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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
最終章 君たちが戦うくらいなら、この寿命尽きるまで共に眠ろう
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4話 期末テスト前

 どうも三好です。


 このメッセージを送るかどうか悩んだんだけど、まあ悩んでもしゃあないから送ることにしました。

 健司君はあんま関係なさそうだし、精神状態的に美玖ちゃんにも送るのは止めておきます。あと当人である吟次君に知らせるかは、皆さんに任せようと思う。


 彼が君らの参戦に反対してたのは、巻き込みたくないって善意だけじゃなくてさ、たぶん自分の精神負担を少しでも和らげるためだったんじゃないかな。

 記憶なくしてても、雫さんを迷人にしちまったって責任を感じてるっぽいし。あれは彼だけの責任じゃないんだけどね、俺らがそう言っても受け止め方は人それぞれだ。



 人に心情を伝えんのが上手い性格じゃないから、あまり気づかれ難いかもだけど、彼の前世だった司祭さんは心を保てなくなってああなったわけだしさ。


 大仕事を終えて緊張から解放されたとき、糸がぷつりと切れて動けなくなるって良くあんのよ。

 救出作戦に成功したら、少しして彼が迷人になるんじゃないかってのを、俺はちょっと危惧してたりします。


・・

・・


 空き教室にて、宮内から渡されたスマホの文章を読み終える。


「参戦してくれたお陰で、成功率が上がったのは事実なんすよ」


「でも浦部くんさ、そのあと迷人になっちゃうかもじゃん」


 2人は椅子に座り、肩を落としていた。


「あと私たち、無理やり隠し事を吐きださせたけど、めっちゃストレスになってたんじゃないの?」


「ごめん、アタシら浦部のこと配慮してなかった」


 迷人にはなりませんって説明しても、照明はできないからな。


「複数の悩みごとを抱えてるのは事実だろ」


「お前の親御さんが、許可をした以上は自分たちにも責任はあるってさ。それに総責任者は三好さんだし」


 一応、対策はしてるんすよ。


「やばいなって思ったら自宅の姿見から映世に移って、精神バフをセットしてますんで」


 現世だと効果薄いからね。


「美玖ちゃんも考え過ぎちゃう時はそうしてるって言ってた」


「咎人のメイスで精神ポーション買ってんだと思ってたけど、そういった側面もあったんだね」


「かなり効果あるっすから、3人も悩み疲れたときはお勧めっすよ」


 まさに今とか。


「確かに俺は心情を人に伝えるの苦手なんで、かわりに三好さんが言ってくれて助かった。気分も楽になりましたわ」


 彼の前世は薬師と錬金術師ってことだけど、迷い人として現れたのは、色んな道具を駆使して戦う義足の拳士だったらしい。

 〖炎放射〗を手から放ってきたり、その火を使った爆弾とか、命中したら粘着性の液体が弾ける玉とか。


「浦部くん私と同じで映世じゃ楽しそうだし、なんやかんやで器用に立ち回れる人だって思ってた」


「司祭だったアンタはさ、精神病んで全部投げ出したんだもんね」


「デートも本当は美玖が迷人になる可能性があったから、断れなかったとかじゃないのか」


 俺の言葉に信用がなくなってるな。


「そりゃ色んな理由があったのは事実だけど、最終的にデートしたいって自分で選択したんだよ。張り切って服まで買おうって決めたんだから」


 花束ってのは冗談ですけどね。


「アタシら出しゃばり過ぎたのかな」


「友達の恋路を邪魔しちゃった可能性もあるんだよね」


「でも2人がフォローしてなかったら、美玖ちゃんもっと精神状態が悪化してた可能性あるっすよ」


 人付き合いって難しい。


