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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
二章 マキマキギャル(?)・槙島真希編
12/66

6話 公園の妖精戦

ボス戦前のスキル状態などを記しています。自分の能力不足は否めませんが一応それがなくても読めるようにはしております。たぶん。


追記 前話で主人公が自分に咎人のメイスなしで黄鎖を使ってましたので、その部分を消しました


 浦部吟次。


〔咎人の腕当〕 スキル枠3


 〖青の鎖・敵〗 

 腕当自分専用。

 最大数2。

 HP耐久低下(小)。装備性能低下(小)。防御力低下(小)。

 命中位置に弱の悪寒。

 秒数経過で解除。

 MP徐々に消耗(中)

 ソケット枠2

《自分に使うと命中位置に弱の悪寒・MP消費減少(小)》

《他色の鎖と一緒に使える・MP消費減少(極小)》



 〖白の鎖・敵〗 

 腕当自分専用。

 最大数2(+1)。

 命中した敵のHP・MPを吸収(小)。

 徐々にMP消費(小)。

 命中時確率で視界弱不良。

 秒数経過で解除。

 鎖ごとに冷却20秒。

 ソケット枠2

《自分への鎖を解除後、デバフの数ごとに身体強化(耐えた秒数だけ効果が発動する)・滑車追加+1》

《敵への吸収量中増加・敵へのMP吸収量小増加》


 〖黄の鎖・敵〗 

 腕当自分専用。

 最大数1。

 敵の速度・動体視力弱体(小)。

 疲労蓄積(小)。

 命中時に確率で並の感電(5秒)。

 徐々にMP消費(小)

 ソケット枠1

《味方の速度中増加・味方と繋がっている間、自分と相手の速度小増加》



〔自分〕 スキル枠3


 〖咎人のメイス〗 

 自分専用。

 両手首が鎖で繋がれ、メイスが両手持ちに1分間変化。

 セットされている全色の鎖を自分に打ち込めるようになる。

 終了時に疲労(大)→(中)。

 ソケット1

《形状変化後、8秒間身体強化(小)増加・形状変化終了時の疲労を(中)にする》



 〖赤の鎖(敵)〗 

 腕当自分専用。

 最大数2。

 身体能力低下(小)。

 命中位置に弱の熱感。

 秒数経過で解除。

 徐々にMP消費(中)。

 ソケット2

《味方と繋がっている間、自分も身体強化小増加・自分に鎖を使うと、命中位置に並の熱感》

《同色の鎖を同じ個体に二つ放てる・鎖によるデバフに耐えていると自分の身体強化》



 〖風の法衣〗  

 こちらの急所、または致命傷となりうる攻撃を鈍らせることができる。ただこの突風は一度吹くと、次までに10秒を必要とする。

 発動中は緑の流れが周囲を渦巻いており、矢や銃弾など軽量物の軌道を反らす。

 渦内であれば属性耐性(小)強化。

 ソケット1

《渦範囲小増加・属性耐性小増加》



〔司祭のメイス〕 スキル枠1


 〖茶白のメイス〗 光が得物を覆う。

 重量の調節が可能(極小)。

 攻撃を受け止めたさい、相手の武器などを少し軽くできる。

 得物を振るたびにHPMP回復(小)

 HP回復再起動までの秒数減少(小)

 徐々にMP減少(極小)


 足もとに打ちつけると〖重力場〗を発生させ、敵の動きを阻害。

 圧は打ちつけた時の威力で変化。

 メイスを地面から浮かす、または5秒が経過すると停止。

 MP消費(中)。冷却30秒。

 ソケット1

《重力場の範囲小増加・MP秒間回復(小)》



 未セット


 〖聖職者のオーラ〗 全部位使用可能。パッシブ 命中時にHP回復(小) 身体強化(小) 

