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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
8章 上級校庭連戦と修学旅行
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2話 荒木場校庭連戦


 テスト前の活動収めとして、俺らは校庭での連戦に挑戦していた。

 そんなこんなで三戦目を終えると、すぐさま報酬を回収して次に備える。


「ギン兄、鱗粉の風どうすればいい?」


「まだやめておこう、俺の鎖でなんとかする」


 ケンちゃんが今回使うのは巻島さんのスキルだね。分鏡の絆には鱗粉のみセットしてある。それと以前手に入れた〖天使〗は彼が使う。


 宮内にのみ〖黄鎖〗を放って疲労回復を施す。


「できればこれでボス戦になってくれると嬉しいんだが」


「屈辱の角なら使えるテンション溜まってるよ」


 新たに出現したのはこちらと同数の5名。

 美玖ちゃんは〔一点突破の槍〕を構え。


「パーティって感じですかね?」


「鞘をどっちにするかはお任せします、神崎さんも闘仙鬼は自分の判断で使ってください」


「とりあえず鬼姫まで溜めよっかな」


 《消費テンション減少》

 ビー玉での調節が必要だけど、鬼姫の使用後に屈辱の角ってのは可能だった。


「もし相手が強敵なら、鬼姫つかっても大丈夫なんで」


「わかったぁ」


「敵は全員人型か」


 相手のパッシブ色を確認する。


 ・市民っぽい服装のダガー使い。黄色の光が足もとを照らす。

 ・軽装の弓使い。腰には短剣も確認できた。

 ・いつぞやの盾使い。光の意識操作スキルを使ってきた奴だけど、今回も全身が赤く光っている。

 ・軽鎧の片手剣。鎧が白く光っており、剣は黄色か。

 ・法衣をまとっているのは拳を得物とするようだ。モンクって奴かね。


「あの聖職者さん、頭上から光が射しこんでます」


「HP秒間回復って感じか、けっこう広範囲を照らしてんな」


 聖職者を中心として、全ての敵が【天の光】に入っている。


「弓使いに警戒してくれ、アイツはパッシブなしだ」


「了解」


「これボス戦かも!」


 神崎さんはウッキウキだね。

 まだ敵は透けているので、戦闘開始までは少し有余もありそうか。


「あっ 精霊いますよ」

 

