9話 海賊船襲来
大型船つっても時代的なあれでして、現代のそれと比べりゃ小型です。
飛び込んだ海賊たちは、波に阻まれながら身動きがとり難そうだった。
「もし山道とかで山賊が出現したら、こんなイベントになってたんかね」
斉藤先生以外の団員は船長を除き、全部同じ格好に武器もサーベル。
「鏡社の人型みたいな感じだとすれば、そこまで強くは設定されてないはず」
続く砲弾を避けながら、俺はもうすぐ海を抜ける団員たちに黒以外の〖鎖〗を放つ。
「よしっ ほぼ命中」
こちらから敵に向けて走り出す。大砲はいったん撃ち止めになるようだ。
敵が100だ1000だと大勢で走ってくれば、勢いで相手も止まれないから、そのまま人の波に押し潰される
だが6人くらいなら、いったん止まって俺を取り囲もうとする。
なるべく背後を取らせんように、こちらも移動しながら位置を確保。
同時に攻撃できるのって2人ほどでさ、多くても3人だ。
「先行は頂きます」
〖黒の鎖〗を放った対象とは、別の個体にメイスを打ちつけるも、その一撃はサーベルで防がれる。
誰が次に攻めるかは、アイコンタクトや声掛けでするけれど、〖憎悪〗に縛られた奴が来ると解っていれば、対処はそんだけ楽になんのさ。
敵の斬撃を〖盾〗で弾き、側頭部へと打撃を喰らわせた。
「こいつらは俺と同じ設定か」
急所だったこともあり、ダメージは銀色の輝き。もともと総HPも低めなんだろう、闇に包まれてそいつは消える。
俺が最初に攻撃した奴が、サーベルのナックル部分で殴りかかってきた。振り返りながら前腕にメイスの柄尻を当て、盾と交換した〖脇差〗で喉を突き刺す。
「急所なら一撃だね」
「よくも仲間を!」
「死に晒せや!」
声がしたので方向が解るのは有難い。
頭部を狙った振り落としを〔脇差〕の鍔で受け止め、足の切り払いは靴底で踏みしめてサンゴの死骸へ叩きつける。
「……」
無言の船員が俺の脇下を突く。〖突風〗と共に肘でサーベルの側面を弾きながら。
「〖巻き取り〗」
全ての敵が〖滑車〗へと無理やり引き寄せられた。
3人1組ってのを実践しやがったか。そうなってくると難度が上がってくる。
最後の奴が本命で、他の2人は囮だね。
転倒したのもいれば、姿勢を崩しただけの奴もいる。ここら辺は〖鎖〗の属性デバフによる違いだ。
〖一点突破〗で接近して、命中と同時に1体を〖衝撃波〗で吹き飛ばすとHP0で消えた。
「もういっちょ」
〖メイス〗からの〖重力場〗で残りの動きを封じ、焦らないよう確実に仕留めていく。
先ほどの連係を思いだし。
「たぶん姉ちゃんのスケルトンとかが相手だと、同士討ち気にせず攻撃してくるんだよな」
囮の2名がいるため、本命の狙える範囲は狭くなる。突きだと予測できたから、そのぶん対処も簡単だった。
フレンドリーファイアありなら、もっと大勢で一気に攻めてくる場合もあるはず。
「こしゃくなぁっ! もっと撃つでゲス!」
船長が片腕を振り下ろす。
しばらく砲撃のターンに移るのか。
先ほどよりも着弾の目印が増え、安全地帯の面積が減っていく。
「あの大砲性能高いよな」
船の側面から伺えるのは5門ほどだけど、撃つ間隔が時代背景よりも速いんじゃないだろうか。
30秒ほどが経過すれば。
「親びんが第2陣突撃と言ってるでゲス!」
一船員でしかないから、本当は指示する立場にないんだろう。
先ほどよりも多い8名。
「こいつら弱いけど、連係してくるんだよな」
波打ち際から離れた位置につく。敵が海からでる前に〖鎖〗を命中させれば、俺は〖黒い滑車〗を破壊した。
「できるだけ巻き込んで攻撃してくれ」
〖原罪〗はうなずくと、突進の事前準備ではなく〖岩の壁〗を使う。
「2重で呼び出せるんだな」
横長となった〖壁〗だけれども。
「これ攻撃スキルとは違うだろ」
「お前ら、回り込むでゲス!」
船員たちからヤジが飛び交う。
