翼を狙っているため、迂闊に飛び立てなさそうだ。
「こっちに2体接近してきた、浦部対応お願い!」
「了解」
荒木場の二軍と思われる中型のヨロイ蟻がこちらへと迫っていた。
水の精霊も確認。
〖一点突破〗の構えをつくり。
「クロちゃんに援護をお願いします」
「今召喚したっ!」
妖精と天使が交戦していた翼竜に、飛行機能つきのパワードスーツが襲い掛かる。
右腕には【ヒートサーベル】が握られており、左前腕には【盾と一体化している銃】を装着していた。
神崎さんは大鳥の【爪】を〔大剣〕で弾き返し。
「ベルちゃんと天使さん、そいつに先を越されないよう頑張って!」
炎鳥はもうすぐ消えるか。
「浦部、できれば俺の方に2体とも連れて来てくれ」
「やってみる」
ヨロイ蟻に向けて〖特攻〗すると、そのままの勢いで切先を突き刺す。
「硬てえ」
〖黒と黄〗を水の精霊に、〖青白の鎖〗をアリに放つ。
精霊への感電は失敗。
「アリは悪寒(強)に成功」
顎をカタカタと動かすだけで、効いてるかどうかは不明。
そのまま俺に圧し掛かろうとしてきたので、〖光十字〗越しに〖盾〗を叩きつけて受け止める。
突風なしでも行けそうだな。
「〖無断〗」
硬い敵に有効なスキル。
クロちゃんが〖爪〗で青い球体を切り裂くが、こちらも【氷の膜】を張って防いでくる。【肩腕の尻尾】には〔無断の十手〕が使われていた。
大きい〖打撃音〗が発生して氷を砕くと、〖黒い牙〗で水精霊の物理と属性の強度を奪う。
精霊の全身から【氷の針】が勢いよく伸びるが、後ろに跳びさがって回避に成功。
「クロちゃん、ちょっとずつ後退するぞ」
蟻の腹を靴底で蹴飛ばして、俺も後ろにさがる。
精霊は〖憎悪〗で俺を追ってきたけど、クロちゃんが上手いこと割り込んでくれている。
ヨロイ蟻はカチカチと顎を鳴らすだけで、あまり〖神聖視〗には反応せず。
「もとから感情ってのがないのかもな」
崇める神もいないか。
「赤い浮剣でアリを狙ってくれ」
宮内は近未来兵の攻撃を〖肩腕〗で受け止めながら。
「わかった」
〖浮剣〗に反応した隙に〖鎧の鎖〗を放ち、それを巻き取ってアリをこちらへと引き寄せる。
「槙島、準備できたぞ!」
兵士たちの銃口からは物質化した【黒い刃】が出現しており、宮内が〖盾〗と〖青い浮剣〗で捌いていた。
マキマキがゲス野郎を召喚。
「あそこに旗!」
「嫌でゲス。なんでげすかこの数は!」
まあ何となくは分かっていたので、巻島さんの指示で〖青大将〗が脇に抱える。
「護衛が居ないんで、巻島さんは周囲の警戒をしてください!」
「おうよ」
〖天使〗を自分のもとへ呼びよせる。
「ベルっちもいったん退避して!」
トリ兵衛が冷却に入ったので、妖精だけでは厳しいとの判断だ。
翼竜とパワードスーツが1対1となる。
乱戦を潜り抜け、〖大将〗が地面にマスコット化した海賊を放り投げて護衛につく。
「ひぃっ もっと優しくするでゲスよ」
文句を言いながらも背中の籠から旗を抜き、それを地面に突き刺せば、上空に〖黄色い船〗のエフェクトが出現。
着弾位置の目印が描かれ、色が徐々に濃くなっていく。
宮内だけをその場に残し、俺と〖大将〗は範囲外に逃れる。
「置いてきぼりでゲスか!!」
「すまん、普通に忘れてた」
近未来兵は〖憎悪〗で意識を操作されており、アリも〖鎧の滑車〗から離れられず。
水の精霊は〖黒豹〗が押えつける。
〖船から放たれた砲弾〗が地面に命中すれば、電撃がバチバチと鳴り響き、敵にHPダメと感電を喰らわせた。