「闇属性ぽいっすね」


 黒い球体が宙に浮いていた。透けているのでエフェクトみたいな感じだ。


 荒木場初挑戦を終えた頃から、敵に下位から上位の精霊が出現するようになった。

 倒すと精霊結晶なるものを入手できる。それをポーションの材料にすることで、服用した状態で合体か憑依を使えば、結晶の元になった存在が協力してくれる。

 ポーションなので残念ながら使い切り。


 たぶん選択スキルを両方改良したからだと思う。もっと早くしとけば良かったと、マキマキは後悔してた。


「いや、影の精霊か」


 盾使いの影に黒い球体は隠れた。


「光耐性に変更。みんな〖法衣の渦〗からでないようにしてくれ」


 予想通りそいつは【盾】を掲げ、意識操作の【光】を輝かせる。


「問題ないです」


「私もぉ」


「同じく」


「俺も大丈夫、弓の発射台出現させます」


 前回も美玖ちゃんだけだったので、もともと確率は低かったんだろう。


「宮内はあの引き付け役に対応してくれ、ケンちゃんは天使をその援護に回して」


「わかった」


 〖守護盾〗を全員に出現させ。


「触手はどうする?」


「直接相手すんのだけで良い。できれば市民には浮剣でちょっかいを掛けてくれ」


 すでに聖職者が神崎さんに向けて走りだしていた。


「このまま戦うよぉ……守り三種低下あり!」


 【天の光】には青系のデバフありか。


「もしかするとパッシブじゃなくて、本人持ちのスキルかも知れません。要注意を!」


 強敵が2体。


「美玖ちゃんは片手剣持ちをお願いします」


 黄色の剣なんで、雷耐性を上げれる彼女が対応した方が良い。


「はいっ!」


 各自に鎖を射出する。

 宮内に〖青と黒〗。神崎さんには〖黄と白〗。美玖ちゃんには〖赤と白〗。


「ケンちゃんは弓使いに〖矢〗を放ってくれ。雫さんの召喚はそっちの判断に任せる、あと滑車破壊をするときは叫んで」


 〖雫召喚〗と〖姉の剣スキル〗

 彼の選択はバランス良く上げているので、両方いつでも使用可能。疲労などのデメリットもない。


「姉さんの召喚はしばらく様子を見ます。使うスキルは黒刃と無断で行こうかと」


「滑車破壊は巻き取りに合わせるでも良いぞ!」


 主に後衛なので、ケンちゃんは〔壊れた滑車の装飾品〕を買ってくれた。

《滑車(1つ)の破壊が可能になる。冷却は(1)分・HP秒間回復(中)》


 俺は市民に向けて走り出す。


「あんたそれ正解だよ」


 〖触手に掴まれた仕込み短剣〗は厄介だけど、HPダメは低いんだ。物理強度も(小)だし、大した力も込めれん。

 伸ばせる距離は長く、変則的な動きもできるため意識が向きやすいけれど、ある程度は無視しても問題ない。


「重力場を使うぞ、ケンちゃん合わせてくれ!」


 メイスで〖重力場〗を発動させるが、相手はパッシブ〖黄色〗からして避けてくる。〖肉切り包丁〗が地面に刺されば〖闇の沼〗が発生して、そこから回復妨害の触手が2つ発生した。


