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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
七章 体育祭と荒木場初挑戦
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5話 上級・荒木場初挑戦


 日曜日はあえて活動は休みにして翌日に備える。神崎さん辺りはソロ活してたかもだけどね。

 ケンちゃんに試合頑張れと伝えておきました。


 体育際の振休である月曜日。俺は荒木場に向けて電車に乗る。

 一度の乗り換えもあったが、東京に比べれば可愛いもんだ。


 距離が遠いのは俺の地元で、現地集合ってことになっていた。

 最寄り駅まで1時間45分と、通うとなればかなり厳しいね。野球とサッカー部なんかは通学禁止かも知れんけど。


 電車が停止してから席を立ち、ホームへと降りる。


「最高の環境だな」


 うちの高校より標高のある町だそうで、気温もちょっと低いんだよね荒木場周辺ってさ。なんとなく空気も澄んでる気がするけど、田舎の度合いなら俺んちの方が上なので気のせいですはい。


「あれ、浦部この電車乗ってたん?」


「巻島さんこんちわっす。乗った時はホームにいなかったと思うっすけど」


 2両編成の電車でした。


「あぁ あたしギリギリだったからね」


 巻島さんとホームを歩く。なんと無人駅です、俺の地元もそうですけど。


 運転手さんに切符を渡してから駅前にでる。

 今日は活動日とあって、彼女の服装も運動着ですな。


「喫茶店って何処っすかね?」


「あれじゃない」


 メッセージに店の写真と位置情報が貼られていたが、確認する前に発見できた。

 店内へのドアを開けると、チリンチリンと心地よい音が響く。


「いらっしゃい」


 すでに3人は到着しているとのこと。

 神崎さんが立ち上がって手を振っていたのを確認。


「あっ あの3人と一緒で」


 俺の代わりに巻島さんが伝えてくれた。

 さっそく席に着く。


「どもっす」


「おはようさん」


 時刻はもうすぐ10時半。


「あー お腹すいた。ごめんね、先食べててもよかったのにさ」


「せっかくなら、皆で食べたいじゃん」


「運動するし、ごはん食べませんとね」


 けっこう朝食抜きって人いるけど、朝練とかある場合はキツイよな。


「ちょっと早いけど昼飯も兼ねて、夕方までは活動したいからな」


「それならちゃんと食った方が良いか」


 握り飯を一つ頂戴してから家でたんだけど。

 店員さんが水を運んで来てくれたので、メニューもついでに注文する。

 サラダと飲料のセットで頼む。


・・

・・


 浅草も上級だったけど。


「数で押してきた雷門と違って、高校ってことなら質かも知れんってのが姉の意見すね」


「浦部が1年のときは、たしか建築現場で活動したんだっけ?」


 もと現場監督だった配信者が広めたことで、かなり辛い環境だってのが世間に広まった。

 田舎と都会じゃ違うかもだけど、俺らが挑戦したのはけっこう大きい建物の建築現場だったらしい。地方都市のね。


「そこはすでに完成してまして、難易度もマイナスではなくなってるみたいですね」


 荒木場も候補にあがってたけど、アクセスはそっちの方が良かったので、去年は選ばれなかった。

 あと苦手な奴がいるってこんで、俺が嫌がった可能性もあるか。

 建築現場だけど、難易度は日によってバラつきもあったんだと。急なトラブルとかで変化してたのかも。


 サンドウィッチを手に持ちながら、神崎さんは喫茶店の外に意識を向け。


「ちょっと考えてたんだけど、寮どうしよっかぁ」


 宮内くんは小倉トーストですな。美玖ちゃんはホットドック。


「普段から住宅とかは入らないようにしてるからな。でも一番数値が高いのは寮だぞ」


「部活寮にも駐車場ってありますよね、そこに敵が出たりしませんか?」


 一般寮のと比べるとひび割れてたりと状態は良くないけど、車を止める場所はあるって宮内言ってたか。

 巻島さんはベーコンエッグと焼いたトースト。


「とりあえず今日は校舎で良いっしょ」


「そうっすね。生徒が授業してるってものあるんで、数値だけ確認してから移りましょう」


 俺はフレンチトーストをナイフで切る。


・・

・・


 軽く食休みをしてから喫茶店を後にした。値段は多少お高めでしたが、そこら辺は活動費なので問題ない。


 緩やかな上り下りの坂道を進んで20分ほど、例のス―パ―を横切った先に、たぶん無人と思われる神社があった。けっこう広い庭にベンチや自販機と、放課後はカップルが集いそうな環境だな。


