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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
七章 体育祭と荒木場初挑戦
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2話 爆熱・鋼鉄リーガー



 ファミレスを後にした俺らはいったん学校に戻り、正門前で映世に移る。


 巻島さんは校庭を指さし。


「あれがそうかな?」


 大鳥居をくぐった少し先には、真新しい綺麗な(やしろ)があった。

 降りるための石段に向かう。


「そういや体育際ってここですんのか。行事は狙い目なんだけど、こりゃ無理そうっすね」


「セーフゾーンだしな」


 町中を歩き回っても敵が出ない時はあるので、連戦できるってのはそれだけで有難い。


 その点やっぱ学校内のエンカウント率は外よりも高いので、ここの難易度を調節できるのは本当に助かる。


「大堀くん嫌がりそうな行事だし、ちょっと期待してたんだけどなぁ」


「もう許してくださいよ神崎さん」


 ちなみに奴は動くの嫌いだけど、運動神経が悪いってわけじゃない。


「まだまだ機会はありますって」


 美玖ちゃんが間に入ってくれた。良い子や。

 神崎さんは苦笑いを浮かべ。


「なんか大堀君の不幸を願うようで、逆に私が酷い人だよねぇ」


「のめり込みすぎて大事なことを見逃すって結構あるからな、俺も気をつけんと」


 美玖ちゃんが迷い人になったこととか、けっこう気にしてそうだしな宮内。


「サトちゃんはギャンブルとかやめた方が良いよ」


「うっ 確かに。今だって私そんな感じだもんね」


「俺もソシャゲのガチャとか、あんま人のこと言えませんけど」


 その点で言えばハクスラ系のゲームが役に立ったんだよな。良い装備でたときの感覚が、ガチャで当たり引いた時と似ててさ。

 やったことないからわからんけど、パチンコやスロットの当たり演出にも通じるのがあるんじゃないだろうか。


「ビー玉ポイントだけで済んでるんなら良いんじゃないっすか。小遣いや生活費に手をつけなけりゃ」


「包丁買ったら、触手は自分で頑張って貯めてみます」


 無課金で遊ぶって決めても、ガチャ引く通貨を貯めれない感じなんだろうな。けっきょく課金一直線だ。

 ご利用は計画的に。


「自分の管理くらいできなきゃだめかぁ」


 ゲームにハマり過ぎて身を崩す人もいりゃ、配信やプロゲーマーとして億を稼ぐのもいる。




 社の中には青銅鏡が設置されており、そこから難易度の調節ができるようだ。


「ショップも開けるみたいだな」


「トイレの鏡とかでも買い物できりゃ良いんだけど、まあ求めてばっかも悪いか」


 数値は80から20でなくて、0まで下げれるようだ。


「んじゃ、さっそく行きましょうか」


 野球部のグラウンドを目指す。


・・

・・


 学校を離れ15分ほどで到着するが、今のところ練習場に敵は見当たらない。

 出入口のフェンス扉は開放されているので、俺たちはそこから堂々と中に入る。


「ロボット軍団戦になるかも知れんな」


 野球部の奴らってなぜか、最初に変化する姿が同じ世界感のロボットなんだよ。今までは大鳥居パワーが働いてたから、それと戦うのは今回が初になる。


「浦部さんの言ってたアニメ確認してみたけど、確かに似てました」


「でしょ」


「あの悲しいロボットたちってやつだっけ?」


 もともとはスポーツのために製造された機械だったけど、戦争のために改修されてしまったロボットたちの話だ。

 試合に負けたりすると、悪いオーナーに戦争送りにするぞとか敵チームが脅されてた記憶がある。


