表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
四章 学校行事・歩こう遠足編
24/65

2話 神崎ボ○バイエ

 お噂通り、神崎さんマジパねぇっす。

 けっこう自信あったんだが、俺があのレベル帯だった頃より、ずっと動けてますわ。

 もとから運動神経いいのは知ってたけど。


 ただビー玉の内容を確認させてもらった結果、やはりパッシブ以外にはHP回復の効果はなかった。

 目的地の橋に到着したので、そのまま解散となる。


 宮内は巻島を送ってから帰宅するとのことで、俺は神崎パイセンのお供をする。


 えへへ、緊張しちゃうなぁ。はいキモいですね、顔に出さんようにしなくては。


「燃える闘魂は確かに優秀ですけど、ちょっと考えもんですね。バーサーカーってほどじゃないんですが」


「でもあれないと、たぶん私大剣扱えないよ」


 そうなんだよなあ。

 彼女ね、青系統全然使わないのよ。鬼火はいつも赤。


「ただ巻島さんの鱗粉や俺の白鎖で、精神安定使うでも行けるかと思います」


 俺の白鎖だと、精神安定は打ち込んだ瞬間につく。


「しかし初期の状態で小から中なんで、今後を考えると恐ろしいスキルっすね。テンションが上がるほどに身体強化かぁ」


「えへへ」


 本当に活き活きしてた。


「楽しかったっすか?」


「うん、すっごく」


 なら良かった。


「でも忘れちゃいけませんよ、あそこは危ない場所だって」


「そうなんだよねぇ。パッシブの所為かもだけど、少しずつ抜けてっちゃう。確かに厄介なスキルだ」


 ストレスの発散場所である以上は、どうしてもその面が浮き出てくるか。


「偉そうに言ってますが、俺もゲーム感覚が拭えないんすよ」


「アハハ、だって浦部くんも楽しそうだったもん」


 そうだ。これで良いんだ。


「気楽に進みましょう」


「だねぇ」


 焦っちゃだめだ。


・・

・・


 翌日は朝にテレビでみた予報どおりの雨だった。そのため吹奏楽部は第二体育館ではなく、音楽室での練習に変更したとの情報を神崎さんが持ってくる。


「行くぞ」


 宮内の声掛けに俺らはうなずく。


 扉を開けた先には、4人の生徒。


 冒険者っぽい槍使い。

 豚頭のオーク。今回はイノシシじゃない。

 重鎧のメイスと盾使い。

 俺と同じサイズのトカゲ。


 宮内は扉を開けてすぐ、〖時空盾〗を構える。〖障壁〗が歪めばそこから4本の〖触手〗が伸びていく。

 敵には避けようとするのもいたが、俺の鎖とは違い追尾機能があるようだ。


 全てに命中。敵の背中から憎悪の黒い靄が発生。すでに触手はなくなっており、無理やり引き寄せることはできない。


「いったん引くぞ」


 音楽室は色んな物が置いてあり、戦いには不向きだった。下手に暴れると修理費がね。

 いくつかの〖滑車〗を用意し、扉から出てきた敵に放つ。


「よし」


 意識が彼に向いているお陰か、〖鎖〗が避けられにくい。


 すでに仲間にも〖鎖〗は放っている。神崎さんには〖白〗だ。

 彼女は〖赤い鬼火〗を靡かせながら。


「いっくよぉ……」


 大きく息を吸い込む。


「〖うぉぉおおおおっ!〗」


 彼女はふざけていません、ちゃんと本気です。


 〖戦叫〗 一定秒間範囲内の味方に効果あり。

 MP消費中。冷却30秒。

 色の切り替えは鬼火で決まる。


 赤髪であれば身体強化。戦意高揚。

 青髪であればHP耐性・装備性能・防御力強化。精神安定。



 本来であればその大声に敵は反応するが、今は宮内に憎悪を向けたまま。


 槍使いの身体が黄色に光り、一気に彼へと接近したが、〖障壁と時空盾〗で防ぎきる。

 オークもこちらへと走りだすが、俺がそちらは受け持つ。

 重鎧は【青い光】をまとって後に続くも、〖豹〗が飛び越えてその前に着地した。


 大トカゲが口を大きく開ける。


「全体攻撃くるぞ!」


 この女子生徒。いや、トカゲとは学校での戦闘経験があった。

 以前は廊下だったけれど、なんでもソロパートを任されたらしく、けっこう悩んでいるらしい。

 基本的に敵として出現するのは、戦闘能力の高い前世が優先される。

 今はこんな姿をしているが、どこにでもいる普通の委員長だ。爬虫類っぽい顔でもない。


 敵味方を巻き込んで、口から【火炎】を放射してくる。


 〖緑の渦〗が範囲内の属性攻撃を弱め、青い〖浮剣〗が光り炎を弱体化させた。

 巻島さんにも〖氷人〗が護衛につく。


 重鎧が〖黒豹〗の攻撃を無視して、槍使いと戦う宮内へと迫る。


「そーれっ!」


 彼女の大剣は誰もいない場所を横断するが、背後の〖修羅鬼〗が物理判定のない〖鉄塊の大剣〗で斬り払い、俺や宮内ごと通り抜けた。


 トカゲ以外の3体に命中して、かなりのHPを削った。俺らのHPも減ったけど、味方の場合はある程度の軽減されるんだと。実体のないこういう攻撃は特に。

 ただHP0で直接だと普通に喰らう。高校一年の俺、なんでそんな検証してんだよ。


「神崎、重力場も行けるか!」


「ごめん。そっちのが良かったか」


 軽減されてもHPダメは貰うんでね。彼女は〖大剣〗を肩に背負い、溜めを開始する。


「とり兵衛さん!」


 狭い廊下の天井を飛び、下降と共に嘴の〖ナイフ〗がトカゲの身体に突き刺さり、大きなHP減少の光を発した。〖豹〗は狙いを女子生徒に変更したようで、追撃をしてから消える。