 ソケット2

《得物を振るとHP回復(小)・命中時にMP回復(小)》

《精神保護・一定範囲の味方にも効果あり》


・・

・・


 宮内輝樹


〔騎士の片手剣〕スキル枠2


 〖黄剣〗 

 騎士剣専用。

 電気を帯び、命中位置に確率で弱の感電を付与。

 身体が黄く光りスタミナを強化(小)。

 徐々にMP消費(極小)。

 白盾と合わせることで、マントのエフェクトをまとう。

 素早さと動体視力を強化(小)。

 ソケット2

《感電確率小増加・感電発生時、電撃によりHPダメ(小)》

《MP消費小増加するが、素早さ関係小増加・得物を振るとMP回復(中)》



 〖攻守の浮剣〗

 騎士剣専用。

 赤と青の色は任意で変更できる。

 攻めの浮剣で削れるのはHPだけで、肉体にダメージは与えられず。

 守りの浮剣は一度防ぐと消え、弱の物質強度を越える攻撃は破壊される。

 飛行範囲は短い。

 MP消費一つあたり(小)。

 最大数2。

 ソケット1

《青剣に物理・属性攻撃を防ぐ膜が発生(小)・浮剣の飛行範囲小増加》



〔騎士の中型盾〕スキル枠2


 〖白盾〗

 騎士盾専用。

 盾での衝撃吸収。

 白い光が衣類を包み、総HP増加(小)。

 徐々にMP消費(極小)。


 黄剣と合わさることで、鎧のエフェクトをまとう。

 HP耐久強化(小)。

 HP秒間回復(小)。

 ソケット2

《衝撃吸収小強化・受け止め可能重圧増加》

《攻撃を受け止めるとHP回復(小)・盾で構えると属性耐性強化(中)》



 〖守護者の浮盾〗

 最大数1。

 味方の背後に青盾のエフェクト、騎士盾が青白く光る。

 味方のHP耐久・防御力強化(小)。

 味方のHPダメージ3/1を使用者が引き受ける。

 自分の総HP増加(中)。

 自分のHP耐久強化(中)。

 一つごとにMP消費(中)。

 ソケット1

《自分と味方のHP秒間回復(中)・発動可能距離短縮(小)》



〔自分〕スキル枠1


 〖勇気を胸に〗

 全部位可能。パッシブ。

 総HP増加(小)。

 HPMP秒間回復(小)。

 身体強化(小)。


 HP0になると戦意高揚。

 痛み緩和。

 防御力強化(中)。

 身体強化が(小~中)