「「黙れザコ!」」
「ヒドイでゲスね君ら」
完全にギャクキャラじゃねえか。それに比べて、今世は立派になりましたね先生。
「おい、回り込まれるぞ」
そこまで言って俺は気づく。こいつスキル使ったのに消えてない。
〖横長の岩壁〗が倒れ、船員たちが下敷きとなった。
HP減少の光が発生し、砂山から起き上がったのは2名。倒壊から免れたのが1名。
「やるじゃねえか!」
すでに原罪は消えていた。
俺は脇差を構えると、〖一点突破〗からの〖隠身〗で姿を消す。
検証したいことが幾つか残っていた。
「……よし」
〖幻影〗と一緒に明るい世界へと脱出。
「効果継続」
俺は砂に埋もれてた奴に背後から飛びかかるが、またもやタイミングが合わず、特攻の勢いを〖無断〗に乗せることができず。それでもHPはギリギリだったようで、沈黙させることには成功。
〖幻影〗は別個体に空中から打撃を叩きつける。
決めたのは距離と高度だけで、どの方面から仕掛けるかは判断してなかったけど、やっぱ自動でやってくれるみたい。
優秀なスキルだな。
〖黒刃〗を発動させ、残る一体に攻撃をする。相手は即座にサーベルで受け止めたが、〖残空〗が弱体化した空刃斬を発生。
「やっぱゴブさんより、威力はずっと低いね」
〖残空〗は海賊の服ではなく、身体のみに光の線を刻んでいた。
「装備を2重で抜けられる」
もし残刃だったら通過できるのはサーベルだけで、空刃斬が命中してたのは衣類。
そんだけHPダメは大きくなるし、生身でも鎧を無視して素肌を狙える。まあ鎧下が鎖帷子って場合もあるけど。
残刃も残空も〖黒刃〗が乗るので、負傷治癒・HP回復の妨害を与えられる。
相手の靴を踏みつけ、脇差でサーベルを押す。相手の姿勢を崩せたと確認してから、得物をいったん引っ込め、突きで心臓を刺す。
「残念ながら血刃じゃないんだよ」
浅い傷とは見合わない量の出血をさせられる。防御力の高い敵に美玖ちゃんが使ってたのを見たけど、あれは本当に強力だわ。
あとやっぱビー玉つけれんのがね。
スキル玉ってのが増えてきた現状、ケンちゃんの物真似スキルはどうなんだって思うかもだが、これの有無はかなりデカい。
ショップ装備でスキル枠とソケット付があるけど、穴1つで100万越えます。
「むむむ、やるでゲスね。砲撃開始してくださいでゲス!」
ちょっと丁寧口調になった。
砲撃の連射速度がさっきよりも上がり、安全地帯も時間差で赤く染まる。
「色の濃さで判別しねえと」
ダメだ、しくった。
「厄介だな」
〖渦〗を火耐性に変化させており、〖盾〗から〖風を噴射〗させて防ぐけど、爆発には衝撃波があって吹き飛ばされる。
船員より、こっちの方がやばいわ。
俺の位置を強制的に移動させられ、着弾位置に入っちまった。
倒れ込んだ俺の頭上に〖守護盾〗が出現。
よかった、増援が到着したみたい。
「あんなこと言って、また大堀君とソロ……って、なにこれっ!」
怒りの口調が途中から感激に変化したのが伝わった。
「ちょっとなにが起こってんのさ!」
もう一度こちらへ着弾し、吹っ飛ばされたことで3人に近づけた。
「条件海のユニークイベントっす」
宮内が〖時空盾〗を〖肩腕〗で固定させ、〖障壁〗で砲弾を防ぎ、背後の彼女らを守る。
「こっちに来れるか!」
召喚した〖妖精〗を肩に着地させ。
「とりあえず〖鱗粉の風〗ね」
俺らの身体強化だけでなく、妖精込みの鱗粉には召喚の性能強化も含まれてるらしい。
「青大将とテンさんは浦部の回収!」
〖氷人〗が〖壁〗で砲弾を凌ぎ、〖天使〗が俺の身体を起こすのを手伝ってくれる。
「斉藤先生の?」
俺は頬を赤く染めながら。
「そうっす!」
水着イベントだよ、やったね。
集中しなければ。
「どれよ!」
まだ3人とは少し距離があった。
「船長っぽいのがいるでしょ、その隣に立ってる眼帯と出っ歯です!」
