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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
三章 燃え滾る美少女・神崎聡美編
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2話 怖いもんは怖い


 巻島さんは飯がまだとのことで、廃校カフェで給食らしきランチを食べるとのことだった。俺は時間を見合わせてから、食パンを一つ口に放り込んだのち、自転車に跨り自宅をあとにする。


 到着すると、まだお食事中とのことで、外で待たせてもらう。

 しばらくして。


「中くれば良いじゃん。今日ワガママ言ったんだし、飲み物の一杯ぐらいサービスしたのにさ」


「ここ家の近所なんすよ。常連は顔見知りもいっから、母ちゃんのもとまで話がくると面倒でして」


 本当はそこまで知り合いもいない。だって女の子と一緒にご飯なんて僕、なんかしでかしそうで怖いんだもん。


 そっかそっかと笑いながら。


「噂って広がるの早いもんね、サトちゃんとかけっこう苦労してんのよ」


 あなたの噂も広まるの早いですぜ、どこどこでバイトしてた等。


「そうっすよね、俺のもとまで流れてくるぐらいだから、他の連中なんもっとか」


 聞き耳を立てていた訳ではないと断わっておく。


「良い所だよねここ、さっきたくさん撮っちゃったもん」


 映えというやつでしょうか。


・・

・・


 二人並んで裏道から鏡社を目指す。


「今日は失敗ばかりだし、頑張んなきゃ」


「ところで自分のスキルは確認済んでます?」


 宮内の時にした失敗を活かし、今回は事前に使い方の説明もしておく。


「そりゃしてるよ、実際に戦わなきゃいけないんでしょ」


「格闘技の経験とかあったりしませんかね?」


 身体能力に差があるのは仕方ないとしても、本格的に習ってたりする女性より、ずぶの素人である俺の方が弱いのは当然だ。まあ今はスキルで強化されてたりもするんであれだけど。


「ないない。それに運動神経も普通かなぁ」


「俺らと戦ってた時のこと覚えてます?」


 現状の彼女が持ってるスキルは俺も把握してる。


「素敵で綺麗な巻髪の槙島さん」


「えっと、その あれはですね」


 ランダム合成の失敗と再ゲットに関する話をして、嬉しすぎて調子乗ってたすみません的なことを言い、ごめんなさい許してください虐めないでと謝っておいた。


 アハハと笑いながら。


「浦部は鎖と鈍器で戦ってたね、あとなんか緑色の光る僧侶さん的な服。んで宮内は盾と剣に透けてる鎧って感じ?」


 けっこう覚えてるみたいだ。


「アタシはなんか動物みたいなの使ってなかったっけ」


「問題はそこなんすよ。巻島さん、まだ精霊覚えてないじゃないっすか。そうなるとナイフで戦わんとダメっすね」


 巻島は折りたたみ式の鏡を取り出し、画面を操作する。


「精霊のナイフってので呼べるんじゃないの?」


「説明欄にはそんなこと書いてないっすよ」


 〔精霊のナイフ〕スキル枠1


 〖白銀のナイフ〗 ナイフ専用。振ることでMP回復(小)。徐々にMP消費(極小)

