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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
8章 上級校庭連戦と修学旅行
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6話 太志、大海に立つ

 これまで上級で活動して改めて思ったけど、強力な前世ってのは通常難度でも強い。もっと数値が低ければ違うかもだけど、そういう相手ってパッシブも付かないしさ。


 人の精神状態は日によって違うから、ちょうど良いボスが居ないなんて場合もある。


 だから運営はバフを強力なものにして、こちらよりも数を多めで出現させてくる。

 ちょっと不謹慎なんだけどさ、報酬が目的だとあんま美味しくない。ビー玉は貰えるけど、〖スキル玉〗や〔武具〕は期待できないからね。

 


 夕方を前に遊びを切り上げ、更衣室で映世に移れば、鏡の近くにアイテムチェストが設置されてました。

 戦闘前の準備を終えたのち、俺たちは再度ビーチへと赴く。


 ペル〇ナ好きとしては水着のまま戦いたいんだけど、残念ながら着替えてしまった。

 どこかの浦部くんが集中できなくなっちゃうんで。

 Tシャツとジャージのズボンで行かせてもらいます。


 巻島さんはさっそく〖人造天使〗を召喚。


「以前より強くなったし、すこしは戦力としても期待できると思うよ」


 今は物理強度(中)に属性強度(小)だったかな。


「おおぼっりくーん、出っておいでぇ!」


 でないと目玉をほじくるぞ。


 念願の太志戦だ。海での疲れもなんのその、テンションは最高潮な様子。


「今回は浦部に任せて良い?」


「了解っす」


 巻島さんは疲労回復のポーションを飲み。


「ベルっち、ヨロシクね」


 妖精は任せておけと親指を立てる。


「すんませんねえ」


 頑張れよと背中を叩かれた。

 鱗粉で疲労を癒してもらったので、俺は身体強化のポーションにしとくか。


「活動するのは海水浴場だ、大堀以外にもいるかも知れんぞ」


 連戦になんのはちょっと厳しいか。


「斉藤先生とか出現するかなぁ」


「特殊条件満たしたりしてね」


「ワードは海っすか」


 〖蛍の光〗が一面を彩り、広範囲に浸食耐性(中)。


 とても素敵な光景だったが、そんな中で海にポツンと佇む人の影を発見する。


「お出ましか」


 連戦じゃなくてよかったと、少し安堵しながら〖メイス〗を握りしめ。


「太志、大海に立つ」


「ちょっとやめてよ、笑っちゃったじゃん」


 なんかツボに入ったようだ。


「さあ来いっ! 以前の私たちとは違うよ大堀君!」


「i am sad」


 やっぱ英語なんだな。


「私は悲しいって言ったか?」


「だねぇ」


 波の揺れにも反応せず、そもそも現状は実体化もしてない。


「You can't butcher fresh meat!」


「来るよっ!」


「後衛は巻島さん、引き付け役は宮内、攻め手は神崎さんで俺は中衛」


 宮内が〖守護盾〗を味方に発動。


「浦部が勝利した相手だけど、油断しないようにな!」


「ソロとパーティじゃ総HPに違いもあるし、なにより今回は第一変化っすからね」


 悍ましき怪物に変化した太志は、左右の【肩腕】で身体を飛ばし、こちらの前方へと着地する。

 かなりの巨体だが。


「見た目ほど重くないってことか!」


「Give me back my meat cleaver」


 ずっと付けたかったけど、ソケットが足りなくて使えなかったビー玉があった。


 青鎖《命中した仲間付近にいる味方に細鎖(性能3/1)が1つ放たれる》

 赤鎖《滑車付近の味方に細鎖(性能3/1)が1つ放たれる》


 細鎖は離れすぎると解けるので、中衛として立つ俺の近くに〖赤い滑車〗を設置した。


「神崎さんには〖赤と白と黒〗」