 ソケット2

《HP残量低い状態でも、20秒間だけ0と同じ効果が発動(冷却1分)・徐々に疲労(極小)》

《精神保護・MP回復量小増加》


・・

・・


 互いに握った手鏡を確認し合う。

 朝の公園で男どうし。その行為をするのは危険だと、俺たちだって承知の上だ。


「浮盾と勇気の合成、ビビりましたな」


「仕方ないだろ、良い方が消えると困る」


 わかる。わかるよその気持ち。

 俺も白鎖のビー玉合成するとき、口の中が乾燥しまくった。


「良いのが出たときに限って、もう一方がバット効果なんだよね」


「やっぱそうだよな。浦部と同じで失敗したら、しばらく立ち直れなくなりそうだ」


 成功した時の脳汁を経験すりゃもう戻れないぞ。俺の場合は再度ゲットした時の脳汁だけどね。


「自分にデバフってのはバット効果だけど、やっぱ咎人のメイスに使うためか?」


「そうそう。でも黄の鎖には付けれんかった」


 再ゲットの喜びを忘れるくらいには、自分で悪寒や熱感を受けるの辛そうなんだけどね。

 しょせんこれは幻、デバフだって言い聞かせるのが大事なんだと。だから重要になってくるのは白鎖の精神安定。


 宮内はふむと腕を組み。


「パッシブじゃなくて、メイスのスキルをセットしたのか」


 スキル枠が足りなくてね。


「身体強化は俺に赤の鎖を打ち込めば良いけど、精神保護なしで大丈夫か?」


 赤の鎖に《味方と繋がっている間、自分も身体強化小増加》ってのを付けてる。


「やってみるさ。たぶん妖精戦だと、メイスのスキルが重要だからな」


 俺は〖オーラ〗から《精神保護・一定範囲の味方にも効果あり》を外し。


「可能なら、これと交換してもらえるか」


「了解」


 《精神保護・MP回復量小増加》と交換してくれた。設定してないので無理だけど、もし俺のHPが0になれば、〖勇気を胸に〗の追加効果も貰えるのかな。


 いや、宮内は《HP残量低い状態でも、20秒間だけ0と同じ効果が発動(冷却1分)》を付けてるから、これも反映されるかも知れん。

 それとも俺じゃなくて、本人が残り少なくなったらなんかね。


「じゃあ、とりあえず最終確認といくか」


 昨日の戦いで感じたこと。


「相手の主体は属性や非物理攻撃だ。肉体へのダメージはそんな強力じゃない」


 勝てるかどうか分かんないし、撤退って選択をする場合もある。


「気をつけるべきは奴が持っているナイフだけど、ありゃ俺らからすると小せえ。それこそ妖精サイズだ」


 いくつか警戒すべきスキルもある。


「仕込み短剣みたいなのも使ってくるんだったか」


「君が言ってたじゃないか、あれは優秀だけど攻撃力そのものは低いってさ」


 実際に昨日はHP0で負けたんじゃなく、公園から逃げだしました。漆の手鏡だったので。


「俺が得た情報が絶対とは限らんけど」


「まあでも事前に知れるのは助かる」


 何度も当たって敵の動きを覚えるってのじゃなくて、どっちかと言えば無理ならレベル上げの方が良いと思う。


「妖精の感じからして、俺の情報も得てる気がする」


 騎士戦の時よりもその感覚が強いんだ。


「だからこそ、昨日はいなかった宮内が要ってことになんじゃねえかな」


「そうか」


 感情の強弱。たぶんあの妖精は俺のことを覚えている。そんな気がしたから、妖精を相手には使わなかったスキルがあった。


・・

・・


 映世の公園に居なければ、今日はこのまま病院の方に向かう。


 俺たちは公衆便所の鏡を使って映世に移る。

 個室にリュックを吊るし、立て掛けられていたメイスを握りしめる。


「キレイにつかってくださり、まことにありがとうございます」


 そうポスターに書かれていたが、まあ実際はお察しですね。



 便所から出ると、相手はすでに姿を変えており、空を飛び回っていた。

 俺に気づいたのか、鼻をつまんで臭い臭いのポーズ。


「おいこの妖精野郎っ! 約束どおり今日が本番だこんちくしょう!」


 すばしっこくて攻撃が当たりゃしねえ。もうイライラしまくったさ。

 俺をおちょくるように手を振ってきやがった。


「浦部、相手が槙島だってこと忘れてないか」


「……あっ」


 やっちまった。


「覚えてないと良いな」


 やっちまった。


「そうですね」


 とりあえず戦闘前の準備を急ごう。


 〖赤の鎖〗を2つ宮内に放ち、身体能力を重ねて強化。後ろを振り向き〖守護盾〗を確認。


 〖黄剣・白盾〗で鎧をまとえば、俺も〖法衣〗を発動。


「来る」


 妖精は【ナイフ】を天にかざす。

 彼女のさらに高い位置が燃え上がり、そこから鴉ほどの【赤い鳥】が産まれた。