「誰が出っ歯でゲスか!」
「……げす?」
なんとか仲間のもとに到着。妖精が俺の頭に着地して、お疲れとポコポコ叩いて労ってくれた。
「障壁が壊された」
宮内は〖岩の壁〗を出現させたが、まだレベルが低く一撃で破壊される。
「同じ場所に留まってると、集中砲火される仕様みたいっすね」
着弾地点が赤で表示されること、色の濃さで時間を予測できると伝え、各自に〖鎖〗を放つ。
細鎖は指定しなかったので、ランダムで仲間に伸びた。
〖赤鎖〗と《赤い細鎖》も一緒に可能なのは、マジで優秀なビー玉だよ。ただ巻き取り時の《性能強化》は反映されてない。
「増援でゲスか、こっちも大勢で攻めるゲス。皆さんよろしくお願いでゲス!」
「あいつゲスゲスうるさい……ってちょっと、あの数相手にすんの!?」
甲板の船員がほぼ全て海に飛び込む。
「鏡社の人型みたいなもんで、そこまで強くないです。あとHP0で消えますんで」
「そっかぁ」
神崎さんは満面の笑みですな。
「海にいる時は動きが鈍るんで、今のうちにトリ兵衛さんで攻めてください!」
「あいよっ!」
頭上に召喚された〖赤鳥〗が空を駆ける。
物理判定がないので、海面すれすれを飛びながら数体を通過してHPを奪う。
「このまま船上も狙ってみる?」
「先生倒せれば、このイベント終わるかも知れない」
狙いを出っ歯にさだめ、〖ナイフ〗を宿した〖炎鳥〗は高度を上昇させた。
「えぇっ ダメだよ、なんで終わらせんのぉ!」
やべえ、神崎さんを怒らせちまう。
「ひっ ひえぇぇっ!」
下っ端は情けない悲鳴をあげるが、船長が片手剣を掲げると、船が青いドーム状の〖水障壁〗に包まれた。
「もしかすっと大砲とかも、船長が使ってるスキルの一種なんすかね」
「船そのものか」
俺は前にでて、海賊たちに残りの〖鎖〗を放つけど、数が多いんでデバフを付けられたのは少ない。
「細鎖って味方専用なん?」
「今のとこそうっす」
〖黒い滑車〗は巻島さんと宮内に使っていた。
「巻島さん、出番っすよ」
「まあそうね」
短剣で〖滑車破壊〗を実行すれば、〖黒き原罪〗が出現。
「宮内くん、〖壁〗ってこういう使い方も可能みたいだ」
横長の〖岩壁〗を出現させると。
「お前ら気をつけるでゲス!」
「「分かっとるわ雑魚!」」
学習されてますよね。でも今回は波打ち際だ。
「なるほど……現状だと2つ同時召喚は無理だけど、倒壊は試してみるか」
最大数1。
頑強壁にする必要ありか。
「〖うおりゃ!〗」
神崎さんはすでに走り出していた。
〖雪が降る〗
「巻島さんと宮内は冷却が減少してますんで」
「マジ助かる」
「そうだな」
もしビー玉があれば、《スキル準備期間の短縮》を追加できる可能性もあった。宮内や美玖ちゃんに有用だ。
「ではお先に」
俺は〖一点突破〗で姿を消し、〖幻影〗と共に二体の海賊を攻撃する。
幻影を空中、本体を地上。
「それ超楽しそうっ ねぇねぇ私も使えないかな!」
地面スレスレを飛行しながら、横切りで〖無断〗を打ち込むけど、やっぱムズイな。
「〔留め具〕が俺専用ですんで」
「ぶー」
敵との距離を長く設定すれば、闇中で速度が増して威力も上るけど、着地後の隙も大きくなるから俺は短めにした。
「なんで浦部くん空から行かなかったの、そっちの方が絶対に楽しいのにさぁ」
「空中だと重力も利用できますけど、身動きがとりにくいんすよ」
まてよ。俺のは威力で圧力が変化するから、〖重力場〗強化されねえか。
「あと怖いのもあります」
脇差とメイスで確実に敵を仕留めていく。
「ぐぬぬぅ 強すぎるでゲスお前らぁ!」
「あんたも降りてきなさいよ!」
巻島さんと宮内も到着。
「うっ うるさいでゲス!」
〖青人〗と〖天使〗が守りに付いているので、宮内も〖鞘〗から〖雷光剣〗を抜いて前進。
《解放後に10秒間身体強化(大)》
