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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
二章 マキマキギャル(?)・槙島真希編
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2話 学校生活



 翌日は雨が降った。

 昼休みは太志と隆明といつも食べる。学食は混んでいやだから、俺はいつもコンビニでパン買ってる。


 だから俺らが学食に行くことはない。つまり俺が太志に奢ることはないのです。


「なあなあ浦部ぇ、最近付き合い悪いぞ」


「今日はちょっと無理だな、明日なら開いてる」


 宮内と活動したい。今一番ハマってるのが映世での活動だし、そりゃそっち優先するよ。


「じゃあ火曜は太志の家で、オークが如くでもしますかな?」


「俺借りパクする予定だから、それは駄目だ」


「おいこら浦部てめえ」


 まあwikiとかで調べてから作品みる方だし、俺ってネタバレそんな嫌じゃない派なんだけど。


「ほらほら、これあげるから落ち着きなさい」


 なぜか怒りだしてしまった太志ちゃんに、駄菓子屋のうんめえ棒を献上すれば、あら不思議みるみるうちにニッコリさん。


「明日は外で遊ぶかぁ。もうザリガニ釣りできるかなぁ」


「まだちっと早いんじゃねえか?」


 高校生の遊びっつったら、やっぱザリガニやカエル釣りだよな。あぁ早く夏になって虫取り網を振り回したい。


「もう春だしできると思いますよ、でも僕はベイゴマが良いです。ハリケーンボンバーをくらわせてやりますよ」


 ちなみにベイブレじゃないぞ。あんな大人のお兄さんたちがする遊びは、俺たちにはまだ早い。


「えぇ~ もう良いよぉ、最近そればっかじゃんかぁ」


 話し合いの結果、明日は池でザリガニ釣りに決定した。

 飯を食べ終えれば、二人は連れションにいく。


「餌はスルメで良いか」


 駄菓子屋に寄って行こう。

 自分の席でボーっと窓から映る雨雲を眺めていたら。


「ありがとね。君のお陰で一歩踏みだせたって、宮内くんすごい元気になってた」


「そ、そうっすか。まあ、あの良かったっす」


 宮内とは事前に話しあっていた。


「足が悪くてもできそうなスポーツないか調べて、一緒に体験しに行ったんだよね?」


「へい」


 神崎さんだけならギリギリ呼吸もできたんだが。


「アタシもちょっと元気でたよ、アイツずっと悩んでたから。解決はできないけど話しくらいなら聞くぞって言われてさ、恥ずかしながら嬉しかったわ」


「よかったです、はい」


 少し親の体調が優れないとボカした内容だけど、俺に事情を教えてくれた。恐らくその過程で、どの病院に入院しているのかを聞き出したんだろう。下手に親戚が入院してるとか嘘をつかずに。