 廊下は広くなっているが、それは横幅のみ。

 跳び上った神崎さんの〖大剣〗は天井に亀裂を残し、重鎧は盾で受け止めるも鉄塊に圧し潰され、〖修羅鬼〗の攻撃も通過した。


 銀色の輝きが重鎧を突き抜け、HPが0になった盾使いは、いつの間にか剣の横に転移。このまま生身を晒したら重症を負うため、こういう仕組みになっているんだろう。

 敵も俺らも同じ条件だろうし文句はない。


 〖重力場〗が全ての敵を押えつける。



 〖土の大剣〗で重量を軽くしてから持ち上げれば、神崎さんは位置のズレた相手を見下ろし。


「ひゃっはー!」


 重装備なのですぐには動けず。もう一度頭上から鉄塊を振り落とす。


「やったぁ!」


 狂喜乱舞。流石にやばいと感じたのか、槍使いがそちらへと目を向けた。


「お前のミスだ、芝崎」


 側面に浮かぶ〖鞘〗から〖雷光剣〗を払うと、電撃が扇状に広がって残った3体のHPを奪う。神崎さんも巻き込まれるけど、非物理の広範囲攻撃はこういった点が魅力だ。

 事前に非物理はFFしても問題なしと決めている。

 味方であればデバフの心配もない。


 トカゲと槍使いに強の感電が付与された。

 抜刀術は日本刀だからってのもあるけど、彼の〖鞘〗には物理判定がないので、強引に引き抜いても問題ない。そして中距離に雷を放てるのはこの瞬間だけ。


 芝崎こと吹奏楽部の男子生徒は、〖重力場〗の影響もあって〖雷光剣〗の追撃をもろに喰らう。


「やっぱ学校内の敵はもう弱いっすね。巻島さん、委員長にお願いします」


「はいはい。クロちゃんもう一回っ!」


 再び呼び出した〖豹〗が闇に変化し、壁走りでトカゲに接近。


 俺もオークの飛びかかりを横に避けたのち、側頭部にメイスを叩きつけた。

 HP0。


「ほい追撃!」


 姿の見えない巻島さんが、鉈で豚頭の足を叩き斬る。


「さがったよ」


「了解」


 声の方角を確認しながら、俺がメイスで止めを刺す。


・・

・・


 今回の戦闘で破損したカ所を見ながら。


「じゃあ今回はアタシからね」


「うぅ~失敗した。一段階の溜めでよかったかぁ、ご迷惑おかけします」


 神崎さんは天井の亀裂には気づいてないようだ。


「俺もしょっちゅうすよ。このスキルにしときゃよかったって、その積み重ねが経験っつうこんで」


 修羅鬼(しゅらおに)戦なんかだと、俺は〖滑車破壊〗を使わなかった。あのスキルってHPを削るのに優秀なんだけど、けっこう忘れちまう。

 命中してからしばらくは繋げておきたい。でもいつの間にか滑車から離れたり、時間がきて鎖が解除されることが多い。


「連係も難しいな」


 一人ずつ修復画面に不要なビー玉を放りこむ。


「神崎は育成中だから、無理しないで良いぞ」


「うん。じゃあせめて最初の一周だけ」


 報酬を回収。《鎖の射出速度中増加》

 ソケットに余裕がありゃなぁ。ただ速度が今のままでも、命中させる方法はあるんだ。味方と交戦中とかね。

 あと本当はさ、悪寒で敵を凍らせて動作阻害ってのも付けたい。


 ついでに手鏡を確認をする。

 おっ レベルアップしてら。


「やっぱそうきたかぁ」


 最大数(固定)ってのがあったんで、予想はしていたけど。


「ん? どうしたん?」


 逆にして鏡面を見せながら。


「〖滑車破壊改〗か〖巻き取り〗の二択ですって」


 壊せる滑車の数が1つ増える。冷却が15秒だとすれば、30秒で2つ蓄積するって感じだな。同じ個体に重ねて使えばHPダメージ2倍ってことだ。


 巻き取りは任意の滑車を可動させて引き寄せる。また使えば敵味方問わず、継続時間も伸びる発生スキル。

 同一個体に複数の鎖を打ち込んでいても、引き寄せられるのは一方面だけ。

 こちらが改良された場合はどうなるのだろうか。八つ裂きの刑とか。


「攻略本作ったの誰だよ、気になるじゃんかぁ」


「あんたでしょ」


 両方バランスよく育てるか、一方に絞るか。