味方は軽減してくれるが、クロちゃんは冷却に入る。
「もうしばらく呼ばないで欲しいでゲス」
海賊は強度が尽きて消えた。
「巻島さん、翼竜がそっち狙ってます」
妖精と天使が居なくなり、少し余裕ができたんだろう。顎をひらけば彼女へと【炎の球】を放ってきた。
「間に合う」
宮内が〖岩の壁〗を割り込ませ、巻島さんも〖光壁と十字〗で補強する。
その隙に飛行型のパワードスーツが【ヒートサーベル】で翼を焼き、切断線と炎上ダメによりHP0となった。
「テンさん投げてっ!」
〖人造天使〗のレベルも順調に上がっていた。
並みの感電と電撃ダメを宿した〖槍〗を投擲。冷却30秒。
翼の膜を突き破ることに成功し、竜は地面へと落下する。
巻島さんは精霊のポーションを服用したのち。
「トリ兵衛さん」
〖白銀のナイフ〗を嘴に転移させ、〖炎鳥〗が〖闇〗をまとって胴体に突き刺さる。
飛行タイプのパワードスーツが止めを刺そうと銃口を向けたが。
「宮内お願い!」
「任せろ」
〖合体仕込み短剣〗が邪魔に入る。
「味方に〖鎖〗を再射出しておくか」
翼竜は熱感に苦しむだけでなく、闇精霊の〖触手〗により動きを封じられていた。
「〖一点突破〗」
貫くと同時に〔脇差〕を手放し、重量を増加させた〔メイス〕で殴打する。
「サトちゃん、闘仙鬼を竜に当てて!」
「わかった」
召喚された〖仙鬼〗は鬼火を消費して〖岩拳〗をまとい、こちらへと駆けだした。
戦叫はすでに冷却中の様子。
「テンさん、まだあいつ諦めてない」
〖仕込み短剣〗の攻撃を掻い潜りながらも、こちらへと【盾銃】を撃ち込むチャンスを狙っている。
〖人造天使〗が槍を引き寄せ、パワードスーツとの交戦に移った。
〖炎鳥〗も残り10秒ほど。嘴を竜の胴体から抜き、爪で蹴って再び飛び立つ。
「サトちゃん、側面からトリ兵衛さんが特攻すっから!」
「わかった。牛さんに合わせて!」
重力場を発動させる余裕はない。背後に〖牛〗を出現させ、準備動作をお願いすることにより、突進命中時に〖衝撃波〗を発生可能。
翼竜は最後の力を振り絞って暴れるが、俺は〖盾〗で身を守りながら、〖メイス〗での攻撃を継続。やがて〖闘仙鬼〗の〖拳〗が減り込んで沈黙を確認。
宮内が叫ぶ。
「こっちの援護を頼む!」
感電で動きを鈍らせていたが、まだヨロイ蟻と水精霊に近未来兵が残っていた。
すでに闇豹や氷人はいなくなっているので、さすがに彼だけじゃ辛いか。
「神崎さん、闘仙鬼はそっちに戻して良いぞ!」
「助かる」
〖牛の突進〗は彼女を通り抜け、そのまま大鳥を狙うも鉤爪で地面を蹴り、翼をバタバタさせながら横へと逃げる。
側面から〖闇の炎鳥〗が特攻を仕掛けるも、【電磁波の膜】で威力を弱められ、続けて【感電の羽根】を神崎さんに放つ。
「浦部くん!」
〖銀の鎖〗を自分に射出。
「〖巻き取り〗」
神崎さんは〖滑車〗へと引き寄せられ、出現した〖兵士〗が研ぎ澄まされた殺気を大鳥へと放つ。
本物ほどの精神ダメはないが、その隙を〖闘仙鬼〗が見逃さず、〖岩針の重力場〗で動きを止めた。
「よし」
全体を見渡していた巻島さんが。
「前から2体、グラウンドから1体接近!」
「黒の原罪を召喚します!」
俺は宮内と巻島さんに〖黒い鎖〗を放ち、一方を〖破壊〗して〖ボルガ〗を召喚する。
「ありがと」
「助かる」
グラウンド側の敵に〖転移突進〗を頼む。準備動作が終わるのを待ち。