 俺の意図を組んでくれるようで、赤い細鎖は巻島さんへと伸びた。


「宮内には〖青と白と黒〗」


 彼の身体から〖青い細鎖〗が神崎さんに放たれる。


「無理に位置関係を気にする必要はありません、また近づけば勝手に繋がるんで!」


 巻島さんにも〖青〗を使っておく。俺自身には細鎖も使えない。


「わかった!」


「闇耐性に切り替え」


 浸食耐性にしなかったのは初見の敵だからだ。原初の精霊が使う【触手】の威力を知ってるとね。


「引き付けるぞ!」


 〖時空盾の障壁〗から〖憎悪の触手〗が伸びるけど、化け物は自分の【触手】でそれを弾き落す。


 【右の肩腕】が前衛2人を薙ぎ払う。

 腕の2倍だとしても、素がデカいぶん宮内のよりリーチが長い。


 白盾《構えると属性耐性強化(中)・防御姿勢を整えることで受け止められる圧力増加(大)》


 宮内が受け止め成功したことで、神崎さんはそのまま前進。


 両者接触の瞬間に〖黄赤の鎖〗を放つが、こちらも【触手】に邪魔されてしまう。


 神崎さんの〖赤い滑車を破壊〗したのち、〖風刃の渦〗を発動させ、〖突風〗も消費しながら前進する。


《渦の中心に近づくほど変化の効果上昇・範囲内の味方に変化が起こり、各自のバフを強化(大)→(小から極大)》


 太志は接近してきた神崎さんに【左の肩腕】で殴りかかった。


「〖うおぉぉぉおっ!〗」


「トリ兵衛さん憑依!」


《赤鳥憑依時に守り3種強化(大)・憑依時の熱感または炎上確率増加(中)》


 妖精が神崎さんの頭上を飛び、鱗粉を撒き散らす。


 〖屈辱の角〗を発動させれば、〖赤鳥〗を憑依させた彼女が【肩腕】を〖大剣〗で横に弾く。


・《任意で修羅鬼が燃え上がり自分に炎上ダメ(中)、身体強化(レベル比例)》

・《自身が燃えていると赤叫の性能強化(大)》


 神崎さんは〖天の光〗をセットしており、まだ(小)だけど回復と守りも強化してくれている。


 即座に懐へ到達すれば、急停止の反動を利用して、〖燃える斬撃〗が化け物に減り込む。


「中に何かいる!」


 この姿が歴史の歪みだとすれば。


「怪物を形づくってんのは、表面だけ物理化した【闇】かも知れません!」


 本体が神崎さんの斬撃を弾いたようで、彼女は大剣ごと姿勢を崩されていた。


「大丈夫だ、間に合う」


 戦槌の〖闇〗に包まれた宮内が両者に割り込み、本体の追撃を盾で受け止める。

 化け物の【腕】が頭上から振り下ろされるが、〖巻き取り〗がギリギリ間に合って直撃を免れた。


「神崎さん、横断を使って!」


「うん」


 姿勢を立て直し、〖風刃横断〗を放つ。冷却は1分だったか。


 太志は両方の【肩腕】を交差させ、本体へのダメージを軽減させようとしているようだ。


「クロちゃん、トリ兵衛さん!」


 〖炎鳥〗が羽ばたいて神崎さんから分離する。続けて〖闇豹〗が跳び上がり〖精霊合体〗が発動。


「うっぷ」


 ポーションを飲んだのだろう。青い球体が出現して〖炎鳥〗を包み込む。


 〖風刃横断〗から〖氷闇の炎鳥〗による特攻で、嘴は化け物の表面を突き破った。


「やった、バフ消失!」


「ナイス」


 確率的にもかなり低いんだけど、これは運が良いな。


 本体を覆っていた【闇】はバフ的な要素もあったんだろう。その色がかなり薄まっていた。


「……人間」


 かなり大柄な太った男性だった。表情は歪んでいる。


「ねえ、あれ細川くんの第一変化と同じ鎧だよ」


「えっ 兵士なん?」


 両腕には牛の角みたいな短槍。


 そいつは鉄靴の底を地面になんども擦りつけていた。大男の肉体から黒い瘴気が発生。


「突進くるぞ!」


 【偽りの怪物】を突き抜けて走り出す。この距離で最高速に達しやがったか。


「俺が受ける」


 宮内が前に出て〖盾〗と〖障壁〗を構える。


「なっ!」


 巨体が闇に呑まれて消えた。


「消えるスキル?」


 いや違う。


「転移だ」