「この神社が高校に面してるから、意外とそっちの数値は低くなってるかも知れん」


「体育してるみたいだねぇ」


 神社の周囲は木々に覆われており、金網の向こう側が高校の敷地って感じか。


「面してるのはテニスコートで、その先が校庭だな」


「ここの数値は40前後。スーパーが15くらいなんで、効果範囲は半径100mってとこか」


「0以上で緊急脱出しちゃうと、テニスコートにでちゃうかもだねぇ」


「不法侵入になるんで、それは避けませんと」


「もう鉈は持ち歩いてないけど、警察のお世話にはなりたくないわ」


 宮内の鞘と同じく、安物の短剣を購入したらしい。数日前に美玖ちゃんがそれを借りて、無断を使えないか試したんだけどダメでしたな。


 俺は手鏡を持ちながら。


「ちょっと金網近くまで行ってみますんで、待っててください」


「俺も付き合うよ」


 木々の中は多少足場も悪い。荒木場のカップル諸君、人目に付きにくいからって、変なことしてねえだろうな。

 テニスコートの先で体育の授業をしているため、俺らは幹に身を隠しながら。


「マイナス3か」


「上級だから、神社の効果も反映され難くなってるのかも知れんな」


 荒木場で一番数値が低いのはテニスコート周辺。

 しばらく待って数値の変動を確認するが、プラスになる事はなく。


 3人のもとへもどり、そのことを説明する。


「ちょうど体育してますし、一戦目は校庭にしてみますか」


 神崎さんは目を輝かせ。


「うんうん、そうしよぉ」


「上級は2度目だけど、やっぱ緊張すんや」


「ですねえ」


 宮内の方を見て。


「そのくらいがちょうど良いっすよ。ストレスがあるからこそ、緊張感や集中力が発揮される」


「だな。この時間でスーパーは色々と怪しまれるから、そこの自販機で飲料を買ってからにしよう」


 俺たちは500のペットボトルを購入後、映世に移ってからスーパーに向かう。


・・

・・


 店員も含め誰もいない店内に進入。

 美玖ちゃんは陳列された商品を眺めながら。


「試したことないけど、食べると吐くんでしたっけ?」


「うん。すっごく気持ち悪くなっちゃうの」


「ちょっとサトちゃん、あんたもしかして」


 えへへと苦笑いを浮かべる神崎さん。食ったんすね。


 店内に入ってすぐ横に休憩スペースとトイレがあった。飲食オッケイで机と椅子が幾つか設置されており、テレビも壁に掛けられている。

 無料のお茶や水を飲める機械と、紙コップに台拭きも確認。


 手洗い所の鏡は。


「曇ってるな」


 女性陣がトイレに入って確認するとのことで、俺と宮内も男子便所へ向かう。


「こっちダメだ、割れてるぅ」


「俺らの方もだな、外のやつに曇り消しを使いましょう」


 洗面所に道具を使い、鏡に触れるとメッセージが浮かびでる。


『連戦モードと探索モードを選べます』


 校庭・各寮前の駐車スペース・練習場などで敵と連戦し、最後にボスが出現。


 学校の敷地内に宝箱が設置される。


「寮前の駐車場で連戦できるのは助かりますね」


「まあアタシだって映世だとしても、部屋入られんのは嫌だもん」


「なんかすんません」


 公園にいなければ、彼女の自宅に進入するつもりだった。


「あぁ、そこは良い良い。迷い人だったしさ」


 何時の間にか呼び出されていた妖精が、どんまいと俺の肩を叩いていた。


「今日は探索にしときますか、宝箱ってのがちょっと気になります」


「雷門でのボス戦を思いだすと、確かに今日はそっちの方が無難かもな」


