表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
三章 燃え滾る美少女・神崎聡美編
19/66

6話 神引きなるか

 神崎さんの居場所はけっこう直ぐに見つかった。橋よりも鳥居パワーが強く弱体化していたが、それでも俺たちは2週間近くをレベル上げに費やしている。だって勝てなかったんだもん。


 そこで我々は一つの目標を立てた。俺と宮内は〔精霊のブローチ〕を、そんで巻島は〔守護者のネックレス〕の購入。

 宮内の提案もあって、少なくとも高校を卒業するまでは、映世で得たお金は活動目的でしか使わない。

 出所がまずわからん、賽銭とかお布施だろうか。次にこれが一番の理由だけど、当初の予想以上に映世での活動には金がかかる。


 成人を迎えてからは自己責任。税務署とかに目をつけられても、映世のことを説明しようが信じちゃもらえないだろう。

 俺も日々の生活費に余裕をくらいしか考えてなかったので、別にそこら辺は良いけどね。

 巻島さんもその気があるなら、バイトなんて続けてないとのことだった。


・・

・・


 数値は28。

 神社仏閣のパワーもあるけど、学校周辺に比べればかなり低い。


 隣を川が流れる道路上で俺らは戦闘を繰り広げていた。


「来るぞ!」


「大将お願い!」


 空からの急降下。俺らの手前で滑空状態になった大鳥の特攻は、凍った〖青大将〗に防がれるも突き抜けられ、その先にいた宮内の〖盾〗に受け止められる。


 〖浮いた鞘〗に騎士剣は納められ、今は彼の背後で浮かんでいた。


 〖時空盾〗というスキル名に変化しているそれは、衝撃吸収だけでなく表面に障壁が張られている。

 大きな鳥は翼を羽ばたかせて後退すると、再び飛び上ろうと地面を蹴る。赤い〖浮剣〗が追撃するも、衝撃はないので動作の邪魔はできず。


「もし野生の鳥なら、逃げることもあったんだろうけどね」


 運が良かったのは遠距離や落下攻撃がなかったこと。わざわざこっちに接近してくれる。

 敵に〖白黄の鎖〗を放つ。俺のスキルを無視して相手は飛び上り、再び空へと舞い戻った。


 巻島は手を空に掲げながら。


「残念、感電つかなかったかぁ」


 成功してれば翼の動きを阻害できたはず。


「こういう時、巻き取りにしとけば良かったと思うな」


「そりゃね」


 俺は〖白い滑車を破壊〗して、大鳥のHPをたくさん奪う。


「トリ兵衛さん、行って!」


 彼女の頭上が赤く光り、〖鳥〗が空を駆けて大鳥に襲い掛かり、そのHPを0にした。


「〖転移〗」


 青人から〖赤鳥〗へと〖ナイフ〗が移り、燃える〖鳥〗が爪で首を掴めば姿勢を崩し、一緒に川原の草むらへ落ちる。


 巻島さんの身体が〖加護〗により赤く光り、身体能力を強化。

 でも使い道がない。もったいねえなと思ってしまう。


「仕方ないでしょ」


「いや、すんません」


 心を読まれた。


 少しすると落下位置の草揺れが落ち着いた。宮内がそこを見つめながら。


「やったか」


「しかしどうするか、あそこじゃビー玉探せんかも」


「あっちゃぁ」


 しゃあない。


「とりべえさん、あんがとよ」


「うん。トリ兵衛さんは悪くないよ」


 ちなみに彼女の選択スキルは〖憑依〗か〖合体〗だった。


 〖精霊憑依〗

 最大憑依数2(固定)。自身の肉体に精霊を憑依させる。ベースは必ず〖闇豹〗となる。

 〖赤鳥〗は身体を強化し、〖青人〗は守り関係を強化。攻撃や防御に各属性を混じらせる。

 精霊が冷却中は使用不可。40秒間持続。

 MP消費(大)。

 残り10秒で〖シンクロ〗状態に入り、身体強化(中)。

 終了後に疲労(小)。


 〖精霊合体〗

 最大合体数2(固定)。

 精霊同士が合体して、各性能を強化。ベースは自由に選択可能。実体化する。MP消費(大)。


 どちらを選んだかは言うまでもない。まあ本人の自由だ。

 それに合体の方が使用後のリスクも少ないから、多様もできるはず。疲労の厄介さを知っているからこそ分かる。


「行くだけ行ってみるか。宮内君は巻島さんの護衛を頼むよ」


「ごめんね、ありがと」


 そう言って歩き出した時だった、俺の目前が銀色に光り、そこから3つのビー玉が地面に落ちて転がった。


「おお、便利機能だ」


「ナイス運営」


「やったね。報酬報酬っと」


 しかし二人のスキルも面白そうだよね。本当にゲームなら、キャラ変えてやるのにさ。


「ほい、これ浦部のね。私のもあるから、パッシブは宮内つかえし」


「ちょうだいします」


「どれどれ」


 なんと宮内は総HPMP増加(大)がでた。かなりのレアだ。


「おい、なんで総MP減少(小)がついてるんだ」


 こりゃランダム合成するか微妙なライン。


「ねえねえこれ良いかも、青大将がナイフなしでも物質・属性強度(小)を得るだって」


 もう一方もバット効果じゃないとのこと。

 護衛役の青人が物理判定なしって不便だもんな。


 俺はどうかね。

 

