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追放された魔法使いの巻き込まれ旅  作者: ゆ。
2章 魔法の国ルクレイシア
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謎の言動 (セイルクside)

来週投稿できるかわからないのと、大事なところかなと思うので2話投稿します。

来週投稿したら、現実逃避したと思ってください。

クレアと別れて、俺は今日も寮へ足を運んだ。

クレアが話す「いい人たち」が頭から離れなかった。

あの家には……いい人なんていない。


俺を引き取った当初は優しかったけど、魔力暴走をきっかけに扱いも態度も一変した。

学校に通っているのは国で強制されているが、寮は強制じゃない。簡単に追い出せるから寮に入れたんだろう。

あそこに居場所はない。


でも、俺も緊急連絡先に親の署名をもらう必要がある。

あそこに帰らないといけない。魔力を乗せて署名してもらうせいで、自分で勝手に書いて出せないところが嫌なところだ。

きっと、しぶしぶ署名して、本当に俺が緊急の状態になっても心配はしないのだろう。


寮に戻り、自室で鞄を探る。書類を入れているところに今日のプリントがあるはずだと探っていく。


「……?」


俺は不思議に思って鞄の中身を全て取り出して確認する。

違う場所に入れていないか、鞄の底で哀れな姿になっていないか。

しかし、どれだけ探っても俺の鞄から書類が出てくることはなかった。

取り出したのはクレアのときしかない。

きっと、クレアに渡したときに間違えて自分の分も渡してしまったのだろう。

クレアへの言い訳で自分がどれだけ慌てていたかがわかった。


俺は一度ため息をついて、出したものを鞄に戻す。

明日も会う約束をしているから、そのときにでも返してもらおう。

それでそのまま家に行って、署名をしてもらって……。


俺の頭の中に今日の、クレアの幸せそうな声が響いた。

あんなに嬉しそうってことは、それだけよくしてくれた人で。クレアもその人も幸せな気持ちで生活していたのだろう。

羨ましくて、せめて緊急連絡先に先生の名前でも書けたらよかったのにと思ってしまった。




鞄に戻し終わり、制服から私服に着替えて、高いところで結んでいた自分の髪を下ろし、首のあたりで結び直す。

ちょうどお腹が空いたころに食堂から夕食の美味しそうな香りがした。

俺は自室を出て食堂へ向かった。


今日はクリームシチューとホワイトクリームのハンバーグだ。

炊事係がこの間の雪がホワイトクリームに見えて作ったと、生徒に渡す際に逐一話していた。

結構な量が盛られたときは、あの日の雪の積もり具合を思い出して、そんなところまで再現しなくていいと思ってしまった。


俺は誰も座っていない端の席に座って食べ始める。

いつも通り美味しいが、量が多い。

クリームシチューだけでお腹が満たされてしまいそうだ。


大体食べ終わったあたり、淡々と食べ進めている中で、頭上から影が差した。

見上げてみると、ミュゼがトレーを持って俺の目の前に立っていた。


「隣、いい?」

「……好きにすれば」


一体何の用かと思って身構えていたが、相席と聞いて少し固まった。

少し気まずいかと周りを見渡して、他の席が埋まっていることがわかった俺は仕方なく相席を許した。


ミュゼは俺の隣に座って食べ始めた。

向かいに座ればいいのになぜ隣で食べるんだ……。

ただそんなことを言うのもいい気がしなくて、俺は黙々と目の前のご飯を食べていく。

食器同士が当たる音だけが俺とミュゼの間で聞こえる。


「……今年の討伐、また国から派遣された魔法使いと回るの?」

「……?今年は違うけど」


沈黙を破ったミュゼから聞かれたことに俺はわざわざミュゼを見て答えた。

なぜそんなことを聞くのかと目で訴えてみると、それを察したかのようにミュゼはまた口を開いた。


「去年はパートナーの魔法使いと気まずそうだったから……今年もだったら私が一緒に回ってあげようかと思っただけ」


俺は不審に思った。

別に他の生徒とそのパートナーと一緒になって回ることは珍しいことではない。

ただ、いつも嫌味ばかり言ってくるミュゼが、単なる心配だけで俺と回ろうとするだろうか。

どうにも信じられなかった。


それに、今年のパートナーはクレアだ。

俺とミュゼの仲は元々そんなに良くないのにクレアの一件から気まずさが増しているし、クレアとミュゼは確執が生まれていた。

クレアのため、俺のためにも一緒に回るのは得策じゃない。


「……悪いけど、今年は気まずくないから遠慮しておく」


俺がそう断りを入れると、ミュゼはハンバーグを食べ進めるのを止めた。

少しの間沈黙が流れて、ミュゼがスプーンを持つ手に力を込めて俺に問いかけてくる。


「気まずくない人って、クレアさんのこと?」

「………そうだけど」

「へぇ……」


ミュゼは俺の答えを聞いて納得したような声を漏らした。

ミュゼは時間をおいて固くなったクリームシチューをかき混ぜて、柔らかくなっていくのをただ見つめている。


「私との間も簡単に解れればいいのに……」


ミュゼの呟きは小さすぎて俺には聞こえなかった。


先に食べ終えた俺は立ち上がってその場を去ろうとする。

ミュゼは悲しそうな、羨ましそうな、とにかく色々な負の感情を目に乗せて俺を見ていたが、俺は何も言わないで立ち去った。


一体なんだったんだ……。

俺はトレーを戻して、自室に戻る間もミュゼの言動の意味を考え続けていた。

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