「でもあんた等って仲良かったんだね。一緒にいるとこ見た記憶なかったけど」


「そうだよねぇ。私も浦部君から彼の話でたとき、びっくりしちゃったもん」


 貴方あの会話で宮内のこと忘れてたじゃん。そうか、こんな風に内容が置き換わるんだな。


「以前はクラス同じだったし、共通の趣味っていうか……学校外で顔見知りだったんす」


「ふーん、彼って部活以外にも興味あったんだ」


 俺が彼女らと会話をしていても、周りは珍しいなくらいでそこまで驚いた様子はない。



 太志がこちらを見て口をあんぐりさせていた。焦った表情でスマホに何かを打ち込んでいると思ったら、隣のクラスから隆明が駆け込んできた。


「あのサッカーバカがねぇ」


 ちなみにスマホって本当は朝のホームルームで先生に提出して、帰りに返してもらう決まりになってるんだけど、担任もそこまで本腰を入れて取り締まっちゃいない。

 休み時間に使うくらいなら許されている。でも授業中に使っていたとかなれば、これらは厳しくなるぞと言われていた。


 震える手で太志に『助けて』と打とうとしたが、上手く押せない。


 神はおらず。

 俺がキョドっていることに気づいたのだろう。


「う、浦部ぇ、ドッチボールしようぜ!」


 神はいた。


「おう! いっ、行こう!」


 二人に断わりをいれ、俺は命からがらその場から離れる。


「え、今から?」


 そんな休み時間、残り15分の午後だった。


・・

・・


 太志と隆明に勇者と褒められ羨ましがられると、俺も凄いだろと自慢して返す。


 なんやかんやで授業を終え放課後となった。

 あまり人のいない最上階のトイレで宮内と合流し、そこから映世へと移動する。


「廊下だな」


「廊下だね」


 日が変わったことで、学校内の構造も変化している。今回は進入位置とは別の場所に飛ばされたらしい。

 宮内は窓から外を眺め。


「学校にしといて正解だった、こっちでも雨は降るのか」


 今日は夕焼けでなく、映世の空は厚い雲に覆われていた。


「君が校庭にいた時も一回降ってたけど、覚えちゃいないか。その日は俺もこっちで活動してなかったんだけど」


 我が父は長距離の運ちゃんで、母は遅番や夜勤のある仕事をしている。だから親の勤務によっては速めに帰らんといけない日もあった。


「記憶もけっこう曖昧だからな、もしかしたら降ってたかも知れん」


「あんま遅くなると怒られたりするか?」


 剣と盾の調子を確かめながら。


「信頼してもらってるし、今まで大きな問題も起こさなかったからな。毎日それが続くとあれだが、ちゃんと連絡しておけば大丈夫だと思う」


 7時8時くらいならそこまで言われないとのこと。部活をしてた頃の帰りはそのくらいだったそうだ。

 帰宅が多少遅くなるより、元気になってくれたことの方が、今は家族も嬉しいんだろう。


「んじゃ、そろそろ行くか」


「へい」


 会話もなく廊下を進んでいく。


「居たぞ」


 階段前の少し広くなっているスペースに女子生徒の影を確認。まずは両手が翼の姿に変わり、次にアニメや漫画で観る冒険者風の格好となり、最後は角の生えた大型犬くらいの兎となった。