 彼らのAIは最後まで叫び続けた。自分たちはスポーツをしたい、鋼鉄リーグの選手なんだと。



 グラウンドに足を踏み入れると、さっそく6名ほどの影が出現する。


「散り散りかぁ 厄介だね」


「大砲持ちが二体いるな。宮内君はそっちを引き付けてくれ、巻島さんもここでサポートを頼んます」


「了解」


 ロボット軍団の大きさは2mくらいだけど、4頭身で横幅もある。


 バックパックから砲身が伸びている個体に向け、宮内は〖始まりの闇〗を使う。《追尾機能強化》もあり、これまでより命中率も上がっていた。


「トリ兵衛さん行って」


 物理化しない方が特攻後に通り抜けられるので自由に動ける。〖鳥〗は遠距離攻撃ロボにむけて空から攻撃を仕掛け、〖触手〗の手助けを始めた。


「クロちゃんはこっちにください。神崎さんと美玖ちゃんも俺と来てくれ」


「わかった!」


 美玖ちゃんは買ったばかりの〔槍〕を手に持ち、〔剣〕は〔鞘〕に入れたまま〖白銀鞘〗を発動させる。

 兄は〖鞘〗から剣を抜き、それをベルトの鞘に移す。


「これもってけ」


「ありがとっ」


 両者の鞘が重さなったことで、〖来世への願い〗が効果を発揮する。

 《兄と離れても使えるようになる》《兄の〖鞘〗使用中は属性耐性強化(中)》


 俺はこの場に〖無色の滑車〗を残し、宮内には〖青の鎖〗を放つ。


《防御時に身体強化》


「黒も貰えるか」


「まだあんま育ってないけどね」


 〖暗黒の戦槌〗は身体強化もあるんだけど、影が右手から徐々に全身へ伸びていき、最後に左手の〖盾〗に到達すると〖夕焼けに染まる〗が発動してしまう。


 今は時空盾じゃないから安全ではあるんだけど、左腕に到達すればスキルが終了する。宮内の浸食耐性が強化されると、影が伸びる速度が落ちるらしい。


 一度検証しておく必要もあるよな、夕焼けに染まる。

 ただ使用後は上級でも強制的に現世へ戻されて、下手すりゃ一週間は映世に移れなくなるってのが厳し過ぎんだよ。


「あとは守護盾だな」


 上級で《最大数+2》をゲットできたらしく、今は全員ぶんの〖盾〗を用意可能となっていた。


・・

・・


 グラウンドはけっこう広く、各敵の位置もバラバラ。


「神崎さん、好きな相手を選んでください」


「やったー!」


 短剣持ちのロボットに狙いを縛ったようだ。赤い光が発生してビームソードに変化する。

 たぶんあれはHPしか削れない。


「赤い光の部分は鍔迫り合いとか、受け止めはできないと思うんで気をつけて!」


「わかった!」


「私はあのバットを構えてるので良いですか?」


 各所に穴が開いており、そこから空気だが火が噴きだすって感じか。


「噴射機構があるっぽいんで、防ぐときは盾か無断が良いかも知れないっす」


「了解です」


 一点突破・無断・黒刃だけど、これってもしかすると広く知れ渡った技だったのかもね。


 彼女が手鏡に〔槍〕をセットしたとき、〖前世スキル解放〗ってのを覚えたようで、無断や黒刃も使えるようになっていた。

 いくつもある前世のどれか。雫さんと美玖ちゃんは、かつて同じ世界で生きていた可能性がある。


「では、私も行きますね」


 いったん立ち止まると、〖一点突破〗で俺を追い越して、噴射バット持との戦闘に移る。



 その時だった。俺に向けて赤いビーム光線が放たれた。

 咄嗟に〖風の盾〗で防ぐが、その攻撃には物理判定がないため、盾を通り抜けて命中する。

 属性耐性を火耐性に切り替えておくか。

 基本赤系統は攻撃って場合が多いしさ、修羅鬼とか攻猿。


「クロちゃんは銃持ちを頼む!」


 光線銃も恐らくHPしか削れないと思うけど、こちらは生身になった瞬間に退場だからな。


 俺の肩になにかが振れる。頬を小さな手で引っ張られたが、今は戦闘中だから敵から意識は反らせず。


「あんがとさん、お前はクロちゃんの援護を頼む」