 死角となる位置。


「巻島さん!」


 さっき使ったばかりなので、巻き取りは冷却中。


「大丈夫」


 〖氷人〗と〖天使〗の盾で二段構え。


「浦部お前だ!」


 俺の側面に大男は迫っていた。


 姿勢は不十分でも、〖盾〗を構えて〖噴射〗を発動。


・《敵のHPを風刃で削るたび、突風の冷却が減少(極小)する》

・《大型武器に対する突風のHPダメ減少(中)》

・《盾の突風で弾ける圧力増加(大)》


 敵にとって正面と側面から突風が吹くけれど、それをものともせず角槍は下から上へとサンゴの死骸を撒き散らす。


「テンさん行って!」


 気づけば宙を舞っていた。地面に激突しても勢いよく転がり続け、HPを大量に削られたか。

 妖精が俺の後頭部に着地して、身体を起こせと髪の毛を引っ張る。


 鱗粉で回復もちょっとはできたけど、顔を上げると太志が追撃のために力を溜めていた。


「離れとけ、巻き込まれるぞ」


 〖天使〗が盾を構えて俺を守る位置につくが、防ぎ切れるとは思えない。


「させん」


 二組の〖仕込み短剣〗が回転しながら放たれる。


・《仕込み短剣が柄尻で合体可能となりHPダメ増加(大)・合体時の攻撃圧力増加(中)》

・《赤剣命中時に確率で燃え上がり、並みの熱感とHPダメ(中)》


 大男は片腕で角槍を振って、〖赤く輝く短剣〗を弾き落したが、得物と片腕が燃え上がった。


「まだだ」


 装備の切り替えで戦槌をベルトにもどし、〖鞘〗から〖雷光剣〗を解き放つ。


「I betrayed humanity」


《電撃と他属性攻撃が合わさるとHPダメ増加(中)》


 〖武器操作の触手〗を操作して、何度か〖仕込み短剣〗で攻撃を仕掛けるが、決定打には繋がらない。

 それでも俺への追撃は諦めてくれたようだ。

 今のうちに立ち上がり、移動をしながら味方に〖鎖〗を再射出。


「the only human」


 宮内が攻撃をしているうちに、神崎さんは〖重力場〗の準備を整える。


・《テンションが上昇するほどに扱える重量増加》

・《大剣を地面にぶつけると、岩をまとい重量増加》

・《武器の重量が増すほど身体強化(小から中)》

・《二段階まで溜めると4秒間身体強化(中)》


 【槍】が銀色に輝き、突き出すと同時に【衝撃波】を発生させた。


《防護膜の強化(大)・余程の攻撃でなければ姿勢を崩し難くなる》


 神崎さんは屈辱の角が発動中も戦意は上がっていたようだ。


 〖守護者の盾〗を操作して【衝撃】を凌ぎ切れば、〖鬼となった姫〗の口から息が漏れる。

 時刻は夕方なため、《身体強化(極大》と考えて良いだろう。


「ヒャッハーっ!」


 神崎さんは飛び上り、直接に相手を大剣で狙った。

 交差させた【槍】で受け止めるが、もの凄い重量に靴底が沈む。


 太志は押し負ける寸前で横に流したが、地面に減り込んだ〔鉄塊の大剣〕が〖重力場〗を発生させた。


 〖突風〗を消費して〖渦〗の風ダメージを(中)に強化。


 背後に回り込んでいた俺は〖一点突破〗で迫るが、大男は腰を捻りながら脇差の先端を肘で弾く。

 続けざまに膝蹴りで神崎さんを吹き飛ばしたが、その隙に〖メイス〗を打ちつける。


 筋力で無理やり重力場に抗ってやがる。

 男は角槍の柄で〖メイス〗を受け止め、もう片方の得物を手放すと俺の首を掴む。


 てかやばっ 掴まれた。


「no regrets」


 〖重力場〗の圧と共に地面へと叩きつけられ、強い光と共にHP減少。


 宮内が側面から接近するも、太志はそれに気づき【角槍】で足払いを実行。なんとか飛び上って回避し、そのまま〖剣〗を振り落とす。


 【肩腕】が左の肩甲骨より出現し、彼の斬撃を受け止めた。


「これでどうだっ!」


 〖肩腕〗が戦槌を兜に命中させたが、左の【肩腕】で身体ごと弾き飛ばされる。


 闇の中から〖妖精〗が出現。

・《妖精にも憑依が反映される・妖精の憑依時間が5秒延長》