 精霊や自分の間を転移可能。精霊に持たせることで強化できる。各精霊ごとにMP消費(中)。


「……マジか」


「あとこれ渡しときますね、精霊の加護につけれるビー玉で、《精神保護》がついてますんで」


 〖精霊の加護》 全部位可能。パッシブ。HPMP秒間回復(極小)。身体強化(極小)。

 精霊強化中は5秒間、炎鳥・身体強化量小増加。闇豹・自分の姿が消える。氷人・守り3種強化(小)。

 ソケット1《精神保護・MP回復量小増加》


 俺に言われてビー玉をセットしてみたものの。


「冷静を保てても、怖いもんは怖いと思う」


 そこら辺は慣れと性格だよな。


「どうしよう」


「ようは戦いに参加すりゃ良いんすよ。俺が前に出るんで、合図したら鱗粉使ってください」


 戦いは精霊に任すというのは、公園で話したときから本人が言ってたからな。あの精霊をまとう奴とか覚えても、もしかすっと使えなかったりするかも。


・・

・・


 そうこう話をしているうちに、俺らは鏡社へ到着する。全ての切欠だとは伝えてあったので、青銅鏡も含めて興味深そうに眺めていたが。


「アタシの部屋にある姿見と手鏡があれば、わざわざ此処にくる必要もない?」


「そうっすね」


 宮内の部屋にある姿見は、もうランダム合成ができるようになっているが、彼女のはやはりまだ換金が足りないのかできない。


 そして俺の姿見だが、なんとショップが使えるようになっていた。鎧とかローブみたいなファンタジーじゃなくて、特殊な素材をつかった服だね。

 これで装備性能強化の効果もちっとは機能するかも知れん。だって法衣や鎧エフェクトなんだもの。


 あとビー玉を使った装飾品。これがかなり凄く、そして金食い虫のランダム要素。



 映世に突入すると、いつの間にか巻島はマントを羽織っていた。


「不思議だよね。ちょっと写メ頼んでいい?」


「使えないんすよスマホとか」


 そうだったと落ち込むマキマキ。


「まあしゃあない」


 全身を包んでいたそれを背中側に退ければ、ナイフが鞘に入った状態で太腿のベルトに固定されていた。そういや宮内の剣には鞘がないっけか。


「一回、試しにスキル使ってみましょう。外套に意識を集中して、心の中でも声に出してでも良いので、鱗粉の風って唱えてください」


「わかった」


 俺と宮内は最初2つだったけど、彼女は3つすでに覚えている。

 〔妖精の外套〕スキル枠1


「〖……鱗粉の風〗」


 マントがふわりと持ち上がり、彼女を中心に緑の風が吹いて、鱗粉が舞い踊る。


 〖鱗粉の風〗 マント専用。

 範囲内の味方と自分HPMP回復(極小)。負傷治癒(極小)。状態異常治癒。10秒間状態異常耐性、属性耐性強化(極小)。疲労回復(小)。精神安定。冷却30秒。MP消費(中)。