 〖鱗粉〗によりHPが回復していた。

 妖精が肩から離れると、美玖ちゃんと神崎さんに向けて〖赤と白の鎖〗を放つ。


「神崎さん、片付いたら俺の方に来てくれ。美玖ちゃんは雷光剣抜いても良いんで!」


「はーい」


「わかりました!」


 皆それぞれ疲労対策はできてるんでね、以前よりは使いかっても改善されている。


「俺が相手すんのは斧持ちのロボだな」


 2年になってレギュラーを獲得した村瀬って奴。同じクラスでけっこう話しやすい。

 左手は野球で使うグローブのような形状になっていた。


「ありゃ防具で良いのかね」


 斧の刃部分が赤い光を発する。これは某有名作品でお馴染みの武器だ。


「ヒートホーク」


 火耐性のままで良いな。


 法衣鎧のエフェクトをまとったまま、右手に装備した脇差からの〖一点突破〗で迫る。


「やっぱ防具か!」


 青い障壁が展開される。〖衝撃波〗は発動せず。


 グローブで下から掴んで刀身を持ち上げられると、食虫植物のようにがっちりと固定された。


「装備変更」


 脇差が腰の鞘にもどり、右腕に〔メイス〕が握られる。


 追撃の【ヒートホーク】を〖小盾〗で受け止め、続けて〖突風〗で弾く。


「やっぱ〖黄の鎖〗かな」


 機械は雷に弱いかも知れないと思い、村瀬の左右側面に〖滑車〗を出現させて〖鎖〗を放つ。


 一つは黄色。感電は不発だったが、〖白の鎖〗は〖閃光〗に成功する。


「目は付いてるんだ」


 視界不良は効くはずと信じ、重量を操作した〖メイス〗をロボの前腕に叩きつけた。HP減少の光が発生。


 盾を腰裏に移し、左手に脇差を握る。


 自動修復機能とかあるかも知れんから〖黒刃〗で斬りかかるも、村瀬はグローブの表面で振り払ってきた。


「そんなのもありかよ」


 透明だったアイシールドが黒色に変化していた。恐らく光耐性強化みたいな効果があるんだろう。


 俺はいったん後ろに飛び間合いを離す。着地と同時に片膝を曲げ、地面に〖メイス〗を打ちつけ〖重力場〗を発動させる。


 ロボットは上からの圧力に押えつけられながらも、各部位より炎を噴射させ姿勢を安定させると、俺へと無理やり迫ってくる。


「そりゃ人間よりも馬力は上か」


 黄色の〖滑車〗が鎖を〖巻き取った〗ことで、相手は肩から仰向けに転倒。


 《守り三種が弱体》

 時間が延長したことで、神崎さんと美玖ちゃんの赤鎖が性能アップ。



 ロボットは背面からの噴射により身体を起こそうとするが、未だに〖重力場〗は続いている。


「火力の調節を謝るとこうなるんだ」


 重力場が終わったことで再びバランスを崩してしまう。俺はここぞとばかりに接近し、メイスの一撃と〖無断〗を喰らわせる。

 なんどか打撃を与えたことで、メイスの《身体強化》が発動。


 その後も有利に戦いを進め、村瀬はHPが0となる。


「やっぱ硬いな」


 猪やオーガもそうだけど、人間に比べて素の防御力が段違いだ。


「こっち終わったよ!」


 うちで一番攻撃力が高いのは神崎さんだ。


 俺は〖青の鎖〗をロボットに放ち。


「助かります」


 2対1となった時点でここの戦いは決着がつく。


・・

・・


 〔鉄塊の大剣〕が装甲に減り込み、村瀬は機能を停止させる。


「闘仙鬼を大砲持ちに向けてください、もう一方は神崎さんにお任せします」


 彼女に〖黄の鎖〗を放つ。


「わかったー」


 銃持ちのロボットは現在、〖妖精〗と〖氷人〗が戦ってくれていた。その心臓部には〔契約のナイフ〕が浮かぶ。

 巻島さんの〖ナイフ〗は〖炎鳥〗の嘴。



 美玖ちゃんは噴射機能付きのバットを、石突側の柄で受け止めながら〖無断〗を発動させる。すると同じ軌道でエフェクトの打撃が発生し、二重の衝撃が相手の得物を大きく弾き飛ばす。