雷撃を使うと敵をたくさん倒しちゃって、神崎さんが不貞腐れるからな。
《任意で素早さ関係の強化を(大)にするが、20秒マントのエフェクトが消える》
《上記の鎧版》
「これで速度に比例して身体強化がありゃな」
「ないものは仕方ない」
宮内くんもなんだかんだで、不足していた攻め手が増えてきたよな。〖岩壁〗の倒壊も出来そうだ。
このスキルって、さっき体験した〖岩腕〗と同じタイプなんだろうね。
「……くぬぬぅ かくなる上は」
何度か〖無断〗で〖幻影〗を出現させるが。
「やっぱ中々メッセンジャーでねえか」
確率でたまに〖幻影〗が〖伝令〗になるとのこと。これがゴブさんなんじゃねえかと推測してるわけだ。
「あのゴブリンが伝令兵なのか?」
「なんの関係もないのが出るとは思えないからさ」
もし俺が司令官なら最前線で戦ってもらうわ。
巻島さんはクロちゃんを呼びだす。
〖ナイフ〗を転移させたのち〔短剣〕を投げれば、増えた〖尻尾〗でキャッチする。
「でも大堀って映世だと英語じゃん」
2尾になったけど、〔短剣〕の方は威力がまだ低いみたいで、急所でも海賊のHPを削り切れなかった。
「伝わらない伝令っすか」
〔鉄塊の大剣〕をぶん回すたびに、船員は宙を舞ってHPが0となる。
「きっもち良いぃ~」
「サトちゃん、はっちゃけ過ぎだって」
「でも無双するのはストレス発散っすからね」
強敵を倒したときの解放感も捨てきれんが、道のりが苦行なんでね。
定期的に甲板の確認をしてたけど 俺らは正直いえば余裕をぶっこいていた。
「ゲス先生が居なくなってます!」
「えっ ついに降りてきたん?」
それらしき船員の姿は見えず。妖精が高度を上げて甲板を確認するも、居ないとの動作が返ってくる。
「これは船長命令でゲス、悲しくてもやらねば負けるんでゲス!」
船内から奴の声が聞こえてきた。
「おまいらすまん、オラと船長がみた夢の礎となるでゲス!」
あの野郎。
「乱戦中に砲撃してきやがったぞ!」
「まさにゲスの極みじゃん」
「うっそぉ」
「みんな俺のとこに戻れ!」
船員たちも攻撃の手を止め、奴への罵倒を開始する。
その隙に俺らはなんとか宮内の背後に避難したが、海賊たちは砲撃を受けてしまう。
「軽減はされてるみたいっすね」
「味方へのFFは敵の場合も有効だからな」
宮内に〖青の鎖〗を放ち、〖氷人〗にも彼のサポートをしてもらう。
信じられないと妖精が俺の頭をポカポカと殴っていた。
「痛てえよ」
HPがあるんで本当は痛くないけど。
「浦部、名前呼ばなきゃベルっちやめないって」
「えぇ」
叩く強さが増した。
神崎さんが片手で俺の肩に手をおき。
「ほらほら、ベルちゃんって呼んであげなよぉ」
うぅっ 水着がぁ。
「少しは戦いに集中してくれ……ん?」
砲撃が止んだ。
しばらくすれば船長が現れ、自ら海賊船より飛び降りる。
「先生ボコボコだねぇ」
「っすね」
顔を腫らしたゲス海賊が抱えられていた。
船長はそいつを海に落すと、仲間たちにさがれとの仕草をしてから、俺らに頭をさげたのち剣を構える。
「ボス戦か」
「みんな気を緩めんようにな。こいつだけは今まで通りにはいかないぞ」
「あいよ」
「よーし、やる気でてきたぁ!」
神崎さんが〖屈辱の角〗を発動させれば、宮内が〖憎悪の触手〗を伸ばしながら、皆に〖守護盾〗を掛け直す。
俺も味方と船長に〖鎖〗を放つ。
まだ海の中だったが、相手は全身を沈めると、もの凄い飛沫を立てながら急接近。
〖触手〗と〖鎖〗は避けられた。
〖大きな波〗が発生。
「やばっ 俺だけ水着じゃねえ」
水中だと衣類の有無はかなり大きい。
「浦部、一点突破でいったん逃げろ!」
ホテル側に脇差の切先を向け、そっちの方面へ退避した。
着地後に振り返ると、〖氷人〗が船長の【剣】を受け止める。属性的に水耐性が高く、波に動きを取られなかったんだな。
「サトちゃん足止め!」