 たぶん鱗粉そのものに回復効果があるんだろう。キラキラ輝いて綺麗だし。


「冗談抜きで前世が妖精なんだね、私って……自分で言ってちょっと恥ずい」


「宮内君の場合は英雄っぽいのから騎士になりましたよ。ちなみに巻島さん妖精の前はエルフでした」


 嬉しかったのだろう。


「えっ 本当に」


「男性ですがね」


 喜びも半減したのか。


「男かよ!」


「中性すぎて断言はできませんが、たぶん。あと高貴な感じでしたよ服装が、神聖な感じの杖も持ってました」


 世界樹の枝とかが材料だったりして。


 口外しちゃ駄目なのか判断できないけど、この話題で元気づけてあげよう。


「神崎さんにボロ負けの話したじゃないっすか。実はオーガだったんすよ」


「あ、あぁ~ 確かにサトちゃん、たまに豪快なとこがある気もしないでもない」


 身に覚えありかよ。


「小学校のころはもっとヤンチャだったし。今は落ち着いてるけど、たまに無理してんじゃって思う時もあるかな」


「そ、そっすか」


 さてさて、んじゃあそろそろ始めますかね。


 あっ その前に。


「ちょっと体験しときましょう。それだけで心の持ちようも違ってきますんで」


「ん? なにを?」


 適当な枝を拾い。


「HPを」


「……えぇ。まあでも、こうやって戦い続けてたら、いつかはだもんね」


 こちらに手を出してきた。嫌々ながらも了承を得たので、女子にすんのは気が引けるけれども。


「では失礼して」


 まあ異性の敵もメイスでぶっ叩いてるんだけどさ。


「しゃあこい!」


 目をつぶってちゃ意味ないかもだけど、枝を前腕へと振り落とす。彼女の腕はその反動で、白い光と共に下へと弾かれた。

 その部位を確認しながら。


「マジで痛くないんだね。これなら確かに、ちょっと気が楽になったかも」


 良かった良かった。


・・

・・


 毎度お馴染みの木製人型の出現を確認すると。


「どうします?」


 HPというのを体験したから、意見に変化はないか聞いてみた。


「とりあえずそっちで一回お願いします」


「へい、お任せを」


 そのまま前にでて、人型の攻撃をワザと数発くらう。


「この通り、衝撃で仰け反りはしますが痛くはないっす。それに拳部分が柔らかくなってますんで、たぶんHP0でも」


 ふとあるスポーツを思いだす。


「あー ボクシングなんかじゃ、グローブでも失神するか」


「殴られながら平然と話してんの、すごい違和感があるんだけど。まあ痛くないのはわかった」


 HPの機能をさらに照明できたので、人型のパンチを腕当で受け止め。


「んじゃ鱗粉をお願いします」


「りょ」


 背後から風が吹き、わずかに減少したHPが回復した。

 これで経験値も等分じゃないかも知れんけど、巻島さんにも入るはず。メイスで木人を破壊する。

 敵は消えた。


「宝玉ない」


「学校なら確実に1個はでるんすけど、ここじゃ報酬なしもけっこうあります。とりあえず今日の目的は精霊スキルを一つ習得って感じかな」


 明日は宮内もいるし、学校の近場を3人で回ろう。


 その後、数回は俺が前に出て戦う。


・・

・・


 ついに意を決したようで、次は彼女が前にでた。


 〖赤鎖〗二つと〖青鎖〗を巻島。

 敵には〖青鎖〗を打ち込む。


「ねえ精神保護って本当に効いてんの?」


「その効果をパッシブで得てるって思い出せる時点で、けっこう冷静だと思いますよ」


 宮内以上のへっぴり腰で、マキマキは人型に近づく。


「来ますよ!」


 巻島に殴りかかろうとした瞬間に、俺は〖滑車〗を破壊して木人のHPを0にする。だが敵に痛みも衝撃も与えないので、そのまま動作は止まらず。


 彼女は前腕でなんとか受け止めた。身体強化が2重で発動しており、本人のパッシブもあるため問題はない。


「あぁ、もうっ!」


 俺も似たようなもんだったけど、殴る殴られる経験なんて小学校時代の喧嘩くらい。


「援護します」


 側面から敵に忍び寄り、〖メイス〗を地面に打ちつけて〖重力場〗を発生させる。


「どうぞ!」


「わかった」


 〖白銀のナイフ〗を両手で握り絞め、人型の首部分に突き刺す。その一撃で、敵は光となって消えた。


「おめでとう」


「やったー!」


 ビー玉が落っこち、それを拾って確かめる。


「あっ HP秒間回復の極小だ」


 よかったよかった。でもここじゃ疲労回復系のビー玉は出ないんだよね。


「バット効果のやつ3つと、疲労のを交換しましょう」


「良いの?」


 うんうんと頷き。


「格好つけたいんで。あとバットもお金に交換できるんすよ」


「そう言えばお金かせげるんだっけ?」


 俺は苦笑いを浮かべ。


「橋の補修費に回します」


「あはは、簡単には稼げないってことかぁ」


 さらにショップという要素も加わってしまった。


・・

・・


 夕方の4時ころまで映世での活動を続け、彼女もある程度は接近戦にも慣れた。


「でもやっぱ、アタシは離れた位置から攻撃した方が良いかな」


 手鏡を取り出し、画面の確認をする。

 高価なのを持ってるかと思ったが、残念ながら安物しかなかったようで、3000円ほどの品をテスト期間中に神崎と買いに行ってきたらしい。


「あっ スキル覚えてた」


 俺や宮内の時より早くなってるな。


「そうなんすね、良かったよかった」


 出来ればレベルアップ時に、ファンファーレとかで教えてくれる仕様が欲しい。


「……どれか一つしか選べないんだって」


「えっ 選択式なんすか?」


 それは困るだろ。彼女に頼み、画面を確認させてもらう。


「あぁなるほど、覚える順番をこっちで決めれるみたいっすね。そのうち一方しか覚えられないってスキルも出てきます」


「それすげぇ悩みそうなんだけど」


 実際、俺も宮内も超悩んだことを伝える。〖巻き取り〗〖滑車破壊〗、〖仕込み短剣〗〖守護者の浮盾〗について簡単に教えた。


「両方覚えられんの?」


「こういうのもゲームの醍醐味って言えるんすけどね。悩むのが楽しいんすよ、どっちも優秀だったりすると」


 あと可能性があるとすれば、両方覚えられるんだけど。

 〖巻き取り〗習得か、〖滑車破壊〗二段階目の強化。


・・

・・


 帰りのバスや電車は時間を把握しているので、それに合わせて俺らは学校に戻る。


「今日はありがと。明日もよろしく」


「仲間も増えりゃ、そんだけ活動の幅も広がるんすよ」


 最初は緊張したが、振り返ってみりゃ楽しかった。明日からはゴールデンウィークの後半戦だ。


「このあと、お姉さんに電話するだっけ?」


「流石に家族なんで、巻島さんや神崎さんみたいにゃ緊張もしませんが、俺から連絡なんて普段しねえからあれっすね」


 学校の前を過ぎ、木々に囲まれた坂を下る。


「やっぱ会長の弟さんだったんだねアンタ。彼氏さんと同じ大学かぁ、同棲でもしてたりして」


「いや、どうなんすかね」


 姉弟なんてこんなもんだ。


「もし悪い結果だったとしても、ちゃんと教えて」


「へい」


 京都が気に入ったからというのではなく、仲間が死んだのかそれとも映世に、前世に吞み込まれたのか。

 俺の記憶が書き換えられているのかどうか。


「アタシも宮内も仲間ってことで良いんでしょ?」


「そうか、そうっすよね。今後活動してたら、そういう事が起こる危険もある」


 なぜか肩を叩かれた。


「アタシは目的があって協力してるわけさ。だからそれも含めて自分の責任」


「へい」


 それを踏まえて、自分たちは浦部の仲間だと言い切られた。


 マキマキちょー格好良いんですけどぉ。

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