 聖職者の【光】で秒間回復してるのもあるが。


「相手からすればどっちか分からん」


 宮内の触手から判断しちまうと、物理強度のある武器操作の方だって勘違いもするだろう。市民は1つ回避するが、もう一方が命中。

 その隙を突いて〖黄の鎖〗を放ちながら、続けてメイスを打ちつける。かなり光ったのでHPダメも大きいはず。


「もういっちょ」


 追撃を仕掛けようとしたが、弓使いが〖自動発射台〗の攻撃を無視して、俺に【矢】を放ってくる。


 〖法衣鎧〗の〖渦〗があるけれど、上手いこと風の流れを読んで撃ったようだ。なんとか〖盾〗で凌いだが、その隙に市民が姿勢を立て直しちまった。


「なんだありゃ」


 一瞬だけ意識をそちらに向ける。弓使いの周囲には、緑色に光る複数の【矢】が浮かんでいた。

 エフェクトじゃなく、矢筒にあった実物だ。


「ナイスケンちゃん」


 弓矢の自動発射台《凍結確率上昇(大)・氷の強度強化(中)》

 このスキルはHPダメより、動作阻害を優先したビー玉を付けている。

 腕を凍りつかせることに成功したようで、弓使いはかなり狙い難くなってるはずだ。


 市民が【黒いダガー】で斬りかかってきたので、メイスで受け止めてから脛を蹴るが、相手は足を一歩さげて避ける。

 そのまま空ぶった靴底を地面に叩きつけ、〖盾〗での打撃を狙うも【ダガー】を間に挟み威力を流された。


「やるなっ」


 メイスの柄尻で敵の側頭部を狙うけど、腰と首を捻って躱される。


「皆、上から矢が降ってくるよ!」


 宙に浮かんでいた【矢】が俺だけでなく、全員に放たれたようだ。空を見上げると三本が重力により落ちてくる。


「引いちゃダメだ」


 追尾もありそうな感じがするけど、後ろにさがるより近づいた方が命中率も落ちるだろ。敵にもFFはあるわけだ。

 肩に衝撃を受ける。

 矢を一本もらったみたいだな。軽く姿勢を崩しながらも、無理やりメイスを振りかぶるけど、横に避けられ俺の側面へと回り込まれた。


「宮内くんに感謝」


 触手に掴まれた〖青い短剣〗が、市民の一撃を受け止める。

 俺は姿勢を低くしたまま、肩からの体当たりで市民を押し退けた。相手は少し後ろによろける。

 〖盾〗の表面を相手に向けて、そのまま〖突風〗を放って転倒させた。


「順調」


 自動発射台の〖矢〗を避けるだけでなく、弓使いは〖束縛の氷〗で弾いていた。強度が高いと、こうやって防御に使われる場合もあるのか。


「姉さんを召喚しました、弓持ちの対処に当てます!」


 全体の把握をケンちゃんに任せていても、周りで戦ってる仲間が気になってダメだな。

 意識散漫だ。

 相対する敵から一瞬でも視線を反らしたのが失敗だった。


「くそっ そう来たか」


 倒れた市民は全身が【黒い靄】に包まれると、巻島さんみたく姿が消えやがった。


「こいつ暗殺者だ!」


 戦闘職でなくても、別の前世が動物だったりするんなら、市民が第一変化になるなんて滅多にない。


「でも俺の〖鎖〗から位置はわかる」


 〖巻き取り〗を発動させ、メイスを打ちつける。手ごたえはあったけれど、俺の膝裏に腕を回しながらのタックルが見事に決まり、背中から倒れて空を仰ぐ。

 もしレスリングなら負けてたわ。


 マウントポジションを取られたと理解したが、相手の武器が何処にあるのか分からず。


「困った時の〖突風〗さん」


 たぶん喉を狙って振り下ろしたんだろう。側面から鋭い風が吹き、地面に【短剣】が突き刺さる音がした。

 首筋が強く光ったので、けっこうなHPを持ってかれたか。

 俺に攻撃を仕掛けたことで、市民の姿が目視できるようになった。


「うおりゃっ!」


 ケンちゃんが〖一点突破〗と〖衝撃波〗で吹き飛ばしてくれた。


「美玖さんの〖赤い滑車に攻撃〗しました!」


 味方の滑車を壊した場合は亀裂が生じ、残り時間が減るけれどスキル性能が大きく上昇する。それに加え各色の属性耐性も付属。


 ちなみに咎人のメイスで自分に使ってる鎖は、スキルが終わるまで滑車も消えないので、すぐに壊しても問題ない。


「すまんケンちゃん、ちょっと持ち場を変わってくれ!」


 すでに市民は目視可能。ケンちゃんは〔鏡盾〕を構えながら慎重に足を進める。


「わかった、今俺が使えるのは一点突破と無断だから!」


「無理しなくて良いぞ」


 彼が雫さんのスキルを使えるのは60秒だったか。


 一度、周りの戦況を確かめたい。



 宮内は盾使いと戦っていた。地面の影から時々精霊が一部を出現させ、物理判定のある【触手】で足を掴み、なにかと移動の妨害をしている。これはデバフとは違うので状態異常治癒では癒せない。