 非物理はHPしか削れない。これもまた属性攻撃の類だったか。


 【鳥】は宮内に空中から特攻を仕掛けるが、俺の〖渦〗により属性耐性が強化されおり、HPの減少は抑えられているはず。


 実体のない滑空攻撃を耐え抜けば、宮内は盾を構えたまま一気に妖精へと駆け寄る。すでに鳥は消えていた。

 彼の斬撃を頭上にふわりと飛んで避けるが、〖浮剣〗が妖精をかすめてHPを削る。


 今日に備えて宮内には、浮剣の《飛行範囲小増加》を無理して付けてもらった。敵が飛べる高さには限界もあるが、精一杯振り回しても俺らの得物じゃ届かない。


 俺は妖精にできるだけ近づいてから〖白鎖〗を放つ。しかし羽根を使って避けられる。


「別の(しもべ)が来るぞ!」


「了解!」


 【ナイフ】を下に向ければ地面から闇が発生して、黒い影に覆われた【豹】が出現。

 そいつは間を置かずに俺へと襲いかかってきた。


「任せろっ」


 浮剣《青剣に属性・物理攻撃を弱める膜が発生(小)》

 白盾《盾で構えると属性耐性強化(中)》


 宮内が牙を〖盾〗で防ぎ、続けて足もとを狙った爪を〖青い浮剣〗で受け止めた。発生した青い膜が威力を鈍らせる。


 豹には物理判定がないため、宮内が受けたときの衝撃はない。でも侵食により〖白盾〗は黒く濁っており、スキルの性能が落ちているようだ。


「行けっ」


 〖赤剣〗は空を飛び妖精に迫る。それを警戒していたようで、難なく回避に移ったが、もともとこの距離では届かない。


「沈めやっ!」


 地面に〖メイス〗を打ち込めば〖重力場〗が発生する。これは上空も範囲内であり、昨日使わなかったスキル。

 すかさず滑車を造りだし、〖白と青の鎖〗を射出。


「デバフ成功か?」


 妖精が目を細めたのを確認。弱なので大した効果はないかもだが、〖白鎖〗による視界不良。


 すでに黒豹は消えていた。宮内が剣を構えて接近。俺はメイスを地面に擦りつけながら後退。接触部が土から離れると〖重力場〗も停止する。


 妖精は何とか身体を起こし、ナイフを正面に構える。【青い人型】のエフェクトが出現して、宮内の攻撃を受け止める。


「これが仕込み短剣と似たスキルか」


 実体のない人型。同じエフェクトである鎖や赤浮剣は防げても、本来は実体のある騎士剣やメイスは防げない。


 【人型】の心臓部には【ナイフ】が入っており、〖剣〗を受け止めた前腕は凍っていた。もう片方の腕が先端の鋭い氷の突剣に変化するが、冷静に〖盾〗で防ぐ。


「くそっ 逃げられたか」


 5秒が経過したので〖重力場〗は消え、妖精は空へと浮かび上る。俺はメイスを振ってHPMPを回復。


 【人型】の心臓部にあったナイフが、銀色の光と共に消えた。転移した先は妖精の頭上であり、【ナイフ】を中心に燃え上がる。


 氷は消えても【青人】は健在だった。こいつの攻撃に実体はなくても、HPは普通に削ってくる。


「すまん、手が離せない!」


 時間の経過で赤鎖は消えていたので、〖白の鎖〗を宮内に放つ。


「わかった!」


 特攻してくる【火鳥】は一回り大きくなっており、〖法衣〗をまとった腕当で嘴。いや、【ナイフ】を防ぎ止める。

 HPがけっこう減少したが、〖守護盾〗が3/1を引き受けてくれた。


「そっちのHPは大丈夫か!」


「まだ余裕だ」


 靴底で地面を削りながら後退するも、嘴が銀色に光ると衝撃は消えさった。


 転移した【ナイフ】は妖精の手元へ戻る。

 しばらく空をただよい時間を稼いでいたと思ったら。


「……おいおい」


 初めて見るスキルだった。

 地面から闇が伸び、それが妖精を覆う。


 黒い猫のようなエフェクトをまとい、長い尻尾の先端が【ナイフ】と同化している。


「どうする?」


 逃げるかどうか。焦るな、落ち着け。

 奥の手を出すにはまだ早すぎるだろ、妖精さん。

 でもこちらが対抗しないわけにもいかない。


「すまん、少し時間を稼いでくれ」


「……わかった」


 地を這う【豹】をまとったからか、妖精は俺らの視線より高くは浮かび上れないようす。鳥じゃなくてよかった。

 鳥を土台にはできないって場合もあるか。ならそのまま飛んで、俺らが疲弊するのを待つべきだろ。


「考えても仕方ないか」


 各鎖の残数を頭の中で確認。


「白の解除を待って、黄色をお前に打ち込む」


 妖精に打ち込んでいた〖白と青の鎖〗も、少しすると解除された。


「おう」


 〖咎人のメイス〗を発動すれば、両手首が実体のある鎖で繋がれ、得物が両手持ちに変化する。


 4方に滑車が出現し、それが罪人もとい俺へと打ち込まれた。

 左腕が燃えるように熱せられ、右腕は凍傷のように感覚を失っていく。


 熱感が並だとすれば悪寒は弱だから、利き腕はそっちにした。