「行け」
ネットと金網を突き破ってから、ボルガは空間の歪みに消えた。
大鳥は闘仙鬼が直に始末する。
「幻影は2体ともパワードスーツに当てます!」
「冷却終わったら、そっちにトリ兵衛さん行かせるから」
〖天使〗だけだと少し荷が重い。
「大将とサトちゃんは宮内の援護。クロちゃんは前からくる2体を喰い止めて!」
水精霊はすでに倒し、ヨロイ蟻も死にかけている。近未来兵は残り2体でHPも0になっていた。
メイスから脇差に交換。
「グラウンドからの敵は俺が当たります」
「もう練習場の戦い終わってる。それを勝ち抜いた奴だから気をつけな!」
鋼鉄リーガー負けたのか。
確認すれば戦斧と大剣を使って、ボルガの突進を真っ向から受け止めていた。
かなりの巨体。
「すぐそっち行くねぇっ!」
〖止まない雪〗が〖黒鎖〗と繋がる味方のスキル冷却を短縮させる。
「頼んます」
〖一点突破〗で〖闇に紛れた〗のち、2体の〖幻影〗が出現。
「メッセンジャーは来ないか」
闇から抜けて光に包まれる。
敵の側面に出現したけど空間が歪むからさ、〖闇に紛れて〗も把握されやすい。
「ボルガは失敗」
奴の突進を凌いだらしい。
それでも姿勢は崩せたようなんで、勢いのまま〖無断〗を叩きつけるも、〔大戦斧〕に受け止められた。
空間の歪みで表情は確認できず。
「【熱血】」
女性の声だった。
全身が赤く光り、もう片方の〔大剣〕が掲げられた。
「……バーバリアン」
地面スレスレの位置に〖滑車〗を出現させる。
自分の身体に〖鎧の鎖〗を打ち込み、即座に巻き取れば目前を刃が通り過ぎた。
脇差を手放して、〖光拳〗を地面へと叩き込む。
光拳とメイスの重力場は冷却が同じものとしてカウントされる。
「〖土紋・地光撃〗」
土耐性の低下。
まだスキルレベルが低いので、あまり効果は高くないが、それでも有るに越したことはない。
敵の【戦叫】が練習場を支配した。
精神の圧迫。
「状態異常治癒もか」
茶白のメイス《重力場の状態異常を治癒されると、5秒間再発動(性能2/1)》
【大剣】の減り込んだ位置が赤く輝き、そこを中心に燃え上がった。
「火耐性に変更」
炎上ダメと動作阻害デバフだが、どちらもそこまで強力なものじゃない。
「咎人のメイスを発動させます!」
【戦斧】による追撃を〖青の原罪〗が受け止めるが、頭上に【小さな雲】が発生しており、そこから【雷】が〖アドルフさん〗に落された。
「無理をさせました、退いてください」
原罪は〖滑車〗にもどる。
敵の側面に〖赤い滑車〗を出現させるが、精神力が不足しちまってる。
「〖うおぉぉぉ!〗」
神崎さんの〖戦叫〗により戦意高揚を得た。
「《浦部踏ん張れっ!》」
勇気を胸に《HP0時に叫ぶと戦意高揚が血沸肉躍に変化して味方にも広がる》
〖赤き原罪〗が敵の側面から出現すれば、燃え滾る〖金棒〗が振り落とされた。
「【閃き】」
巨体が黄色く光り、〖クレメンス〗の攻撃を寸前で回避。
「まだだ」
〖白の鎖〗が精神安定を《強化》しているので、敵の背後に〖黄の滑車〗を出現させた。
茶白のメイス《味方が一度でも重力場に触れろば素早さ関係強化(大)》
「来い宮内!」
〖鞘〗から〖雷光剣〗を解き放ち、《マントが輝く》と〖雷撃〗がバーバリアンに放たれる。
光拳合成により、素早さに比例して身体強化。
宮内が〖黄の原罪〗を通り抜けて素早さ強化。
《雷光剣発動後、5秒間素早さ関係強化(大)》