 これは〖無断・幻〗ってスキルらしく、完全に上位互換だね。


 石突を振った反動で一度背中を向けると、脇に抱えていた槍の切先で相手の脛部位に傷痕を付ける。 相手はもうHP0のようだ。


 今回は敵が機械なのであれだけど、〖黒刃〗は〖血刃〗というスキルに変化しており、出血量増加の効果が加わっていた。


 それでも傷は浅く、ロボは彼女の攻撃を無視して【バット】を振るうも〖鞘〗が割り込み、〖小盾状の障壁〗がその一撃を防ぐ。


 俺は美玖ちゃんにだけ分かる位置に移動して、ロボットの背後から〖一点突破〗でバックパックを破壊した。


「ありがとうございます」


 こちらの戦いも2体1になったことで、少しして戦いが終わった。


「見事なもんっすね、槍捌き」


 雷光剣を使うことなく、今回は〔槍〕だけで凌げたようだ。疲労があるので、使わないで済むならそれに越したことはない。


 美玖ちゃんは両手持ちの槍を眺め。


「多分だけど、私これじゃないと思います。片手槍と短剣かなって」


「そうなんすか」


 衣類なんかと同じで、5000円を払えば武器の変更は可能。


「無断の短剣はないですけど、十手なんかはあったかな。でも買うのは勿体ない気がしますね」


「ちょっと悩みます」


 無断は防御にも使えるスキルだから、小回りのきく短剣を守りに使ってたんだろうな。


 俺は周囲を見渡しながら。


「18万はきつい」


「ですよね」

 

 こっちの戦闘が終わったことで、巻島さんも次の行動に移ったようだ。


「ベルっち! そろそろ決めるよ!」


 妖精の名前だね。片手を上げて了解の合図。


 決めるとき俺はマッキ―が良いんじゃないかって候補を上げたんだけど、妖精には髪の毛を引っ張られ、巻島さんには怒られてしまった。


 氷人が消えると同時に〖黒豹〗が出現してグラウンドを駆ける。

 妖精は高度を下げると到着した〖豹〗を〖憑依〗させ、銃持ちのロボットと戦闘を開始。


 手には〔契約のナイフ〕を持ち、尻尾には〔精霊のナイフ〕を宿す。


「青大将の冷却が終わるまでは距離とって戦って!」


 《闇豹憑依時は身体強化》

 妖精は物理強度が(小)でけっこう脆いため、尻尾での攻撃を中心にするようだ。


 《炎鳥憑依時は守り3種強化》ってのもあるけど、そっちは遠距離ロボに対応中。


 残念ながら妖精を〖青の鎖〗で強化することは出来い。



 〖闘仙鬼〗は属性物理強度が最初から(大)で、しかも今は鬼火玉を消費して〖土の仙衣〗をまとっている。

 身長は2m30cmほどで、世界を探せば同じくらいの人間もいるはずだけど、拳の一撃は岩腕がなくても強力なことに変わりなく。

 遠距離に特化したロボということもあり、接近戦も得意ではないようで、恐らく召喚が終わる前に決着がつくだろう。


 報酬を回収したのち。


「俺について来てください」


 神崎さんに使った黄色の滑車まで移動する。


 少しして戦いが終わった。妖精は憑依の使用後は消えてしまい、1分間の冷却が必要。


「報酬を急いで回収してくれ!」


「わかった!」


 遠距離2体の報酬をベルトの収納にしまったのを確認後。


「じゃあ巻き取りますよ!」


「はーい」


 神崎さんをこちらにもどす。


「宮内たちと合流しましょう」


 次が来るかも知れない。

 俺たちがバラバラの状態で始まるのは厄介なので、なるべく急がなくてはダメだ。

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