「わかった」
大剣を振り上げたのち、一段階の〖重力場〗を海面に打ちつけた。
「水が邪魔っ!」
巻島さんが〔肉切り包丁改〕を水面の中へと突き刺す。
物理判定のない〖偽りの怪物〗が出現して船長を呑み込む。
動作阻害を強化。闇耐性低下。
見守っていた船員たちが〖化け物〗に憎悪を向けて水中を動きだすが、〖回復妨害や拘束の触手〗を伸ばした。
それでも数が足りないので、〖天使〗や〖仕込み短剣〗で食い止める。
HPが減っているため、急所でなくても行けるか。
〖妖精のナイフ〗が〖赤鳥〗の嘴に転移して空を駆ける。
〖法衣鎧の渦〗を水耐性に変更。
「宮内の黒鎖を消すぞっ! ホテルから見て右側面で行きます!」
「みんな兵士の突進に巻き込まれんよう気をつけろ!」
自分の目前に〖滑車〗を再出現。
「お前の巨体を喰らわせてやれ」
重力場は終了しても、〖沼〗はもう少し残る。
俺は脇差を構え、原罪も準備動作を終わらせた。
「行けボルガっ!」
〖原罪〗が走り出せば、海に到着する寸前で〖空間〗の歪みに消える。
出現した巨体は〖怪物〗を突き破り、闇属性の〖突進〗で船長を空へと打ち上げた。
もともと一点突破の冷却は短く、それに加えて〖雪〗が舞う。
空間の歪みに進入すれば〖闇に紛れ〗、幻影は呼ばずにそのまま前進。
出口を通り抜けても夜判定は継続されたまま。
目前に船長を捕らえ、〖無断〗を発動。
「駄目かっ」
打撃をサーベルで受け止められちまう。
続けて〖幻影〗が分離するも、敵は海面へと落ちていく。
「やっぱお前か」
〖メッセンジャー〗が俺を踏み台にして急下降に成功すれば、勢いのまま〖無断〗を船長に叩きつけた。
巨大な水しぶきを上げると共に、強烈な銀色の光が発生すると、それがHP0の合図となった。
「浦部くんの嘘つき! あのゴブリンさんじゃん!」
「……あ」
俺も海面に落下。
波が引いていく。
ゲス野郎が白旗を上げていたが、残った数体の船員たちにボコられていた。
「I might be the Kraken!」
海賊たちが動きをとめ、自分たちの住処を見上げれば、【巨腕】や【肩腕】が船体を破壊しておりました。
「ひぃっ クラーケンでゲス!」
俺が太志ぃと叫ぼうとした瞬間。
「大堀い!」
マキマキに先を越されました。
「やったぁ! また挑戦できる!」
神崎さん歓喜。
新スキルの検証だったつもりが、とんでもないことになったわ。
・・
・・
彼は隆明に誘われて海にいったけど、やっぱ緊張はするようでストレスも掛かった様子。
報酬は〖ゲス海賊〗の召喚でした。共有の枠に入っていました。
要らねえと思ったが、奴が旗を刺した位置に、どこからか砲撃が着弾するらしい。屋内は不可。
でも本人はめっちゃ弱くて、物理属性強度も(極小)。成長するのは砲撃が主みたく、育っても(小)かな。
太志戦はゴブリンまで持ち込めた。
あの時はこんなの無理だよって思ったけど、二度目なのとスキルを理解できたことが幸いしまして、なんとか4分を迎えることができました。
俺らが先の一戦で強化されたのも大きい。
でもさ、2分ごとに【幻影】が増えていきます。
巻島さんのチェストには〖肩腕〗が入っており、宮内のには〖岩の腕〗があったとのこと。
〖壁も腕〗も共有に入れとくそうだ。主に自分で使うけど、レベル上げするならこっちの方が良いからね。
俺と神崎さんはビー玉だけでした。
《滑車から敵味方が対象の細鎖(性能3/1)を放つ・巻き取り時に全ての細鎖が(性能2/1)に強化》
どの色にしようかな。
これで修学旅行編は終わりになります。お付き合いくださり、まことに感謝です。
前回の太志戦ですが、最後に包丁を使う場面で、武器操作の触手はスキル枠が足りなかったんで、投げて突き刺したに変更しました。
投擲用の武器でもないんで、上手く刺さるかは運だって感じです。