・《赤鳥憑依時に守り3種強化(大)・憑依時の熱感または炎上確率増加(中)》

・《闇豹憑依時に自分の身体強化(中)》


 太志は俺の首から手を離し、〖妖精〗の一撃を【前腕】で受け止める。


 闇の中から巻島さんが出現すれば、ショップで買った安物の〔短剣〕を突き刺す。


《気づかれずに攻撃をするとHPダメ増加》


 ついでに俺も〖闇に潜んで〗姿を消し、横に転がってその場から非難しておく。


 もう神崎さんの重力場は終わっていた。


 大男は巻島さんを【肩腕】で狙い、妖精を【槍】の柄で叩き落す。


 〖氷人〗の氷壁が彼女を守り、中位精霊の〖土膜〗が妖精への衝撃を分散させる。


 〖闇豹〗の〖尻尾〗が装甲の隙間に突き刺さり、〖燃える爪〗で追撃を狙うが【巨腕】で防がれた。炎上ダメが発生。


 巻島さんは距離をとり。


「投げて」


 上空から赤く光る〖天使〗が投擲。


 【岩壁】がサンゴの死骸を押し退けて出現し、放たれた〖槍〗が突き刺さって止まった。


 土属性まで使うのか。


「ここだっ!」


 〖闇に潜む〗は気づかれててもHPダメ増加。〖黒刃〗で膝裏を斬り裂き、続けて腰当に〖メイス〗を叩きつける。

 太志は姿勢を崩すも、地面に片手をつければ【石礫】が握られており、それを空に向けて投げ放つ。


 〖天使〗は盾で防ぐことも出来ず、胴体に穴があく。

 テンさん属性強度が低いんだよな。


「妖精行けるか」


「ベルだから!」


《妖精の憑依にもシンクロが追加》


 燃え上がった〖妖精〗は赤く輝き、男の脇を通り抜けながら〖爪〗を当てる。急旋回したのち背当を狙うが、【肩腕】が捕らえようと指をひらく。


 させねえ。


 〖無断〗で【腕】を叩き落せば、続けて妖精の〖ナイフ〗が装甲を貫く。


「神崎さん!」


 〖メイス〗を地面に叩きつけて〖重力場〗を発動させれば、〖包丁〗を投げて突き立てた。

 スキル枠が足りず武器操作の触手はセットできず。

 投擲用の武器でもないので、上手く刺さるかは運だけど、今回は成功したみたいだ。


「That's mine, right?」


 〖沼〗には回復妨害の触手だけでなく、歩行阻害のデバフもある。


「宮内くん、肩腕で押えつけろ!」


「やってみる」


 俺の〖重力場〗は神崎さんのよりも圧力が低い。今は片手メイスだしな。


「さとちゃん行け!」


「うおりゃっ!」


 〖風刃横断〗が味方ごと大男のHPを奪う。


 神崎さんは数歩前に進んで歩幅を合わせると、飛び跳ねてから〖鉄塊〗を兵士へと振り落す。


「〖燃える斬撃ぃっ!〗」


 HP0となり、太志は大剣の横に強制移動する。


「咎人のメイスで決着をつけます!」


 自分用の滑車を出現させようとした瞬間だった。


『報酬は確定しました。条件ブラザー・マスターを満たしているため、特殊形態に移行します』


 大男が闇に包まれる。


『一定時間生き延びてください。2分毎に追加報酬が発生します』


「なにそれぇ!」


 神崎さんはそのまま横に振り抜くが、大剣は闇を通り抜け手応えはない様子。


「みんな警戒しろ」


 宮内の声色で緊張が増す。


「倒すんじゃなくて、生き延びろって時点でやばいぞ」


 俺らは距離をとり、大男を包んでいた闇を眺める。


 今のうちに〖守護者の盾〗と〖鎖〗を掛け直す。俺に使うぶんは残しておいた方が良いな。


 指示をし忘れたので、〖細鎖〗はランダムに味方へと伸びる。


「ねえ、なんか縮んでない」


 俺の胸下くらいか、それより低い。


「……え、ゴブリン?」


「旅装束って」


 笠をかぶり、外套をまとう。渡世人みたいな。


 得物は二振りの短剣。


 柄尻で笠を持ち上げると、そいつは俺らを順々に眺める。


「……」


 ゴブリンだわ。


「え?」


 いつの間にか、笠だけを残して消えていた。


 〖盾〗を構える暇もなく、宮内が横に吹き飛ぶ。


 ゴブリンが静かに着地する。


 側面からの攻撃。