 全鎖スキル《他色の鎖と一緒に使える・MP消費減少(中)》


「やった、これで白も同時に放てる」


「なら一層に〔鎖のネックレス〕は不要になるか」


 味方だけで敵には効果なしなんだよ。そして何より巻島さんのが優秀過ぎる。


「今日中には買えそうだね、装飾品。ちょっと怖いんだけど、変なのついちゃったらどうしよ」


「念を込めすぎちゃいけませんぜ、無欲っす無欲」


「無理だろそれ」


 そんなこんなで俺らは活動を再開した。なんとか駄菓子屋の修理もでき、実に順調であった。


「サトちゃん、あと少しだから」


 今の彼女は父のポーションより、自分の強化を優先させている。まあそうだよな、幼馴染で仲が良いってんだから。

 それも一度、学校が離れちまったそうだし。

 幸い近場だし休みとかは遊べたんだろうけど、お互いに話し合って同じ高校を受けたんだろう。


「今回の敵も、30代半ばだったな」


「見た目の年齢だから確証もないけど、それより上の世代はあんま居ねえ」


「私が一緒に活動するようになってからも、たしか数回くらいだよ」


 汚染された魂ってのが異常に増えたのは、そんくらいの年代からってことか。


 じゃあ映世ができたのは最近なのかと言えば、俺にもわからん。

 妖怪とか幽霊とか、吸血鬼やゾンビなんかは昔話に登場する。

 占いや呪いが政治の中枢を担っていた時代なんか、日本にもあったよなたぶん。

 

 もしかすっとこれまでも、定期的に大小あれど、俺らみたいな役割はあったんじゃねえかな。


「……京都か」


 どうすんだよほんと。

 有名どころの妖怪を思い浮かべ。


「酒呑童子ねえ」


 俺らが今度戦うの、同族だったりして。


・・

・・


 鏡に不要なビー玉を入れ、ショップ画面のポイントを増加させる。


「……神さま仏様ぁ」


 目をつぶって購入をタッチした。


 〔精霊のブローチ〕《1体を自分に憑依でき、精霊に応じた強化(中)・HPMP秒間回復(中)》


「うっしゃぁぁ!」


 嬉しくて、堪らずグループにメッセージを送ると。


『やったな』


『宮内君はもう引いたのかい?』


 既読になってもしばらくは返事がこず。


『浦部には非常に言いにくいんだが、《1体を自分に憑依でき、精霊に応じた強化(大)・〖銀の鞘〗ソケット1追加》』


「どんだけぇぇ」


 神引きじゃねえか。


『ちくしょう、おめでと!』


『なんかすまん、でもありがとう。めっちゃ嬉しい』


 文章だからわからんけど、テンションヤバイんだろうな。だって身体動かして稼いだポイントなんだもん。


『わたし、まだ怖くて引けてない』


『今なら波が来てる、行けっ!』


『運営も鬼じゃないっすよ』


 既読がついたまま数分が経過した。


『《〖守護者の盾〗を操作でき、物理+属性強度(中)を得て攻撃を(2)回防ぐ・〖青人〗でも物理+属性強度(中)を得る》〗


 おお当たりじゃん。強度(中)で2回ってのも悪くない。強度(小)なのに5回防げるとか、強度(大)でも1度しか防げないってのがあるからな。


 ってあれ。


『嬉しいけど被ったぁ!!』


『いや、確かあの宝玉は小だったはずだ』


『小でも良い効果だから、けっこうな値段で売れるはずっすよ』


 全員ガチャは成功だな。


『だよね!』


 俺もHPMPの回復より、咎人の火力を優先してたから、今回のは普通に嬉しい。でなければ宮内に祝福なんて送れなかったさ。


『守りの浮剣にも物理強度中強化とか付けれろば良いんだが、あれもとが脆いんだ』


『たぶんその効果があると、仕込み短剣を選択する意味が薄くなっから、あえてないんだろうな』


 けっこうレベルも上がったのに、未だ物理強度(小)だもんな。


『その替わりに《威力を弱める膜》ってのがあるんだと思うよ』


『だな。良しっ、この勢いでHPMP(大)の宝玉も合成してみる』


 行くねぇ。だが調子乗るとなあ。

 にやにやしながら結果を待つ。


『失敗した』


 だよね。どんまい宮内。


『まあ良いじゃん、宮内は神引きしたんだしさ』


『そうだな、そうだよな』


 こうして俺らの準備は整った。


・・

・・


 明日の本番を前にして、その日は中々寝つけず。

 俺はベットに腰をかけ。


「メイス」


 現世には出現しない得物を思い浮かべ、それに意識を集中させながら〖茶白のメイス〗を発動させる。


 透明に光る武器が俺の手に握られていた。


「虚無のメイス」


 自分にセットしているスキルを思い浮かべる。


「偽りの神々」


 確かに思い返すと、俺のパッシブは2人に比べて弱かった。

 少し前にメイスとオーラの名称が変化した。


 そして運営から『新たな宝玉が解除されました、一般の敵を倒して入手してください』とのメッセージが届く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