「それになんの証拠もない予想ですから」


 点と点を繋ぎ合わせた想像でしかない。

 面識なくても気にせず話しかけれる人っているもん。


「たぶん浦部の予想合ってるよ」


 俺もけっこう確信してます。2年になったばかりで、クラスも変わったばかり。


「私あのころ人間関係に嫌気がさしていたから、その状態で自分から面識のない男子に話しかけるのは、やっぱ違和感あるもん」


「相手をいきなり呼び捨てなんしないよ」 


 初心者案内の時だって、父親のことで余裕がなかったから強引だったけど、太志と隆明にお詫びのジュース用意してたくらいだ。


「巻島さん空気読んでくれますもんね、関係深くなって気配りの人だなって思いましたし」


 文化祭での俺と大城を見て、なにかと対応してくれた。


 ちょっと嬉しそうにしながらも。


「そうありたいなとは思ってるけど、いつも実践できちゃいないよ」


「俺もあんま人に迷惑かけたくないって考えてるけど、今までの人生で色んな人に迷惑かけてます」


 ネットだって失敗談多いし。


「ハクスラ好きだから、神崎さんがハマってくれてるのすげえ嬉しい。仲良くなれて良かったと思います」


「うん、めっちゃ楽しい」


 宮内を見て。


「お前が良い奴だってのは知ってたし、映世で活動してからもあんま印象は変わらんな」


「そっ そうか。俺は浦部の印象かなり変わったんだが」


 信用してるってことは伝えられたか。


「なにより君たちは学校での地位が高いから、優越感に浸れるのが最高に気持ちいい」


「ちょっと最後にぶち壊すな」


「バカ正直だねぇ」


「そんな飾らんとこは嫌いじゃない」


 けっこう周りの評価気にしますよ。


「まあ格好つけようとしても、けっきょくバレちゃいますんでね」


 例えばさ。

 孤高で誰も俺に構うなって主人公を描こうとしても、作者が彼を周りからチヤホヤさせたいという望みがあれば、少しずつ違和感として浮き出てくる。

 登場人物と作者の温度差を消すのってさ、すごく難しいんだよ。


 俺は仲間に構って欲しいし、チヤホヤされたいし、浦部sugeeeeって言われたい。

 ヒロインにはめっちゃ重い感情で愛されたい。浦部は頼りになると崇められたい。


「あんな可愛い子が彼女なら、もっと優越感に浸れるんと違う?」


「そうっすね。周りの男子から嫉妬の眼差しを向けられたいっす」


 苦笑いを向けられる。


「もし雫さんが泣くことになっても、アタシがなんとかファローする」


「私も迷人にさせないよう頑張るよ」


「慰謝料もろもろが発生するのは、事実婚だったり婚約してからだったか」


 浮気とか裏切りは評判も落ちるし、周囲からの信用を無くすとかあるけれど、確かに恋愛は自由だ。


「少なくとも現状、浦部が抱えてる悩みは1つに絞られるんと違う?」


「もう答えはでてるんじゃないの、抵抗しようとするから苦しいんだよ」


 雫さんがどういう人だったかを思い出せない。

 すでに美玖ちゃんの目的は達成されている。


「正直なんだから、もう正直になろうよ」


 たぶん付き合ってはいなかった。


「好きな人の行動や発言に大きく感情を揺さぶられる。勉強や仕事もおざなりになって、人間関係を含めた全てにおいて相手を優先させる」


 高校生の恋愛なんて、恋に恋するくらいで丁度いいだろ。


「恋愛脳ってやつか」


「まあそういうもんだわな」


「経験ないから私にはわかんないや。でも美玖ちゃん、辛そうだけど同じくらい楽しそう」


 ざまぁなんて本当に起きるのか。都合よく新たなヒロインが現れるのか。


「映世での活動に影響はないっぽいけどね。それに彼女、めっちゃ冷静に浦部を落とそうとしてるんと違う?」


「精神バフのお陰かも」


 このまま美玖ちゃんと付き合いたい。俺だってそんな気持ち滅茶苦茶あるさ。