 神崎さんはちょっと不満そうだけど。


「宝箱かぁ」


 気になる事は気になる様子。

 鏡を操作すると、登録も可能だった。


 美玖ちゃんが俺の肩から顔を覗かせ、鏡のメッセージを眺める。


「よかった。数値は17だけど、上級で負けた時はここに飛ばしてくれるみたい」


 ちょっと息がかかってムフフとなってしまった。おい妖精、ジト目で俺を見るんじゃないよ。


 皆が登録を完了させると、店内での戦闘は避けたいので急いで外にでる。


 神社を曲がった先、ちょっと進むと正門に到着した。

 道路を挟んだ逆側にもグラウンドがあり、体育館をそちらに確認する。

 歩道橋みたいなのを通って、校舎側からも移れるようだ。


「……デカいな」


「うちより生徒多いんだっけ?」


「1学年6から7クラスらしいぞ」


 都会にはもっと凄いマンモス校もあるんだろうけど、この県じゃかなり多い生徒数だわ。

 手鏡を取り出し。


「数値はマイナス14」


「とりあえず許容範囲内だ」


 さっそく正門からお邪魔させてもらう。閉まっていたので、俺らは乗り越えたんだけどね。

 うちの高校は校舎と校庭に高低差があるんだけど、ここは柵や木で遮られているので、そのまま横に反れ校庭に進入した。


「体育中だけど、どうかなぁ」


「数日後にはちょっと涼しくなるそうだけど、まだまだ暑いからヘバってる子もいるんちゃう?」


 ここらは俺らの地元より涼しいが、世界的にみても厳しいと言われる日本の夏だ。

 白い線の引かれた校庭を進んでいくと、生徒の影を3体確認する。


「少ないな」


 神崎さんは大剣を構え。


「ロボット軍団のときと違って、バラバラじゃないね」


 もちろん変化は一回。


 けっこう大きい狼。四足歩行だけど見上げる位置に頭がある。

 冒険者っぽい盾と剣持ち。

 法衣をまとった聖職者で得物は杖。


「なるほど、こんな感じになるのか」


 狼はそのまま。


 冒険者は盾が青白く光り、身体に赤いオーラをまとう。


 聖職者も杖が銀色に光り、足もとの地面が黄色に輝く。


「なんとなくだけど、パッシブって感じがすんね」


「上級マップ特有の強化かも知れん」


 聖職者が杖を掲げると、頭上に魔法陣のようなものが描かれ、そこから【翼を生やした鎧兜】が出現した。


「召喚かっ!」


 兜の中身が空洞なので、さまよう鎧の翼持ちって感じだろうか。得物は片手持ちの槍と盾。


「負けてらんないね。とり兵衛さんとベルっちで対応していい?」


「それで頼んます」


 最近は俺が参加してないときなど、巻島さんが指示をしている。


「盾持ちに対応します、全体を任せても良いっすか巻島さん」


 持ち場的に彼女がそれをできるなら、俺も前に出て戦いやすい。


 巻島さんが空気を飲んだのが伝わる。


「わかった。じゃあ宮内は狼を引きつけてサトちゃんもそっち、美玖ちゃんは聖職者ね」


 宮内に〖青大将〗を憑依させ、クロちゃんは使わない。


「了解」


 全員に〖守護盾〗を発動。


「黄色の鎖は美玖ちゃんに、赤と青を宮内、白はサトちゃん。私はいらん」


「へい」


 3体の中で一番強そうなのは狼。聖職者は速度が強化されてるっぽい。


 〖赤鳥〗と槍持ちの【翼鎧】が空中で交差すれば、少し離れた位置で妖精が見守る。


「来るぞっ!」


 盾持ちが【盾】を掲げると、その表面より【白い輝き】を発した。

 特にこれといった変化はない。


 美玖ちゃんが叫ぶ。


「冒険者が気になって仕方ありません、神々しすぎて!」