「こいつも転移だ!」


「〖うぉおおっ!〗」


 神崎さんが大剣を振り下ろすも【障壁】に阻まれ、破壊までの時間でゴブさんは回避に成功。

 そのまま彼女の前腕を斬れば、片手が大剣から離れてしまう。


 黒い蒸気が神崎さんの切断線から噴き出していた。

 原初の精霊と同等の回復妨害。


「大将を神崎さん、俺の援護にクロちゃん」


 〖風刃の渦〗を突風で強化してから、〖一点突破〗でゴブさんに接近するが、短剣で絡め落される。切先が命中しなかったので衝撃波には繋げられず。


 〖黒豹〗の物質化した牙をもう片方の短剣で弾けば、その小さな身体が【二体に分離】し、追撃の〖尻尾〗を叩き落した。


「無断だ」


 〖幻〗が得物だけなのに対し、こいつのは身体ごと。


「温存する余裕もありません、咎人のメイスを使います!」


 《〖旗持ち〗が〖団員〗に〖緑の細鎖〗》を射出する。

 〔照明章〕を持っているのは神崎さんと宮内。変化によるバフの強化と、得ている〖鎖〗の性能強化。


 守護盾《味方に精神保護》


「鬼さん叫んで!」


 〖修羅鬼〗の〖戦叫〗により効果時間が延長。

 戦意高揚。


「妖精はまだ召喚できませんか!」


 〖黒豹〗が俺に憑依すれば、〖メイス〗とは別の角度から〖爪〗で攻撃を仕掛けるが、ゴブリンはこの二連撃を【障壁】で防ぐ。


「あと少し。っていうかなんでベルっちだけ名前で呼ばないのよ!」


 自分でつくった【壁】を足場にすると、誰もいない方向に【一点突破】らしきスキルで逃げる。


「違う」


 ゴブリンは空間の歪みに消えると、巻島さんの背後から出現して、そのままの勢いで彼女を突き刺す。

 【波】が宮内以外の俺ら全員を吹き飛ばした。


 〖合体した仕込み短剣〗が回転しながら放たれるが、片手の【短剣】で軽々と地面へ叩き落す。


 【分身】が倒れ込んだ俺に飛びかかるも、〖青い原罪〗が盾で受け止めた。


 【無断】により氷ごと盾が崩壊して、アドルフさんは片腕を失う。

 ゴブリンより【空刃斬】が放たれて、原罪は〖滑車〗にもどる。


 考えている暇はない。

 私は身体を起こしながら君の名を呼ぶ。


「クレメンス君、お願いします!」


 ゴブリンの側面に〖赤き原罪〗が出現し、燃える金棒を振り落とすが、そちらを見もせずに一歩さがって回避する。


「ハイデ」


 後ろに出現した〖黄の原罪〗が俺を通り抜けて、ゴブリンの横を通過しながら槍で突くも、その一撃は【障壁】に遮られた。


「強すぎだよぉ!」


 〖闘仙鬼〗が〖重力場〗で動きを封じようとしたが、ゴブリンは【一点突破】で範囲外に逃れる。

 岩の針は俺らも巻き込んじまうからな。


「浦部や美玖のより、冷却が早いぞ」


 時間を短縮させるスキルでも使ってんのか。


「倒すのは無理だ、守りを固めましょう!」


 もともと運営はそう言ってた。


「太志。お前の前世、滅茶苦茶すぎんだろ」


「勝った気しないよぉ!」


 未だゴブリンは現れず。


「ベルっち来て」


 巻島さんの肩に妖精が着地する。


「〖鱗粉の風!〗」


《妖精がマントに着地すると、範囲内の味方に8秒の身体強化(レベル比例)・使用後も自分と味方のHPが10秒徐々に回復(大)》


「もう1分は過ぎたはずだから、皆ふんばって!」


 勝つ必要はないんだ。


 空中に空間の歪みが3つ出現し、そこから2体の【幻】と本体が出現した。


「第一変化より、こっちの方がずっと化け物だろ」


 〖蛍〗舞うビーチに【雪が降る】


・・

・・


 2分はなんとか経過したけれど、4分は無理でした。

 俺らは順々に現世へ強制帰還させられた。


 報酬はアイテムチェストに入っているとのこと。こうすりゃメンバー間でも揉めないか。

 自分の枠に入ってるのは俺ので、共有枠にあるのは皆のって感じでいけるもんね。


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