 背中には赤鎖。胸には白鎖。


「頼んだ」


「任せろ」


 宮内は〖盾〗を構えたまま走り出す。もう黒の浸食は消えている。

 妖精は突進をふわりと横に回避する。


「三つの(しもべ)、全部いっしょだったのか」


 実体化した爪で引き裂いてくる。

 それを〖浮剣〗で防ぎ、青い膜で弱体化させるも、燃えた【尻尾】が回り込みながら刺してきた。

 〖騎士剣〗で弾き返し、盾を妖精に叩きつけるが、少しさがられ寸前で避けられる。

 攻めの〖浮剣〗による追撃は凍てつく【爪】でかき消してきた。


 宮内はいったん構えなおす。彼の〖剣〗に浸食を確認。


 白鎖が解除されたので、〖黄鎖〗を宮内に放つ。


 赤い光をまとった妖精が加速。

 急接近からの氷爪による攻撃は頭をさげて避け、〖剣〗の斬撃が妖精に白い傷を刻む。

 尻尾の【ナイフ】が〖守りの浮剣〗を壊し、青い膜を通過すると宮内の肩へと突き刺ってHPを奪われる。



 〖鎖〗からの熱感と悪寒。

 くそっ こんな状態で戦えねえよ。


「素早いぶん、ちっこいんだ」


 HPの総量は低いはず。


 戦いを観戦していると、宮内から朗報が叫ばれる。


「浸食されてるが、感電喰らわせたぞ!」


「ナイスっ!」


 妖精は緑光と共に鱗粉を撒き散らす。


「うわっ」


 HPだけじゃなく、感電も治癒されたか。


「こいつヒーラーでもあった」


 呼吸を整える。


「俺が前に出るぞ!」


 足を踏みだせば滑車が回転して、〖鎖〗を勢いよく吐きだす。

 熱感からくる強化で加速。


 赤の身体強化には黄ほどじゃないが、素早さだって含まれる。


 宮内が一歩さがれば、俺が妖精に飛びかかる。

 大振りだからと避けようとしたが、身体強化は伊達じゃない。


 白の鎖が弾けて宙を舞えば、俺のデバフも解除される。そして全身にさらなる力が漲る。


 メイスの空気を圧し潰す音が、逃げようとした妖精の身体をかすめた。

 命中の寸前に氷の膜を発生させたが、白いダメージ光は強い。

 吹っ飛んで地面にぶつかった時にも、HP減少の光を確認。

 それでも妖精は俺から意識を反らさず、身にまとう黒豹の【尻尾】をこちらへと押し伸ばす。


 俺の背後には再び〖守護盾〗が浮かび、さらには〖青鎖〗で守りも強化中。


 腕当で【ナイフ】を払いのけ、もう一歩を踏み込む。

 滑車をつくり、〖青と白の鎖〗を放つ。


 命中はしたが妖精の身体が赤く光り、燃えながら俺の横を通過した。

 銀色の光が走り、脛に切断線を残す。

 相手も俺との戦いを経験している。


「うわっ くそ!」


 浸食はバフを弱体化する。浸食はバフそのものを確率で消失させる。


 俺と繋がる滑車は赤が壊され、残る2つが黒に汚染されてしまう。


「焦るな、こっちも滑車を壊せ!」


 こういう時に精神保護が効いてくるんだな。


「そうか……お返しだっ」


 〖滑車破壊〗で銀色に輝いた妖精は、その場でクルっと向きを返し、アハハと笑いながら俺に迫る。


 青い〖浮剣〗が遮るも軽く弾き返し、尾っぽの【ナイフ】で顔横を駆け抜けた。


 感触で首に光の線が刻まれたと分かる。急所の太い血管であれば、間違いなく銀色だろう。


「緑にしといて正解だったか」


 〖法衣〗の突風が刃の軌道を反らしていた。緑の渦が属性耐性を強化する。

 俺のHPはギリギリ残った。


「お前のそれ、多分だけど〖咎人のメイス〗と同系統だよな?」


 疲労というデメリット。

 俺も直に切れるが、まだ10秒ほど残っている。なによりこっちには体力を残したイケメン様がいらっしゃる。

 未知のスキルを使い終えると、そこからはしばらく(しもべ)を使って来なかった。



 なぜメインを鳥にせず、地を這う豹にしたのだろうか。そういうスキルなのかも知れないけれど、もっと慎重に使いどころを見極めるべきだ。


 そもそも最初から、こいつには敵意が感じられなかった。

 やがてHPが0となったようだ。

 相手は降参したのか、ふらふらとブランコに向かい、そこに腰をかける。


 こっちも息を切らせながら。


「なんだよ、もう終わりなのか」


 心の中に声が響く。


『またいつか遊んでね。格好良いのと、そうじゃないお兄ちゃん』


 楽しかったと両手で伸びをすれば、【ナイフ】の刃を首に当て、そのまま躊躇(ちゅうちょ)なくかき切った。

 血ではなく、光が噴きでる。



 ふざけんな、こんな終わらせ方。


「ていうか3つの(しもべ)って」


 お前、バ〇ル何世だよ。



 


 

 

 

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