 白はHPMPに心。憎悪ではないけれど、意識を操作する系の技かも知れん。俺には効果がないから確率か。


 狼が美玖ちゃんに向けて一足で接近し、爪を振りかぶる。


「〖鱗粉の風!〗」


 状態異常治癒。

 先に仕掛けられちまったか。


 〖中型の盾状障壁〗で何とか防ぐも突破され、〖白銀鞘〗で受け止める。


《鞘の装備性能強化(大)》


「美玖ちゃんはそのまま狼の相手して、浦部は彼女の援護。憎悪で引き付けて!」


 位置的に俺の方が美玖ちゃんに近いしな。


 〖鎖〗を射出するが狼は察知して、横に飛び退く。


「ケンちゃん、勉強になったぜ」


 着地した瞬間を狙って〖黒鎖〗を放つ。狼は顔だけをこちらに向け、鋭い牙を歯茎ごと剥き出しにする。


「宮内は盾持ちに触手!」


「任された」


「じゃあ私は聖職者っ!」


 俺は美玖ちゃんと狼戦に集中する。


 振り向きざまの爪を〖小盾〗で防ぐと、その重量が増加していた。


「爪が茶色に光った、こっち側の重量操作だ!」


 〖法衣鎧〗を土耐性に変化させたことで、少しだけ元の重さにもどる。

 狼は【爪】を振り切ったのち、手首を返して再度攻撃仕掛けてきたが、後ろにさがって回避するも僅かに命中してHP減少。


 美玖ちゃんが背後から槍で払うが、地面についていた片方の前脚だけをそのままに、後ろ脚を浮かせて押し出すように蹴る。


 〖中型の盾状障壁〗で防ぐが、〖鞘〗が押し込まれ彼女に迫る。


「私の鞘を【軽く】された」


 一歩さがりながら石突側の〖無断〗で凌ぐ。


 その隙に俺は〖赤の鎖〗を命中させ、並みの熱感に成功。

 続けてメイスで顔面を狙らったけど、狼は熱に怯むことなく、首を捻って牙で噛み止める。炎上のビー玉はつけてないので、HPダメは期待できず。


「装備変更」


 メイスがベルトのホルダーに戻り、盾も腰裏へと移る。

 左手に握られた脇差で〖黒刃〗からの〖無断〗を発動させ、狼の前脚を叩き斬る。


「打撃との相性は悪いか」


 無断は打撃。

 一点突破は突き。

 黒刃は斬撃。


 回復妨害の効果は乗ったが黒い靄は薄い。


 狼は俺へと体当たりを仕掛けてきた。

 右手に出現させた〖メイス〗をギリギリ間に挟むが、勢いよく吹き飛ばされる。


「くそっ!」


 そのまま俺に飛び乗ろうとしてきた。

 重力場はダメだ、逆に俺が圧し潰されるし、地面に叩きつける威力もこの体勢じゃ低い。


 〖青の滑車〗を俺の近くに出現させ、自分へと放つ。


「アドルフさん!」


 〖原罪〗が俺を飛び越えながら、勢いのまま狼の【爪】を受け止める。


 狼が追撃で〖青の原罪〗に牙を向ける。

 私は急いで身体を起こしながら、〖白の鎖〗を自分に放つ。


「赤は切れている」


 現在、狼には〖赤の鎖〗を使ってるのだから、咎人のメイスでなく。


「〖巻き取り〗」


 こっちで凌ぐべきだったか。

 大型の敵。村瀬はバーニアで宙に浮いてたってのもあるけど、少ししか姿勢を崩せなかった。


「美玖ちゃん、原罪がそっち行くぞ!」


「はいっ!」


 〖黄色の滑車〗を俺の前方に出現させ、こちらに射出する。


「駆け抜けてください、ハイデっ」


 偵察兼、遊撃隊長。


「槙島さん、精神系が足りません!」


 もし例えるなら。

 保護は心の防御力。

 安定は心の回復。

 戦意高揚は心の痛み緩和。


 《精神保護》《精神安定強化》だけでは気持ち厳しい。


「ベルっち、浦部の肩に乗って!」


 馬に騎乗した細身の戦士が出現し、狼の横を〖電撃を帯びた槍〗で攻撃しながら駆け抜ける。