《解放後に10秒間身体強化(大)・雷撃によるHPダメ増加(大)》
敵が〔大剣〕で防ぐよりも早く、〖雷光剣〗が鎧に深い切断線を刻む。
〖緑鎖〗が宮内と繋がっていた。
「【根性】【鉄壁】」
青白い輝きに包まれたので、守り3種強化とHP回復だろうか。
〖ハイデ〗が続けて馬上から槍で突くが、炎と共に振り上げられた【大剣】に弾かれる。
馬はそのまま駆けて俺を通り抜けた。相手の背後から両手持ちの〖メイス〗を叩き込むが、【戦斧】で受け止められた。
「雷耐性に変更」
宮内が盾を空に掲げれば、【小雲より雷】が落ちる。
銀の鞘《障壁消滅時に3秒間〖影十字〗が発動》
敵の3方面に滑車を出現させ、赤青黒のデバフを付与。
「戦叫使わせといて良かった」
状態異常治癒があるっぽいからな。
「〖鱗粉の風!〗」
白鎖《咎人のメイス中は味方の状態異常治癒を拒否可能》
妖精を肩に乗せていたようで、身体強化や性能強化も得た。
俺は〖牢獄〗を発動させ、3方面の滑車が鎖を巻き取る。
『条件[狂人化]を満たしました。特殊スキルを発動します』
巨体の周囲を【赤い雷】が駆け巡る。
「バーサーカーかっ!」
動作阻害をものともせず、轟音と共に〔大剣〕が振り抜かれる。
〖光壁と光十字〗が割り込み、反応した宮内が〖白盾〗で俺の守りに入るが、もの凄い威力に吹き飛ばされた。
彼を受け止めると、横へと退かす。
「浦部……大丈夫か?」
底知れぬ怒りが湧き上がる。
彼はもともと正義を司る神だった。
許せるはずがない。
いずれは嫁がせるつもりだったとしても、その行いを。
その後、妻として正式に娶ったからなんだって言うんだ。
いつまでも怒りに囚われている俺が悪いのか。
「言うのは容易い」
天界を追われても消えない怒り。
力の神に敵わぬ苦悩。
空気を切り裂く〔雷の斧〕を、〔咎人のメイス〕で弾き返す。
そのまま振り抜き、続けてメイスの柄尻を鳩尾に減り込ませるが、強靭な筋肉は【鉄壁】の光をまとう。
〖無常の蛍〗が舞っていた。
彼は釈迦の教えを受け、己の苦悩と怒りに向き合い、天部となって守護者へと導かれた。
「調べといて正解だったわ」
あの兵士は〖怒りの炎〗により力は増していたけれど、それまでの剣技は見る影もなく失われ、強引に刃を振るうだけの存在と化しちまった。
それはあまりにも悲しすぎる。
〖黄の原罪〗が馬から降り、〖槍〗でバーサーカーの脇腹を狙ったが、そいつは身体を反らして回避する。
愛馬が〖赤き原罪〗を通り抜けると、相手の後頭部に向けて〖金棒〗を叩きつけた。
その場で屈んで避ければ、振り向きざまに〔大剣〕を打ちつけられ、赤き原罪は〖滑車〗へと帰る。
「私の苦悩もまた、糧とできれば良かったのですが」
足を〖メイス〗で払うも【戦斧】で防がれ、続けて〔大剣〕がハイデの槍を断つ。
【小雲から雷】が落ちるが、宮内青年が〖仕込み短剣〗の〖青い障壁〗で防ぎ、〖光十字〗と雷耐性が威力を弱めてくれた。
「鬼さん叫んで!」
《修羅鬼が叫ぶと自分と味方に身体強化(大)》
俺は【雷】を無視してメイスを構え。
「〖剛撃〗」
命中して相手は片膝をつけるが、HPは未だ削り切れず。
「〖縦断っ!〗」
宮内くんが〖肩腕〗で俺を押し、風撃から守ってくれた。
「まだっ」
続けて〖牛〗を走らせるも、相手は横に跳んで回避に成功。
〔鉄塊の大剣〕を構えて溜めの姿勢を作るけれど、させまいとバーバリアンが走り出す。
未だに〖牢獄〗は発動しているが、残念ながらあまり効果はない。