「つまりいずれは俺も、〖仕込み短剣〗を覚えれるってことで良いんだな」


「可能性は高い」


「まあアタシは精霊合体一択かなぁ」


 ですよね。


「私の選択スキルってどうなるんだろ」


「お楽しみってこんで、すげえ悩みますよ」


 実際に俺は今もの凄く悩んでる。


「えぇ~」


「そんな悩まなかったけどなぁ」


 ですよね。


「じゃあ次は第二体育館か。雨でサッカー部が練習してるはずだ」


 野球部は専用グラウンド内に室内施設あります。うちって金持ち高校だよね。


「次に4人揃う日は野球部のとこ行ってみますか。校庭と違って敵も出ると思いますんで」


 前回近くを通ったけど、進入しなかった所為か球児の影はなかった。


「おっけーい」


「やったぁっ」


 サッカー部の影も鳥居の影響で普段はでないから、戦える機会は雨の日くらいだ。

 あの神ゲーにも雨の日限定の敵とかいなかったっけ。



 しかしあれだな。俺も含めて皆さん豊富なスキルがある。

 さっき戦った連中がもし迷い人になっても、この三人ほど苦戦したのだろうか。

 太志なんかはあんな理由での出現だったけど、なんか滅茶苦茶強そうだし。やっぱ前世ってのはかなり強弱で関係あるんだろうな。


・・

・・


 電車の時間に合わせて、この日は活動を終了とする。宮内はサッカー部に寄ってから、部員と一緒に帰るとのことだった。


 マジかよ。おれ女にょ子と一緒に帰るのか、太志と隆明にまた自慢せんと。このまま俺、アイツらに嫌われるんじゃないだろうか。


「明日は宮内くんも塾だっけ?」


「そだね。アタシもバイト」


 神崎さんは続けてこちらを向く。


「すんません。自分も友達との約束がありまして」


「んぅぅ~ 残念っ」


 宮内と巻島は楽しんでいるけど、やはり目的のためってのがある。でも彼女は俺と同じで、完全にドハマりですな。


「俺も今まで1人の時はソロで活動してましたよ。たぶん大丈夫なんじゃないっすか?」


「はあぁ? ダメだよ、危ないでしょ! この子は回復手段ないんだし」


「うぅ ポーション使うもん」


 俺らはもう粗方(中)は揃っている。でも神崎さんは違う。


「数は足りてんの?」


 言い返せずに頬をふくらませて下を向く。なにその顔、超可愛いんですけどぉ。


「緊急脱出もあるし、自分は大丈夫だと思うんですが。ただ予備の鏡を使ってくださいね、あと今日みたいに生徒や教師の多くいる場所は避けてください」


 HPという要素があるので、そのぶん敵もタフなんだから、複数戦はやっぱ分が悪い。相手がどんなに弱くても、絶対に一撃じゃ倒し切れないんだ。


「ほらほらどうだ真希ぃ 問題ないだろぉ」


 マキマキに胸を張る。


「もう、余計なことを」


 恨めしそうな眼で睨まれる。


「すんません。俺もハマってるんで、なんとなく分かるんですよ」


「宮内はサッカー馬鹿だからあれだけど、アンタも二人での活動を通して、あわよくば聡美と仲良くなりたいってのないよね?」


 神崎さんはうーんと悩みながら。


「下心は罪じゃないと思うけどねぇ。私だって好きな人ができれば、うへへあわよくばってなると思うし」


 あるよ、あるに決まってるでしょ。


「例の事情がなければ、そりゃ俺だって下心は出てたかも知れねえっす」


「……あぁ、そっか。ごめん」


 惚れてた可能性は大いにあるはず。


「うへへぇ。はいっ じゃあ真希は反省。そして私のソロ活は決定です!」


 あわよくば活動したい神崎さん。


「ちょっと! それとこれとは別でしょ!」


 仲良きは美し気かな。


「たぶん止めても神崎さん言うこと聞かないっすよ」


「だぁよねぇ~♪」


「あぁもうっ!」

 

 楽しき青春の一幕を体感しながら、帰り道は過ぎていく。




ボンバイエ やっちまえ。彼を倒せ って意味らしいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