 〖天使〗が【触手】に槍を突き刺して切断する。盾持ちの赤いパッシブは以前より強力なようで、宮内はその攻撃を〖時空盾〗と〖肩腕〗で防ぐ。


「鱗粉を頼む、全体攻撃を放つぞ! 美玖、可能なら避雷針を使え!」


 美玖ちゃんは〖槍〗を使い戦っているが、片手剣使いとは互角だな。


 本来は武器としちゃ剣より槍が有利なんだけど、姿勢は崩してもHPのせいで距離も詰めやすくなってるから、現実ほどに差はないんだよな。


 【剣】は感電だけでなく速度もあるようで、鎧の秒間回復も【頭上の光】と重なって厄介極まりない。


 それでも〖滑車破壊〗で少し余裕ができたみたいだ。


「つかった、神崎先輩は範囲外!」


 雷耐性(中)。味方は素の状態でもフレンドリーファイアを軽減してくれるけど、強力な属性攻撃となればHPダメも痛い。


「よしっ 神崎すまん」


 〖鞘〗から解き放たれた〖雷撃〗が広範囲を飲み込む。


「へいひ!」


 神崎さんが〖短刀〗を咥え、〖蛍火〗の準備をしたところて、相手をしていた聖職者の【光】が増していく。


「なにかつかってふる!」


 〖雷雲〗の下方に【紋章】が描かれると【輝き】に変化して、照らす範囲も大きく広がり、敵全員のHPを回復させる。


「〖鱗粉の風!〗」


「ケンちゃん、市民のデバフ消えたから気をつけろ!」


 【頭上からの輝き】で滑車が浄化されちまった。

 回復妨害も切れたか。



 神崎さんは装備の切り替えで短刀を鞘に戻すと、すぐさま〖般若の面〗を装着し、〔鉄塊の大剣〕を振り落とす。


 【法衣】をまとう聖職者は、【障壁】の表面に【白銀の十字架】を出現させていた。


「あ”ぁ、もうっ 威力メチャクチャ弱められる!」


 しかも【障壁】は2重に展開されており、破壊するまでの時間を使って横に回避される。


 宮内が叫ぶ。


「みんな気をつけろ、聖職者の光に【身体強化】も加わってるみたいだ!」


 天使がやられた。


「浦部っ、このままだと防ぎ切れん!」


 盾使いの身体は【天の輝き】に照らされ、一層に赤く光っていた。


「鎖が終わったら〖原罪〗を各自に回します、錬金薬を使ってください!」


 空には〖雷雲〗が音を鳴らしている。まだ蓄電は2段階に届かず。

 美玖ちゃんは喰いしばっていた歯を緩め。


「了解っ」


 三好さんから送られた貴重な品で、制作にもかなりの時間が必要とのこと。


 【紋章と輝き】

 片手剣使いも肉体が強化されており、弓使いも雫さんが押しているけど攻めきれてない。

 ていうか身体強化のバフ込みだとしても、良く短剣だけで〖打刀〗のスキルと渡り合えるな。しかも〖発射台〗からの〖矢〗に対応しながらときた。


 俺は神崎さんの近くまで移動する。


「鬼姫はどんくらいっすか!」


「もう終わるっ!」


 一番やばいのは間違いなくこの聖職者だ。

 バフか強力すぎる。


 滑車が完全に壊れ、効果が終わった。雫さんも時間がきて消えてしまい、弓使いがフリーになる。

 美玖ちゃんが【矢】を回避しながら叫ぶ。


「まだですか、もう持ちません!」


「あと少し待ってくれ」


 数秒が経過して般若の面が消える。


「神崎さん、赤で叫んでください!」


《修羅鬼も叫べるようになり、赤叫の効果時間が延長される》

《任意で修羅鬼が燃え上がり自分に炎上ダメ(中)、身体強化(レベル比例)》


「〖うぉぉおおお!〗」


 範囲内の味方に戦意高揚。


 自分に〖青の鎖〗を使い精神保護。

 自分に〖白の鎖〗を使い精神安定。

 自分に〖赤の鎖〗を使い戦意高揚。

 自分に〖黄の鎖〗を使い疲労回復。


「……」


 俺の意識に混ざる司祭さんが、〖滑車破壊〗を強く拒絶している。もし無理やりすると、精神が大きく消耗しちまうな。


 〖青の原罪〗を神崎さんに。

 〖赤の原罪〗を美玖ちゃんに。

 〖黄の原罪〗をいったん宮内に。


「私はケンジ少年の援護に入ります!」


 燃え盛る〖金棒〗が片手剣使いに襲い掛かり、その隙に美玖ちゃんは〖属性強化剤〗を服用。


 神崎さんも〖闘仙鬼〗を召喚するようだ。

 弓使いに当たらせるべきか。いや、一刻も早く聖職者を殺した方が良い。


「ごめんギン兄、あとお願い!」


 もともと接近戦の経験が少なかったケンちゃんは、雪の細剣が制限時間を迎えてしまう。さすがにスキルなしでは対応もできず、HP0でスーパーへと帰還しちまった。

 60分間はセットしてたスキルが使用不可になる。


「宮内は《喰いしばり》が発動したら、いったん守護盾を解除してくれ!」


「わかった」


 〖守護盾〗を皆に使っているため、彼が負っているHPダメは実際よりも多い。


「美玖、これ使え!」


「ありがとっ」


 〖銀の鞘〗が空中の〔鞘〕へと移動を開始する。


「ハイデは宮内を通り抜けたのち、下馬して弓使いに当たってください!」


《下馬の指示をすると原罪が物理属性強度(中)を得る・槍の攻撃に確率(大)で速度低下(小)が付属、最大で(中)》


 片手剣使いと弓使いに空から〖雷〗が落ちた。


「それまで私が邪魔をします!」