「〖鎧の鎖〗」
ギリギリで冷却が間に合っていた。命中して巻き取りを発動させたが、スキルレベルが足りていない。
それに加えて動作阻害デバフの重ね掛けだと、1+1が2とはならず。
「〖岩の腕〗」
開かれた大きな手が巨体を掴むが、狂戦士と化した筋肉に砕かれる。それでも時間は稼げた。
「トリ兵衛さん、サトちゃんに憑依!」
俺は来たるべき苦痛に備える。
〖愛燦燦〗は徐々に戦意を上昇させていく。
般若の面を被った神崎さんは数歩進んでから、大きく飛び跳ねて〔鉄塊〕を振り落とす。
「〖燃える斬撃ぃっ!〗」
【雷斧】で受け止めるも、彼女はうちのアタッカーだ。簡単に防がれて堪るか。
頭上に【小さな雷雲】が発生するが、〖黒豹〗と〖氷人〗を憑依させた〖妖精〗が闇から出現して、前腕へと〖白銀のナイフ〗を命中させた。
〖回転した仕込み短剣〗の〖障壁〗が、〖光十字〗と〖光壁〗に重なって【雷】を受け止める。
「《行け神崎っ!》」
横に流すことも出来たはずなのに、そいつは最後まで抗い続け、神崎さんに押し込まれた。
HP0。
「……イザクさん」
銀色の滑車が〖兵士〗のエフェクトに変化すれば、鎖を伝って最強の熱感が俺に襲い掛かる。
無常蛍が去り、〖悟りの炎〗が灯った。
・・
・・
大城が最後の敵だった様子。
「三つ巴を制したのは、俺たち魂鎮め隊だな」
「浦部くん大丈夫?」
「……やばいっす」
「待ってて、もうすぐ冷却終わっから」
よくやったと妖精が俺の頭を撫でてくれている。
鱗粉の風《疲労回復の連続使用による効果減少を緩和》
「助かります」
「楽しかったぁ」
「二軍の敵も普通に強かったな」
来年にはベンチ入り、またはレギュラーになるのもいる。
「ねえねえ、あれ見てぇ」
神崎さんは一方を指さしていた。
「まだ終わってないみたい、浦部くん行けそう?」
「万全とは言えないっす」
グラウンドに立っていたのは背番号1。
「エースの登場か」
彼を闇が包み込む。
「あれ、変化してもユニホームのままなん?」
彼は背番号1だった。
「大〇ーグボール養成〇プス」
振り返ったその顔は、空間の歪みで隠れている。
「えぇ……殺人高校ってなんだよ」
達筆な文字がユニホームに書き込まれていた。
「パッシブもなしか」
目があると思われる位置に、2つの炎が灯る。
彼はギプスをつけたまま、投球姿勢を整えた。
「来るぞっ!」
放たれた【球】はもの凄い勢いで〖渦〗を突破。
宮内が〖光十字〗と〖障壁〗で受け止めたが。
「手応えなし!」
彼の背後に空間の歪みが発生し、そこから出現した【緑に輝く球】が、妖精を置き去りに巻島さんを吹き飛ばす。
「真希っ!」
「サトちゃん落ち着け、問題ないから!」
慌てた様子のベルさんが鱗粉を撒き散らす。
俺は〖白の鎖〗を神崎さんと巻島さんに放つが、その頃にはもう投球姿勢を整えていた。
「宮内!」
「分かっている!」
〖回転仕込み短剣〗を飛ばすが、彼は銀色に輝くと同じ体勢のまま少し横に【転移】する。
「時空属性か」
何事もなく2球目を放つ。
「球が分身しやがったぞ」
「なんか浦部君のスキルみたい」
俺もちょっとそう思いました。
しかも彼さ、全身にバネみたいなギプスしてんだよね。あれが解放されたらどうなるんだろう。
バントってプロ野球だと得点の効率も確率も、普通に打った方が良いそうです。でもやっぱ格好良いって感じるんですよね。
エース戦はたぶん書かないかな。