 その先で美玖ちゃんと激突するが、実体がないので何事もなく通過した。


 〖黄の原罪〗に触れた自分と味方は素早さ関係強化。


「そのまま味方を通り抜けながら、各敵を攻撃してください!」


 肩に妖精が着地し、首を捻りながら私の顔を覗きこむ。


「感謝します、ベルさん。これで〖原罪〗の召喚を続けられそうです」


 なんか凄い目で見られたんですけど。



 美玖さんは槍をその場に置き、〖鞘〗から〖真・雷光剣〗を抜く。

 《素早さに比例して身体強化》

 姿が消えると閃光が走り、狼に銀色の輝きを発生させた。

 停止すれば振り向きざまに〖剣〗が轟音を打ち鳴らし、〖雷撃〗が命中して感電を付属。HP0。


 〖青の原罪〗も近寄って攻撃をするが、今回は凍結に失敗したようだ。物質化している〖青の剣〗は斬撃と共に狼を濡らす。

 美玖ちゃんの姿が再び消え、固い剛毛ごと筋肉を〖稲妻〗が斬り裂く。


「サトちゃん、闘仙鬼を召喚させて!」


 炎鳥が消えても妖精が距離をとって対応していたが、今はこの通り俺の肩に移動してしまった。


 上空より【翼の生えた鎧】が神崎さんに槍を投擲する。

 なんとか〖黒豹〗が爪で弾くけれど、急降下して盾での打撃を狙ってきた。


 神崎さんを〖黄の原罪〗が通り抜け、そのまま聖職者に攻撃を仕掛ける。

 速度が強化されたこともあり、ギリギリで盾による殴打の回避に成功。


 召喚された〖闘仙鬼〗の一撃が、【鎧】を陥没させて吹き飛ばす。



 狼はもう虫の息で、〖青の原罪〗と美玖ちゃんが対応中。


 宮内青年はもう左腕の肘まで〖戦槌〗の影が進んでいる。


「……」


 眼球が赤く光っているが、その表情は伺えず。


 〖黄の原罪〗が背後から盾持ちを攻撃した隙に、戦槌を腰ベルトにもどし〖剣〗の柄を握る。

 〖触手〗が〖短剣〗を掴んだまま回り込んで斬りかかるが、相手は【盾】を動かして何とか凌ぐ。


 次の瞬間。

 〖鞘〗から解き放たれた〖雷撃〗が敵に放たれると、それに【盾】が間に合わず直撃。


 〖雷光剣〗をつかったことで、彼の全身を覆っていた影が散った。


「そういや夕焼けに染まるって、使用後に現世へ戻されるんだっけな」


 校庭に強制帰還したら困るよね。


「ハイデはそのまま宮内さんの援護をお願いします」


 鞘からの解放後は《身体強化》されることもあり、青年の戦いも決着がつきそうですね。

 


 〖緑の旗持ち〗が俺の傍らにつく。


「どなたか存じませんが、このまま解除しますので、よろしくお願いします」


 ある程度近くにいないと、彼は《疲労を引き受けて》くれない。



 その間もベルさんが私の頭を叩いて、大丈夫か確かめていた。


「お止めください」


 神崎さんの方を確認。


「やっと当たったぁ!」


 聖職者はかなり素早くなっていたようで、大剣が命中せず苦戦していたようだ。

 でも〖黄の原罪〗が通り抜けたことで、素早さも追いついた様子。


 〖闘仙鬼〗の〖重力場〗は地面から鋭い岩が飛び出て、それが【翼鎧】の装甲を貫く。召喚した存在は属性物理強度なので、こういった属性攻撃も通用するらしい。


「だから痛てぇよ」


 妖精は俺の側頭部を叩き続けていた。


「咎人のメイス使うと、前世の意識が混ざって変になるんだって」


 そう説明しても、訝しげな視線を向けてくる。



6話に続きますが、戦闘描写はどうするか悩み中です

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