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追放された魔法使いの巻き込まれ旅  作者: ゆ。
2章 魔法の国ルクレイシア
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魔力暴走

「なるほど、博物館を訪れていたのですか」

「はい、とても面白かったです」

「はは、それはよかった」


クレアは温室でぶつかってしまった本屋の店主、ハシュアに連れられて、昨日訪れた本屋の奥にある居住スペースでお茶をしていた。


ハシュアはとても紳士的で、ぶつかったことがなかったかのように笑ってクレアをここまでエスコートしてきた。

フレンティアで案内役をしてくれたルークと比べると、胡散臭さがない。


クレアはハシュアの淹れた紅茶を飲む。

少し渋みがあるがアクセントになってとても美味しい。


ハシュアは少し気を落とした顔をしてクレアに話しかけた。


「……昨日はすみませんでした。見苦しいところをお見せしてしまって。

セイルクも普段はあんなことを言う子ではないのですが………」


昨日のことを気にしていたらしい。

ハシュアはクレアに向かって頭を下げた。

クレアは慌てて声を出した。


「いえ、私の魔法が言及されることはこの国に限った話ではないので……。

気にしてないと言えば嘘になりますが、慣れているので大丈夫です」


クレアの声が少し落ち込んでいるのを聞いて、慰められたハシュアはもっと申し訳なさそうにした。




互いに気を遣ってしまい談笑が続き、淹れてもらった紅茶もなくなりかけてきたころ、突然店の扉が開く音がした。


ハシュアはクレアを一度見てから店の方へ行ってしまった。


クレアが残りわずかの紅茶が入ったカップを眺めていると、店の方から怒鳴り声が聞こえてきた。


「何回言えばわかるんだ!私はもう教えないと言っただろう!」

「で、でも、先生から魔法を教わりたくて……」


気になって覗いてみると、怒鳴っているのはハシュアの方だった。

怒鳴られているのは、昨日クレアの魔法を手品みたいだと馬鹿にしたセイルクだった。

先生、という呼び方から2人は師弟関係でもあるのかもしれない。


のんきに様子をのぞいていたのがよくなかったのか、さっきまで下手に出ていたセイルクはクレアと目があった途端にクレアのことをきつく睨んだ。

セイルクの視線が逸れたのを見て、ハシュアが視線の先を見てクレアと目があった。


「クレアさん……!すみません、騒がしくして」

「い、いえ。私は大丈夫ですが……」


クレアがちらりとセイルクを見た。

ハシュアがクレアを気にかけるのが嫌だったのかもしれない。

セイルクはみるみると怒りの形相でクレアを睨んだ。


「おい、何でお前が先生の家に入ってるんだよ」

「私は、」

「お前がよくて、なんで俺はだめなんだよ」

「セイルク」

「正しい魔法も使えないくせに」

「セイルク!!」


ハシュアに怒鳴られてびくりと肩を震わせたセイルクは、泣きそうな顔をしてハシュアを見た。


「先生は、嘘つきだ。約束してくれたくせに」

「セイルク、落ち着きなさい。喚いても何かが変わるわけでは───」

「うるさいッ!!!!」


次の瞬間、セイルクを中心にして波動のようなものが発せられた。

セイルクとカウンターを挟んですぐ近くにいたハシュアは、その波動に体を飛ばされてすぐ後ろの壁に背中を強く打ち付けた。

ハシュアは呻き声をあげて痛みに悶えている。


(まさか、魔力暴走?)


クレアは波動から強い魔力を感じてセイルクを見た。

セイルクはハシュアを飛ばしてしまったことで罪悪感に苛まれている。

魔力が不安定なのか、周りの本が浮き始めている。

このままいけば店の本がすべて浮き始める勢いだ。


クレアはいてもたってもいられず、カウンターから身を乗り出してセイルクの手を握った。


突然自分が嫌いな人に手を握られて不快感を示さない方がおかしい。

セイルクはもっと魔力を不安定にして握られた手を振り払おうとする。


同年代とはいえ筋力の差は歴然だ。

振り払われるのもすぐだろう。



「……ごめんなさい」


クレアはそう呟いてセイルクに自分の魔力を流し込んだ。

それも大量に。

魔力暴走の際に行われる荒療治だ。

本来は感情を落ち着かせたり催眠系の魔法をかけるのが妥当で、あまりやってはいけないことだ。


突然他の魔力が体に流れ込み、支配される気持ち悪さにセイルクは耐えられず、その場にへたり込んだ。

何が起こったのかわかっていないみたいだ。


クレアは肩で息を切らしてセイルクの手を離すと、ハシュアのもとへ寄った。


意識がかろうじてあって、クレアの荒療治を見られてしまった。

ハシュアは痛みで息を何度も出し入れしながらクレアを見てくる。


「………『治癒』」


クレアはその目を見ることができず、違う場所に視線を置いて治癒魔法をかけた。


ハシュアの状態がよくなったのを確認して、クレアはすぐに立ち上がった。

ハシュアだってこの国の人間だ。

さっきまでは何も言っていなかったが、蔑んでくることだってあるかもしれない。


クレアはハシュアを信じきっていなかった。


「私はこれで、失礼します」

「あ、クレアさん待って………!」


クレアはまだ立ち上がれないハシュアに向かって深くお辞儀をすると、ハシュアの言葉を聞かずに逃げるように裏の勝手口から本屋を後にした。

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