「精神的に追い詰められた人の文字ってのはさ、はっきり言って読めたもんじゃない。だんだんと修正が増えて、最後のほうはかなりひどいものになってた」


 見覚えがあるんだろう、3人は息をのむ。


「自分がいなくなる。記憶が消えるってのは、すげえ怖いことなはず」


 同一人物なのか。


「今の俺は他人を助けるために、生身で戦うなんてできません」


 本当は属性デバフの苦痛をなんども経験して、実際に心臓を貫かれる感触も知っちまった。

 これらは運営が意図的に、HPなしでも戦える人材を育てる目的があるんだろうな。


 映世を知ったことで。


「1度目は中二病が再発したけど、2度目はそれが起きなかったんでしょうね」


 仲間を順々に見て。


「全てを俺に賭けた奴が居るんすよ」


「……そっか」


「あんた、それでも助けたいって願ったんだね」


 恋愛感情だったのか、罪悪感なのか。


「高校1年のお前」


 雫さんへの強い思いは確実にあった。


 やっぱ俺は秘密主義なんだろうな。これだけは明かせない。


 彼は帰ってこれるのか。

 あの娘が好きになってくれた俺は、俺のままでいられるのか。


・・

・・


 今は11月の終盤で、土日を挟んで12月となればテスト期間に入る。


 土曜日に集まったのはケンちゃんと神崎さん、そして美玖ちゃんだった。


 荒木場への道を歩きながら。


「明日はうちの野球部と練習試合があるんだっけ?」


「そうそう、中学の同級生からメッセージがありましてね」


 俺は直接試合しないけど、勝負でもするかとの誘いに奴は乗った。

 村瀬にそのことを話したら、君と仲の良い友人も応援に来てくれないかと頼まれたんで、お誘いしました。


「日曜はサッカーの練習あるんですよね」


 俺の顔をじっとみて。


「休もっかなぁ。でも兄ちゃんに顔向けできないし、やっぱ諦めます」


「そういえば美玖ちゃんのとこは試合あるんだけぇ?」


 うーんと悩みながら。


「上手くないから、あんま見られたくないです。格好悪いとこ見せたくないもん」


「俺も親とか応援に来てくれるのは嬉しいけど、ちょっと力んじゃうんだよね」


 実は宮内となんどか観戦にいったことあるんだな、楽しそうにプレイしてたよ。もちろん活動したよ。

 ストレスがあるからこそ、試合に集中するし熱中もできる。


「内緒で来てたりしませんよね?」


「誘われたら応援行きますよ」


 表情に出やすいんだと判明したので、最近は気をつけているんだけどな。


「じゃあ救出作戦が終わったらお願いします。どんな結果でも、褒めてくださいね」


 試合の結果ではないんだろうな。


「全力で応援します」


「はい」


 この笑顔をずっとみていたいね。今の俺であれば、もう答えは決まってるんだけど。


「今日はどうしよっかぁ」


 校舎の探索にするか練習場の連戦にするか。


「前回はサッカー場であの大きい狼が出たんでしたっけ」


 ついに強力な前世でもパッシブ付だった。青色でメッチャ硬くなってましたわ。


「探索ならソロにしたいでーす」


「手分けしたほうが宝箱とか発見しやすいですもんね」


 俺を見て悩みながら。


「明日は野球部の試合ですし、今日は探索にしますか」


 神崎さんが美玖ちゃんの頭を撫でる。


「凄い、えらいえらい」


「えへへ ちゃんと我慢できました」


 ケンちゃんは首を傾げ。


「なにを我慢したんですか?」


「んー 欲望かなぁ」


「美玖ちゃんありがとね」


 最近はいろんな悩みばかりで、1人集中して黙々と活動したい気持ちがあった。


「自分のことばかり優先してましたので、ちょっと抑えないと」


「そっか」


 今日と明日は活動に専念しよう。



 テスト嫌だな。


 

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