 弓持ちは寸前で回避するが、《冷却が蓄積型になった〖避雷針〗》が範囲内の敵に属性ダメを通す。

 さっきは咄嗟のことで忘れてたんだろう、2つ同時に避雷針使えるって。


 雫さんは〖黒刃〗を使ってたので、回復妨害もあって弓使いのHPは0になったようだ。



 映世でのシステムは完全に物理優遇で、非物理と属性攻撃は不遇と考えて良いだろう。

 三好さんの〖強化剤〗は属性攻撃に限り、一時的にその不満を解消してくれる。

 俺は市民との交戦に入ったから確認できないが、〖雷〗はHP0後の肉体にもダメージを与えているはずだ。


 市民は黄色の光を得ているので、雷耐性があるかも知れん。

 もし各色のパッシブに属性耐性もあるなら、一撃で殺しきるのは難しいか。


 今は両手持ちのメイスなんで装備の切り替えも不可。

 すでに回復妨害の触手は聖職者の【治癒】で効果がなくなっている。

 もう頭上の【紋章】は消えてるけど、【天の光】はそのままだから秒間回復は継続かな。


・・

・・


 もうすぐ咎人のメイスが終わる。


「なんとか殺し切れた」


 血だらけの市民が闇に紛れて散った。



 片手剣持ちは〖赤の原罪〗がHPを0にして、轟音と共に〖雷〗が落ちて倒れた。


「そんなのありかよ」


 装備の切り替え。

 弓使いは軽装から【鎧】に変化しており、〖法衣〗と似たスキルを使ってやがる。俺の渦よりも範囲は狭いけど、攻撃判定があるらしい。


 【風刃の渦】って感じか。

 大したダメージじゃないけど、〖黄の原罪〗は徐々に属性強度を削られちまってる。

 得物も弓から【両手剣】になっていた。


「本職はこっちってか」


 縦に振り抜いた剣から【突き抜ける風撃】が発生すると、援軍に駆け付けようとした〖闘仙鬼〗を足止めして、彼も時間が来てしまい消滅。


「3人掛かりでこれか」


 〖青の原罪〗は破壊されるも、すでに聖職者は虫の息。

 2重の【障壁】と【十字架】で〔大剣〕を防ぐが、そいつは逃げようとしない。


 【右腕が茶色に光る】


「〖させるかぁ!〗」


 出現した背後の〖修羅鬼〗と共に、〖燃える大剣〗が【障壁】に減り込むが、破壊される寸前で【拳】が地面に【紋章】を描く。


 赤青黄の原罪だけでなく、神崎さんと美玖ちゃんが【重力場】に封じられる。


 〖燃える斬撃〗が【障壁】を突破して、聖職者はぐちゃりと圧し潰された。

 美玖ちゃんは槍を校庭に突き立て、なんとか重力に抗いながら。


「風使いの攻撃に備えてください!」


 横に振り抜いた両手剣が【広範囲の風刃】を発生させる。〖渦〗を風耐性に切り替えて凌ぐが、全員のHPが削られた。


 咎人のメイスが片手持ちにもどり、旗持ちの団員と原罪が姿を消す。


「しまっ」


 倒したと勘違いしていた市民が【出現】しやがった。

 もう神崎さんは〖短刀〗を口に咥えて蛍火を使おうとしたが、間に合いそうにない。


「うそぉ」


 最後の力を振り絞り、急所に【ダガー】を突き刺す。


「やらかしたっ!」


 脇差からの〖一点突破〗で止めを刺すが、彼女はス―パーへと強制転移させられた。


「すんません」


「しっかりしてください、浦部さん!」


 〖雷撃〗を避けた風使いの隙をつき、美玖ちゃんは〖一点突破〗からの〖波(扇状衝撃波)〗を仕掛ける。


《波に確率で並の熱感を付属・波での熱感に成功すると、10秒間の炎上ダメ(中)》

《一点突破の防護膜に氷膜が追加され、威力の軽減(大)》


「まだ戦闘中だ、反省は後にしろ!」


 宮内が相手をしている盾使いも未だ健在。精霊も影から姿を現し、足に巻きつこうと触手を伸ばしてきた。


「うおぉぉ!」


 〔片手槍〕の切先を【拘束の触手】に突き刺す。

 宮内がすかさず〖剣〗で盾使いに斬りかかった。


「ケンちゃん」


「ギン兄は美玖さんの援護をして!」


 細剣は腰の鞘。鏡盾は所持しておらず。

 アイテムチェストの天使武具セットをここまで持ち込んできたのだろう。


「よしっ」


 〖槍〗が肉体を赤く光らせ、〖盾〗が守り三種を強化する。



 無理したなケンちゃん。


「わかった」


 皆に〖各色〗の鎖を放つ。

 宮内も〖守護盾〗を再度発動させる。


「行けます」


「あと少しだ」


《守護盾の数ごとに使用者の守り三種強化(小から極大)・消滅時に味方はHP秒間回復(中)を20秒得る》


 4対3だけど、もう向こうに余力は残ってないはず。



 神崎さん復帰しにくるだろうか。

 〖燃える闘魂〗も使用不可なので、大剣は扱えなさそうだ。

 〔短刀〕もセットしてたから無理だろうし、〔包丁〕もケンちゃん強制転移されてるからダメ。

 不貞腐れてるだろうなと思いながらも、俺たちは戦いを仕切り直した。



 〔闘魂の額当〕だけとなれば、総HPMPも半分になるかも知れない。

 それでも神崎さんなら素手で来そうだな。

 途中で敵が出現しないことを願っておこう。


 彼女のビー玉でれば良いんだけど。

 俺のミスでもあるので、なにか考えておくべきか。


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