「俺が補助する、前にでてくれ」


 こちらのスキル内容は宮内も把握している。

 〖白の鎖〗を彼に放ち、HPMP回復のバフを付けた。


「了解」


 盾を構えながら兎に接近。


 敵の角がうっすらと白く光る。

 今までこういった現象はなかった。


「HP耐久低下が角にあるかも知れん!」


「わかった」


 〖黄剣〗を発動したことで刃に電気のエフェクトが発生。

 体当たりによる【角】を盾で受け止めた瞬間を狙い、俺は〖青鎖〗を放つ。狙った対象にしか当たらないので、宮内を通り抜けて兎に命中。


「うおっ」


 〖鎖〗が自分の身体を抜けたせいで驚いたようだった。


「すまん、大丈夫だから!」


 その隙に兎は受け止められた【角】をいったん下げ、宮内の足もとを狙って左から右に頭を振る。角の尖端が横切り、彼の脛が白く光ってHPを奪う。


「くそっ」


 〖剣〗を突き刺すも、兎は横に飛び跳ねて回避し、〖切先〗は床を削る。

 〖滑車を壊す〗べきか。このスキルはMPの消費が激しい。


「これでどうだ!」


 宮内が即座に〖剣〗を引きながら、一歩を踏み出して盾を兎に叩きつける。潰されて銀色の光が発生するも、HPが残っているようで本体にダメージはない。


 ビー玉の《精神保護》もあるし、俺の〖白鎖〗にも同様の効果がある。


 〖黄剣〗の追撃は浅かったが、感電のデバフを与えたことで動きが鈍る。〖青鎖〗の影響もあり、その後の攻撃でHPが0となったようだ。

 続く数回の斬撃で兎は闇に包まれ、女子生徒の姿にもどって消えた。


 戦いが終わった後も、宮内の脛は白く点滅する。


「徐々に減ってるな、HP版の毒みたいな状態異常だ」


「徐々にHP吸収とは少し違うか。兎死んでも続いてるし」


 〖鎖〗を解除すれば治癒が発動して、白い光の点滅は止まった。


「回復要員がいると安心感が違うな、さすが司祭さま」


「罪人みたいだけどな」


 ビー玉を回収。この場で少しとどまり、MPの回復を待つ。


「やっぱ廃校周辺より強い」


 黄剣《命中時にMP吸収》


「十分動けてたと思うよ。俺の鎖が一番の不意打ちだったね」


「でも物理判定がないってことは、そんだけ前衛も自由に動きやすい。身体を通り抜けるのはびっくりしたけど」


 気になったこと。


「1人増えただけで、だいぶ楽になったわ。でもソロだった頃より、敵が強くなってら」


「そうなのか?」


 スキルとか使って来なかったと教える。


「2人になったからなのか、俺が今まで運営にお情けをもらってたか」


「でもそのぶん、報酬は増えてるかも知れん」


 宮内は手鏡をみて。


「盾のスキル習得したぞ」


「おっ やりましたな」


 〖白盾〗 騎士盾専用。盾での衝撃吸収。白い光が衣類を包み、総HP増加(小)。徐々にMP消費(極小)。

 黄剣と合わさることで、鎧のエフェクトに変化し、HP耐久強化(極小)。


「防御系のスキルだな」


 宮内は盾にセットし、さっそく黄剣と一緒に使えば、透明な鎧とマントをまとった姿になる。


「まさに騎士さま」


「エフェクトだから重くないのも助かる」


 少ししてMPもHPも回復したので、俺たちは移動を再開させた。


・・

・・


 敵が強くなったぶん経験値も増えているようだ。けれど〖鎖〗でのサポートに徹しているから、俺の取り分が少ないってのはあるはず。

 今日の活動もそろそろ終わりという頃合いで、宮内はついに例のスキルを覚える。


 俺の時より成長速度が早いな。

 試してみたいとのことで、もう一戦することに決めた。

 敵は成人男性から、荒くれ者の男になり、最終的に人型の獣へと変化する。


 宮内は新たに覚えたスキルを操作する。


「割り込めっ」


 爪の鋭い猿の攻撃を〖青い剣〗が受け止めるが、耐久が足りず破壊された。それでも威力は落ちたようで、宮内の上腕を裂いた時に発生した光は薄かった。

 〖青鎖・味方〗を打ち込んでいるため、守りも強化されている。


 〖赤い剣〗が猿の膝に刺さるが、これは衝撃を発生させないので姿勢も崩せない。だけどHPは削れたようだ。


 両者がやり合っている隙をつき、猿に〖赤鎖〗を打ち込んで、身体能力を低下させる。

 〖黄剣〗が猿の腕を通り抜けたが切断はされず、銀色に輝く線が残る。

 HPが0になったのだろう。

 先ほどの斬撃で姿勢を崩し、返す〖刃〗で首を断てば、少しの時間差で血が飛び散った。


「はは、やっぱ慣れんな」


 精神保護の効果は発揮されているようで、あまり堪えているようには感じられない。


 闇に散ったのち、成人男性は薄くなって消えた。

 宮内の身体にかかった血もなくなっている。それでも気になるようで、自分のジャージを確認しながら。


「斉藤先生、前世は海賊だったんだな」


 戦ったのは猿だけど、その前は海の荒くれ者風な人間だった。


「敵にもHPMPやスキルってのがある。だとすりゃ汚染された魂で再現した肉体を作ってんのは、俺らと同じ存在っつうことか」


 目的は浄化。


「んで、新しいのはどうだったかな。使い心地」


「自動でも守ってくれるみたいだけど、ちゃんと自分の意思で動かした方が、いくらか強度は高い気がする」


 〖攻守の浮剣〗 騎士剣専用。赤と青の色は任意で変更できる。攻めの浮剣で削れるのはHPだけで、肉体にダメージは与えられず。守りの浮剣は一度防ぐと消え、弱の物質強度を越える攻撃は破壊される。飛行範囲は短い。MP消費1つあたり(小)。最大数2。


 ビー玉は俺と宮内の二つがでた。


 白盾《盾で防ぐとHP回復(極小)・盾で防ぐと負傷回復(極小)》


 黄鎖《味方の素早さ関係強化量小増加・敵の疲労加速(極小)》



 俺にも経験値みたいなのは入っているようで、ちゃんとレベルアップはしている。

 赤鎖と咎人のメイスはソケットが2つになり、腕当のスキル枠も3になった。


 〖黄の鎖・味方〗 腕当自分専用。最大数1。味方の速度・動体視力強化(極小)。味方の疲労軽減または回復(小)。秒数経過で終了。徐々にMP消費(中)。


 〖黄の鎖・敵〗 腕当自分専用。最大数1。敵の速度・動体視力減少(極小)。疲労蓄積。命中時に確率で弱の感電(5秒)。徐々にMP消費(中)



 これにて今日の活動は終了となる。


「もうすぐゴールデンウィークかぁ」


 連休となりゃ、さらに遊べるけど。


「勉強しねえと」


「あんま自信ないのか、なんなら付き合うぞ?」


 まじか。


「正直けっこうヤバいんだ」


「どうせ学校来るから、図書館かファミレスで午前中にでもするか」


 午後から映世って感じだな。休みは今週の土曜日からなんで、宮内の初日は塾か。


「じゃあ二日目にさっそく頼んます」


「任された」


 感謝の言葉を口に出すと、少し笑ってから。


「てっきり映世の活動があるから、それで将来は食っていくのかと思ってた」


「いやぁ難しいと思う。小遣い稼ぎとか趣味程度にしとかんと、なんか身を滅ぼしそうじゃん」


 ゲームで生活可能なのは一握りだっていうし。

 もしブラック企業とか就職しちまったら、映世で活動する余裕もなくなるだろうから、できりゃ安月給でも休めるとこが良いんだけど。


 大学か専門は出ておきたいな。







自分はギャルというのをよく分からす使っています。見た目が派手くらいの認識です。

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